3.活動報告 

※4月13日 医療講演会
 報告:I.K
     4月13日にJRPS岡山県支部の総会と医療公園を行ないました。場所は岡山国際交流センター2階の国際会議場でした。午前中の岡山県支部の通常総会が長引き、会場の準備が整わないままの開催になってしまいました。ご参加いただいた方々にはたいへんご迷惑をおかけして、申しわけありませんでした。
     今回の講師は九州大学大学院医学研究院眼科学の池田康博先生でした。演題は『網膜色素変性症の遺伝子治療』ということで、私たちには非常に興味があるお話しでしたので、県内外から多くの皆さんに参加していただきました。
     池田先生の自己紹介
     平成元年九州大学医学部入学。平成7年に人工の眼球を作りたい、もしくは眼球の移植がしたいという希望を持って眼科学の道に進む。
     人工の眼球はロボット等が映像を送れるので、案外簡単に出来るかもしれないと思った。ところが専門的に勉強してみると、実現は程遠いと感じた。
     そこで遺伝子学との出会いがあった。平成9年から6年間遺伝子治療の勉強を続ける。この6年間の勉強成果を生かし、臨床応用につなげたいというのが、今の夢だ。
    平成15年から九州大医学の眼科外来で、網膜色素変性症と、緑内障の専門外来を行なっている。
     ここから本題に入ります。
     最初は網膜色素変性症の概論でしたが、これは省略し、以下は次のようなテーマで報告します。
     @遺伝子治療がどういうものか
     Aそしてそれが網膜色素変性症にどのように応用されようとしているのか
     B臨床応用に向けた取り組みはどうか
     網膜色素変性症を発生させる傷ついた遺伝子の種類は現在わかっているだけでも40種類以上あります。しかしこれは氷山の一角にすぎません。実際には100種類以上あるのではないかと言われています。遺伝子とは我々の体の設計図だと理解してください。我々の体の細胞一個一個の中には、DNAというものがあり、その上に約3万個の遺伝子がのっています。
     この3万個の遺伝子の情報の制御によって、それぞれの細胞が形を決めている。この遺伝子のミスがたまたま物を視るのに必要な細胞に起こってしまったのが、網膜色素変性症です。傷のある遺伝子の場所と傷の数により、劣性遺伝と優性遺伝に分かれます。
    残念ながら明らかな治療法は、現在のところまだ開発されてはいません。投薬も漢方薬を含め効果が実証されているものはありません。白内障等の合併症が起こる確率は少々高めです。視力が急に落ちるのは白内障や黄斑変性症等の合併症によるものが多いです。合併症の病気は治療できる可能性があります。したがって定期的に眼科を受診し、合併症の確認をしてもらうことが必要になってきます。その時に視野の範囲を把握する事も大切です。
    数多くの治療法が研究されていますが、一番現実的なのは人工網膜だと言われています。
    再生医療については、理化学研究所の高橋先生が、昨年京都大学の山中先生が発表されたIPS細胞を使って、視細胞の網膜色素上皮細胞を作り出す条件を見つけております。
     遺伝子治療
     傷がある遺伝子を持った細胞は病気になってしまいます。そこで傷のついた遺伝子を取り替える治療法が遺伝子治療です。しかし網膜色素変性症は非常に多くの種類の傷ついた遺伝子があり、遺伝子を取り替える治療はできません。
     そこで遺伝子を使った治療を行ないます。これは何らかの遺伝子を抽出し、薬を使って遺伝子をコントロールする方法です。つまり薬のついた遺伝子を網膜に注入する方法です。眼科でこれを応用して既に臨床までいっているのが、加齢黄斑変性症です。網膜色素変性症の患者に対して我々がやろうとしていることは、薬をふりかけた遺伝子細胞を網膜に注入し、視細胞が死んでいくのを防ぐ、もしくは食い止めることで病気の進行を遅らせることです。
     次に座談会(質疑応答)の一部を紹介します。
     Q:それぞれの治療法の対象者の違いは?
     A:再生医療及人口網膜はわずかに視細胞が残り失明状態の人に有効です。遺伝子治療は視細胞がかなり残っている弱視状態の人に有効です。
     Q:動物実験と、臨床の違いはどうなのか?
     A:臨床実験は動物を使って得られた効果を検証するものですから、即効果があるものではありません。安全性の確認については我々に近い動物を使用します。
    この他かなりの質疑応答をしていただきました。
     以上先日の医療講演を簡単に紹介しました。