「定例交流会 in 福岡」での質疑応答の概要
去る2月13日、福岡市の「ふくふくプラザ」で開きました福岡地区の定例交流会では、「網膜色素変性症を正確に理解しよう」と題した九州大学病院眼科の池田康博先生の講話及び参加者との質疑応答を行いました。
池田先生には来る6月5日に開催予定の「網膜色素変性症患者のつどい」で同趣旨のお話をしていただく予定にしております。
是非ご来場いただき、直接先生のお話に耳を傾けていただければ幸いです。
ここでは当日会場と交わされた質疑応答の内容の一部について簡単にまとめてみました。
(質問) 孤発型の患者と正常な人との間に生まれた子にはこの病気は発症しないのでしょうか?
(回答) 通常胎児の時期にこの病気に限らず、ある割合で遺伝子がキズが入るとされており、たまたまこの病気に関連した遺伝子に傷がつくこともあり得るので、発症の可能性がないとは言えない。また、逆に患者の子や孫には高い確率で発症すると思い込んで悩んである患者・家族を見かけるが必ずしもそうではないことを理解していただきたい。
(質問) 血流のよい悪いがこの病気に及ぼす影響は?特に喫煙については?
(回答) 眼底検査で血管の状態を調べるが、中心部の錐体細胞の状態と血流は関連している可能性は否定できない。加齢黄斑変性では喫煙により病気に罹りやすくなるとの結果が出ており、その理由のひとつが血流低下であるとされている。網膜色素変性でも同様のことが言える可能性はあると考えています。
(質問) 血流をよくすると思われる生活行動、例えば運動などが進行を抑制する効果を持つと言えるのか?
(回答) 残念ながら現在のところではマウスについてのデータはあるものの、人間に関してのデータはない。ただ、そうしたことに関心を寄せる眼科医は多く、そのうちにいいデータが出てくるのではないかと期待している。
(質問) 白内障の手術をし、眼内レンズを入れている。眼の奥にある網膜まで点眼薬が行き渡るのだろうかと素朴な疑問を持っているがいかがか?。
(回答) 目の中を通過して目の奥に到達する点眼薬の量は極微量であり、多くは目の周りにある結膜などを通じて目の奥に達すると言われています。
(質問) IPS細胞を活用した再生治療が確立された場合どの程度の視力の回復が期待で切れるのか?
(回答) 視細胞などの細胞そのものの再生は可能になっていますが、それがネットワークとして機能し、視力にどの程度結びつくのかは未知数であり、何とも言えない。臨床応用されたとしても、1.0などの良好な視力まで改善されるのは難しいかもしれない。
(質問) 現在試みられている治療研究では比較的進行の軽い状態の患者を対象としたものが一般的なのでしょうか?
(回答) 九大で試みている遺伝子治療や点眼薬を使った治療など、進行予防を狙った臨床試験では視機能の残っている患者を対象にした試験になる。逆に、人工網膜や再生治療、網膜移植などの臨床試験については、かなり進行した視機能が低下している患者が試験対象になってくる。臨床試験の狙いの違いにより対象となる患者群が異なると言えよう。
(質問) 例えば目の状態についてくよくよと心配するなどのストレスがこの病気の進行に悪影響を与えるのではないかとの意見があるが、どう思われますか?
(回答) 喘息に精神的なストレスが悪影響を及ぼすという説には裏づけデータがある。一方、この病気の場合には、具体的なデータはない。また、及ぼす程度は僅かとは思うが、恐らく関係があるんではないかと個人的には思っている。
(質問) この病気は亡くなるまで進行し続けるのでしょうか?
(回答) 残念ですが進行のスピードはそれぞれですが一般に少しずつ進行は続きますので、視機能が残るか否かは寿命との関係になるとしか言えません。
上記以外にも、インターネット上に流されている外科的治療の実効性についての質問などが出されました。
最後に、
「どうせ治らない病気なんだからということで経過観察をされない患者さんがおられますが、合併症の進行で急に視力が落ちることもあります。
合併症の中には治療が可能な疾病もありますので是非定期的に受診をなさってください」
との先生からのお言葉がありました。
残された視機能を上手く維持しながら大事に使っていこうと改めて思いを新たにしました。
(文責 松延)