あぁるぴぃJRPSちば会報149号


■ 活動報告
★第27回千葉県網膜色素変性症協会定期総会議事録
                            議事録作成 川野 義一
【日時】 2024年6月23日(日)11時〜11時55分
【会場】 千葉市市民会館4階 第1・2会議室
【出席者総数】 39名 (会場参加30名・Zoom参加9名) 
今年度の定期総会も、会場でのリアル参加とオンライン参加でのハイブリッド形式で開催されました。まずは、小川博康氏の司会により、議長、書記、議事録署名人の立候補を募ったが、立候補者がなく執行部一任となり、下記のとおり選任された。
議長 小沢三千晴氏
書記 川野義一氏
議事録署名人 垣田悦子氏、藤代くに子氏

【大野会長ご挨拶】
 皆さま、第27回千葉県網膜色素変性症協会定期総会に参加していただきまして、ありがとうございます。去年から会長を受けております大野真知子と申します。
去年から感染症のほうも収まったようで、JRPSちばの活動や行事もとどこおりなく順調にいって喜んでおりますが、JRPSちばもちょっと問題をかかえていて、今までやってきた役員も体調を悪くしたり視力が低下して、なかなかいろんなものの処理ができなくなって、今まで通りの活動ができないことが多くなってまいりました。
自分たちでできることはすべてやっていましたが、それではだんだんできないことがでてきていて、これからは自分たちを少し楽にするためにも、印刷など一部の処理を業者に委託するなどを、皆で考え中です。今そういう時期にきていますので、皆さまもご理解をしていただいて、会員でも役員でなくてもご意見がありましたら事務局に是非連絡をいただいて会員さんのお手伝いもお願いしたいと思います。
最近は嬉しいことに若い会員さんからの提案もでてきまして、JRPSちばのできることを少しずつ広げていきたいと思っていますので、皆さまのご協力をお願いします。

【承認事項】
●第1号議案 2023年度活動報告
  大野会長に代わり、小沢三千晴氏が議案を読み上げた。++
*質問者なし、拍手多数により承認された。

●第2号議案 2023年度決算報告
  会計担当の中野早苗氏に代わり、小島朋子氏が議案を読み上げた。
第2号議案への質問1
・中込氏:昨年も同じでしたが、相変わらず繰越金が多くてその繰越金が100万円くらいあるようで、前回の総会では災害時の見舞金や定期預金に入れたりといろんな話がでていましたが、今年はそれがないようです。役員会では話がでなかったのですか。
それから、不幸なことに今年1月に石川県で大きな地震があり、我々の仲間も被害を受けたのではないでしょうか。役員の中でこれだけ繰越金があるのでたとえば10万円を              
義援金として渡す話はでなかったのでしょうか。
もうひとつは、カレンダーの売り上げ金が収益としていままで入っていたのですが、
今回は入ってないようです。カレンダーの売り上げはないのでしょうか。
回答
・大野氏:被災地への義援金の件は、本部にメールで連絡をとり被災地はどうだったか
問い合わせました、本部が現地に電話連絡をして、今のところ会員さんは無事だと聞いて、本部からはその後何も連絡がなかったので、メールをして聞いてみましたら被災は大丈夫だとのことなので、JRPSちばとしては何もしませんでした。
・中野氏:役員会は議題が多くなかなか義援金の話まではいきませんでした。繰越金が多いとのこと、今いろんなシステムを変えていかなければいけない過渡期にあり、実はこの2か月で繰越金が100万円を切りました。それがさまざまな行事に支出していると言うことで、今後も有効利用させていただきたいと思っていますので、今後繰越金の心配はないと思います。
・垣田氏:カレンダーの件、今まででもカレンダーの収益は4〜5000円くらいしか
なかったが、発送を業者に委託しましたので、収益は無く今回は売り上げを計上できませんでした。
・渡辺氏:マイナスでした。細かい数字は記憶していませんが1万円くらいの損失でし
た。毎年30本謹呈しているところがあり、カレンダーの仕入れは無料になるのですが、送料が1本550円かかりますのでかなりの出費になります。去年からその謹呈先に送ることを本部が代行してくれることになり、1本送料を含め700円になりました。大野会長からも話がありましたが、役員もかなり視力がさがっていて大変なので、本部がやってくれるとのことなのでお願いしました。そのため送料や手数料が増えたということです。今までは会員さんに買っていただいて1本300円の収入があり、その謹呈先への送料などをだしても収益がありました。郵送料が上がったことと、本部に委託したことで利益分を超える支出になりました。役員の負担も大きくなりますので、ご了承いただきたい。
・中込氏:その損益1万円はどの品目から捻出したのですか。本当だったら予備費から支出するのではないですか。
・田村氏:郵送費に含まれています。カレンダー進呈と備考欄にあります。
・中込氏:わかりました。今年もカレンダーをやらないというわけではないのですね。
・渡辺氏:実質的にはカレンダーの郵送料がマイナスになっているので、郵送料の計上になっていると思います。今年の秋にまた郵送料が上がるので今年も収益は見込めないと思います。カレンダーの販売は今年もやります。
第2号議案への質問2
・前田氏:繰越金はJRPSちばの全財産ですよね。これに対して非常に疑問を持っていて、ほか団体はそうなんですけど、通常定期預金にある程度入れておくとか、何かあった時に1円も無いと言うことが無いようにするのが普通ではないでしょうか。
そうすると赤い羽根の方から見てもお金が少ない中で頑張っているのだなと見えてくると思うので、全財産を予算にまわすというのはおかしいと思う。今後プールをしておいて積立金のようにしておくと安心かなと思いました。
回答
・小沢議長:コメントとしてよろしいですね。
・前田氏:はい。
*拍手多数により承認された。

