第22回研究助成受賞講演要旨_秋山雅人先生(九州大学眼科)

受賞テーマ:「網膜色素変性症の原因構造変異の解明」

この度、JRPSライオンズ賞に選出いただました九州大学の秋山 雅人です。研究助成をいただけることとなり、会員の皆さまには心より御礼申し上げます。
網膜色素変性は、主に体の設計図である遺伝子が原因で発症する病気であるということが知られております。私はこれまでに、遺伝統計学を専門として、網膜色素変性だけでなく、緑内障や加齢黄斑変性など、さまざまな疾患の大規模な遺伝子研究を行ってまいりました。近年の遺伝子研究では、技術の進歩により、効率的かつ網羅的に塩基配列を調べることが可能となっておりますが、最新の機器を用いて遺伝子を調べても、原因が分からない患者さまが未だにたくさんいらっしゃるのが現状です。
今回採択いただいた研究で私が取り組みますのは、網膜色素変性の原因となる遺伝子配列の違いの中でも、構造変異と呼ばれる塩基配列を見つけることです。ヒトのDNAには四種類の塩基が存在し、一つの塩基の違い(一塩基置換)は現在主流の機器で容易に見つけることが可能であり、網膜色素変性の原因となるものも、これまでに多く報告されております。一方で、複数の塩基が欠失していたり、挿入されているような違い(このようなものを構造変異といいます)も遺伝病の原因となることが知られており、これらは技術的な難しさがあるため、網膜色素変性の原因であるにもかかわらず、見つかっていないものが存在することが予想されます。この課題に対して、これまでに培った遺伝統計学の知識を活用して、いくつかのアプロー チで、遺伝的原因の解明に取り組む予定です。
遺伝子研究は、患者さまのご協力があって成り立つ研究です。この文章を読んで下さっている方の中にも、遺伝子研究にご協力いただいた方もいらっしゃることと存じます。皆さまのご期待に応えることができるように、日々研究に励んでまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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