あぁるぴぃJRPSちば会報143号


■ 投稿

★ロービジョン川柳&俳句
担当 中野 早苗
 今号の投稿は、川柳も俳句も友の死を悼む句が並びました。
 いままで素直に「哀しい」という気持ちを表現した句は少なかったのではないでしょうか。どちらかというと、日常のさまざまな失敗や不安ですら「笑いに包み、受け流しましょう」というような、楽しい句が多かったように思います。身近な方の「死」は受け止めがたいものです。ときにはこのような涙した句が詠まれたのも、患者会ならではの「絆」がうんだものではないでしょうか。

☆ロービジョン川柳
ペンネーム:純
・友悼み カラオケルーム すすり泣き
・瞼とじ 哀悼の歌 君しのぶ
・テーマきめ 歌うあなたは 主人公
【解説】
 5月18日に、逝去されたお仲間に捧げる詩とします。

・ロービジョン 受容の階段 一歩ずつ
【解説】
 白杖が持てない葛藤が続き、悩みが続きますが、少しづつ啓発運動が進み理解が広まってきました。受容ができない日々が続いたけれど、いまや階段を上り始めました。

・青ですよ その一言が 助け舟
【解説】
 無音信号機前で色の変化に気が付かず待っていると、後ろから青ですよと声が聞こえてきました。その一言がありがたいですね。感謝です。

ペンネーム:千葉のピーナッツ
・声かけの 感謝の彼女 初デート
【解説】
 6月3日の土曜日は台風2号が通過中でしたが、午後から4年ぶりのOB会があったので出かけました。バスを降りて、水がたまっている歩道を駅に向かって歩こうかと迷っているときに、若い女性に声をかけられました。みどりの窓口前で、友人と待ち合わせていると伝えると、彼女も同じ場所で待ち合わせの初デートと聞いて初々しさにほっこりしました。

☆俳句
ペンネーム:友酒(ともき)
・黄金週間(ゴールデンウィーク) テレビ桟敷に 独り酌み
【春の季語】黄金週間
 世間は黄金週間で旅行や買い物などで賑わうが、金のない私はテレビの前に陣取り、野球観戦などで一人、酒を飲んで過ごしました。

・梅雨の宵 雨だれの音 聴き寝入り
【夏の季語】 梅雨
 梅雨に入り夜ごと、雨が降り、庇より落ちる雨だれのリズムのよさが子守唄のよう。

・母の日や 位牌に向かい 不孝詫び
【夏の季語】 母の日
 母の日に、仏壇に白のカーネーションを供え、母を偲び、生前の不孝を詫びたのである。

・紫陽花の さかりに友の 訃報聞く
【夏の季語】 紫陽花
 RPの友の急逝を聞いた日は、紫陽花がそこらじゅうで満開だった。

・藍浴衣 身八つ口入る 恋の風
【夏の季語】 藍浴衣
 藍染めの浴衣を着た女性の身八つ口から、いたずら夜風が入り込むという恋模様の一句。

・風に揺る 虞美人草の 儚さよ
【夏の季語】 虞美人草(ぐびじんそう)「ポピーのこと」
 散歩道でポピーが風に揺れて、はかなげに見えました。虞美人(ぐびじん)は史記に登場する豪傑、項羽の悲劇の愛妾のことです。

ペンネーム:鈴木卯ノ花(すずきうのはな)
・百合の花 泣きたい時は 長湯する
【夏の季語】 百合の花
 百合の花の凛とした佇まいを詠みました。大人になると、素直に泣かないときがあります。泣いてみたら結構気持ちが落ち着いたり。

・夕虹や 水晶婚の ケーキ買う
【夏の季語】 夕虹
 朝の虹は雨の前触れ、夕方の虹は雨の後の晴れに出るとされています。毎年結婚記念日は過ぎてから気付くのですが、15周年は忘れずにお祝いできました。

・ベストセラー 斜めに読むや 時計草
【夏の季語】 時計草
 時計草をご存知ですか? 雄しべが時計の針のように見えるのでこの名前が付いたそうです。実物を見たことはないのですが、結構奇抜な花のようです。ベストセラーは、じっくりとというより、話題作り程度にパラパラと読んでおくぐらいでいいやと思ってしまいます。

・髪洗う 太腿に透く 脈の青
【夏の季語】 髪洗う
 髪は一年中洗いますが、夏は汗ばんで洗う回数が増え、洗った後の爽快感はひとしおであり、夏の季語になっているようです。髪を洗いながら、自分の太腿の白さにハッとして詠みました。句会で「脈の青」というのが作者の悲しみを表しているとコメントをいただきました。
※投稿先 中野早苗 Eメール:sanae403@y3.dion.ne.jp