●第3号議案 2024年度活動計画(案)
 大野会長に代わり、垣田悦子氏が議案を読み上げた。
*質問者なし、拍手多数により承認された。
●第4号議案 2024年度予算(案)
 会計担当中野早苗氏に代わり、小島朋子氏が議案を読み上げた。
第4号議案への質問1
・中込氏:今年度のシステムの変更で100万円くらい使うのではないかと言うお答えをいただきましたが、今年の予算のどこに反映されているのかお聞きしたい。もうひとつ、繰入金0とあるが0を記載する必要があるのでしょうか。それとも何かいくらか入る予定でもあるのでしょうか。もし入るのであれば10円とか20円とか入れておけば、決算で調整すればよいことで、0のものを予算化する必要がどこにあるのか疑問に思いました。
回答
・中野氏:システムの変更に100万円を使うという意見はなかったと思います。今後役員が手作りでやってきた諸々のことを業者に委託するという機会は増えてくると思います。そうするとその分の経費がかかると予想されます。100万円はかからないと思います。
・中込氏:その委託費は予算書のどこに載っているのですか、予算書の中に入っていないような気がします。
・中野氏:たとえば、行事の中で使えば行事費になりますし、ボランティアをたくさんお願いすればボランティア経費になりますし、先ほどのように郵送費に使われれば郵送費に計上されます。
・中込氏:そうすると各品目でたりなくなるのでは、もう少し予備費を取らないとやっていけなくなるのではないですか。予備費は3万円ですよね。たりるのでしょうか。
・中野氏:それはやり方次第だと思います。
・江澤氏:繰入金は、以前アイフェスタでプラスになったものを入れていましたが、最近はそれがないので繰入金は0になっています。
・中込氏:決算書になかったのですよね。去年もないのだから、今年も予算化する必要性がないと思うのですけどね。あえて記入したということは理由があるのでしょうか。
・中野氏:繰入金がでるかもしれないし、あくまでも予算ですから。
第4号議案への質問2
・遠藤氏:寄付金のことで、3万円の寄付金は計上していますが、網膜募金は今年は0ということでよろしいのでしょうか。
昨年も網膜募金のことでお願いしましたが、もうこの会ではしないということを今後続けていくおつもりでしょうか。
・中野氏:網膜募金のことについては最近2〜3年の間役員会の中でもさまざまな意見がでて、議論も長く続けました。それで、JRPSちばの会計から支出されませんが、さまざまなイベントの中で網膜募金活動を活発におこないます。今回のダブルレインボー音楽祭ではかなりの募金をいただき本部に送金ができました。その活動を通して網膜募金をしていくことに役員会では決まりました。よって予算には上げておりません。
*拍手多数により承認された。

