3.活動報告 

※5月10日 「使いやすい家電を探しに行こう」に参加して
 報告:K.K
     5月10日(日)に岡山駅前にある家電量販店の「ビックカメラ」に行き、視覚に障害のある人にも使いやすい家電製品の紹介と説明をしてもらいました。当日は14名が参加しました。最初は「白物家電」と言われる台所で使う電気製品から見て回りました。今はやりのドラム型自動洗濯機や電子レンジ、自動炊飯器など、毎日の生活で欠かせないものがたくさん展示してありました。たいていの製品にはボタンの所に点字が打ってあり、視覚障害者に配慮してありましたが、点字が読めない人にも便利な音声で操作を説明してくれる、音声機能のついた電気製品は
     数が少なく、高機能の製品になるということで値段も高価なものになっていました。
    視覚障害者にとっては、使いこなすためにはシンプルな機能の物に、音声で知らせてくれる機能がついた物が一番欲しい製品なので、少し値段が高くなっても音声で知らせてくれる製品がもっとあったらいいのになと思いました。こういった事は、我々視覚障害者が声に出して言わないと、我々のニーズが製品を作る側に伝わらないので、何とか伝える工夫をしていかないといけないと思いました。これからはさらに高齢者も増え、こういったニーズは増えると思うので声を大にして言っていきたいものです。
     その後、エアコンや薄型テレビなどを見ました。これらはリモコンで操作をする事が多いのですが、そのリモコンに音声機能がついた物はほとんどなく、1社だけあるということでした。リモコンは操作ボタンも多く、これこそ音声機能が欲しい製品なのに、とても残念な気がしました。
     今回、いろいろな家庭電化製品を見て回りましたが、音声機能のついた製品は数が少なく、しかも高機能製品と言うことで値段も高く、製品を購入するときには選択の余地は少ないというのが現実でした。


※6月14日 デイジー図書体験会
報告:U.M
     6月14日の日曜日にデイジー図書の体験会が開催されました。
    その様子を少し書かせていただきます。
    講師は大阪の日本ライトハウスから来ていただきました。はじめの約30分、デイジー、びぶりおネットの概略の説明がありました。パソコンを使ってのデイジー図書をネットプレクストークプロというソフトを使って聞く方法や、パソコンにダウンロードしたデイジーのデータを、プレクストークポケットへ、マイブックというソフトを使用して転送する方法などの説明がありました。
     その後、2つのグループに別れ、携帯電話(らくらくホン5使用)でのデイジー図書を聞く方法の体験、パソコンでデイジー図書を聞く方法の体験をしました。
    参加者はおよそ20人くらいだったでしょうか。すでにプレクストークやプレクストークポケットを持っておられる方もおられ、その使い方についての質問なども出ていました。
     私は、まだ いづれの機器やソフトも持っていませんが、どの方法を選択したらいいのか?など、興味を持って聞きました。
    では 方法のいくつかを概略紹介します。
    前提条件として、びぶりおネット(無料)に加入しなければなりません。日本ライトハウスへ申し込みます。
     携帯電話使用の場合
     機種はNTTドコモのらくらくホン5かプレミアムが対応しています。Iモードからデイジーのデータを携帯電話へダウンロードできます。ただし、データ量が多いので、通信費(パケット代)がかさみます。パケ・ホーダイ(パケット定額サービス)への加入が必要です。
     パソコン使用の場合
     ネットプレクストークプロというソフトが必要です。日本ライトハウスから購入できます。このソフトでインターネット上にあるデイジー図書の閲覧ができます。
    また パソコンにダウンロードして、オフラインでも聞くことができます。ダウンロードしたデイジーのデータはプレクストークポケットへ転送もできます。マイブックを使えば簡単に転送できます。プレクストークポケットを持ち歩いて、外出先や交通機関での移動中でも聞けるようになります。
    プレクストークポケットはほかにICレコーダーのように 録音もできます。

※7月5日 医療講演会
 報告:K.M
テーマ:網膜色素変性症の進行は止められるか?
講師:大谷 篤史 先生(京都大学医学部眼科)
      以下に講演の内容を記載します。講演内容を文章化するにあたり、講演の時に使用されたスライドの説明を織りまぜいます。また、実際の言葉遣いとは違っていたり、要約したりしたところがあります。ご容赦ください。