★リレーエッセイ(10)
JRPSちば ペンネーム 高安 樹恵(たかやす きえ)
【総武線 各駅停車】
〈2 小泉さん〉
 小泉さんとの出会いは、コーギー犬のチョコがとりもってくれた。ある日仕事帰りに、チョコをお散歩させている小泉さんと出くわした。チョコは私に興味を持ったようで、うれしそうに近寄ってきた。私の白杖に気づいた彼女は、「こら、チョコ、だめ。あんまりそっちに行っちゃ。ごめんなさいね。この犬、とっても人が好きなの。」
 私はその場にしゃがみこみ、「触っても大丈夫ですか?」と聞いてみた。「ええ、ほら、もうお腹出して転がっちゃってる。」チョコは仰向けに寝転んで、うれしそうに短い前足を「お手」のように動かしながら、体をくねくねさせていた。チョコの柔らかい毛を撫でながら、「やっぱり犬っていいなあ・・・。」と心の中でつぶやく。
 それ以来、散歩中の小泉さんに会うたびに、チョコをなでるようになった。ふたことみこと交わす会話から、小泉さんはこの近くの集合住宅に住んでおり、一人暮らしであること。チョコは娘さんが飼いはじめたが、数年前に嫁いで家を出た。小泉さんが一人になってしまうので、さみしくないようにとチョコを置いていってくれたことなどを知った。
 少し太めのチョコは、会うたびにお腹を出して、全力で私への歓迎を表してくれる。チョコとの触れ合いは、私の癒しのひとときでもあった。

 そのうち朝の通勤時にも、小泉さんに会うようになった。バスや駅で私を見かけると必ず声をかけてくれた。他愛のないおしゃべりのなかから、私は小泉さんのことをいろいろと知った。
 彼女は看護師さんだった。定年退職後、余暇の活用とお小遣い稼ぎに、健康診断のアルバイトを始めた。看護師として派遣会社に登録し、いろいろな企業を訪れ健康診断を行っている。もっぱら採血をしているという。健診の仕事は関東一円におよび、ときには泊りで行くこともあるという。
 知り合ったころ、彼女は70歳くらいだった。「若い同僚に言われちゃうの。『私が2人採血している間に、小泉さんは3人採れちゃうんですね。すごいわ。』って。もう50年近くやってるんですもの。早くてあたりまえよね。」小泉さんはいたずらっぽく笑った。

 バスを降りると、駅から電車の入線のアナウンスが聞こえてきた。「あら、私この電車に乗るから、悪いけどさき行くわね。」小泉さんは私に手を振ると、軽やかな足音を残して階段を駆け上がっていった。
 小泉さんは手引きはしてくれない。毎朝の通勤路、私が歩行に不自由をしていないことを知っているからだ。「あなた、見えなくったってすたすた歩けちゃうのね。すごいわ。それにこのスーツかっこいいわね。後ろから見てて、素敵だなあと思って、前に回ったらあなただったわ。」
 単独歩行からファッションまで、小泉さんはいつも私を褒めてくれる。そして、小泉さんからは、いつもポジティブな言葉をたくさん聞ける。「ランチに行ってきたの。イタリアン。おいしかったわよ。おいしいもの食べるの幸せよね。」「今年80歳になったのよ。まだ仕事を頼まれるから『私、80歳なんですけど、いいんですか?』って聞いたのよ。そしたら『何歳だっていいんです。小泉さんはできるんですから』って言われちゃったの。私うれしくなっちゃって。この年になっても仕事があるなんて、本当に幸せよ。」
 話をしているだけで、私も楽しい気持ちになってくる。

