あぁるぴぃ千葉県支部だより77号


■投稿■

★船橋保健所「難病講演会&交流会」に出席して

船橋市 遠藤 道子
 去る1月16日(月)、船橋保健所主催による、難病講演会が開催されました。
 私はこの地に転居して5年近くになりますが、いまだかつて網膜色素変性症患者として、 公共機関からこのような連絡をいただいたことはなく、今回が初めてでした。新しい情報 が得られることを期待して、参加することにしました。
 定員100名の会場は、定刻には埋め尽くされ、保健所長の挨拶で始まりました。所長 のお話によると、網膜色素変性症患者数は、千葉県では約3,300人、船橋管内では1 64人だそうです。国の指定難病疾患56のうち、管内で5番目に多い疾患であり、全国 で3千人〜4千人に一人いるといわれている患者数からすると、千葉県には約一割の患者 がいることになります。
 現状維持を願う一人として、少しでも進行を遅らせるには、今、自分にできることは何が あるのでしょうか? 昨今の臨床試験の成果が発表される中、まだまだ実用化には時間がか かりそうで、いまだ治療には至っていない状態です。 
 講演は、順天堂浦安病院の佐久間俊郎先生による「網膜色素変性症について」でした。 講演の一部を紹介します。
 まずは眼の構造と機能についてのご説明があり、網膜色素変性症の診断、検査、治療、 ロービジョンケアに至るまで、スライドを通してお話しされました。
 私の一番の関心ごとといえば、やはり『治療』です。お話によると、現在ある視力を最大 限生かし、日常生活用具を工夫して使用すること。アダブチノールの服用は継続してよいこ と。また、ビタミンA、カロテン含有食品を摂取することを勧められました。サプリメント の併用も可能だが、ビタミンA、ビタミンEの過剰摂取には注意が必要とのこと。
 点眼薬の臨床試験ではそれなりの成果はあったものの、第3相試験を待つ状態です。レス キュラ点眼薬(緑内障)についても触れられましたが、所見により「細胞萎縮」として処方 される先生もいらっしゃるようですが、主治医の判断が異なり、よく相談の上で判断するこ と。また、保護の役目を担う用具の一つとして遮光眼鏡の着用があるとも。まずは、「障害 者手帳をとり、特定疾患申請をして、病院に来てほしい」と、要望されました。
 他にも遺伝子治療、人工網膜移植、再生治療についてもお話がありましたが、いずれも研 究段階であること。
 最後に、ロービジョンの重要性をお話され、「見える事は生きる事。見えない人の手助 けをしたくて眼科医になりたかった」との、お言葉をお聞ききし、難病と闘う私たちの救 世主に大きな拍手を送り、講演は終了しました。
 特に新しい情報はなかったものの、効果的な治療法のない中、予防法として食生活の大 切さも改めて考えさせられました。
 また、「どうせ治らないから病院には行かない」と思っている方達には、特定疾患の申請 を済ませ病院に足を運びましょうと言いたいです。一人でも多くの患者が病院に行くことで、 積極的に私たち患者の熱意を表明することが、研究者にとっても、私たちにとっても克服へ の道につながるように思いました。皆で声を上げることが、私たちのスローガンでもある 「治療の確立」に向けて、研究者、厚労省のお役人の心の扉を開く近道ではないでしょう か? 間違いなく希望の光は夢ではないことと信じています。
 その後の交流会では、JRPS会員のかたが何人いらしたのでしょうか? 知り合いの少 ない私には探すこともできず、残念ながら知人と二人でした。
 また、機会があれば参加しようと思います。


