あぁるぴぃ千葉県支部だより35号


■特集 第1回ロービジョンケア千葉講演会■

★「ロービジョンケアの実際」
講師 高相道彦先生(千葉県千葉リハビリテーションセンター眼科部長)
司会 千葉次郎先生(千葉市眼科医会会長)

千葉先生
 それでは2席目の講演に入らせていただきます。2席目は本日の講演会で会長をお 努めくださっている高相先生です。「ロービジョンケアの実際」というタイトルでお 話をいただくのですが、高相先生につきまして簡単にご略歴をご紹介させていただき ます。昭和61年に国立浜松医科大学を卒業されて、そのまま千葉大学の眼科に入局 されております。その後千葉大学の眼科の関連病院、亀田総合病院ですとか、磯辺先 生のいらっしゃる千葉県こども病院とか、国立千葉病院とか国保の成東病院、いろん なところに籍をおかれて、研鑚されました。平成6年の4月に現在の千葉県千葉リハ ビリテーションセンターの眼科の部長になられて、もう11年になるのでしょうか、 ご活躍をされています。この間、勉強されまして、平成9年に視神経炎の診断につき ましての視覚誘発電位の研究で学位をお取りになっておられます。それでは「ロービ ジョンケアの実際」ということで講演をいただきたいと思います。よろしくお願いし ます。