●第5号議案 役員の選任(案)
 大野会長に代わり、垣田悦子氏が議案を読み上げた。
第5号議案への質問
・中込氏:会長、副会長、会計がいっさいわからないんですが、ここで互選するのですか。
回答
・小川氏:書き込むことは失念していましたが、会長、副会長、会計は総会で決めるのではなく、役員会の互選と言うことで決めています。通常は4月から3月でやっているのですが、今回は留任と言うことで特に辞める人もいなかったのでそのままにしています。会長、副会長、会計は役員会で互選と書いた方がよかったと思いますのでお詫びをします。
*拍手多数により承認された。

●第6号議案 JRPSちば名称変更(案)
 大野会長に代わり、垣田悦子氏が議案を読み上げた。
第6号議案への質問
・中込氏:ひらがな表記の「ちば」になったのはいつからなのでしょうか。「ちば」という表記を苦心してひらがな表記にしたのだと思いますが、決めた人に意見を聞いたのでしょうか。私は字面がとても柔らかくて親しみがもてるひらがなの方がいいと思います。カタカナやアルファベットがでてきた時に皆さんで話し合って加えるのでしょうか。
回答
・小川氏:役員会でもいろいろと意見がでて議論をしたのですが、決をとった結果3つの意見にわかれて、どちらでも使えるようにしようという意見が一番多かったので、それで会則の変更をおこない総会で承認を求めました。
・江澤氏:ひらがな表記の「ちば」に決めた担当の方には連絡をしましたので、ご了承をいただきたいと思います。
*拍手多数により承認された。

※第6号議案承認の後、Zoom参加の鈴木氏から会計監査の報告がされていないとのご指摘があり、会計監査の森尻真次氏が2023年度の決算報告が、正確適正であることの報告を読み上げた。


●その他
※新役員の3人からご挨拶がある。
11時55分終了

 上記の決議を明確にするため、この議事録を作成し、議長及び議事録署名人が次に捺印する。
第27回千葉県網膜色素変性症協会定期総会
議長       小沢 三千晴
議事録署名人   垣田 悦子
議事録署名人   藤代 くに子
議事録作成者   川野 義一


★医療講演会のご報告
日時:2024年6月23日(日) 13時〜15時
会場:千葉市民会館 第1第2会議室
講師:千葉大学医学部眼科講師 三浦 玄(みうら げん)先生
演題:「網膜色素変性に対する治療法開発の現状」
 本年は講師三浦先生に会場に来ていただき講演をしていただきました。講演後には
・治療法の中で、1番に早くに確立するのは?
・遺伝子検査をしておくべきか?
・20年以前におこなった遺伝子検査資料は有効か?
・日常で視力低下の進行を遅らせるためにできる事は?
などの会員からの質問にも一つ一つ丁寧に応えていただきました。

・講演内容(以下は三浦先生にお願いして講演内容をまとめていただきました。)

   「網膜色素変性に対する治療法開発の現状」
  現在行われている網膜色素変性に対する治療法研究には、主に網膜再生医療、遺伝子治療、人工網膜がある。以下にそれぞれの研究の概要を示す。

