あぁるぴぃ千葉県支部だより31号


■投稿■

☆風の音 花の香 陽の光(かぜのおと はなのか ひのひかり)I
 千葉在住の会員KHさんの俳句集『谺』(こだま:H14.3月上梓)の中から、 毎回季節に合わせて3句位づつご紹介しています。
 今号もKHさんの十七文字の世界を皆様とご一緒に旅して行くのは、SI(千葉市 在住、夫MIがRP)です。どうぞよろしく!

*鳶職の斜め十字の背の日焼(とびしょくの ななめじゅうじの せのひやけ)
 注;鳶職(トビショク;土木・建築工事の仕事師。特に高い足場の上で仕事をする人)
*母の背に祭り法被の嬰の睡り(ははのせに まつりはっぴの このねむり)
 注;嬰(コ;幼子) 睡り(ネムリ:睡眠の睡の字のねむり)
*夕凪の磯に紅緒の流れ下駄(ゆうなぎの いそにべにおの ながれげた)
*草庵の土間新涼の白緒下駄(そうあんの どましんりょうの しろおげた)
 注:草庵(ソウアン:草ぶきの庵。粗末な家)
   新涼(シンリョウ:秋の初めの涼気。秋涼:シュウリョウ)

 第1句:今年の夏は、殊の外暑かったですね。日焼けと無縁のクーラー暮らしの方が多かっ たのではないでしょうか。鳶のいなせなお兄さんの良く焼けた背中、襷がけ跡の×印(カケジル シ)を“斜め十字”と見たのが新鮮な一句です。
 第2句:こちらの背中には幼子(オサナゴ)が眠っています。一人前に可愛いお祭りの法被 を着て、はしゃいでいたのでしょう。疲れて眠った母の背中。母の匂い、嬰(コ)の重み。 母子(オヤコ)両方にとっての遠い夏の日の記憶。微かに聞こえる祭囃子の音色と共に。
 第3・4句:夏の終わりと秋の気配を紅緒と白緒の下駄に感じました。青春・朱夏・白秋・玄冬 (セイシュン・シュカ・ハクシュウ・ゲントウ)と古代中国の五行説でそれぞれの季節に各色を当 てていますが、まさに紅い夏(アカイナツ)、白い秋。ちょっぴり淋しい夏の夕暮れに流れ着いた 紅緒のかっこ(注:赤い鼻緒の駒下駄)。陸風と海風の交替時の凪いだ海面に漂う晩夏(バンカ) の風情。方や、涼風(スズカゼ)の立つ草庵の土間に、きりりと揃えてある男下駄。鼻緒の白さが まぶしく、戸外の空の青さ高さ広さまで感じられるようです。“秋来ぬと目にはさやかに見えねど も・・・”ですね。

 それでは皆様次回までごきげんよう。この欄へのお便りをKHさん共々お待ちしています。(SI)


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