高相先生
 どうもありがとうございました。
 今回演題としまして「ロービジョンケアの実際」ということでお話させていただき ます。実際と言いましてもかなり広い範囲にわたってしまいますので、この短い時間 ですべてお話するのは無理があるかと思います。話の内容としましては、ロービジョ ンケアをあまり知らない方と実際対応されるお医者さん向けと言うような筋で行きた いと思います。判りやすい部分があったり判りにくい部分があったりと混じってしま いますけれども、よろしくお願いします。
 先ほど磯辺先生の方からお話がありましてダブってしまいますけれども、「ロービ ジョンケアとは」ということですが、まず「ロービジョン」というところで分けてみ ますと、そのまま訳しますと「低視力」ということになります。実際のところまだ はっきりとした定義はございませんが、日常生活で視覚的に不自由を感じる状態、こ れがロービジョンと言って良いかと思います。「ロービジョンケア」とは、ロービ ジョン者の保有視覚をフルに活用してQOL、生活の質を高めるための種々のケアを まとめたものを指しております。
 ロービジョンで何が困るかというと、読み書き、歩行行動、日常生活行動、就学就 労、そして実際の家庭生活と困ることがいっぱいあるかと思います。これらに対し て、医者がすべて責任を持って対応するということは、あまり賢くないわれわれ医師 にとってはちょっと無理があります。これらをまとめてケアをするのがロービジョン ケアでありますけれども、実際に行なっていくに当たっては、読み書きのことに関し ましては視覚補助具の選定という点で視能訓練士の力が必要になるかと思いますし、 歩行行動に関しては歩行訓練士の力が必要になります。就学に関しましては教育委員 会や盲学校との連携が必要になってきます。就労に関しますとどうしてもケースワー カーまたは職業訓練校への紹介等も必要なことが出てくると思われます。私は個人的 に心理的な部分が大事だと思っているのですけれども、日本ではまだまだ認知度が低 いような気がするのですが、カウンセラーというのも必要な方が結構多いのではない かと思っております。私は自ら外来の患者さんでトライしたことがあるのですが、や はり医療関係者にはカウンセラーはできないなということを痛感いたしました。です からやはり専門職が必要かなということです。これらいろんな方々の力の上でできあ がっていくわけですけれども、眼科医はその中で指揮者であるべきである、と言って 良いかと思います。ただ、指揮者と言っても単に棒を振っていれば良いというもので はないので、当然それぞれのパートの中身をある程度把握しておく必要はあるかと思 います。
 今回の話の中心は主にロービジョンケアの出発点と言ってもいい、保有視覚をいか に有効に使うかという点をメインにしたいと思います。その中で視覚補助具について 実際的な部分を含めてお話していきたいと思います。視力が悪いのであれば、要は見 るものを大きくする、またはできるだけ見やすくする、というものが視覚補助具で す。種類として大きく分けると光学的な補助具と非光学的補助具があります。一つの 眼鏡で何とかならないかとおっしゃってくる患者さんがよくいらっしゃるのですが、 残念ながら見える対象に応じていくつか持たざるを得ないということが往々にしてあ ります。
 視覚補助具を処方していく上でいくつか必要な検査があります。まずはじめに病歴 の聴取、二番目として当然ですが視力検査、三番目は屈折状態がどうか、近視・乱視 などがどうなっているか、ということです。四番目に視野、周辺部が欠けているの か、そういったことを判断していきます。最初の病歴の聴取ですが、まず疾患名で す。その次に重要なのが患者さんの病気に対する理解がどうなっているか、かつ先ほ ど言った精神的な部分として、障害の受容がどうなっているか、どの状態に今いるの かということを、ある程度察知するというか見極めることができるかどうかで、こち らの対応もうまくいったりいかなかったりします。
 ここで障害の受容に関してお話したいと思います。受容とは何かということです が、受容はあきらめとか居直りとは違います。今ある状態のままでいい、それ以上に 向上しようとか、生活を改善しようとかいう気がまったくなくなってしまっている状 態、そういったあきらめとか居直りではないということです。何よりも障害に対する 価値観を転換していかなければいけない。障害があるからといって別に人間の価値が 低下するわけではないのだ。そういう認識をしっかり持った上で、恥の意識や劣等感 を克服して、より生活を良くしていこうという、そういう態度に転ずる状態を障害の 受容といいます。
 受容に至るまでの段階がいくつかあるといわれており、それには諸説あります。そ れらにはある共通点があります。その代表例で、まずショック期です。これは障害を 受けた直後の状態ですので、どちらかというと呆然としている状態で、心は平穏で す。かつ対人関係も障害を受ける前とまったく変わらない状態です。その次が否認期 です。こんなはずではない、うそだろう、ということで、迷信を信じたりまたは明日 になったら治るのじゃないかと思ってみたり。中にはいわゆる病院巡りをしてしまう 状態です。このときの対人関係というのは、障害者と同一に見られることを非常に悪 く思うし、健常者に対しての嫉妬があります。ここで大事なのはこの時期に下手な助 言をしますと、逆にかえってそれが仇になったりして、下手な助言は意味がないとい うことになります。その次に来るのが混乱期です。現実を認識するようになり、困っ ている状態になります。この状態になりますと、人間は攻撃的になるといわれており まして、外向的な方であればいわゆる治療不信、病院不信という形であらわれるかと 思いますし、内向的になればいわゆる憂鬱・抑鬱状態または自殺企図という方向に向 かっていってしまいます。
