あぁるぴぃJRPSちば会報118号


■ 投稿
★臨床試験に患者としてどう臨むか〜「JRPSワークショップ2018」に参加して
会長 渡辺 友資枝

 昨年11月18日に行われた「JRPSワークショップ2018」は、網膜色素変性症の新しい治療法を、直接ヒトに試してみる臨床試験(臨床研究・治験)を成功させるために、患者は何ができるか、何をすべきかを考えるためのものでした。
 当日は、神戸の主会場と東京、札幌のサテライト会場をインターネットで結び、3会場合わせて約170名の参加者がありました。私は東京会場に参加してきました。東京会場となったJRPS事務局には、関東各地から33名の参加者があり、会場は満席でした。80歳を超え、最後のご奉公として治療法確立のため、臨床試験に参加したいと岩手から参加された方もいらっしゃいました。

 まず、神戸の主会場から次の2つの講演がありました。
「RP治療法開発に向けて〜中長期的な戦略」  講師:理化学研究所 高橋 政代 先生
「患者が研究者のよきパートナーになるために  倫理的観点から」 
講師:東京大学 武藤 香織 先生

 高橋先生からは、治療になるかどうかわからない研究のはじめから、世間の注目の中で進められてきたiPS細胞による網膜再生の研究の歩みとご苦労、そして、それがいよいよヒトに試してみる臨床試験の段階になったこと、さらに、これからの研究の進め方についてのお話がありました。「皆さんのお子さんの代には、治療法ができています」という言葉は、患者が待ち望んでいたものではなかったでしょうか。
 また、臨床試験も審査もしていない危険な再生治療が自由診療で行われていることに強い警告を発せられました。アメリカでは、失明に至った例もあるとのことです。このような怪しい医療に惑わされないよう、正確な情報をどのように入手するか、われわれ患者が考える必要があるでしょう。

 武藤先生は、「『臨床試験・治験』は『治療』ではない」ということを強調されました。「臨床試験の被験者になる」ということを「最新の治療が受けられる」ことと誤解している人が多いが、全く違うものだということ、「臨床試験に参加する」ということは、「将来の患者のため、新しい治療法を確立するために必要な正しいデータを届ける」ということ、患者は、そのためにどれだけのリスクを引き受けられるかを考えてほしいと熱っぽく語られました。
 そして、臨床試験に参加する際の注意について、次の5点を挙げられました。
1.インフォームド・コンセント(臨床試験についての説明・注意事項)をしっかり理解   
  できるまで、よく聞くこと。
2.臨床試験が始まって体調が変化したりした時には、きちんと先生に言うこと。また、   
  わからないことが発生した時には、遠慮せずに聞くこと。
3.臨床試験が始まってからでも、やめたくなったら、いつでもやめることができる。
  その時には「やめたい」という意思をきちんと伝えること。
4.決められたこと(薬の飲み方、通院のインターバルや回数など)はきちんと守ること。
5.研究の結果を聞く権利がある。率直に尋ねること。


 お二人の先生の熱意溢れる講演ののち、参加者によるグループディスカッションとなりました。テーマは「臨床試験を成功させるために患者は何をすべきか、何ができるか」
・臨床試験はヒトに対して初めて安全性と効果を試すもの。リスクをともなうもの。
・患者はどれだけのリスクと時間的、経済的、精神的犠牲を引き受けられるのだろうか?
・正確な情報を入手するにはどうしたらよいだろうか?
そんな内容で、活発なディスカッションが行われました。結論が出たわけではありませんが、参加された皆さんの意識が高まったように思います。

 私たちのグループでは、ちょっと高齢の女性が最後に「ボケちゃいられないわね」と皆の笑いを誘い、ディスカッションをしめてくださいました。
 そうなんです! 患者は、ボケてはいられません。これから、さまざまな臨床試験や治験が行われる中で、多くの情報から、正確なものを取捨選択し、「臨床試験」と「治療」は違うことをしっかり認識し、被験者の権利と義務をキチンと理解して、臨床試験や治験に向き合わなければなりません。それが、一日も早い治療法の確立につながることだと思います。そんな思いを強くした一日でした。

