あぁるぴぃ広島 12号


■情報コーナー■

3 車椅子ロボット Q&A

      森 英雄(山梨大学名誉教授、ロッタ有限会社取締役)

1)Q.どのようなロボットですか?

A.市販の電動車椅子にビデオカメラや障害物検知用の光電センサ、コンピュータ、ス ピーカ、コンピュータ用バッテリなどを乗せたロボットです。電動車椅子の操作卓の レバーを人間が押す代わりにコンピュータが押して走行したり停止したりします。実 際にはレバーを押したのと同じ命令をコンピュータが作ります。これらの装置は小さ くて椅子の下に収まります。

2)Q.どのような人が利用するのですか?

A. 視覚障害者、身体障害者、高齢者の中で単独歩行が出来なくて介助者を必要とする 人が利用します。利用者はロボットに乗ったり、後部のハンドルにつかまって歩きま す。ただし、盲導犬や白杖を利用できる視覚障害者、車椅子を利用して移動する障害 者やショッピングカーを利用して歩く高齢者には無用の長物です。

3)Q.どのような場所で利用するのですか?

A. 病院や養護老人ホームなどの室内や敷地内などの、交通事故の心配のないところで 利用します。ロボット特区では道路で利用することが出来ます。将来、ロボットの信 頼性が認められ道路交通法規が改正されれば視覚障害者でも道路で利用できるように なります。現在の道路交通法規では、視覚障害者は道路を歩くとき白杖か盲導犬を利 用しなければなりません。

4)Q.どのような地図を用いて誘導するのですか?

A. 車椅子ロボットをカーナビ付きのロボットと比較して説明します。 ☆ 相似点:どちらも経路、交差点、施設名などを電子地図に記録しておけば誘導す ることが出来ます。しかし記録されていない経路は誘導できません。 ☆ 相違点1:カーナビ付き自動車ではドライバーが眼で道路環境を認識して車を操 縦するのに対し、車椅子ロボットはビデオカメラなどのセンサーで環境を認識してロ ボットが操縦します。
☆ 相違点2:電子地図の精度が違います。カーナビの地図の精度は道路や交差点を 位置決めするために数mになっていますが、車椅子ロボットの精度は廊下や歩道から はそれないように数cmになっています。
☆ 相違点3:カーナビの電子地図は利用者を特定せずに誰にでも使えるように作ら れていますが、車椅子ロボットの電子地図は利用者個人に対応して、利用者の行きた い場所、利用者の障害のレベルに応じて個別に作られています。

5)Q.どのような原理で走行環境を認識し走行しますか?

A. 通路に沿って長く伸びているもの(サインパターンといいます)の映像をビデオカ メラで撮りコンピュータで画像処理して認識します。例えば、室内ならば床と壁の境 目、カーペットの端、テープなど、道路ならば縁石、点字ブロック、白線、横断歩道 マークなどがサインパターンになります。車椅子ロボットはこのサインパターに沿っ て走行し、曲がり角や横断歩道の前などで一時停止します。利用者が安全を確認して からスタートボタンを押すと、ロボットは次のサインパターンに沿って移動します。

6)Q.エレベータに乗ったり、売店内を移動できますか?

A. 自動では移動できません。ロボットのスイッチを手動に切替え、利用者または支援 者が操作卓のレバーを操作してエレベータ内や売店内を移動し、手動に切替えた地点 に戻ってからスイッチを自動に戻すと走行を続けます。

7)Q.障害物があるときはどうしますか?

A. 障害物は光電センサで前方30cmから3m先にある物の位置を検出します。障害 物を検知したら、ピンポンという音を鳴らして減速します。約30cm手前で一時停 止し、ピンポンピンポンという音を鳴らします。障害物がどいてくれたら走行を再開 します。一定時間たってもどいてくれない時は左右に回避する空間があるか否かを調 べて回避します。障害物が自動車の時はビデオカメラで10m先から3m先に駐車中 のものを検知します。交通信号は検知しません(逆光の時、ビデオカメラの画像では 判別できないからです)。利用者が聴覚で信号を判定してください。

8)Q.走行速度や持続時間などを教えてください.

A. 走行中に速度を時速4キロ、3キロ、2キロに変えることができます。1回の充電 で2時間走行することが出来ます。

9)Q.ロボットの手入れはどのようにしますか?

A. ロボットを動かす前に電動車椅子のバッテリとコンピュータのバッテリを充電して おきます。タイヤの空気が入っているか否かをタイヤを手で押して確かめます。

10)Q.電源投入はどのように行いますか?

A. 最初にロボットを出発点に置き方位を合わせます。出発点の位置と方位を合わせる 手掛りはあらかじめ決めておきます。電源SWをオンにします。ロボットはピーという 音をならし電源が入ったことを知らせます。次に2つのバッテリが充電されているか 否かを確認し音声で知らせます。次にセンサなどの機器が正常に動作するかをロボッ トがセルフチェックして音声で知らせます。
11)目的地入力

 セルフチェックが終わると、ロボットは“現在位置はどこですか”、次に“目的地 はどこですか”と音声で聞いてきます。利用者はテンキーパッドから現在位置を示す 番号と目的地を示す番号を入力します。手持ちの携帯電話またはPHSから管理セン ターを呼び出し音声の指示に従い現在位置と目的地の番号を入力することもできま す。

12)Q.電子地図はどのようにして作るのですか?

A. 専門のオペレータが操作卓のレバーを操縦して車椅子ロボットを走らせて経路をロ ボットに記憶させます。この操作をティーチングといいます。ティーチングを行うオ ペレータは、誰でも良いわけではなくティーチングの訓練を受けた人がなります。オ ペレータは利用者から立ち寄りたい場所、例えば友人宅、コンビニや病院など、を聞 き安全な経路を選んでロボットを動かし、それらの地点で位置データを入力します。 ロボットは経路の走行軌跡データやサインパターンの画像データなどを記憶します。 また利用者の障害のレベルに応じて、オペレータは警告メッセージを入力します。

13)実用化計画
 平成15年度に車椅子ロボット試作機を完成し開発者による機能テストを行い、平 成16年度に病院、施設などで実証評価実験を行なって、改良とサービスコストを見 積もり、ビジネスモデルを作ります。平成17年度から関東、山梨の近隣の県の病院 施設で販売、レンタル、リースを開始します。

14)Q.価格はどのくらいですか?

A. 製造原価は10台製造したとき200万円、100台製造したとき150万円と予 想しています。


研究開発
ロッタ有限会社
〒400-8511 甲府市武田4-3-11 
      山梨大学地域共同開発研究センター2F
п@055-255-6118 
email:forest@kaede.clab.yamanashi.ac.jp

普及活動
 特定非営利活動法人 歩行ガイドロボット開発普及研究会
 〒407-0263 韮崎市穴山町4060-3
 п彦ax 055-251-3929 




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