 その次が解決への努力期です。障害をもってある程度時間がたって、その間にいろ んなことをやってくると思いますので、それによって日常生活行動が多少改善してく る。すると多少希望を持ち始めるというところとあいまって、何とか受容の方向に向 かってきます。この頃になりますと、障害者に対しては同胞意識を持つようになりま すが、残念ながら健常者に対してはまだ嫉妬心が強い状態です。この頃になりますと 今度は家族も含めた受容が必要な時期かと思います。その次がやっと受容期になりま す。この段階をある程度見極めることが、症例によっては必要だと思います。慢性に 経過される患者さんの場合はいいのかもしれませんが、急性に発症された方または予 後不良の疾患の診断を言われた方は、どの段階にあるのかということを見ていく必要 があると思っております。
 話が戻りますが、病歴の聴取としまして三番目の患者さんのニーズです。先ほど小 児の方でニーズについてお話があり、何が必要なのか判らないということですが、大 人に関しても何が必要か判らないというよりも、むしろわれわれ医師の方から、例え ば「新聞読める?」とか、そういった一言がないとなかなか出てきません。私のとこ ろに紹介されてくる患者さんは、結構市販のルーペをお買い求めになっているので す。それだけ苦慮されているのですけれども、忙しい診療の中ではなかなかそこまで 目が行かないかと思いますが、一言普段の生活状況を聞くということで、ニーズを汲 み上げてあげる必要があるかと思います。
 次に視力検査です。基本的には通常のつながった視力表ではなくて単独表でまず検 査をします。ロービジョンの方はどうしても明るさに非常に敏感ですので、明るさに 注意します。最近は視力の細かい評価のためにログマール視力が言われております。 普通の眼科では、30センチの距離ではどうかということで見てしまうと思います が、そうではなくてどこまで近づければどれだけ見えるかという、最大視認力を測定 することが、のちのちの処方にあたっても大事かと思います。何よりも大事なこと は、通常の忙しい診療の中での視力検査ではなくて、ゆっくり時間を掛けて根気よ く、ということがいちばん大事なことかと思います。
 次に屈折検査です。当たり前のことですが、屈折異常が強い場合には、積極的に矯 正する必要があります。補助具使用の際にボケた画像のままですと、予定の倍率が得 られないことがありますし、0.1が0.2になるだけでも補助具の倍率は大きく異 なってきますので、少しでも輪郭がはっきりするようであれば、屈折異常は積極的に 矯正する必要があるかと思います。中心部が障害されるような疾患の場合には、偏心 固視している患者さんもいらっしゃいますので、そういった場合にはオートレフより は自覚的な屈折検査、レンズを入れてクロスシリンダーを使いながら、自覚的に検査 をしていくことが有用なこともあります。
 次に視野検査です。中心視野異常なのか周辺視野異常なのかによって、日常行動が どうなのかということが判断されます。中心部を見たいのであれば静的視野、周辺部 の状態を見たいのであればゴールドマン視野で良いかと思います。
 実際の選定の方法です。必要倍率はどの程度のものかという計算式ですが、あくま でも目安です。必要とされる視力、ここでは0.5と書いてあります。読むもの、新 聞と文庫本で違ってくると思います。それを単純に持っていらっしゃる視力で割った 値、それが倍率です。例としまして、裸眼視力が0.05で眼鏡を掛ければ0.1にな るという方に対して、矯正した状態であれば5倍の倍率のものですむわけですが、裸 眼の状態ですと10倍になります。そうすると一挙に視野が狭くなってしまいます。 ですからやはり積極的な屈折矯正は重要ではないかと思います。
 これが有効視野のお話です。これが視野だと思ってください。いま4文字見えてお ります。これが拡大を大きくしますと2文字になります。当たり前のことですけれど も見える範囲が狭くなってしまいます。1字ずつ読んでいる状態ですとたいへんまど ろっこしくなります。2字ずつでも多少は1字ずつよりよくなります。われわれは文 を読むにあたって何気なく先を見ながら読み進めているので、ひとつの視野にできる だけ多くの字数が入ることが読み進む上では大きなポイントになります。理想としま しては3、4文字入ってくれれば読むのにそんなに疲れずにいけると言われておりま す。
 これをグラフ化したものです。縦軸に読み速度、横軸に文字サイズを取ります。こ の点が読むにあたってのぎりぎりのサイズです。判読するのに時間が掛かりますので 読み速度は遅いです。文字サイズを大きくすると読み速度は上がってくるのですけれ ども、ある程度以上になりますと、今度はフラットになってあまり変わらなくなりま す。ちょうど良いところを見つけてあげることが必要です。
 補助具には実際どういった物があるかということですが、これが手持ちのライト ルーペです。最近はLEDのライトになりまして、たいへん見やすくなっています。 これがスタンド型です。ライトがつきます。このタイプではまだLEDが出てきてい ませんので、昔の豆電球がついています。電力消費が多くて電池が長持ちしません。 先ほどの手持ちルーペですと一定の距離を保持しないといけないという点で困難があ ります。スタンド型ですと一定の距離が保たれる状態になります。小児にはこちらの 方が向いていると思われますし、お年寄りの方でも焦点距離を維持するのは困難です から、こちらの方が向いています。
 もっと簡単なのがこのスタンプルーペです。底面が平らで、上面が球面になってい ます。これをベタッと本あるいは新聞にくっつけて読みます。新聞など平面の部分を 読むにはいいのですが、本の曲がっている部分を読むには少しつらいものがありま す。こちらはグラスファイバーをたくさん束ねて作ったルーペです。そんなに高倍率 を必要としなければ、ただ覗けばいいので、お子さまとかお年寄りではじめてこうい うものを使う方には便利だと思います。お子さまは特にこういうものから入っていか ないと無理があるとの感触を持っています。