 1.網膜再生医療
  網膜再生医療とは主にiPS細胞を用いた網膜移植を指す。私たちの体の細胞は同一のゲノムを持っているが、それぞれの細胞が特定の臓器へ分化するために必要な遺伝子情報以外は読まれないようになっており、あらかじめ決められた細胞や臓器にしか分化しないようになっている。卵子などの生殖細胞やES細胞(胚性幹細胞)にはこれらの制限を初期化し、あらゆる細胞や臓器へ分化するようにすることができる能力があることがわかっており、京都大学の山中教授らは、生殖細胞やES細胞に特異的に発現すると呼ばれる4個の遺伝子を絞り込みマウス線維芽細胞に組み込んだところ、あらゆる細胞への分化が可能な細胞を作ることに成功した。これがiPS細胞(人工多能性幹細胞:Induced Pluripotent Stem Cell)である。
iPS細胞は脊髄損傷、虚血性心筋症、パーキンソン病、血液疾患などの治療に用いられており、眼科領域でも角膜幹細胞移植や角膜内皮細胞移植といった臨床への応用が報告されている。網膜疾患では、加齢黄斑変性と網膜色素変性への応用が期待されている。
 網膜色素変性への移植方法としては、解離細胞移植と網膜シート移植の2つの戦略が試みられている。解離細胞移植は、選択あるいは精製された細胞集団を移植できるという利点があるが、免疫原性反応によって移植細胞の生存率がしばしば低下するという欠点がある。
  網膜シート移植が、移植細胞が層状構造を持つため視細胞が極性を維持でき、移植後長期間生存できるという利点があるが、網膜シートには視細胞以外の細胞も含まれるため、ホストと移植片のシナプス統合を阻害する可能性がある。いずれの方法も現時点では遺伝子型によらず応用可能と考えられている。
  国内では主に網膜シート移植に関する研究が多く行われている。rd1という網膜変性モデルマウスへマウスiPS細胞由来網膜シート移植を行った報告では、宿主の双極細胞が樹状突起を伸ばして移植片領域のシナプス前に到達し、移植片視細胞核が、宿主双極細胞の先端でシナプス後と結合したことが確認された。移植した網膜変性マウス21匹と、移植しない網膜変性マウス9匹にシャトル回避テスト(光に対する反応をみる試験)を行ったところ、移植したマウス21匹中9匹で光に対する反応を認めた一方で、移植しないマウスは9匹とも光に反応しなかった。霊長類(サル)網膜変性症モデルへのヒトiPS細胞由来網膜シート移植も試みられている。サルの網膜にレーザー照射を行い、ヒトiPS細胞由来網膜シートを移植したところ、移植片は2年間長期生存し、移植部位の網膜感度は改善したことが報告されている。
  シート移植の欠点として、移植するiPS細胞内の双極細胞が、移植するiPS細胞内の視細胞と、宿主の双極細胞の間の神経接合を阻んでしまう可能性が挙げられる。この欠点を改善する試みとして、双極性細胞分化のための転写因子ノックアウトであるIslet1-/- (Isl KO) およびBhlhb4-/- (B4 KO) 細胞株から移植シートを確立する研究が行われている。このノックアウト移植片を移植したところ、移植片内の双極細胞が減少し、通常の移植片と比較して宿主双極細胞当たりの移植片光受容体神経接合数が増加、さらに通常移植片と比較して 移植後の光応答性が良好だったことが報告された。このような遺伝子組み換え移植片を使用すれば、従来の網膜シートを使用した場合よりも移植後の機能回復が向上する可能性が示唆される。