 80歳になった小泉さんは、背筋をまっすぐ伸ばし、細身のパンツに流行のアクセサリー、颯爽とした身のこなしで、後ろ姿は30代といってもいいくらいだ。小泉さんはいつも元気に飛び回っていた。
 日本は2010年に超高齢社会に突入した。高齢者の医療や福祉にかかる経費は増加する一方である。だが、高齢者のすべてが介護を必要とするわけではない。もちろん、人生の最終場面では医療や看取りは必要である。それまでの間、健康で有意義に過ごす高齢者もたくさんいる。そのためには働き、動き、感謝する。それが健康長寿の秘訣だということを小泉さんは教えてくれた。私も小泉さんを見習い、いつまでも元気に働き、感謝する日々を送りたい。
★お役立ち情報(bR2)
【補装具の申請について】
投稿 N・A
 今年の1月に眼鏡を買い替えました。当初は、身体障害者手帳の補装具の制度を使って、補助金の申請をして眼鏡を買おうかと考えていましたが、結果として、申請はしませんでした。そのときもっと早くに知っていればよかったと思うことがいくつかありましたので、ここでお話して少しでもお役に立てればと思います。
 視覚障害で補装具というと、「白杖」、「義眼」、「眼鏡」(矯正眼鏡、遮光眼鏡、弱視眼鏡、コンタクトレンズ)があります。私が申請しようとしたのは、「矯正眼鏡」です。「矯正眼鏡」が補装具として、申請が可能であることは意外に知らない方が多いようです。
 なぜ私が申請をやめたのかというと、補装具は4年に一度一つの項目のみしか申請ができないからです。今回「矯正眼鏡」の申請をしたら、次に申請ができるのは4年後です。「矯正眼鏡」よりも高額になるであろう「遮光眼鏡」の購入を軸に補装具の申請を進めたほうがよいと考え、「矯正眼鏡」を補装具として申請することを見送りました。
 「矯正眼鏡」は、度数によって補助金が変わります。また、レンズが球面レンズであるか、円柱レンズであるかによっても変わります。申請をすると、だいたい17,600円から28,200円の補助金を受けることができます。(所得により上限があり、対象外になることもあります)
 「4年に一度一項目のみ」ということがわかったのは、主治医からの意見書がスムーズにもらえずに困って、市役所に電話したことでした。私は初めての申請でしたし、病院側も慣れていないようでした。病院から意見書を書くために見積書が欲しいといわれ、どうしたらいいのかわからず、市役所の社会福祉課に電話しました。見積書は意見書のなかの処方を見て、眼鏡店でもらうと思ったからです。
 社会福祉課の方は親身に話を聞いてくださり、「もう一度病院に電話してみて、本当に見積書が必要なのかどうか確認してもらい、それでも同じことをいわれるようでしたら、市役所のほうから病院へ電話してみましょう」といってくださいました。正直なところ、そこまで親切にしていただけると思っていなかったので、とても有難かったです。申請が初めてだったうえに、一個人として病院側と対等に話せるわけもなく、心細く不安でした。そのとき、電話でその件の「4年に一度一項目」のことを知ったので、社会福祉課から病院へ電話してもらうことはありませんでした。
 みなさんにお伝えしたいことは、
@「矯正眼鏡」も補装具の申請を受けることができる。
Aただし、補装具の申請は「4年に一度一項目」。
B申請にあたり困ったこと、わからないことがあったら市役所などの公共機関などに聞いてみる。
 JRPSちばには経験者が多くいるので、こういうときこそ当事者に話を聞くのもいいと思います。私も何人かの方に話を聞いてもらいました。
 私は初めてのことで基礎知識が少なく、一人で右往左往する時間がとても長く感じました。たいしたことではないかもしれませんが、みなさんのお役に立てれば幸いです。

★みんなの広場
後編
 千葉市のペンネーム佐方です。「手帳の色」の前号に続き、今回は「虹の色」のお話です。いずれもテーマは『色』となっています。
【虹の七色 および 虹の彼方に】
 虹の七色は上から赤、橙、黄、緑、青、藍、紫となっていますが、これは日本人の見た虹の色であり、国によって色の数も異なり、5色だったり6色だったりします。また隣り合った色の間に境界はなく、連続的に徐々に変化していきます。

 昔、ある日の午後、佐方は川崎のオフィスの自席で窓の外を眺めていた。折からの雨が上がり、澄み渡った東京湾越しに対岸の千葉のコンビナート群や、幕張新都心のビル街が見える。ふと上を見ると、東京湾上空に大きな虹がくっきりと架かっていた。同僚の幕張オフィス勤務の知人(A子とする)に知らせてやろう。
佐方「モシモシ、ちょっと窓際に行って西の空を見て、きれいな虹が見えるよ」
しばらくして
A子「(不満そうな声で)川崎も富士山も見えるけど虹なんて見えませんよ」
佐方「こっちからは今もきれいに見えているけど、なぜなんだろう?」
 当時佐方は昼間はまだみえていたし、A子は健常者です。答えは「虹は太陽を背にしたとき前方の空だけに見えます。A子の場合、太陽にむかっています。」虹の彼方には行けないのです。

 生まれつき視力のない人には、色の概念が理解できないと聞く。しかし、ピアニストの辻井伸行さんは色がわかるという。その場の空気や風やにおいや音などとともに色がわかるのでしょうかね。


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