今年に入って安達先生から「ちょっと医局に来なさい」といわれ、何か怒られるのかと思ったら、「6月に何か面白い話をしてあげなさい」といわれ、チャンスを与えてもらったものですから、白内障の手術について話すことにしました。白内障の手術というのはわかっているようで意外とわかっていないことも多いので、結構質問があると思います。網膜色素変性症の患者さんの白内障というのは非常に特徴的なので、その辺のお話ができたら、と思います。
白内障の手術のお話に先立って、目の構造について簡単に触れておきます。目の表面の黒目の前には透明な角膜という膜があります。黒く見えるのは虹彩と言う茶目です。茶目の裏側に水晶体というものがあります。網膜というのは白目の壁の裏側にある透明な神経の膜です。約0.5ミリ程度の非常に薄い膜です。この網膜が変性するのが網膜色素変性症です。茶目の後ろにある水晶体が濁ってしまうのが白内障です。カメラで言えばレンズにあたる部分が水晶体、これが濁ると白内障です。フィルムにあたるところが網膜です。
網膜色素変性症の典型例では、網膜の周辺からやられていって、中心が比較的残ります。視力を出すには中心が一番大事です。白内障になる色素変性症の患者に特徴的なことは、後嚢下白内障、つまり水晶体の裏側でなおかつ中心が濁ってしまいます。中心が濁ってしまうものですから、中心の黄斑が生きているにもかかわらず、光が良く入らずに視力が低下してしまいます。
網膜色素変性症の患者さんでない人に比べると、若いときから白内障が発症します。20代で発症する人もいます。濁り具合は、これは眼科医が見ないとわからないことですが、水晶体の周辺が濁る分には問題はないのですが、中心部が特徴的に濁ってしまうものですから、どんどんかすんできてしまいます。特に、明るいところに行くと瞳孔が閉じるので、中心にしか光が入りません。光が入るところが濁ってしまうから、患者さんはかすむとか、まぶしいとか、視力が落ちた、視野が狭くなったという訴えを起こすことになります。
これはわれわれ医療機関のほうに出向いていただいて、診察しないかぎりわかりません。網膜色素変性症は、再生医学とか治療法の方面でだんだん光が見えてきていますけれども、いまだもって完全な治療法はできていません。外来で患者さんが診察に来て、私たちが「どうですか」と尋ねても「どうせ治らないのでしょう。だから1年に1回も来ればいいのではないの」ということで、だんだん足が遠のくことが多いのですが、白内障という存在のほか、緑内障とか、黄斑部が少し腫れてしまうのう胞様黄斑変性とか、合併症がいろいろあります。必ずしも色素変性症だけで視野や視力が下がるわけではないので、合併症があるにもかかわらず来院されずにずっと放置されて、どんどん視力が下がって、10年くらい経ってから、われわれのところに来て、「先生、変性が進んでまったく見えなくなってしまった」といわれて診察すると、実は白内障が進んだ方がいらっしゃって、手術をして非常に視機能が上がって喜んで帰られたという事例もあります。まったく眼科に行っていないとか、数年前には行ったけれどもあきらめて行っていないという人は、ぜひこういう機会に診察を受けてほしいと思います。そこで白内障を見つけ、視野や視力をはかり、複数の先生がいろいろのデータを見て、白内障が強いから手術した方が良いと診断した場合、手術適用を決めた方が良いと思います。
手術の方法は、ビデオなどで見ていただくのが一番簡単なのですが、水晶体をとる手術の方法は2種類あります。10年程前から、硬くなった水晶体を超音波で柔らかくくだいて吸い出してしまう良い機械が普及して、ほとんどの場合、これが適用できます。白内障が非常に進んで、水晶体が非常に硬くなってしまっている場合は、ロックハードといって、「岩のように硬くなる」という表現をするほど硬くなるケースもあります。こういう場合は超音波では無理です。超音波をやっても水晶体はぜんぜん吸い出せませんので、黒目の脇を1cmくらい切って、お産のように機械的に取り出します。
超音波の場合、黒目の脇に3〜4mmくらいの傷を付けます。非常に小さい傷です。そこから超音波を水晶体にあて、砕いて吸い出し、そのあとに人工レンズを入れます。水晶体は、よく饅頭に例えるのですが、皮とあんこからできていて、濁るのはあんこの部分なので、あんこの部分を取り出し、皮の部分は目の中に残しておきます。皮はハンモックのように目の中で糸に吊られて固定されています。取り出したあんこの代わりに人工レンズを入れて手術は終わります。30分もあれば十分終わる手術です。