     みなさん、はじめまして、眼科をやっています、大谷です。岡山とは縁が深くて、実は、現在の本籍が兵庫県佐用郡,岡山との県境の町で,親父は岡山の高校出身で、今は停年退職しましたが,産科医として勤務していました。その影響で、私も医者になりましたが、産科ではなく眼科を選んでおります。
     京都大学という大学自体が、かなり研究指向の強いところです。有名な話としては、ノーベル賞をたくさんとっています。僕が言うのもおこがましいのですが、かなり自由な大学で、好きなことをしている人が浮かばれるというところがあります。僕も好き勝手しているうちに、眼科医として、網膜色素変性症を治療しようというところに辿り着いたということなんです。
     今日は、スライドを用意しました。見にくいところや難しいところがあるかもしれませんが、なるべく言葉でお話したいと思います。
     ここ2ヶ月くらいの間に、いろいろなところで講演をしています。一番遠かったところは、長野県の佐久、軽井沢の近くです。この話の講演依頼がくるのは、昨年9月に、日本経済新聞に、僕らの研究が掲載されたからです。ご存知の方もおられるのではないかと思います。実は、新聞は過剰に書く傾向があります。過剰に書いてあるということを認識していただきたいと思います。僕の話も多少過剰です。過剰というのは、ほとんどは本当のことが書いてあるのですが、一言だけ、受けそうなことを書いてしまっていたり、そういうテクニックを持っているようです。
     そこにだまされてしまう、だまされるというか、ほんとにやっていることなんですけれども、真意が伝わらないもどかしさがあります。

    [目について]
     まず、よくご存知の方もいらっしゃると思いますが、目の勉強をしていただきたいと思います。目というのは、ものを目で見るといいますが、目で見ている訳ではないんです。ものを見ているのは、脳みそなんですね。人間のすべての指令は脳みそから来るんです。呼吸だって、別に肺でする訳ではなくて、脳みそが指令を出すんです。見るというのは、目は、光を電気に変えているだけなんです。すべての神経の働きは電気信号ですので、外からの光を電気信号に変えてやるということが目の働きです。例えば、脳梗塞になっても、目が悪くなる人もいます。目の検
     査をして、まったく異常がないのに、まったく見えない人もいます。例えば,精神的に不安定になった若い高校生くらいにたまにあるんですが,急に視力が0.1くらいになって、でもまったく目には異常がないということすら起こりえます。目というのは、感覚、ものを見ること自体が、自分で表現すること、自分で感じることですから、100%みんな同じであるというわけではないんです。
    目というのは、光を変えてやる器官である。ものを見ている訳ではない。で、目とは、血管と神経とからなっている網膜という神経の膜、これは、薄い、ティッシュペーパーのような薄い膜がボールの内側を内張しているんです。そこに光が当たっているんです。ひとつ大事なのは、網膜という神経の構造は、実際にとってきて、切って中身を見てみますと、きれいな層構造になっています。例えていうと、きれいな地層状になっています。ある種の細胞、いくつも細胞の種類があるのですが、それがきれいに並んでいます。ものを見る時に、正確に頭に情報を伝えない
    といけませんから、正確な位置を伝えようとすると、正確に並んでないといけないんです。まっすぐな線をまっすぐな線として伝えるためには、細胞がまっすぐ並んでいないといけないということなんです。これが崩れるだけで視力が落ちますし、見えにくいということがおこります。
    目の病気の特長というのは、例えば、1ミリいかないような出血でも、ほとんど失明してしまう人もいます。1ミリいかないような出血が手にあってもほっとけますが、目だと失明するようなことになります。目というのは、かなり敏感な組織ということです。何を言いたいかといいますと、例えば、手に1ミリの出血があるとしたら、せいぜい、薬局に行って絆創膏を買って貼っとけと言います。だけど、目の病気でそういうことがおこったら、眼科に来て下さい。眼科で治療して下さい。同じ傷がおこったとしてもそうなります。つまり、僕らが対象にしているのは
    かなり細かいところで、常に細かいことを考えているので、細かいことがわかってくるんです。
    また、難しい話なんですが、視細胞が何億も並んでいて、視細胞の一個一個が光を受け取っている、その視細胞が光を電気に変えて、目の中でそれを他の細胞に伝えています。テレビとかカメラでも同じことですね。最後には脳細胞に行きます。目は一つの細胞ではなく、いくつかの細胞の集合体です。色素変性の方は、色素器を持つ細胞が変性したと言われています。大事なことは視細胞は変性しますが、他の細胞は生きていることです。視細胞が手を伸ばしあって、次々に信号を伝えていき、最後は神経皮質細胞に行き着く。神経が変性する病気というのは、緑内障、
    日本の失明原因の一位は緑内障なんですが、緑内障は神経節細胞がダメになっているものです。神経変性という意味では、網膜色素変性症も緑内障も何ら変わりません。緑内障も難治ですので、失明原因の一位となっています。神経変性症の病気は何とかしなければならない病気です。もっとひどいものは、アルツハイマー病とかパーキンソン病で、これも含まれます。
    目の働きを復習しますと、目というのは、光を電気に変えます。電気に変えるのは網膜で、網膜の中の視細胞が色素変性症の原因だということです。それと、網膜というのは非常に精密で、ちょっとダメージがあるとすぐに視力が落ちて見えにくくなります。