 最後に、皆さんにお願いです。昨年末、皆さんへはJRPS本部から「もうまくサポーターの寄付お振込みのお願い」が届いたと思います。臨床試験や治験を進め、治療法の確立につなげるためには、研究者の先生への研究助成金をはじめ、研究を促進するための社会的活動の資金が必要です。無理のない範囲で結構ですので、ご協力をお願いいたします。また、このようなJRPSの活動に共感していただける方は、JRPSホームページ、または、JRPS事務局へお申し込みいただけるとありがたく思います。ご協力、ご支援、よろしくお願いいたします。

※ワークショップで行われた2つの講演はJRPSホームページの会員ページから聞くことができます。会員ページにアクセスするには、JRPS会員専用のパスワードが必要です。パスワードのお問合せは、渡辺まで会員番号、氏名、住所、電話番号をメールでお知らせください。
渡辺 Eメール toshiewatanabe@arion.ocn.ne.jp

公益社団法人 日本網膜色素変性症協会(JRPS)事務局
〒140−0013 東京都品川区南大井2−7−9 アミューズKビル4F
電話 03−5753−5156 FAX 03−5753−5176
Eメール info@jrps.org
URL http://jrps.org/
★ロービジョン川柳
担当 中野 早苗

 今号の投稿者は2名です。お1人は視力障害者にとって「ある、ある」と肯ける日常を詠んだ作品です。かわいらしく、ついにんまりしてしまいます。もうお1人は「へぇ、そんなことってあるの!」というようなドラマティックな体験を詠んだ作品です。まさに「事実は小説より奇なり」ですね。解説も含めて作品ですので、ぜひお読みください。

ペンネーム(はっ子ちゃん)
・急ぐ朝 転がり落ちた 玉薬
・いつか見た 波しぶきを 浴びてみた
・夕日落ち 肩につくのか 赤とんぼ
・大あくび あら、目の前に 誰かいる!
・チーバくんだ 孫のガイドで 見捨てられ
ペンネーム(新千葉2丁目の風)
・杖要らず 刑務所上がりの 用心棒

【解説】
 ある日、千葉中央駅から千葉駅方面に歩いていた僕は、ちょっと急いでいて思わず、点字ブロックを外れてしまいました。
「あれ? どっちだったかな?」
そんな時、たまたま後ろから二人のヤンキーな感じの男たちの声が…。
「よお、あんちゃん、どこいくの? 大丈夫?」
「あ、千葉駅方向に行くところなんですけど、ちょっと点字ブロックから外れてしまって…。すいません」
「ああ、そうなんだ。俺たちも千葉駅に行くから一緒に行ってやるよ!」
「あ、いや、ど、どうも…。でも、一人でも…」
僕が躊躇していると、二人の腕が、僕の両腕をそれぞれ捉えた。
「ああ、兄貴、俺たちいいことしてますね…」
「おお、そうだな。シャバに出たらいいことしないと」
僕は、一瞬にして、やばい人たちをスケさん、カクさんにしてしまったことに気がついた。でも、時は、遅かった。あきらめのため息とともに、作り笑いをしながら、僕は言った。
「あ、すいません。ありがとうございます」
「おお、いいってことよ、気になさんな」
「そうですよ、兄貴。いいことして、俺たちも嬉しいんですからねー」
一瞬、会話が途切れたので、僕は思わず、言葉を発してしまった。
「えっと、どちらからこられたんですか?」
それに、兄貴とおぼしき男が答える。
「あ、俺たち刑務所上がりなんだ、だからさ、シャバに出たばかりでさあ」
しまった…。歩きながらなんとなく予期していた答えに、一瞬僕の頭の中は、凍りついた。
「ああ、そうなんですか。アハハハ…」
「だから、シャバに出たらいいことしないと、そう思っていたところなんだよな」
もう一人の男が付け加えて話す。
「こんなこと言ってるけど、兄貴は三鷹ではかなり有名なギャングの一人でしたよね。しかも絶対につかまるはずないと思ってましたけど…。なんでつかまったんですかね?」
その後、昔僕が三鷹の方で生まれたこととか、なんか三鷹の暴走族やギャングの話に引き込まれたことを覚えていますが、細かく何のことを話したかまではもう覚えていません。
ただ、しゃべり方がおっかなかったことはしっかり覚えています。
そして、千葉駅に近づいてくると、人ごみが多くなり、駅から出てくる人の群れが、三人並んで歩く僕とスケさん、カクさんの御一行をまるで大きな鯨を避けて、魚の群れが分かれるように通り過ぎていきました。
たぶんこれ「白杖の効果じゃないな」と思いました。
その後は無事駅前まで送っていただき、何事もない平和な一日が過ぎ去りました。
世の中にはいろんな人がいて、いろんな形で助けてくれるという1つの例として、僕にはまるでマンガのように今でも活き活きと記憶に残っています。
※投稿先 中野 早苗 Eメール:sanae403@y3.dion.ne.jp


