上野 真治 先生(名古屋大学大学院医学研究科 眼科学講座)

受賞テーマ:
網膜色素変性におけるバイオマーカーの探索

この度は、第18回JRPSの研究助成を受賞することができ、大変光栄に感じております。私の研究課題は「網膜色素変性におけるバイオマーカーの探索」です。
網膜色素変性の患者さんが期待されていることの一つが、網膜変性の進行を止める治療を開発してほしいということだと思います。実は、動物実験では多くの薬物が網膜変性の進行を抑制すると報告されております。しかし、患者さんにその薬物を投与してみる臨床治験では効果が認められないということが非常に多いのです。この動物実験と臨床試験のギャップが生じる理由の一つは、臨床試験で治療の効果を適切に評価することが難しいことが原因だとされています。網膜色素変性の患者さんを診察しても、視野や視力は1-2年ではほとんど変わりません。そのため、開発された薬物が、網膜変性の進行を抑制したということを確認するには、多くの時間と多くの症例数が必要になり、実は非常に難しいのです。
そこで私は、患者さんの眼の中の水(前房水)に、網膜変性が進行する時に変動するようなマーカーを見つけようと考えております。これは、採血をして、糖尿病の患者さんが血糖値を気にしたり、腎臓の悪い患者さんが腎臓の機能の数値を気にしたりするのと同じような指標を見つけようとすることです。このような試みにより多くの癌のマーカーなども見つかっております。
今回の研究では患者さんから前房水をとるのは侵襲がありますので、網膜変性を起こすウサギを使って調べようと考えております。マーカーを発見することにより、お薬の効果を効率よく判定し、網膜色素変性の患者さんの治療法の確立に役立てればと考えております。

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