次の日になると、ほとんどの患者さんは、明るくなったということになります。千葉大学では、複数の先生が診てこれは手術適用があると判断した患者さん、すなわち中心が濁っていてかなり視機能に影響しているだろうと判断した患者さんに手術をします。いま学会向けにまとめている千葉大学の手術後の成績では、だいたい8割のケースで視力が向上しています。2割は視力が上がっていません。視力は上がっていないから残念だと思ったら大間違いです。実は、明るくはなっているのです。その方の持っている視野の部分が明るくなり、かすみが取れたとか、まぶしさが軽減したということが多いです。視力が下がった方は、今回の調査ではいませんでした。ただし、視力が下がることもあります。手術中の合併症というのがあります。色素変性症の患者さんの水晶体を支えているチン氏帯は、一般の方より弱いことが多いので、手術中に水晶体が動揺して、手術がやりにくいのです。今回の調査では非常によい成績を示しています。これは安達先生以下のスタッフの腕がよかったということでしょう(笑)。
視野に関しては、はっきり言ってあまり広がりません。白内障が非常に進んでいた場合には広がることがあります。視野の光の感度は上がります。
ここからが皆さんが聞きたかったことだと思いますが、今までは白内障のために十分な光が入ってこなかった。今度は水晶体をとって人工レンズを入れると光がきれいに入ります。その手術をしたために、光がたくさん入ってきて視機能が悪くなるのではないかという懸念をたくさんの方がお持ちだと思います。それが心配だから手術に踏み切れないという方もいらっしゃるでしょう。
両眼の白内障の手術をした方が、その後視機能が低下した場合、水晶体を取ったため悪くなったのか、網膜の変性が自然に進んで悪くなったのか、ということは非常にわかりにくいことです。文献を調べると次のような例があります。白内障の片方しか手術せず、もう片方は水晶体を温存したケースです。こういう方の視野を長い人では十数年もの間、経過を追った例が5例くらいあります。手術後ゴールドマン視野計ではかった視野の進行状態は両眼でほとんど変わりません。欧米の文献でも、手術によって視野が悪化する傾向はほとんど見られないという報告が今は多いです。昔はマウスやラットを用いた実験などで光が悪いという結果が報告されています。強い光が視機能を低下させるという実験結果です。
一方、網膜色素変性症の小さい子が、外傷により片方の眼の瞳孔が縮んで閉鎖してしまい、まったく光が入らなくなった。そういう状態で三十何年か経過した人の、瞳孔を開いて両方の眼の視機能を検査したところ、ほとんど変わらなかったという例があります。これは名古屋での例です。アメリカで、片方だけ黒いコンタクトを一日数時間付けて、何年間か、何人かに実験を行っています。そのあと網膜の機能を見たところほとんど変わらなかったという結果でした。私の経験でも、たまたま片方の眼しか手術をしなかった患者さんの視野の経過をみたところ、両眼でほとんど変らなかったということが数例あります。
今後も長期にわたって経過を追っていかなければいけないことですが、少なくとも現時点では、白内障の手術をして視機能にかなり利益があるだろうと判断した患者さんに関しては、積極的にやってもいいという方向になっています。医療機関によっては、網膜色素変性症の患者さんの白内障手術を敬遠します。昔の光が悪いという説を信じて、やりたくないと思っている先生もいらっしゃると思います。そういう場合は、こういう場を通じて情報を得て、千葉だったら山王病院とか千葉大学とかに来ていただいて、まず診察させていただいて、相談していただければ、われわれは一つひとつ手術すべきかどうか判断させていただきたいと思います。
白内障の手術が視機能にとって利益になると判断したときのみ手術を勧めます。やたらと手術をするわけではありません。それでも手術がイヤだと思われる方でも、白内障が進みますと水晶体が膨らんで、眼の中の水のまわりが悪くなって、緑内障になることもありますので、経過は診ておいた方がよろしいかと思います。
これまでの話ではまったく不足だと思われるでしょう。これから質問を受けてそれにできるだけ答えることによって不足を補いたいと思います。
