★前川裕美さん「夢見る力を信じて」を聴いて(成田福祉講演会)
「あきらめない」「夢はきっと叶う」と講演の中で熱く語り続ける20代の若い彼女
からのメッセージに、心を動かされた方も多かったと思う。
「どこまでできてどこからできないのか」、「これは自分が努力しないからなのか、
それとも病気のせいなのか」「そこの線引きがとても難しかった」と裕美(ゆみ)さ
んが語るその言葉はほぼ20歳違う私のかつての思いと重なった。もしかしたら、そ
この線引きが今も私はできていないのかもしれない。人の援助を借りて実現できたこ
とも自立である。それをアメリカで学んだという。できないことをどうやってできる
ようにするか、それを一緒に考えてくれる多くのコーディネーターが「アメリカには
いる」という。日本で見えづらいことを隠すようになっていた裕美(ゆみ)さんを
救ったのは、そんな環境だったようだ。講演の間に、英語の歌詞で「スマイル」を歌
う。
最後に彼女がアメリカに留学中、お母さまがJRPSと出会い、会員さんと触れあ
い、ボランティアをする中で作詞した「願い」を熱唱。もちろん作曲は裕美(ゆみ)
さん。これからも夢を追いつづけ、活躍するであろう前川裕美さんを心から応援した
いと思い、ご報告とさせていただきます。
※前川裕美(ゆみ)さんのプロフィール
1978年生まれ。3歳で音楽と出会い6歳で作曲を始める。11歳で網膜色素変
性症と診断される。視力を失っていく中にあっても音楽家なる夢を捨てず、高等学校
音楽科を卒業。阪神淡路大震災で自宅全壊にあっても、避難所、仮説住宅で歌い続け
る。その後、両親の反対を押し切って単身、渡米。ボストン バークリー音楽院でプ
ロフェッショナルミュージックを専攻。アメリカ育ちの盲導犬、グレースと出会い、
6年間の留学を終えてグレースと共に帰国。「必ず夢は叶う」と信じ、各地で、弾き
語りと講演を行なっている。
★テレビドラマ「指先で紡ぐ愛」を見て
光成沢美さんのエッセイが元になっているせいか、ドラマも沢美さんの視点で展開
されていましたね。うまく言葉が見つからないのですけれど、福島さんが結構のんき
な、けれど強い意志を秘めた人として描かれていました。沢美さんが福島さんを初め
て送っていくところや、大学での授業シーンなどコメディタッチで面白かったです。
印象に残ったシーンが2つあります。1つは、沢美さんが福島さんからもらった手
紙を読んでいるシーン。酒屋が向かいにあるのに一人では買いに行けない。盲ろう者
の移動の困難さを改めて噛み締めさせられました。もう1つは福島さんと沢美さんの
挙式のシーン。沢美さんのお母さんが福島さんに「娘をよろしく」と指点字で伝えた
ところは不覚にも涙してしまいました。最後まで見ることができませんでしたが、ド
ラマの構成としてはよかったのではと思います。
ただ1つ気になったのは、このドラマのテーマ。障害者をサポートする家族のたい
へんさ、その障害者を家族がサポートすることが当たり前だと思っている周囲から受
ける不当な扱い。これがテーマだったように思います。原作を読んでいないので、な
んとも言えないのですが、ひょっとして原作は盲ろう者の生活の困難さをテーマにし
ていたのではないのでしょうか。もし原作とドラマでテーマが食い違ってしまってい
たのなら、それは寂しいです。これを機会に原作を読んでみようと思います。
最後に、このドラマを見て、娘が生まれてから離れてしまっている点字を(指点字
も)、もう一度勉強したくなりました。(笑い)
参考:テレビドラマ「指先で紡ぐ愛」は、3月10日(金)午後9時から、フジテレ
ビ系列「金曜エンタテイメント」にて、全国ネットで放映されました。実話をもと
に、視覚と聴覚を失った盲ろうの夫と、通訳として夫を支える妻の姿を描いたドラマ
です。東京大学先端科学技術研究センター助教授、福島智先生の奥さまである、光成
沢美さんの著書『指先で紡ぐ愛〜グチもケンカもトキメキも』(講談社刊)をドラマ
化したものです。