 ルーペを処方する点で注意することですが、メーカーによって倍率表示が異なるの で注意が必要です。手持ちルーペの場合、ルーペの焦点距離に物体を保持する必要が あるので、ちょっと難しいものがあります。このとき矯正眼鏡は遠用眼鏡で見てもら うことになります。スタンド式ルーペの場合には直接見るか近用眼鏡が必要です。い ま日本にあるスタンドルーペはヨーロッパ製のものが多いのですが、あちらでは基本 的に近用眼鏡を掛けた上で使うというのが一般的らしくて、それに応じた設定になっ ているそうです。
 こちらはいわゆる弱視眼鏡と言われるものです。掛け眼鏡式を希望されることが多 いのですが、これを眼鏡枠にはめ込みます。これは主鏡でこのままですと2.2倍の 拡大で、それにこういう近用のキャップを付けることで倍率を上げていくというもの です。いかんせんちょっと飛び出ていることと重いという欠点があります。かつ ちょっと値段が高い。私は値段が高いものですからあまりお薦めしておりません。
 掛け眼鏡式を希望される方に意外と便利なのが、拡大を目的とした眼鏡処方で、私 は頻繁に利用しております。要するにルーペを眼の方に掛けてしまおうというもので す。この理屈は近づけて見るのと同じです。近づいて見るにあたってお子さんの場合 は充分調節力があるので、どんなに近づいても平気な顔をしてピントを合わせてしま いますが、大人の方はそうはいきませんので、その分を眼鏡でより近くにピントを合 わせてあげようという発想です。遠視や近視のない人に対して8Dを装用した場合に は焦点距離は12.5センチになりますので、通常25センチの距離を標準の距離と しますので、相対的に半分になっています。従って、拡大倍率としては2倍になりま す。これは普通のクリニックでも意外と簡単にできると思います。
 軽度の拡大であれば、いわゆる遠近両用の、二重焦点の、下の部分にハイパワーを 入れてしまえばよいのですが、残念ながら下の小玉に入れる度数としては、上の遠用 に対して+5Dまでが限界ですので、ある程度の拡大までは何とかなります。近視の 方では有効になってくるかと思っております。両眼の視力があまり変わらない程度に 出ていて、かつ両眼視ができる人の場合には、近くを見るときには眼を寄せなければ いけませんので、その分をアシストしてあげるようなプリズムを入れてあげると見や すくなり、かつ両眼視もできやすくなります。その際には光学中心、レンズ中心と眼 の中心の関係をよく注意する必要があります。
 これは製品化されているものです。スウェーデン製でしたか。マルチレンズという 登録商標です。正面から見れば普通の眼鏡ですが、断面を見ますと内側が厚くなって おります。プリズムが入っているためです。こんなに厚いと重いと思いがちですが、 この会社のこのレンズは結構軽くて便利かなと思います。
 次に遠見用の補助具です。選定の仕方は近見用と同じです。必要な倍率は近見用と 同じ計算式を使います。やはり有効視野を考慮して低倍率から試用していきます。や はり拡大倍率を大きくしてしまいますと、見たいものに焦点を当てること自体が困難 になってしまいますので、できれば低倍から利用されるのがいいと思います。視力の 左右差がなければ双眼鏡、左右差があれば単眼鏡を使います。ロービジョンの方は左 右差があることが多いので、単眼鏡の処方の方が多くなります。こちらが単眼鏡で、 あまりにも有名です。
 次に遮光眼鏡です。経験なさっている方が多いと思いますが、ロービジョン者では まぶしさを感じている方が少なくありません。そういう方に対して、まぶしさの原因 になる短波長の光をカットしてあげる目的で遮光眼鏡は有用です。それによって見る もののコントラストが上がりますし、明るいところから暗いところに行ったときの暗 順応も改善すると言われております。これは昔からあったHOYAのレンズです。昔は網 膜色素変性の進行予防ということが言われましたけれども、今ではこうしたロービ ジョンに使用するものといっても過言ではないと思います。もうちょっと光線のカッ ト率を下げると、このような淡いやさしい色合いのものもできてきております。今お 示ししたのはクリップオンタイプで眼鏡の上から挟み込むものですが、度付のレンズ も可能です。
 次に非光学的補助具です。何よりもいちばん大事なのは照明です。明るさを十分注 意してもらうことが必要になります。先ほどお示ししたルーペなどは特に顔を近づけ て見るようになりますので、見たいところが暗くなりがちです。スタンドルーペなど も暗くなるとかなり見づらくなります。明るさとその光の方向には十分注意する必要 があります。
 次はいろんな道具、いわゆる便利グッズを利用することです。拡大コピーもその一 つです。これは見たい部分だけを出すような手作りの紙の黒い枠です。実際にこれは はがき用とか封筒用といった市販品もあります。次に書見台です。ルーペを使われる ときには、かなり目を近づけなければなりませんので、姿勢が苦しくなります。こう いった台を使うことで多少なりとも姿勢が楽になります。角度が一定であれば日曜大 工でもできそうなものですが、一応市販されております。
 次はあまりにも有名な拡大読書器です。こちらは通常の据え置き型、こちらはス キャナタイプというか、これを見たいところに沿って動かすことで拡大されます。こ ちらでも可能だと思いますが、こちらのアダプタをつければ、文字を書くことも可能 になります。ただ実際にやってみると判りますが、この下で字を書くということは一 般の方には難しいものがあるかと思います。我われ眼科医は顕微鏡を覗いて手術する ということに慣れておりますので、何気なくできてしまうのですが、実際にそういう 経験のない方はこの下で書けるようになるにはちょっと時間が掛かると思います。表 示の仕方としては白黒反転ができますし、見たいところだけ浮き立たせるようなマス キング機能が付いているものもあります。最近拡大読書器自体がいろんな会社から出 るようになりまして、携帯型もあちこちから出てきています。これは大体5倍くらい の拡大です。大きさ的にはちょうど男性の背広の内ポケットに入るくらいです。こち らもこのカメラ部分を回転させることで、この下で書くことが可能と宣伝されており ます。うちの施設にはまだありませんので、患者さんが使われた感想はよくわかりま せん。
