第19回研究推進委員会(Wings)通信(20190730)

これまでインタビューした諸先生に、ご研究の進捗状況等をフォローアップ記事として随時ご寄稿いただいています。今回は池田華子先生に2016年9月発行の『あぁるぴぃ124号』に掲載されたインタビュー記事をフォローアップしていただきました。

■Wings研究者インタビューフォローアップ寄稿(3)
「分岐鎖アミノ酸製剤の治験開始とKUS剤治験の見通」
池田 華子(京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター 准教授)

動物モデルで病気の進行を抑えることを確認し、治験にむけた準備を進めてきた分岐鎖アミノ酸製剤ですが、AMED(日本医療研究開発機構)の研究費をいただくことができ、2019年3月から治験を開始いたしました。今回の医師主導治験は、分岐鎖アミノ酸製剤を患者さんに内服いただき、その有効性と安全性を検討する、第Ⅱ相の試験となります。
70名の患者さんに、分岐鎖アミノ酸製剤またはプラセボ(偽薬:分岐鎖アミノ酸を含まない、見かけが同じ薬)を1年半、内服いただき、その間の視野の進行具合が治療群とプラセボ群で差があるかどうかを検討します。患者さんにも、私たち医師や医療関係者にも、どちらの薬を内服いただいているか分からない状況(二重盲検といいます)で、おおよそ3ヵ月に一度、視野検査および血液検査を行い経過観察します。この治験の結果、分岐鎖アミノ酸製剤内服群で、プラセボ群よりも視野の進み具合がゆっくりであることが明らかになれば、より多くの患者さんを対象にした第Ⅲ相試験を実施することになります。なお、今回の京大における治験は、すでに当院にてこれまでの視野の経過観察(治療前の自然経過)を行ってきた患者さんを対象に行いますので、新たな患者さんの募集は行っておりません。
一方、京都大学で開発を行ってきましたKUS剤(動物モデルで網膜色素変性症の進行抑制効果を確認)は、網膜中心動脈閉塞症の急性期の患者さん対象の第Ⅰ・Ⅱ相試験が終了しました。今回は、眼の中(硝子体)に直接注射にてKUS121を投与し、安全性に問題なく、神経保護効果も確認することができました。現在、網膜色素変性症など、慢性の疾患の患者さんに使用いただけるよう、点眼化の検討を進めております。点眼化の目途が立ちましたら、まずは正常な方を対象に第Ⅰ相試験を行い、安全性の検討を行った後、網膜色素変性症の患者さんを対象に第Ⅱ相試験を予定します。
実施中の治験には、遠方からも多数の患者さんにご参加いただいております。患者さま方のご協力に日々感謝するとともに、一日でも早く、治療薬を患者さんにお届けできるよう、引き続き頑張ってまいります。

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