★お役立ち情報(bP0)
株式会社KOSUGE(コスゲ)
小菅 一彦(こすげ かずひこ)
浅倉 純一(あさくら じゅんいち)
株式会社ニュージャパンナレッジ
笠原 宏文(かさはら ひろふみ)

【NEDO福祉用具実用化開発事業】
「あらゆる状況に歩行補助できるMy地図端末機器の開発状況」

【目的】
盲人・弱視者が抱える一人歩行時の以下の問題点を解決できる機器を開発する。
1.通い慣れた道から外れたときに、自分の所在がわからなくなった。
2.同僚と一緒に会合に行った夜間時の帰路に一人歩行して迷子になった。
3.夜の8時以降に音声案内信号機の音声停止となったり、音声案内の無い横断歩道信号機の横断時に不安になった。

【方法】
視覚障害者の自立歩行を補助できる高精度なMy地図端末機器システムの開発。
 準天頂衛星(みちびき)から視覚障害者に関する高精度に位置情報を検出できる通信端末機器を用いて、独自の地図データベースに歩行経路および目印情報をクラウド登録し、使用者専用の地図データベースを作成する。
 歩行誘導は、iPhoneが振動する方向へ誘導し、骨伝導ヘッドホンによる音声補助案内を基本とする。登録ルートから外れた時には、リストバンドの振動により警告し、定めたルートに戻れるように音声誘導できる。小型カメラなどによる信号機の色判断システムをも開発する。

【結果】
みちびき衛星の実用化まで、従来のGPSによりiPhoneを使用して歩行経路の登録と誘導できるアプリを開発した。登録歩行経路に沿って振動する方向に歩行誘導ができ、迷子状態からも振動方向を頼りに登録経路に戻れた。また、日本全国のLED信号機に対してiPhone内の信号機カメラアプリを立ち上げて、ほぼ赤青色の音声案内することを確認した。

【考察】
中途視覚障害者の方に、歩行訓練士が歩行訓練する時の経路記憶効率が上がると期待される。また、盲導犬ユーザの視覚障害者にとっては迷子となった場合に登録ルートに復帰できるもので、使用者の熟練度に合わせて、カスタマイズができるようにすることが必要と考える。

【結論】
まずは、盲導犬により一人歩行する人達の迷子時に登録ルートに戻れるものと判断された。

※このコーナーでは、カテゴリーやジャンルに関係なく、視覚障害者に役立つ情報を掲載しますので、多くの方からの投稿をお待ちしています。(匿名でも可)
◎投稿先 江澤 正広 Eメール:masa-ezawa@carrot.ocn.ne.jp

★こころの豆知識
船橋市 垣田 悦子
 皆さま、お元気ですか? 年が明けたと思ったらもう2月です。こんなふうに、あっという間に平成も終わっていくのでしょうね。年末年始にかけて外食や、暴飲暴食の機会が多かったのではないでしょうか? 疲れた肝臓を休ませるために、今回は目にも良く、肝臓にも優しい一品を紹介します。