 これは拡大読書器とはちょっと違うのかもしれませんが、数年前にアイファインと いう名で出ましたビデオカメラのレンズ部分だけを持ってきたタイプで、オート フォーカスになっています。通常のレンズを通してかつそれがオートフォーカシング して見ることができます。これもちょっと高いかなということとかつ今手に入りにく いそうです。お子さまが授業を受けるときには、遠くを見たり近くを見たりするの で、結構使えるかと思っていますが、まだ試したことはありません。
 ロービジョンの方が買うといちばん便利と思われるのがパソコンだろうと思いま す。いろんな職業訓練という意味でもパソコンが使えるかどうかは大きなポイントに なると思います。いろんなソフトが出ています。最近は結構使いやすくなってきてい ると思います。音声認識ソフトの正確性が上がっているとも聞いております。
 ロービジョンの最後の方なのですが、視野障害です。これが一番問題が大きくて一 番時間が掛かります。これまでのものは補助具がぽんとうまく合えば非常に生活しや すくなるのですが、視野障害に対しては決定的なものが残念ながらございません。逆 単眼鏡というのは、子供のころに望遠鏡を逆さまにして物を小さくして見たことが あったと思いますが、単眼鏡を逆さまにして見る方法です。視野は広がるのですが、 対象物自体は小さく見えてしまいますので、視力が一緒に下がっている方にはつらい と思いますし、実際にそれを覗きながら歩くことは不可能ですので、日常生活での利 用はちょっと考えものだと思います。
 次にフレンネルの膜プリズムを眼鏡に貼って、視野の欠けた部分にプリズムを貼る ことによって、視線を軽く動かすだけで視野の欠けている部分にある物体に気がつき やすくなるというものです。手持ち式の凹レンズも視野としては大きくなるのです が、対象物を小さくしますので、ちょっと厳しいです。
 実際に視野を拡大することは不可能ですので、その残っている視野をいかに有効に 使うかという点で、むしろ視線をどう動かすか、眼球運動をいかに上手にするか、と いうのが大きなポイントになります。どうしても受傷直後の人たちは、見ているもの から視線を動かしたがらない、または顔ごと動かして物を見る傾向があると思います が、そうではなく、眼球をうまく動かせばかなりの範囲をうまくスキャンできるとい うことを習得していくことが必要です。これにはやはり時間が掛かると思います。
 話が飛びますが、お医者さん側に特に判っておいてほしいのですが、中途障害の場 合、就労が特に問題になることがあります。病気だけを見ていると病気がどうなった 視力がどうなったということだけが問題になりますが、患者さんは実際には仕事で 困っている、実際辞めるしかなくなってしまっている、という状態に陥ったりしま す。基本的にはいま1回退職してしまいますと再就職というのは厳しい状態ですか ら、できる限り就労の継続に持っていくというのが必要です。お医者さんの側からす ると、いまの職の状況をよく把握してあげる必要があると思います。場合によっては 療養休暇などを取りながら、補助具を使ったり職業訓練したりして、何とか現職を継 続または配置転換が可能であればそうする。ここではお医者さんから会社の方へのご 理解を求める意味でのいろんな面接が必要になったりすることがあると思います。1 回退職してしまいますと、再就職はうまくいかない現状ですが、身体障害者雇用促進 法を利用した再就職という手段もあります。三療はよく言われますが、ここに晴眼者 がかなり進出しているということで、難しくなっているそうです。先ほどパソコンの 利用といいましたけれども、何よりもOA機器の訓練をされることが、再就職の道を 広げるという意味合いもあります。それにより、視覚障害者の方が以前よりも幅広い 分野に就職されているというふうに聞いております。
 実際いくつかの症例というか、このような人にこのような補助具を紹介したという 例をお話します。本当は、いちばん判りやすいのは、これぐらいの視力の患者さんで こういう疾患にはこれが良いよというのがあればいいのですが、なかなかそういうパ ターン化したものはございません。本当にケース・バイ・ケースで対応していく必要 があると思います。最初は69歳の女性の方で、診断は黄斑変性、かつ白内障があ り、高度近視もあります。白内障があるのですが「黄斑変性があるためにあまり視力 が出ないかもしれないよ」と言われていたものですから、患者さんが手術を希望され ておりませんでした。けれどもとにかく本が読みたいということで当科にいらっしゃ いました。紹介状の視力を見てみますと、右が0.01で矯正が0.03、左が矯正で 0.05、結構厳しいかなと思っておりました。当科で改めて検査してみますと、か なりの高度近視で、実際時間を掛けて視力検査をしましたところ、0.3前後まで視 力が出ました。通常眼科医であればご存知だと思いますが、こんな眼鏡を掛けていら れるわけがないだろうと思われると思います。私もそう思いました。試しに近くがと りあえず見えるようになればよいだろうと思って、近くにピントが合う程度に落とし て眼鏡を掛けていただきましたところ、意外や意外非常にグッドに掛けていられて 「疲れも何も感じない」と本人は言って掛けておりました。視力はちょっと下がりま すが0.2、近づければ0.7くらいまでは判読可能となりました。これで処方いたし ましたところ、再来のときには遠見は0.3ずつくらい出ていまして、近見も結構近 づければ細かいものまで判別可能となりました。ですからこの方はこの眼鏡で遠近両 用として家事まで何でもできるとたいへん喜んでおられました。