  ヒトへの応用は加齢黄斑変性と網膜色素変性に対して行われている。加齢黄斑変性患者に対しては、網膜色素上皮移植が行われている。自家移植(自分の皮膚から作成したiPS細胞を用いた移植)を行った1例報告では、視機能に変化はなかったが、安全性と網膜形態の改善が報告されたが、自家移植には莫大な予算と時間が必要であった。
  次に2017年3月に、HLAが適合した細胞株を用いて網膜色素上皮細胞を分化した解離細胞の懸濁液を5名の加齢黄斑変性患者の網膜下に投与する他家移植が行われた。安全性が主要評価項目であったが全例で様々な程度の合併症が起こり、うち2例において重篤な合併症(黄斑浮腫を伴った網膜前膜と眼内炎)が発生した。さらに、HLAが適合していたにも関わらず拒絶反応を示した症例もあった。治療後で視力の改善は見られなかった。米国では、脈絡膜に新生血管を伴わない萎縮型加齢黄斑変性患者へ網膜色素上皮細胞を移植する治験が行われており、現在も試験への参加募集が行われている。
  網膜色素変性に対しては、神戸アイセンターにおいて患者2名を対象に世界初となる同種iPS細胞由来網膜シート移植が実施され、その結果が昨年末に報告された。主要評価項目は移植後1年目の網膜シートの生存率と安全性、副次評価項目は移植手術の安全性と視覚機能の評価で、移植片は2年間安定した状態で生存し、2名とも重篤な有害事象を起こすことなく移植部位の網膜の厚さが増加した。追跡調査中の視覚機能の変化は、未治療の眼の変化と進行性が同等またはやや緩やかであったが、視力の改善は認めなかった。
  iPS細胞を用いた網膜移植にはいくつか課題がある。ひとつ目は拒絶反応である。患者本人のiPS細胞を用いれば拒絶反応が起きにくいが、高額の専用施設整備維持および技術者の人件費が生じ、しかも完成に約10ヶ月程度かかる。HLA(白血球の血液型)が一致する細胞を使用すると拒絶反応のリスクが低下する。京都大学のiPS細胞研究応用センターは、日本人の第1位、第2位、第3位のHLAハプロタイプを合わせ持つ3つのiPS細胞株(日本の人口の約32%をカバー)を樹立した。
  ふたつ目の課題は腫瘍化である。iPS細胞は同じ人から同じ方法で作った場合でも、細胞株によって増殖や分化する能力にばらつきがある。分化能力が低いiPS細胞を用いると細胞の集団の中に分化しきれていない細胞が残ってしまい、テラトーマと呼ばれる奇形腫(良性の腫瘍)を形成する危険がある。以前の研究で、非常に癌を発症しにくい特徴を持つハダカデバネズミの皮膚からiPS細胞を作製することに成功し、癌化しないことが確認された。また通常のマウスのiPS細胞でハダカデバネズミが持つ癌抑制遺伝子ARFを活性化させると、がん細胞の形成が抑えられることも判明した。
  3番目の課題は費用である。従来の手作業での作製では専用施設の整備や維持、技術者の人件費などのコストがかさみ、1人分のiPS細胞の作製に約4000万円かかるとされる。国内企業などが開発した方法では、血液から赤血球など不要なものを取り除き、残った細胞に遺伝子を導入する機器を開発した。それを用いればiPS細胞を増やして回収するまでは約20日間しかかからず、人の手が必要なのは血液や試薬のセットと、iPS細胞を回収した容器を取り出す作業だけであるため、品質の安定が期待できる。開発企業はその機器によって一人当たりのコストを100万円程度に抑え、年内の全自動の装置の完成と来年の実用化を目指している。

