★第三回関東地区リーダー研修会
会場は新宿区戸山の戸山サンライズ(全国身体障害者総合福祉センター)で、ここは車
椅子の人が行動できるようにすべてのドアが引き戸式になっていて広い。宿泊室や室内の
トイレのドアも同様。トイレそのものも広いし、ツインの部屋のベッドの間も広く空いて
いる。廊下に点字ブロックは敷いてあるが、壁や廊下の配色はコントラストが弱いので、
RPの人は少し歩きにくい。参加者総数は39名、うち東京支部からボランティア2名を
含む25名です。各地からの参加が少ないということで、動員をかけたということです。
ボランティアの一人は、SOHOの経営者で視覚障害者のパソコンボランティアをして
いる人、もう一人は議員秘書で議員が緑内障になったのをきっかけに視覚障害者と係るよ
うになった人です。
金井東京支部長と末松副会長の挨拶、参加者の自己紹介のあと、高林雅子先生(順天堂
大学医史学研究室)の「中途視覚障害者のストレスと心理」の講演がありました。RPと
の関わりは十数年になるが、最近富にピアカウンセリング、ピアサポートの大事さを痛感
しているということで、その話に集中した。私たち患者が、悩んでいる患者のカウンセリ
ング、相談にあたっての留意点として次に箇条書きにしてみました。ただし、先生は何度
にもわたって、これが正しいという答えはない、ケース・バイ・ケースです、と強調して
いました。
・できるだけ相手の話しを聞く。自分の経験は少し後ろに控えさしておく。相手に求めら
れたら、少し自分の経験を話す。
・質問はできるだけ控える。情報提供も控えめに。
・相手の気持ちに焦点を当てるようにして話を聞き、いくつかの見立てができると、気持
ちにゆとりができ、さらに対応しやすくなる。
・相手の気持ちが分かるわかるではなく、自分との違いを見つけようとすると良いケース
がある。
次の質疑応答が参考になると思います。
Q:電話が長すぎるときにどうやって切れば良いか。
A:それまでの話のまとめとして、私はこのように受け止めましたが、あたっていますか、
というように次につながる終わり方をする。最初に今日はこのくらいの時間にしてくださ
い、と断っておく。40分くらいが限界でしょう。
Q:半分欝のように見える人にどう対処したらよいか。
A:私は精神科に行ってくださいという人に出会ったことはない。悩む気持ちになるのは
当然ですというように共有してあげる。
Q:例えば、職場にRPといってよいのでしょうか、という相談をメールで受けた場合、
どう答えればよいか。
A:答えは難しい。職場の事情によって違うから。とても慎重にしなければならない。隠
して隠してきた人が大きなミスを起こした例がある。
Q:私は耳が少し悪くて聞き取りにくいので、何度も聞きなおすことがあるのですが、ど
うすればよいでしょうか。
A:自分は耳が少し悪いので、ということを最初に告げる。
Q:感情的になり相手を泣かせたことがあるのですが・・・
A:聞いているうちにストレスが溜まるので、時間をある程度にしておくことも必要でし
ょう。グループで話し合って、対応の勉強を互いにする。
Q:学術面でピアカウンセリングの分野はあまり進んでいないのではないか。
A:耳の痛い指摘ですが、そのとおりです。患者自身が、医療従事者に対して患者にどの
ように接していけばよいのかを伝える努力をする必要がある。
Q:暗い方へと話が同調していったときはどうするか。
A:コミュニケーションをとることが必要なケースもある。今日は暗い話になってしまっ
たけれど、今度はもっと明るいお話しをしましょう、などと次につながる終わり方を心が
けましょう。
Q:自分の友達に見えないことを話したくない気持ちがあるのですが・・・
A:言ってくれないとわからないのがRPの特徴だから、徐々に伝えていくことも大事だ
と思います。
Q:ついつい自分の経験をたくさん話してしまった場合はどうすればよいか。
A:自己開示については、自分の言ったことに責任を持つ。聞くことだけでなく、感情的
に一緒になってあげることが必要なケースもある。
講演のあと休憩を挟んで、A、Bの2班に分かれてグループディスカッションを行った。
私の属したA班では、支部運営の問題点を主にディスカッションした。新規会員、新規行
事参加者の伸び悩みがどの支部でも問題になっている。千葉県支部の行事参加者数が伸び
ていることを披露し、行事担当者を置くようにしたのが良い結果につながっているのかも
しれないと話した。
懇親会のあとは、和室に集まって飲みながらディスカッションした。私からは、本部の