 次は51歳の女性の方です。こちらも黄斑変性ということで、ニーズとしては近用 の補助具がほしい、こちらは両眼の視力が同じくらいで0.1ずつ、矯正は残念なが ら不能でした。普段まだバリバリ働いていらっしゃる方で、会議の際の読み書きが不 自由だということです。普段は眼科で処方されたのではなく、通販などでよく出てい る頭にかぶる額帯鏡、眼科医としてはちょっとなさけないのですが、使っている方が 結構いるのですが、それを掛けて家ではやっているのです。会議ではもちろんこれを 掛ける訳にはいかないので、近く用の眼鏡がほしいということでお出でになりまし た。読み書きがありますのでフリーハンドがいいということで、掛け眼鏡式のものが いいだろうということで、とりあえず調べてみると、左眼が優位眼でしたので左眼に 弱視眼鏡、先ほどお見せしました主鏡が2.2倍で近用キャップをつけるというタイ プと、ハイパワーの拡大鏡ということでこういう眼鏡を試しにお貸しいたしました。 そうしますと、両眼がある程度視力が出ておりますので、ハイパワーの方が視野が広 がって見やすくなるということで、こちらの処方になりました。やはり両眼の視力が ある程度同じ方の場合には両眼にうまく合わせてあげることが必要かと思います。
 次は60歳の女性です。これはかなり厳しい症例でした。網脈絡膜萎縮と視神経萎 縮があって、以前に一度おこしいただいておりまして、いろんなものを処方しており ます。視力は右が光覚なしで左が0.03。これだけ見るとたいへん厳しいととりあ えず思ってしまうのですが、かつ視野がたいへん狭くなっていました。中心部はこれ ぐらいしか残っていません。どうなのかなという感じでやってみましたところ、意外 になんと7倍でとりあえず読めるとおっしゃっておりました。単純計算するとちょっ と厳しいはずですが、倍率を計算する式はあくまで目安ですので、それ前後で考えて いく必要があります。この方もお友達が眼鏡式のを作ったということで「私もほし い」というお話でしたので、さすがに難しいかなと思いながら、ぎりぎりのところで 処方してみましたところ、縦に並んでいる字は読めないのだけれども、横にすれば何 とか読み進むことができるということです。横の方向に視野の広がりがありますの で、そこを使って読み進めるということだと思います。
 これまで非常にいい例ばっかりですが、ロービジョンクリニックをやっていく上で いちばん大事なことは、本人が何とかしようと思っているかどうか、かつ見たい、あ れをしたい、これをやりたいという意欲がどれだけあるか、ということがいちばんう まくいくかどうかのポイントかと思います。リハビリテーションのほかの分野でもそ うです。本人がやる気がなければ、歩行訓練もままならないですし、車椅子での移動 も不可能です。本人がやる気があるかどうかというのが大きなポイントかと思いま す。
 この方は70歳の高齢で、とにかく見える眼鏡がほしいといってきました。視力表 で見ると結構良さそうで、これなら何とかなるのじゃないかと思えましたが、視野を 測ってみると、X−4で中心4度、T−4で1度しかありません。拡大すると視野か ら字がはみ出るだろうと恐れておりましたけれども、あにはからんや、いろんなもの をお示ししたのですけれども、やはり読み進むことは無理だとおっしゃられまして、 希望されませんでした。やはり頭の中にぽんと掛けて見えるやつがほしいという考え が残っていらっしゃいまして、いろいろご説明したのですがご理解いただけませんで したので、遮光眼鏡だけを処方いたしました。
 ここで話が最後に飛んでしまいます。これはお医者さんに対する注意点です。視覚 障害認定の注意点です。視力についてはよくわかっていると思います。複視が存在し ている場合は、非優位眼の視力をゼロで扱って結構です。ですから両眼が0.5でも 複視があれば0.5以下になりますので、結構通るかと思います。乳児の場合には先 ほどお話があったとおりです。何よりもいまいちばん混乱が起きているのが、数年前 に視野の認定が改正されてからです。それのポイントですが、いろいろ字で書くと判 りづらいと思いますが、中心部の視野が10度以内と判定されるときには、周辺部の 視野がそこに対して残存した場合、中心部とつながっていないということが必要にな ります。中心部10度以内と言っても、中心部に掛かっていて中心部10度よりも広 さがあれば、10度以上となってしまいます。中心部10度以内になっていないにも かかわらず、視能率を書いてくる方がいらっしゃるのですが、中心部の視野が10度 以上であれば、視能率がいくら悪くても判定の対象になりません。これは模式的に 作ったものです。この場合は中心部とつながりがございませんので、視野は中心部の これだけと考えてよろしいです。中心に掛かって10度の同心円より大きい状態です ので、これは10度以内にはなりません。従って、視野の半分が欠損という認定にな ります。その点をご注意願いたいと思います。
 後は補助具の給付の注意点です。ルーペは残念ながら手帳では給付されません。こ れは良く覚えておいていただきたいと思います。弱視眼鏡といわれるものまたは矯正 眼鏡、近用眼鏡などは対象です。遮光眼鏡は対象になるのは網膜色素変性症のみと法 律的に決まっております。もう一点、これも法律上のくだらない規則なのですが、盛 んに大きな声で言ってはいるのですけれども、原則的には一度に二つの給付は不可能 です。矯正眼鏡と弱視眼鏡を両方一度に請求されても、どちらか一方のみの給付にな ります。これは一つの種目では1個しかだめと書いてありまして、その一つの種目の 中に眼鏡の類がみんな入ってしまっていますので、その決まりにのっとると不可とい うことになります。ただし、拡大読書器は種目が違います。日常生活用具の方に入り ますので、こちらと他の例えば弱視眼鏡との併給は可能になります。
 あと最後ですが、視野障害で認定されている方に矯正眼鏡の給付等はできません。 あくまでも視野に対する補装具であれば可能ですが、眼鏡等の給付は対象外となりま すのでご注意いただきたいと思います。
 話があちこちに飛んで、判ったようなわからないようなところがあると思います が、とりあえずこんなものがあるのだということを知っていただくという意味で、知 らない方をメインの対象としてしゃべったつもりです。どうもありがとうございまし た。