★障害年金奮戦記  〜伝えたいこと〜

市原市 広瀬 富美子
 私は、平成21年4月30日に、障害年金(障害基礎年金及び障害厚生年金)の申請をし ましたが、平成21年11月5日付で「却下(初診日を確認することができないとの理由)」 とされました。
 「初診日が証明できないのは、私が悪いの? 網膜色素変性症のように、数年後、数十年 後に重度障害者になることが分かっているのに、カルテの保存期限を5年としている国や、 医療機関には問題がないの?」という思いで、2度不服申請しました。
 初診日のカルテがないので、申立書(本人、家族、職場の先輩)や、写真などの状況証拠 を添えて「審査請求」を提出(平成21年12月14日付)。
 翌年2月18日、さいたま市浦和区の「関東信越厚生局」まで意見陳述にも行きました。 しかし、同じ理由で「却下」の裁定(平成22年5月28日付)。あきらめきれず、同年7 月に「再審査請求」を提出しました。
 平成22年10月14日、社労士さんと主人に付き添われ、東京都千代田区の厚生労働省 庁舎に行き、「社会保険審査会」の場で意見陳述もしました。この審査会では、審査長の 「国民年金ではだめなのですか! 厚生年金でないと受けないのですか!」との冒頭での圧 制するような発言に、悔しさとむなしさで涙がこぼれ、私の思いをほとんど話すことができ ずに終わり、今でも無念さが残っています。
 審査会から、半年、1年が過ぎても裁決書は届きません。私がすべてを委託した社労士さ んから、何度も催促の電話を厚生労働省にかけていただきました。決裁書が届いたのは、審 査会から1年2ヵ月後の平成23年12月30日でした。
 裁決書の主文は「平成21年11月5日付けで、障害給付の裁定を却下する旨の処分を取 り消す」というものでした。しかし、私が主張した障害厚生年金は、「初診日を客観的に証 明する資料がないので認められない」という裁決でした。
 社労士さんからは、「再審査請求の結果は、初診日の確認ができないという理由で残念な がら障害厚生年金は認められませんでした。力およばず申し訳ありません。ただ障害基礎年 金については、当初の裁定請求手続きを生かす形で認められましたので、これまでの事例に 比べ手続き面と支給開始期日を遡って受けられるなど、大幅な好条件を得られたことは成果 だと考えます。また、今後の他の障害者の方の年金申請に関して良い先例を作ることができ たとも考えることができます」とメールをいただきました。
 2月23日に、平成24年2月16日付の「年金証書」が届きましたが、年金の支払いは 「年金証書」が届いてからおおむね50日後と記載されていました。私の場合は調整が必要 だと思いますので、さらに支払いが延びる可能性があります。障害年金をもらうまでには、 本当に時間がかかります。
 このように長期にわたって戦い、学んだことを、皆さまに伝えることが私の使命と思い筆 を執りました。この投稿文が、皆さまの、お役に立てたら幸いです。
〜伝えたいこと〜
1.初診日を証明できるもの(カルテの写し、診断書、診察券、薬の説明書など)を、必 ず保管しておきましょう。
 網膜色素変性症は残念ながら治療法がなく進行性であるため、将来、障害年金が受給で きる重度障害者になる可能性があります。(事後重症)
 私の場合は、昭和42年6月にコンタクトレンズの購入でN大学病院に行き、網膜色素 変性症と診断されました。当時、厚生年金に加入していましたので、社会保険事務所の方 に「障害厚生年金になります」と書類を渡されました。N大学病院に「受診状況等証明書」 を記入してもらいに行ったところ、カルテは、昭和60年にコンピューター化され、それ 以前のカルテは処分されているとのことで、証明してもらえませんでした。
 カルテ(保存期限は5年)以外に「初診日」を証明するものを探しました。例として、 会社の出勤簿(10年)、有給休暇届(5年)、健康保険組合の支払い明細(10年)、 コンタクトレンズ購入証明(購入の履歴や顧客情報は、眼科や販売店で管理する情報のた め、コンタクトレンズの会社では作成していない)など、すべて保存期限を過ぎて処分さ れていました。しかたなく、当時私の目の状態を良く知る職場の先輩や、家族の申立書を 提出しましたが、まったく認めてもらえませんでした。
 審査請求意見陳述の場で審査官から「初診日に薬をもらっていますが、この薬の袋はあ りませんか?」と真顔で質問されたときは、「あなたは、1週間前に飲み終えた薬の袋を 保存していますか?」と怒りがこみ上げてきたことを思い出します。要は、日付の入った 客観的資料でないと認めてもらえないということです。