お膝もとの東京支部が音頭を取って、本部にもっと多くのボランティアを送り込んで本部
活動をサポートしよう。東京支部が声を掛けてくれれば、周辺支部は必要な人材、人数を
派遣します、と提案した。
24日(日)午前9:30〜11:30 国立リハビリテーションセンター学院
小林章先生 「障害者を持った家庭は」
現在は生活訓練士の養成をしている。1983年に国立更生援護施設に就職し、最初は
肢体不自由担当に配属され、この仕事がたいへん気に入って生涯続けたいと思っていたが、
1991年に視力障害の生活訓練担当となり、国立塩原視力障害センターに配属され、1
994年に国立神戸視力障害センターに転属し、そのあくる年の1月13日に阪神・淡路
大震災に遭遇した。講演の内容自体は、私にとって特に新しいものはなかったのですが、
レジメの内容を列記し、そこに小林先生のお話を挿入することにします。
1.はじめに
■日本も捨てたものじゃない
大震災で見知らぬ者同士が協力してバケツリレーで消火したり、少ない物資を分け合
ったり、全国から集まってきたボランティアが活躍するのを見ての感想
目に見える苦しみは共感できる。肢体不自由のように見てすぐわかる場合には共感し
てもらえるが、感覚器の障害の場合は見ても分からない。だから、障害者が理解しても
らえるように働きかける必要がある。
■偏見は無知から生まれる
家族も例外じゃない(甘えが偏見を助長する)
無知でいることは恥ずかしい
遺伝子はあなた(親)を通過している
■理解することで偏見が消える
理解を得るためには努力が必要
■障害者≠被援助者
知恵は人に恩恵をもたらす
2.家族や身近な人に理解を求める
■家族は最大の理解者VS最大のストレス源
大切な人(理解者)がいるからがんばれる
■見え方の説明
(1)シミュレーションによる視野狭窄の理解
視力がいいのに歩けないわけ
新聞が読めるのに歩けない?
見えるのに見えていないわけ
情報量は晴眼者の百分の一!(視野の直径が10度程度の場合)
視野直径が10度の人は・・・ 顔全体を見るためには2m、身長175cmの人
の全身を見るためには10m
(2)暗順応障害
明るい屋外から建物の中に入ると動けなくなる
(3)夜盲
日中は歩けるのに夜は歩けないわけ
(4)羞明(しゅうめい)
暗いと見えないのに、日中はまぶしい
■どうしてそう見えるのか(原因の説明)
(1)網膜の構造
錐体 網膜の中心部・直径0.3mmの範囲に集中。最高視力はここしか出ない。
色の判別
杵体 錯体以外は全部杵体。光に対する感度が高い。暗順応や動いているものを検
知する働き。
(2)網膜色素変性症の特徴
血管が痩せて周辺部視細胞(杵体)が侵される。一般的には網膜の外側から病変が
進むため、杵体が侵されるため夜盲が起こり暗順応不良となる。
■環境の改善(家族にお願いすべきこと)
(1)不用意にものを置かない(レイアウトを変えない)
(2)空間の障害物に注意
(3)コントラストの活用
境界線にコントラストのあるラインを入れる
色の明暗の対比が大きいほど見やすい(特に併発白内障のある人)
生活空間から食器まで
3.うまく歩くために
■狭い視野を有効に活用するためには遠方を見る
より広い範囲を見るために
進路を見失わないために
頭をぶつけないために
■白杖は最高の道具
白杖をもつことは周囲に対する思いやりでもある
軽くて弾力性に富む素材、グラファイト
適切な長さは階段で特に重要
■夜間に威力を発揮する懐中電灯
■羞明を防ぐ道具
サンバイザー 遮光眼鏡
■暗順応を助ける遮光眼鏡
赤系のレンズを10分以上使用
質疑応答
Q:5年くらい前から視力が落ちていることがわかる。自分では自信がある場所に行こう
とすると、家内が止めて自動車で送ることを強要する。心配しすぎじゃないかと思うが、
どうしたらよいか。
A:一番好ましい方法は、専門職の人に見てもらって、助言をもらうこと。栃木県では適
当な施設がないので、NPO法人を有料で紹介する。
Q:点字ブロックを伝って歩くうえでのルールは?
A:特にルールが決まっているわけではないが、国リハではブロック上を歩くのではなく、
杖でブロックに触れながら伝っていくように教えている。
Q:RPでありながら自動車に乗っている人がいる。やめさせるのにどのように説得をし
たら良いか。
A:国際ロービジョン学会や外国雑誌の論文を見ると、ロービジョン者の運転の仕方など
が解説してあるが、道路事情の悪い日本では、やはり加害者になったときの大変さを説明
し、説得するしかないでしょう。