千葉先生
 高相先生ありがとうございました。スライドが黒地に白でとっても見やすくて、J RPSで作っていただくカレンダーも黒地に白抜きということで、コントラストの強 い白抜きの文字というものは見やすいのだなと思いながら見ておりました。視覚障害 者にとっての便利グッズとかそういうことも含めまして、詳しくお話いただきまし た。なにか会場の方から高相先生の方にご質問があれば、どうぞ。はい、お願いしま す。

岩宮さん
 高相先生の後半の説明で中心部が含まれていると視野10度以内が認められないと いう説明がありましたけれども、そこのところをもう少し詳しくお話いただけますで しょうか。いわゆる普通の網膜色素変性症ですと、中心視野が残っていて10度以内 という方が多いと思うのですけれども。

高相先生
 もちろん10度以内に入っていればいいのですが、中心部から少し外れて掛かった 状態で外側に広がりがあったりする場合があるのです。ある方向は10度以内なので すが、別の方向は10度をこえているといったような場合には、10度の同心円が大 きさの基準になるということです。

岩宮さん
 全部の方向で10度以内に入っていれば良いけれども、どこか1箇所が出っ張って 10度を越えていると10度以内に認定されないということですか。

高相先生
 そうですね。そうなりますと今度は10度以内の同心円の大きさが広さの認定にな りますので、外れていて広がっていたとしても全体として10度以内の同心円の大き さ以下であれば認定されます。

岩宮さん
 その辺がよくわからないのですが、10度の同心円がありますね、そこから左なら 左が出っ張っていると、

高相先生
 その部分を含めたとして、真中の10度以内の同心円の大きさがありますね、その 大きさ以下であれば大丈夫です。要するに、視野の面積が10度の同心円より小さけ れば10度以内ということになります。
 なぜこういう話をしたかといいますと、私もう一つ余計な仕事をしていまして、視 覚障害の県の認定の担当をさせてもらっているのです。視野障害の点でいろんなもの が廻ってくるのですが、ちょっと誤解が生じてる部分があるかと思いまして、あえて 言わさせていただきました。

千葉先生
 ありがとうございました。他にご質問ございませんか。では日比野先生。

日比野先生
 どうも今日はありがとうございました。千葉市の日比野と申します。いまの視野障 害の件で私も千葉市の認定をやっているのですけれども、厚生労働省のホームページ に求心性視野狭窄を来たす疾患という言葉が確か抜けていたかな、つまり10度以内 の視野狭窄を示すというのは、末期の緑内障あるいは網膜色素変性症という疾患に限 定して、その方たちが進行した場合に、10度以内になったときに、はじめて10度 以内という概念を持ち出すのか、それとも糖尿病網膜症とかいろんな他の病気であっ ても、T−2とかT−4で測った場合に、10度以内になってしまったときに、視力 障害にプラスして視野障害まで合併して認定するのかというのが、ロービジョンのほ うでも混乱が各県であると思うのです。ある先生は絶対にその二つの疾患に限定した 概念なのだという方もいますし、ホームページを見ると疾患には限定していないのだ から、どんな病気であれ求心性視野狭窄のような状態になれば、それは視野障害も 取っていい、と言う方があるのですけれども、その点についていかがでしょうか。

高相先生
 私はそこの解釈の仕方はお役人になります。ですから視野の形が求心性視野狭窄で あれば、それでよいと思います。それこそお役人のやり方を盾にとって、文面どおり に受け取って、別にそこに疾患の指定はなかったと思いますので、求心性の視野狭窄 のパターンさえ取っていれば、それでいいと思っております。

日比野先生
 どうもありがとうございました。それを最初に作った先生が、というかそれに関 わった先生が、網膜色素変性症の方の視野狭窄を救いたいがためにお作りになった経 緯があったと聞いておりますので。では、疾患にまったく関係なくと解釈されている のですね。

高相先生
 私がやっている限りは千葉県はそうしたいと思います。事務方には一生懸命そのよ うに指導しております。

日比野先生
 もう一点伺いたいのですけれども、先ほど遮光眼鏡のお話がありましたけれども、 昼間のお天気のいいとき、日の照っているときはいいのですが、夜間のしゅうめい感 を訴える患者さんについてはどのようなことをお考えでしょうか。

高相先生
 難しい質問ですね。その人の状態にもよるのですが、屋内で使ってみて良いよと指 導しておりますので、そういう使い方をされる方の場合には、CCP400ですか ね、できるだけ色の薄いレンズでとりあえず試してもらって、どうしてもだめだった ら、厳しいかなと思っているのですが。

千葉先生
 他にございませんでしょうか。

工藤先生
 千葉県医療大学校の工藤と申します。高相先生ありがとうございました。高相先生 の講演の中にいくつか「あ、そうだ」と思うところと私の課題がまた少し増えたと思 うところがあったのですけれども、まず高相先生は眼科医は指揮者だとおっしゃいま した。最初にいろんなケースの問題とそれに対する職種を並べられましたが、その中 で眼科医は指揮者だと、これについては成るほどと私も思いました。指揮者というの は一体何かと、自分に問い掛けてみました。そこではどのようなハーモニーを奏でる のかなということが私の課題として残りました。それぞれケースのニーズは違うと先 生もおっしゃられたのですが、ケースと接するその接点はやはり眼科医だと思いま す。私も看護婦なのですけれども、医師がそのケースのご本人のニーズとご家族の ニーズを捕らえないと、ハーモニーを奏でるまでに至らない、つまり連携プレーには いけないような気がしたのです。そのことが一つ。そして最後に先生は大事なことは 本人のやる気であるとおっしゃられました。確かにそうです。ただそのやる気を起こ すのは何か。誰が起こさせれば良いのか。本人がやる気を起こすとなると、かなり難 しくって、家族もどうやって声を掛けたらいいかわからない。そうなってくるとやは り医師だと思うのです。本人と家族は治るつもりで一生懸命眼科医をたずねるわけで す。ただそのときは眼薬かなんか検査をして帰ってくる。いつ治るのだろう。このま までどうなっていくのだろう。ハーモニーを奏でるまでの間というのは、眼科医が接 点となっていって、そこから方向性を示さないと難しい問題かなあというふうに思い ました。その辺について高相先生なにか先生のお気持ちやらご意見、私たちへの指示 があればお伝えくだされば助かります。