2.「両眼の視野が5度以内(視能率による損失率が95%以上)」と診断されたら、2 級の障害年金の対象になります。視力があるからだめだと思っていませんか?
 2002年4月1日から、国民年金・厚生年金保険障害認定基準の一部改正で、視野狭 窄の「両眼の視野が5度以内のもの」が2級に追加されました。市役所の年金担当者の中 には、視野狭窄が追加されたことを知らない者もいました。
 私の場合、かかりつけの病院では「まだ視野は5度以上あるので、2級は無理」と言われ ていました。しかし、私より視野がありそうな方が2級と聞き、JRPSを立ち上げてくだ さったA先生に診ていただきました。結果は「視野の広いところで4度、狭いところは2度 台で2級になります」と診断されました。

3.障害年金の支払いは、事後重症制度の場合、請求した翌月分からです。そのため、障 害年金が受けられるようになったら、すぐに申請しましょう。(申請には、認定日請求、 遡及請求、事後重症の3種類の方法があるので、障害年金に詳しい社労士さんなどに相談 されることをお勧めします)
 身体障害者手帳の申請は年齢制限がありませんが、障害年金の申請は65歳になったら 申請できません。
 私の場合は、A先生から「障害2級に該当する」と言われ、市役所の障がい者支援課 に、身体障害手帳の更新に行きました。そこで担当者から「障害年金の手続きはされまし たか?」と促され、社会保険事務所に行き、早く申請の手続きをすることができました。

4.65歳以上の方で、老齢厚生年金(該当者)の申請をしていない方はいませんか?
 平成16年の年金制度改正により、平成18年4月から、65歳以上の方は障害基礎年 金と老齢厚生年金または遺族厚生年金をあわせて受けることができるようになりました。
 私の場合、初診日の証明ができず障害基礎年金の支給決定となりましたが、65歳に なったら老齢厚生年金を受けることができると、社労士さんから教えていただきました。 その結果、65歳からは障害厚生年金とあまり変わらない金額が受け取れることになりそ うです。

5.障害年金の申請を甘くみず、社労士さんなど専門の方に相談しましょう。
 私の場合、障害年金の申請を、本当に甘く考えていました。「却下」の二文字にすごく ショックを受け、素人の自分の力では無理と思い、同じ病気の方に紹介していただいた社 会労務士さんにすべてを依頼しました。最初からお願いしていたらと悔やんでいます。
 紹介していただいた社労士さんは、ご自身が車椅子の身体障害者さんで、障害年金に詳し いというだけではなく、障害者に寄り添う優しさ、障害に対する考え方、前向きな行動力な ど本当に多くのことを学ばせていただきました。
 本来なら「審査請求」の申請依頼をお願いした時点で、他の社労士さんなら「勝ち目がな いから」と受けてはいただけなかったと思います。でも先生は、私の思いを聞いてくださり 「広瀬さんのように現行の年金制度と医療制度のギャップの下で、事後的に重度の障害が発 生した者をどのように救済するのか」という思いで受けてくださいました。
 先生を紹介してくださったSさんと、M先生(社労士さん)には、「感謝! 感謝!」で す。3年近い長い戦いができたのもお二人の力強いバックアップがあったからです。

※障害基礎年金(障害厚生年金)の3つの要件
1.初診日要件(被保険者である間に障害の原因となった病気やけがの初診日があるこ と)
2.障害該当要件(障害認定日(原則、初診日から1年6ヶ月後)に障害等級に該当)
3.保険料納付要件(初診日に属する月の前々月までの被保険者期間のうち保険料納付済 み期間と保険料免除期間を合計して3分の2以上あること。または、直近の1年間に未納 期間が無いこと)

※事後重症制度
 障害認定日に1・2級(3級)の状態になくとも、その後65歳になる前までに障害の 状態が悪化し、該当する状態になった場合は、本人の請求により、請求した翌月分から障 害年金を受けられる。


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