    <カキともちのチヂミ>    4人分
(材料)
片栗粉・・・・・・・100g
小麦粉・・・・・・・100g
水・・・・・・・・・200cc
カキ・・・・・・・・1パック
にら・・・・・・・・1束
人参・・・・・・・・適量
もち・・・・・・・・1個
ごま油・・・・・・・小さじ1
ポン酢・・・・・・・適量

(作り方)
@ ボールに片栗粉、小麦粉、水を入れ混ぜる
A @に3cm長さに切ったニラ、せん切りにした人参、1cm角に切ったもち、カキを加え混ぜる
B フライパンでごま油を熱し、弱火で両面を5分ずつ焼く
C 皿に盛り、キッチンバサミで食べやすい大きさに切りポン酢でいただく
(熱したフライパンは熱いので、火傷に注意して下さい)
ポン酢に、豆板醤やラー油を加えても美味しいですよ。

(効能)
 今回は、アルコール分解酵素の必須成分になる亜鉛を多く含むカキを使用しました。「海のミルク」ともいわれ、1個が10kcal程度と低カロリーにもかかわらず、タンパク質、脂質、糖質などのミネラル、ビタミンをバランス良く含んだ栄養価の高い食品です。また
・イライラやうつ傾向などの精神安定化に必要
・傷口の治りを早める
・皮膚や爪などの健康維持
・精子の形成や卵子の発育に必要であり、男性女性の性機能維持
・味覚維持
・夜盲症改善に必要なビタミンAの代謝に不可欠    などがあります。

(まとめ)
 体の中で、最も大きな臓器が肝臓です。肝臓は人体の「化学工場」と例えられ、栄養素の分解、合成や貯蔵、解毒、胆汁生産などを担っている大切な臓器です。しかし、「沈黙の臓器」ともいわれ、その機能がかなり低下してからでないと自覚症状は現れません。肝臓が悲鳴をあげる前に
・食事は1日3回、規則正しくバランスの良いメニューで腹八分目を心掛ける
・節酒(2〜3日に1回休肝日をもうけたり、過度な飲酒は避けるなど)、禁煙
・質の良い十分な睡眠をとる
など、大切な肝臓をいたわる食生活や習慣を心掛けることが肝心です。
 では、次回もお楽しみに!

★編集後記
 2019年がスタートしました。皆さまの中には、見えにくい・見えない生活を安全に快適に、そして楽しむために「今年こそ何かにチャレンジしたい」という目標を立てた方もいらっしゃると思います。『今年こそ、勇気を出して白杖を使ってみたい、歩行訓練を受けてみたい、拡大読書器を使ってみたい、点字を勉強したい、音声でパソコンができるようになりたい、スマートフォンに挑戦してみたい、録音図書を楽しみたい、ガイドヘルパーさんを利用してみたい』など、できるようになるといいなと思いつつ、なかなか一歩を踏み出せないこと、ありますよね。
 そんな時はぜひ、JRPSの行事に参加してみてください。同じ病気の仲間が、同じ県内に、もしかしたらとても近い場所にいて、同じように困ったり悩んだりしています。症状や進行の度合いには個人差がありますが、病気を告知されてからの心境は、皆さんとても似ています。初めて参加すると、常連の方たちがとても明るく前向きで、その姿に驚かれるかもしれませんが、最初からそうだったわけではなく、今でも毎日の暮らしの中で落ち込むこともありながら、楽しみの種を見つけては仲間と共有しているのです。そして皆さんとても親切です。何か困ったことがあれば、いつでも誰かが答えをくれますし、その後も気にかけてくれます。
 「恩送り」という言葉をご存知でしょうか?「恩返し」は親切にしてくださった方にお返しをすることですが、「恩送り」は受けた親切を今度は別の人に送るというリレーです。JRPSではこの「恩送り」がとても自然に、長い間行われているように感じます。いつも会報を読むだけという方も、今年はぜひ勇気を出して「恩送り」のリレーのメンバーになってください。
 ちなみに私の今年の目標は「人に頼る」です。頼りがいのある会員の皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。
 中野 美保


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