 2.遺伝子治療
  遺伝子治療とは、異常な配列をもったDNAに対して正常な配列をもった遺伝子を導入する治療法である。遺伝子の導入には、治療用の遺伝子情報を組み込んだウイルスベクターを異常な遺伝子を持つ細胞内に浸入させる手法が主流。眼は免疫的に独立しており、炎症反応低く、副作用出にくく、薬剤導入が容易であり、治療評価が行いやすいため、遺伝子導入に理想的な臓器である。現在特定されている広義の網膜色素変性の原因遺伝子は100種類以上あるが、日本人にはそのうち30種類が検出されており、その頻度もわかってきている。国内でもいくつか遺伝子検索の報告があるが、原因遺伝子の同定率は大体40〜50%である。原因遺伝子によっては大まかな視機能の予後がわかってきているものもある。
  2023年9月に、RPE65という遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィーに対する遺伝子治療薬(ルクスターナ)が国内で承認され発売となった。RPE65遺伝子はビタミンAサイクルのメンバーをコードする遺伝子であり、視細胞に発現するオプシンタンパクが光を受容する際に使用する11-cis-retinalの供給が滞ることによって光受容性が低下し、先天的に高度な低視力を呈する。ルクスターナの第3相治験は 2012年に行われ、治療群20人、対照群9人に硝子体内注射が行われた。1年後の両側MLMT変化スコア(障害物などを避けてスタートからゴールまでを歩くテスト)の結果、治療群20人中13人(65%)がMLMTに合格したが、対照群には合格者はいなかった。またFST(暗所の中でわずかな光刺激を感じるテスト)のスコアが有意に改善した。治療に関連する重篤な有害事象や免疫反応は発生しなかった。
  ルクスターナの発売を受け、国内でも特定の遺伝子検査が保険収載となったが、これはRPE65遺伝子変異による網膜変性が疑われる患者にのみ適応になる。治療は硝子体手術に準じて網膜下に薬液を注入して行われる。ルクスターナは期待されている新薬だが、若い症例の方が効果が高いこと、3年以上の長期成績でも重篤な合併症がなく安全性が確認されたが、網膜感度は6ヶ月〜12ヶ月をピークにほとんどの症例で減少したこと、視機能は改善していても視細胞死は続いていることなどいくつか課題もあり、より強力で持続力のある治療法開発が望まれる。
  現時点でClinicaltrials.govという治験登録サイトには、62の網膜色素変性関連の治験が登録されており、うち10個の原因遺伝子に対して遺伝子治療関連の治験が登録されている。現在のメインは正常な遺伝子を導入する遺伝子補充療法だが、その適応は本邦の網膜色素変性患者の数%しかない。安全かつ効率的に遺伝子導入可能なアデノ随伴ウイルスベクターには容量制限があり、4000bp(base pair: 塩基対)以上の遺伝子を搭載すると治療効率が大幅に低減する。頻度の高い遺伝子ほど遺伝子サイズが大きくなり、また優性(顕性)遺伝のほとんどは変異により遺伝子が異常機能を獲得するため、正常遺伝子を補充しても治療効果が得られにくいからである。このような遺伝子補充療法で対応できない疾患に対してはゲノム編集治療が検討されている。
  ゲノム編集治療とは患者のゲノムそのものを書き換えるもので、遺伝子サイズは関係なく、治療効果も永続的であり、優性(顕性)遺伝の異常機能獲得変異を破壊することができる。また遺伝子補充と併用可能である利点があるが、治療効率が低い(狭いゲノム領域に限定される)というデメリットがある。ゲノム編集では、DNA切断酵素である。CRISPR-Cas9 (clustered regularly inter-spaced short palindromic repeat(CRISPR)-associated protein)と、一緒に治療標的細胞に発現させることによって特定の結合部位のゲノムを切断する治療である。この技術を用いて全盲マウスモデル (Pde6ccpfl1/cpfl1Gnat1IRD2/IRD2マウス)に遺伝子編集を行ったところ正常の60%程度まで視力回復した。海外ではレーバー先天盲タイプ10患者に対してゲノム編集を用いてCEP290遺伝子の変異を取り除き、正常な蛋白質の生成を誘導する薬剤を投与する治験が開始されている。
  その他の遺伝子治療の試みとして、九州大学で研究が行われている神経栄養因子であるヒト色素上皮由来因子(hPEDF)の遺伝子を搭載したベクターの投与や、低分子化合物4種類 (transforming growth factor-β inhibitor, bone morphogenetic protein inhibitor, glycogen synthase kinase 3 inhibitor,γ-secretase inhibitor)の硝子体内注射が挙げられる。
  近年では光遺伝学(オプトジェネティクス)の網膜色素変性治療への応用も期待されている。光遺伝学とは藻から取り出した特殊なタンパク質を神経細胞に発現させることで、光により特定の細胞を非侵襲にコントロールすることにより光刺激により神経活動を任意のタイミングで操作する技術である。この技術を応用して、本来光刺激を受け取る視細胞以外の網膜細胞(双極細胞や神経節細胞)に光刺激を受け取る機能を与えることによって網膜色素変性の治療を行おうとする試みがなされている。慶應大学からは、動物型と微生物型のロドプシンを組み合わせることにより、高感度かつ視サイクル不要で働くキメラロドプシンを作成し、それをAAVベクターに搭載し、網膜双極細胞で発現させると、双極細胞での高感度視覚再生、視細胞での神経保護効果が得られたことが報告された。網膜変性モデルラットおよびマウスを用いた研究では、光遺伝学を用いることによって視機能が改善したとする報告が複数存在する。海外では網膜色素変性患者に対するChR2遺伝子を用いた治験が2試験進行中である。
  またイギリスからは、電気刺激に応答して発光したり、逆に光エネルギーを電気エネルギーに変換するように設計できる2〜10nmほどの半導体結晶である量子ドットを網膜色素変性患者の硝子体中に投与した結果、視機能が改善したとする報告がなされている。

