★世界大会ツアーに参加して〜北欧旅行記E
旅も6日目。いよいよ旅も終わりに近づきました。今日も私達はロシア人ガイドのマリ
アさんに連れられて、サンクトペテルブルグ観光です。
朝、ホテルを出発した私たちは、バスで、サンクトペテルブルグ郊外のエカテリーナ宮
殿に向かいました。ここも昨日のエルミタージュ美術館と同じように多くの観光客でごっ
たがえしています。私たちはマリアさんを見失わないよう、気を引き締めて・・・。さあ、
エカテリーナ・マラソンの始まりです。
全長740メートルにも及ぶこの宮殿には、歴代のロシア皇帝が世界各地から集めた、
貴重な美術品や有名な絵画が、手をのばせば触れることができそうなほどの近さに展示さ
れています。そんな豪華な部屋や回廊をいくつも通り過ぎた後、私たちは有名な「琥珀の
間」の前に立ちました。
「琥珀の間」とは、壁も床も選りすぐりの琥珀でつくられたという豪華な部屋です。絢
爛豪華なエカテリーナ宮殿の中でも最も有名な部屋なのです。
部屋に一歩を踏み入れた途端、私の周りの人々からは、一斉に「おぉー」という歓声と
もため息ともつかぬ声があがりました。琥珀がすばらしい輝きを放っていたようです。と
ころが私には、今まで白っぽかった壁の色が少し茶色っぽいものに変わったように見えた
だけで、琥珀の輝きは感じられませんでした。
エカテリーナ・マラソンを終え、休憩をしていた時のこと。東京から参加されたKさん
の奥様(晴眼者)が、「琥珀の間は見えた?」と声をかけてくださいました。私があまり
よく見えなかったことを伝えると、奥様はとても残念そうに「あらぁ。見せてあげたかっ
たわねぇ」とおっしゃいました。「琥珀の間」で少ししぼんだ私の心は、その暖かみのあ
る言葉で、少しふくらみを取り戻しました。
サンクトペテルブルグは、「北のベニス」と呼ばれるほど運河の多い街です。午後、市
内に戻った私たちは、その運河を船に乗って、サンクトペテルブルグの街を巡りました。
運河から眺めたサンクトペテルブルグの美しい街並を、私は忘れることはないでしょう。
途切れることなく続くパステルカラーの美しく荘厳なバロック様式の建築物、その間に緑
豊かな庭園をもつ宮殿や離宮が見え、フィンランド湾の水面が顔をのぞかせます。運河に
はいくつもの橋がかかり、橋にはそれぞれ異なった優美な欄干がついています。どれ一つ
として同じものはなく、どれ一つとして見劣りするものはないのです。その橋の上で、ウ
ェディングドレスを着た花嫁が、白いスーツを着た花婿とキスを交わしています。それは
まるで映画のワンシーン。私はまた、そのロマンティックな映画に入り込み、盛んに拍手
をしていました。
夕食のために案内された市内のレストランで、ガイドのマリアさんとはお別れとなりま
した。
マリアさんは最後に、「私たちの美しい街サンクトペテルブルグを見るのに2日間では
短か過ぎます。是非、また来てください」と言いました。それはガイドとしてではなく、
サンクトペテルブルグをこよなく愛する一市民としての言葉に聞こえました。
夕食の後、私はツアーの何人かの人たちと一緒にバレエを観に行きました。オペラ観賞
にでかけたグループもありました。サンクトペテルブルグ最後の夜です。
サンクトペテルブルグはバレエ発祥の地。バレエの演目は「白鳥の湖」。私はこのバレ
エ観賞をとても楽しみにしていました。バレエの舞台背景は黒っぽく、バレリーナ達はほ
とんどが白い衣装を着ています。そのため、コントラストがはっきりし、私の眼でもバレ
リーナの優美で躍動感あふれる動きをよく観ることができました。オーケストラの生演奏
もすばらしく、私はすっかり、バレエの世界に引き込まれていました。隣の席に座ってい
たKさんの奥様が「見える?」と気遣ってくれます。私が十分楽しんでいることがわかる
と「良かったわねぇ」と我が事のように喜んでくれました。
明日はいよいよサンクトペテルブルグを離れ、ヘルシンキから日本に戻ります。