高相先生
 指揮者というのはちょっときどって書いてみたのですが、そこまで深く読まれると は思っていませんでした。奏でられるハーモニーにその患者さんの明るい生活が描か れればいいのかなと、ついでに文学的に言わせていただきます。やる気という点に関 してのことなのですが、確かに接点は医者かもしれませんが、患者さんの心の部分を ケアするのは、私は医者ではできないと思っております。はっきり申し上げて。これ を言うと馬鹿やろうという先生方もいるかと思いますけれども。何故かというともう ちょっとカウンセラー的な発想で対応していく必要があると思います。私もカウンセ リングの本をいろいろと読み漁りましたところ、字面だけ言いますと、基本はひたす ら聞いてあげるのだと、かつ解決法を本人が見出すのを待つ、というのです。あくま でこちらから解決法を提示するのではなくて、解決法を見出すようにしていくという のがカウンセリングということです。それで実際私もその態度でちょっとやってみた のですけれども、みようみまねで。しかしやはり無理でした。まず一つ、お医者さん と患者さんの関係は、医者がどう思っていようと、患者さんからすると上下関係にあ る状態になりますので、そこから言われたものは全部サゼッションにしかならない。 ですから一緒に考えていくという態度にはなかなかなり得ないということです。何と かやる気を起こさせるにはどうしたらいいか、私はそれはいま言ったカウンセリング 的な部分で、自ら起こってくることが必要だと思います。周りから与えられるもので はないと思います。それまでにその人が歩んできた人生がそこで試されているのでは ないかと感じております。あくまでも本人が自覚するように、何かしら一緒に考えて あげられる人が必要です。医者には無理だと思います。

工藤先生
 ありがとうございます。確かに私も医者には無理だと思います。というのは、忙し すぎます。それどころではない、とにかく患者さんをさばかなくてはいけない、ある 時間の中で何十人という患者さんをさばいていきますので、それは難しいかなと思い ます。ただカウンセラーに結びつけるのはやはり医者かなと思います。そこまで結び 付けられないで悩んでいる人を私もいっぱい見ています。それを何とかしなければと 思っています。それはやはり医者に頼るしかないのかなと私自身も思っています。接 点をどうつなげていくかの連携プレーのはじまりが、ただ患者さんが何とかするのを 待つだけでは無理なのだなと思っているのです。

高相先生
 カウンセラーのことは視覚障害者に限ったことではないと思います。障害者に限っ て言いますと、千葉のリハビリテーションセンターに10年いますけれども、千葉の リハビリでもそういったカウンセリング的な部分というのは、私から見るとはっきり いってまだまだ足りない、人も足りないと思います。いずれにしろその部分が意外と みんな抜けているかなと思います。リハビリというのはやる気を出してくれないと先 に進まない。それに至るには、心のサポートが実際には必要なのです。医者はサゼッ ションになるし、家族もじれったくなるので、強気な発言になってしまいます。そう なりますと支えていくことが難しくなることがあるのです。

工藤先生
 ありがとうございます。実を言いますと私は第2回日本眼科紀要で岡山大学がロー ビジョン者に対する交流会を開いているということを紙面で見ました。それぞれ孤独 感を感じている人たちが集まって、その交流会で自分たちがアンケートを取ったとこ ろ、心のケアでかなり期待できるものがあると書いてありました。そのへんがみんな で立ち上げていかないといけないところかなと思って、ちょっと伺ってみました。あ りがとうございます。

千葉先生
 他にはございませんか。一つだけよろしいですか。先ほどの先生の講演で、障害の 受容の諸段階ということで五つの段階を示されて、ショック期というところからはじ まって受容期に至るまでということでした。我われ眼科の開業医というのは、時間的 なことからなかなか患者さんとゆっくりお話する時間もないということもありまし て、ショック期だけを患者さんに与えてしまっていることがないだろうかということ を反省材料として感じていました。実は私だけかもしれないのですが、先生のところ にどういう患者さんを相談させていただいていいかというのがわからないのです。例 えば、強度近視でまして視野が狭いような方で「いろいろ眼鏡を試してみたい」とい われてやってみてもどうもうまくいかないで「ちょっと無理ですね」とあきらめても らっている方が結構いらっしゃるのです。そういった方に補助具も含めて先生のとこ ろに紹介するという形もありでよろしいのでしょうか。

高相先生
 たぶん歩行訓練以外はそれなりに対応できるのではないかと思います。結果がどう なるかご期待に添えるかどうかわかりませんが、がんばりたいと思います。よろしく お願いいたします。

千葉先生
 ではありがとうございました。


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