Q:白内障の手術をどの時期にやるのがよいのですか。
A:日常生活や仕事を人の助けを借りないでなんとかやっていけているのであれば、まだ手術をやる必要はないと思います。では何年後に手術すればいいかというと、これは誰にもわかりません。本人が日常の生活で拡大鏡のような補助具を使ってもなんとも不便でしょうがなくなって、かつ先生が診断して、白内障の濁りが全体を覆って来てかなり不便しているだろうと判断した場合は、手術をする時期にきているといえます。ご自身の生活を中心に考えてください。
Q:父親が色変で、白内障の手術もしたが、最終的には失明した。自分も色変と診断され、現在50台半ばで夜は非常に不便になっているが、その他ではさほどの不便は感じていない。遺伝性の病気といわれているので、3人いる子供たちがどうなるか心配しているが、今のところ色変の兆候は現れていないようだ。自分と子供たちが将来どのようになるのでしょうか。近親結婚が原因といわれているが、私の場合はそうではないようです。
A:いとこ婚とかはとこ婚とか、近親の者同士、つまり近い遺伝子を持った者同士が結婚した場合は、遺伝子の悪いところを補い合えないので、遺伝性の病気が発現しやすいといえます。あなたの場合は、父親が色変であったということですから、優性遺伝の可能性が高いです。網膜色素変性症の原因遺伝子は現在20くらいわかっています。まだわかっていないものもあるので100%とはいえませんが、今なら遺伝子を調べれば、優性か劣性かの判断ができる可能性があります。優性遺伝は、劣性遺伝や伴性劣性遺伝と比べて、発症が遅く予後がそれほど悪くありません。では劣性や伴性が必ず悪くなるかというとそうではなく、個人差があります。子供さんが発症する可能性ですが、優性遺伝では理論的には50%発症します。母親が色変にまったく無縁とした場合、理論的に50%です。実際に発症するのは30%から40%です。息子さんたちが現在、夜が弱いとか、よくつまずくとかいうことであれば、網膜電図を測定すれば、色変かどうかの判定ができます。
余談ですが、患者自身は視野が狭いと気が付くことは少ないので、車の運転は非常に危険です。視野を計って、かなり狭いということがわかれば、車の運転は控えた方がよろしいです。
Q:治らない病気といわれて、長年見てもらっていない。
A:網膜色素変性症によって視力が下がっているのか、他の合併症があって視機能が下がっているのかということは、診てもらわないとわかりません。白内障とか緑内障はもちろんですが、神経の一部にへこみがあるとか、前房が浅いとか、そういうのはわれわれ眼科専門医でないと診られません。視野では、緑内障の末期の人と網膜色素変性症の人は同じくらいなので、視野だけでは緑内障と判断つきにくいため、そういうものは医療機関で診てもらわなければ治療できるものかどうかわかりません。白内障は手術適用があれば、治せるものです。
Q:治療法はどのくらいのところまで進歩したのですか。
A:チップを埋め込んで光がわかるということは実際に行われています。しかし、光はわかっても画像として捉えられる段階にはいたっていません。ES細胞による網膜の再生はアメリカで実験段階にきています。京都大学の本田先生はかなり期待できるというご意見です。この前新聞に載った記事は皆さんもご存知だと思いますが、数年前にはまだ無理だろうといわれていたことです。ただ、倫理的な問題があるのと、移植したときにどれだけ正常の網膜となるのか、画像として捉えられるのか、神経とどれぐらいうまくつながるのかなど、未知の問題がまだたくさんあります。しかしながら、確実に光が見える段階にきているといえます。
Q:6年前に両眼とも白内障の手術をした。直後は大変よく見えるようになったが、3ヵ月後にはほとんど中心が見えない状態になった。網脈らく膜炎という網膜の萎縮によるものと診断された。いま中心はまったく見えないが視野はあります。飲み薬と点眼は続けていますが、この先どうなるのでしょうか。まだ何か取れる処置はありませんか。