 3.人工網膜
  現在海外で用いられている人工網膜には、米国のArgusU Retinal Prothesis System( 治療対象:完全失明、0.0012未満、視野20度、解像度60pixel、価格$150000)、欧州のAlpha IMS ( 治療対象:完全失明、光覚、外部カメラ不要、解像度1600pixel、価格$113000)がある。国内では大阪大学が開発している脈絡膜上-経網膜刺激方式のものがあり、従来の網膜上または網膜下に移植するタイプと比較して安全に移植が可能である。現在臨床治験が計画されている。
  その他にも、岡山大学が開発している光を吸収して電位差を出力し、神経細胞を刺激する光電変換色素をポリエチレンフィルム表面に化学結合した色素結合薄膜型人工網膜や、スイスの研究者が開発している光を電流に変える光起電力素材を使用し、電荷を画像として記録するのではなく電流を網膜に送り込むタイプがあるが、いずれも臨床試験計画中の段階である。
     以上


★ミニミニ交流サロンのご報告
◆「千葉サロン」6月のご報告
担当 大野
 6月16日(日)朝には雨も上がって、男性2名、女性4名、ヘルパーさん3名での交流会となりました。
 千葉サロンに何年ぶりかに参加された方と、初めての方がいらっしゃいましたので、まずは近況報告をしていただきました。皆さん活発に日々を過ごしていらっしゃるようでしたが、やはり視力の低下や、見え方の変化に不安もあるようで、しばらくは「目を閉じると、光の輪が落ちていくのがみえる」とか「暗い所でも白く明るく感じる」とか色変の独特の症状の話が続きました。
 皆さん治療法確立への願いは勿論ですが、同時に福祉機器への期待も大きいようです。AIスーツケースの体験に行かれたり、スマホの歩行ナビアプリで外出したりと一人歩行にはやはりあこがれますよね。現在では歩くだけではなくて、一人で走ることを目指す開発研究も進んでいるようです。ほんとうに皆さん色々な情報をご存知で、あっというまに時間が過ぎました。
 その後1階に下りますと、ロビーに「本日の大賀ハス(おおがハス)の開花は451本!」と張り紙があります。千葉公園の池の大賀ハスの満開の時期にピッタリ合ったようで、時間の許す数人で見にいってきました。大賀ハスの池には木道(もくどう)が渡してあり、渡りながら両脇のハスの水をはじく大きな葉と、そこから茎をのばした淡い桃色の花を触って観賞してきました、ただ残念なことに午後は大賀ハスは花びらを閉じてしまうとのことで、ほとんどの花がつぼみになっていました。満開の大賀ハスを見たいという方は是非早朝に行かれることをお勧めします。きっとすばらしい眺めだと思いますよ。


◆「千葉サロン」7月のご報告
担当 小島
 7月13日(土)の参加者は、当事者11名、ご家族1名、支援会員さん1名、ガイドヘルパーさん3名の16名となりました。
 7月から新しく発行されている新紙幣を持ってきてくださった方がいらっしゃいました。全員で回して手触りを確かめました。新紙幣には11本の凹凸を感じる斜線(識別マークというそうです)がありました。一万円は左右両端の高さが中央の位置に、五千円は上下の幅中央の位置、千円は左右両端の高さが右上と左下(お札の肖像を正面にして)にその識別マークがあります。見た目にはホログラムの中に人の顔が見え、立体的に浮かび上がります。裏面のデザインも美しく、五千円札裏の藤の花と千円の富嶽三十六景の繊細な波の絵が印象的でした。(ちなみに、一万円札の裏は東京駅です)
 途中で、鹿児島の徳之島出身の当事者の方が手作りした「サーターアンダギー」というボールの形のドーナツをいただきました。作るときは、低温の油の中で、箸で回しながら揚げるそうです。とても揚げたとは思えないほど食感が軽く、ほんのり甘くておいしかったです。
また、翌日に同行支援の講習会があるようで、香川県(神奈川ではなく四国の香川です)から関東に出張に来ていた方が、ヘルパーさんとしていらっしゃいました。こちらの方は、JRPS香川の支援会員で事務局長をされているそうです。JRPS香川では晴眼者の支援会員の方が8名もいるとのことで驚きました。どうしてそんなに支援会員の方が多いのかお聞きしたところ、会長さんの勤務する会社の関係者や、行きつけの床屋でスカウトしたとのこと。一番驚いたのは、チラシを入れたところ同じマンションの方が支援会員になってくださったということでした。積極的に声がけをすると案外お手伝いしてくださる方が見つかるのかもしれません。
次の千葉サロンは8月9日(金)です。千葉サロンは皆さまの参加をお待ちしてお
ります。


