☆風の音 花の香 陽の光(かぜのおと はなのか ひのひかり)D
千葉在住の会員KHさんの俳句集『谺』(こだま:H14.3月上梓)の中から、
毎回季節に合わせて3句位づつご紹介しています。
今号もKHさんの十七文字の世界を皆様とご一緒に旅して行くのは、SI(千葉市
在住、夫MIがRP)です。どうぞよろしく!
*寒林に火を育てゐる杣の昼(かんりんに ひをそだている そまのひる)
*斧谺礫のごとく日短(よきこだま つぶてのごとく ひ-みじか)
*柿一顆載せ濡れ縁の置手紙(かきいっか のせぬれえんの おきてがみ)
*誰ぞ来し三和土の冬至南瓜かな(だれぞきし たたきの とうじかぼちゃかな)
〔注〕 杣(ソマ:きこり) 斧(ヨキ:おの)
顆(カ:丸いものを数える語)
第1・2句:
寒林(カンリン)。冬枯れの林のキーンと冷えた大気の中、ポッと灯る暖かい火の色。
その温もりと杣人(ソマビト:きこり)のくつろぐ姿が浮かび上がります。焚き火の火
(タキビのヒ)を“育てゐる”とした所がすてきですね。
弁当を使い終わって、仕事に精を出す短い冬の午後。静謐な空気の間を縫って、斧の音が
礫のように響いて寒林(カンリン)の寒空(サムゾラ)に谺します。斧を表す“ヨキ”の読
み方が、“善き”(ゼンアクのゼン)に通じ、心の深い部分に、カーンと“善き谺”が響い
てくるような一句です。
第3・4句:
濡れ縁(ヌレエン)・三和土(タタキ)と共に、このようなお付き合いもなくなりつつあ
るのでしょうか。ところがどっこい。筆者は西洋長屋の8階の住人ですが、「ドアノブに柚子
の入った レジ袋」なんてことが、時々おこります。まだまだ、捨てたものでもありません。
“南瓜と柚子湯”の冬至も。
もうすぐ。また新しい年が巡って来ます。濡れ縁(ヌレエン)が無くなっても三和土(タ
タキ)が消えても、人の心を繋ぐ良い習慣は次代に伝えて行きたいものですね。
それでは皆さま次回までごきげんよう。この欄へのお便り、KHさん共々お待ちしています。(SI)