A:近視は強かったですか。(強かったです)。中心がやられてしまった場合、これが回復する見込みはありません。白内障の手術をした後、後発白内障が起こることがあります。手術したあと明るかったものが、だんだんかすんでくることがあります。先ほど言ったように、水晶体を饅頭に例えるとあんこを吸い出して皮を残します。色素変性症の方は、手術後炎症が続くことが多いのです。なぜ炎症を起こすのかということはよくわかっていません。後発白内障というのは、炎症によって皮の部分に残った細胞が活性化されて、白い膜を作るのです。手術後3年くらいのうちに、手術した人の70%くらいが大なり小なり後発白内障になります。もうひとつ前のう収縮といって、人口レンズを入れる袋の口が、炎症によって巾着袋の口を閉めたように、しわになってそこが白く濁ることがあります。従って、手術後も油断できません。後発白内障とか、前のう収縮とかのフォローを外来でしなければなりません。後発白内障もレーザー治療をしたらいい人としなくてもいい人がいます。レーザーでは濁った膜に穴をあけたり、巾着のしまった口を広げます。光を通るようにすることによって、視力を回復する事例が多いです。
手術のあと、網膜炎になったということですが、これが手術の影響でなったのか、本来起こるべくして起こったのかは、診察していないのでわかりませんが、手術との関連性は薄いと思います。近視が強いことから黄斑が変性しやすい眼だったのだと思います。中心は見えなくても、視野の中で見えやすい場所があると思います。そういうところでものを見る訓練が必要です。視線を固定しておいて、上下左右から光を目に当ててみてより明るく見えるところで物を見る訓練をするのです。こうして見えやすい視野を探し、拡大読書器を利用すれば、今より見えやすくなると思います。
Q:漢方薬は網膜色素変性症や白内障に効果がありますか。
A:患者さんの中には漢方薬を飲んで元気になって眼にも良いように思うという人もいます。漢方薬も副作用がありますので、漢方の専門医によく効能を聞いて処方していただいたほうがいいと思います。
ルテインという薬がありますが、ルテインは会員を募って飲まれている方も結構いらっしゃいますが、機序からいうと網膜色素変性症にあまり効果はないだろうといえます。加齢性黄斑変性症には多少とも効果があるといわれていて、アメリカではずいぶん売られています。網膜色素変性症に関しては、どうでしょうか、疑問ですという答えしかしておりません。
Q:ルテインを飲んで網膜色素変性症がずいぶんよくなったという人がいて、私にも勧めるのですが、それはどの程度に受け止めればよいですか。
A:ルテインに関しては、文献などで効果が立証されていません。ルテインは新しい薬なので、これから試されてよい結果が報告され、あるいは厚生労働省が保険適用を認めるということになれば、私も手の平を返したように、皆さんに薦めることになるかもしれません。現段階では、否定もできないし、肯定もできません。
Q:カルナクリンについて教えてください。
A:カルナクリンという薬は末梢の血液の循環をよくする薬です。血管の詰まった病気とか、高血圧とか、更年期障害に使われます。機序からいうと、末梢の非常に細い血管を拡張させます。ご存知のように、網膜色素変性症では、血管が非常に細くなって血流が悪くなるので、血液の循環をよくする内服薬として、効くだろうとの期待をもってお出ししています。ただ、アダプチノールもそうなのですが、劇的に効くというわけではありません。厚生労働省が認めている薬の中では、何とか効くのではないか、進行を遅らせるのではないか、ということで出しています。飲んでいる方もいらっしゃれば、辞退する方もいらっしゃいます。個々に相談していただいて、飲むか飲まないかを判断していただきたいと思います。
Q:普通の白内障の手術と網膜色素変性症の白内障の手術の違いについて教えてください。
A:網膜色素変性症の患者の水晶体を支えているチン氏帯は非常に弱いのです。ぐらぐらするので、かなり難しい手術です。普通の方と違って、気を使わなければいけませんし、いろいろ細工をしなければなりません。例えば、あんこを取り出すために水晶体の皮を円く切るのですが、あとで人工レンズを入れるためには、この穴は大きすぎても、小さすぎてもだめです。このような細かい気遣いが必要です。それでも全国的には、白内障の手術はやるべきだという方向にあるといえます。
Q:遺伝子治療についてわかりやすく教えてください。
A:遺伝子治療というのは非常に複雑で、私がコメントすべきではないので、回答は控えさせてください。九州大学の池田先生が詳しいです。
Q:劣性遺伝について教えてください。