◆「柏サロン」6月のご報告
担当 若松
 6月16日(日)は新しい方も含めて16名の参加がありました。内訳は、当事者男性9名、女性4名、家族の方2名、ヘルパーさん1名でした。
 そろそろ梅雨入りの時期ですが、天気予報ではその日も暑くなるということで、家を出たら玄関脇にあるくちなしの蕾が開花してきたのか、甘い匂いがほのかに漂ってきました。くちなしの花は夏の始まりを知らせ、花言葉は「喜びを運ぶ」ということを知り嬉しくなりました。
 今月は新しくこられた方がおられたので、各自の目の状況から話していただきました。
千葉大学の眼科の先生の紹介でこの会を知ったと言う方がおられました。
 障害者手帳をまだ取っていないが取るべきかとの話がでました。それについては手続きに多少お金がかかっても、メリットの方が大きいのでぜひ取るべきだとの意見が大多数でした。
 白杖を持っているが歩行訓練を受けるべきかとの質問もでました。過去に歩行訓練を受けた方が概要を説明してくれたので、そのメリットを理解してもらえたと思います。
 近況報告の中には、怪我をして近々手術を受けるつもりだが、入院生活になるので悩んでいる方もおられました。
 久しぶりに帰省したら、病気の進行のためか、慣れた道でさえ迷ってしまったという方もおられました。
 旅行の話では、旧国鉄の車両が引退するので、わざわざダイヤを調べて乗りに行ったのに、事故があったため新型車両に変わってしまっており乗れず、残念がっていた方もおられました。
 船旅のクルーズや海外旅行を楽しみにされている方もおられました。
先日家族の方が特殊詐欺に引っかかりそうになった方もおられました。音声パソコンを操作中に固まってしまい、そうこうしているうちに架空のコールセンターに誘導され、修復するには最寄りのコンビニから送金するように案内され、不審に思った家族の方がコンビニに電話して危うく止められたとの事でした。身近な話として聞くと怖いですね。
 そうこうしているうちに、11時半の終了時刻が迫ってきたので、来週の総会と医療講演会の話をしました。5月に初めて開催したオンラインによる柏サロンは好評だったので、7月も柏サロンの前後の平日の午後1時から開催予定であることを伝えました。前回は7名の参加がありました。今後も子育て中のママさんの参加も歓迎します。次回の柏サロンの日程を伝え終了しました。
 今月は新しい方も3人おられて2時間の枠では充分時間が取れなかったような気がしました。その後一緒にランチに行った新しい方から、「知らなかった話も聞かせてもらい、同じ病気の患者同士で共感する部分が多かった」と感謝されたことが嬉しかったです。


★「柏サロン」7月のご報告
担当 山崎
7月14日(日)の参加者は、当事者14名、ご家族3名、ガイドヘルパーさん4名(計21名)となりました。
朝から雨で蒸し暑い日でしたが、今回初めての方2名を入れて部屋一杯の参加者でした。
昨日の千葉サロンで話題となっていた新紙幣のことをお聞きしましたが、お持ちの方はいませんでした。
 家で風鈴を探していたら、卒業名簿が見つかり、電話で連絡をとり柏で久しぶりに会って、そのことをラジオに投稿したら採用された。
 特定難病受給者証更新、障害者手帳、福祉タクシー券、家事支援と同行援護の受給者証についてなど。
見え方の状況についてお聞きしたところ、真っ黒の方や霧の中の方、ドロドロの模様や一面ブロッコリーが出てきて、それが一瞬で黄色に切り替わる、そのことを病院の先生に説明したら、「その内に馴れますよ」と言われ本当にその見え方に慣れてしまった。
お気に入りのラジオ番組、今後の予定している旅行の電車の乗り換えスケジュール、10月の「JRPS創立30周年記念式典」について、9月の「第19回アイフェスタinちば2024」についてなどの多彩な内容でした。
次回の柏サロンは8月11日(日)です。柏サロンは同じ病気の仲間や視覚障害でお困りの皆さまなどの参加をお待ちしております。


★オンライン交流サロンのご報告(6月)
担当 渡辺
 梅雨入り前の6月8日開催の交流サロン。参加者は7名。久し振りのフリートークです。
まずは、「鉄道大好き!」という方がガイドさんと一緒に広島に行ったというお話から。広島ばかりでなく、ガイドさんと共に日本各地の鉄道を楽しんでいるそうです。「鉄道のことなら、いつまでも話し続けられる」というほどの「鉄ちゃん」です。見えなくなってもこれほど好きなことがあるのは幸せですね。うらやましくなりました。皆さんも交流サロンで「大好き!」なこと、話してみませんか?
 宅急便の不在通知の話題もありました。こちらからお願いすると、郵便局ではネットでの再配達の手続きを代行してくれるそうです。喪中はがきの差出人あてにお香典の郵送を手伝っていただくという方も。上手に助けを求められる視覚障害者になりたいものです。
 また、開発中のAIスーツケースやGoogleのプロジェクトガイドラインを体験した方のお話を聞くこともできました。参加者からいろいろな質問がでて、より具体的にイメージすることができ、今後役立ちそうな場面も考えられましたが、実用化にはまだ時間がかかりそうです。
 そして最近の詐欺の話や、それぞれの地域の話題もでて、2時間のサロンは終了しました。数人でも人が集まれば、話題はバラエティに富み、知らなかった話もいろいろと出てくるものです。このサロンは途中入退室OKです。皆さんも参加してみませんか?


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