A:優性遺伝というのは、親子代々伝わる遺伝です。理論的には両親からもらう遺伝子の中に原因遺伝子が1本入っていれば発症します。これに対して、劣性遺伝というのは、両親から原因遺伝子が二つ揃って伝わったときに発症します。一つだけでは発症しにくいです。
弧発例というのもあります。近親にまったく網膜色素変性症の人がいないのに、いとこ婚やはとこ婚でぽんと患者が出る例です。これも本当は劣性遺伝ではないかといわれています。こういう場合は遺伝子検査をするのが早道です。家系調査といっても、詳しく調べるのはかなり困難だからです。千葉大学でも遺伝子の検索をしています。採血を2本して、それを専門の施設に送ります。すでにわかっている遺伝子に当てはまれば、あなたはこうですといえるのですが、当てはまらない場合は、今回は遺伝子の異常はわかりませんでしたということになります。遺伝子がわかっても、今はまだ治療法がありませんが、調べておけば、治療法ができたときに、すぐ手を打てることになります。
Q:保因者について教えてください。
A:保因者は発症していないので、網膜色素変性症の検査を受けに眼科に来ることがありません。あなたの家系に発症した人がいて、あなたが遺伝子検査を受ければ、保因者かどうかわかることもあります。
Q:網膜色素変性症が発症する前兆のようなものはありますか。
A:やはり夜盲です。それから視力低下。視野が欠けるということはあっても、自分で日ごろ調べるというのは難しいですから、わからないでしょう。物につまずいたり、周囲からあなたよく見えていないのではないの、と指摘されて、気が付くというのが普通です。
典型的な網膜色素変性症では、周辺部にある光を感じる細胞からやられてきます。この光を感じる細胞によって暗いところにだんだんなれてきて見えるようになります。この細胞がやられているからいつまでたっても見えない、これが夜盲です。
外来をやっていると、光が当たると目が痛いとか、まぶしくってまったく見えないという方がいらっしゃいます。だから、それも自覚症状としてあっていいと思います。ただ、健常者でも急に明るいところに出ると虹彩がきゅっと縮みます。すると目が痛いです。光がまぶしいとか、ひどく弱くなったということも自覚症状の一つと考えていいと思います。だから、身近にそういう訴えをする人がいましたら、いろいろな目の病気があるらしいから、一度眼科で診てもらったら、と勧めてみてください。
網膜色素変性症で失明する人はアメリカでは200人に一人といわれています。統計では千葉大学で256人にひとりです。年齢が高くなるにしたがって、視神経の萎縮なども起こりますから、色素変性症だけで失明する人もいれば、そうでない人もいます。失明するまでにはいろいろやることもあるし、受け入れる時間もあります。その間に白内障とか他の合併症もありますから、あきらめずに年に1回や2回は眼科の診察を受けるようにしてください。今の状態はどうなのか、今後どうなるのか、子供はどうなるのか、結婚はどうか、などなど相談に乗りますので、千葉大学の眼科にきてください。
あらかじめ寄せられた質問に先生から回答をいただきました。
Q:私は、平成8年9月に埼玉県春日部市内の眼科で網膜色素変性症であることを知りました。平成11年7月、所沢市の国立身体障害者リハビリテーションセンター病院で、白内障手術(両眼)をしました。平成12年4月、後発白内障の手術(レーザー)を左眼だけしました。
今は両眼とも薄ぼんやりとしか見えません。街中の景色が白く見えて来ます。眼を他の物に移すと一瞬ですが白くはなりませんが、暫くするとまた白く見えます。
もう一度、眼内レンズを入れ替える事ができますか? 14年3月に診察を受けましたが、先生は「眼内レンズは綺麗に入っている」とのことです。約1年は診察に行っておりません。
A:眼内レンズは入れ替えることは不可能でないにしろ、入れ替える適応があるか否かが問題です。1年も経っているのであれば、一度診察してもらってください。
Q:(1)術後視力の予測は可能ですか。
A:視神経や網膜に病気のない方に比べると、正確な視力予測は難しいです。
Q:(2)RP合併の白内障は老人性白内障に比べて後発白内障が起こる確率は高いのですか。
A:2〜3倍高いです。
Q:(3)一週間残像が残る程、強い手術鏡で網膜にダメージは与えられないですか。
A:全くないとはいえませんが、術者も必要最小限の光で手術させていただいています。