    [色素変性症について]
     次に、色素変性症の話です。色素変性症とは、神経変性症のひとつです。緑内障とも同じグループです。色素変性症の定義は、非常に難しいのですが、かなり歴史の古い、昔から言われている病気ですので、病気の見た目で病名がつきました。その当時、色素と言う名前がついていますけど、病気も原因とかで分けられるとわかりやすくていいんですが、色素変性症の場合は、病気の原因がわからないまま、どんどん臨床的に進んでいった病気なので、あいまいだったところがあります。色素変性症と言われてきた人の中には、そうでない方も混じっていました。なか
     なか難しい話で、診断もあやふやでしたが、厳密にいえば、違うことになります。ただし、神経細胞が変性するという意味では、既にこの病気に共通することです。
    色素変性症というのは、遺伝子の異常で、視細胞が死んでしまうという進行性の病気です。遺伝子異常というのは、遺伝子はすべての細胞に含まれているものです。その中のものを見る時に大事なある物質の遺伝子がおかしくなる。つまり、見るために必要な蛋白質がおかしくなるということ、その細胞を殺すということがわかってきました。先ほど、見ためと言いましたが、ぱっと見るだけで、その病気とわかる、ある程度進行するとわかることになります。神経細胞のかたち、網膜は地層のようだと言いましたが、色素変性症の方は、網膜の厚みが半分くらいなんで
    す。死んだ細胞というのは、そこに居続けるわけではないんです。マクロファージといわれる細胞がおそらく食べてしまいます。死んだ細胞は除去されるんです。除去されるとそこのスペースはなくなるんですね。たとえば、網膜を再生しようとすると、そこにまたスペースをつくらないといけないということになります。死んだ細胞があった膜の中に作らないといけないというのは、これもなかなか難しい話だろうと思います。再生がなかなか進まないというのは、そういうこともあるんですね。
    もちろん、血管は寝てる間も使っている組織で、おまけに目は解像度がかなり高い組織のため血流量が体の中で一番多いので、血管が大事なんですが、神経が死んでしまうと血管も一緒に死んでしまいます。基本的に血流というのは、必要なところに必要なだけ与えるという風にコントロールされていますので、神経細胞が死んで、もう血流はいりませんよということになれば、血管もなくなります。また、再生させる時には、血管も再生させなければなりません。なかなか大変だろうと思います。そういうことがあって、僕は再生の仕事はしていません。
    それで、症状としては、色素変性症特有のドーナツ状の斑点ができる、輪状暗転、周りから見えにくくなっていく、真ん中は比較的良好に保たれるということがわかっています。求心性狭窄の色変では、周りは見えるけど、真ん中は見えないのもあります。真ん中は見えていますので、場合によっては、視力は1.5くらいあって、良好に保たれているので、近くのコンタクトレンズ屋さんに行ったらおかしいと言われたとか、そのとき、視野が既に15度ぐらいになっておられる方も中にはいらっしゃいます。結局、真ん中の視力がいいと気がつかないんだろうと思い
    ます。そういう特有の視野狭窄があります。
    さっき言ったように、ものを見るのは光を電気に変えるんだということで、検査のひとつとして、電気を調べるのがあります。視力、ものが見えるというのは、自己申告、見えてる、見えてないと言えばいい。だけども、電気はうそはつけない。目のちょっとした反応を見るのが、網膜電図です。多くの方がやったことがあると思いますが、暗い部屋で、電極をつけてやる検査です。これはかなり鋭敏な検査で、色素変性症の診断基準に必要な検査になります。若い、小学生のお子さんなどでは、申告ができなくても、この検査でわかる可能性があります。反対に言えば、
    小学生、中学生でも、大丈夫ですと言い切れるんです。
    最近出てきた大事な検査にOCT、光干渉断層計という検査があります。これは、地層のようになった網膜を切り出したりせずに、外来で顔を出せば、数分で得られる便利な検査です。この方式はMRIよりも格段に解像度が高くて、視細胞が一個一個見られるほどのものです。いままで、確信が持てなかったものもはっきりわかるようになりました。
    色素変性症に特徴的は知見があります。正常な網膜というのは、ある程度の厚みがあって、きれいな層構造をしていて、中心部、黄斑部は火山のようにへこんでいます。色素変性症の方は、中心部分は正常だけれど、周りの神経細胞が死んでいるので、周りが薄くなって、やせて痛んでいるのでよくわかります。色素変性症の特有の症状です。もうひとつは、白内障というのは大きな合併症ですが、だいたい70才くらいの方が多いと思います。色素変性症の方は早く始まるようです。40代の方もいると思います。その時に、色素変性症の患者さんに、白内障の手術を
    して良くなるのだろうかということで、躊躇してしまうということがあります。その場合、このOCTをとって、特徴的な傾向が見られ、色素変性症だとわかったら、100%手術します。今まで、神経のかたちがわからなかったのですが、高解像度のこの装置で神経の状態がわかるようになったんです。これは、保険にも適用されるようになりました。大きい病院には入っていると思います。
    余談になりますが、白内障の手術を受けられた方も、これから受けようかと思っておられる方もあると思います。今まで、白内障の手術を受けると光がたくさん入るので、色変が進行するじゃないかと言われてましたが、実は、調べたことがあるんです。京大の眼科を受診した色変の患者さんで、視野の進行度を調べてみました。白内障の手術をした人の方が視野狭窄の進行が遅いんですね。臨床的に意味があるかどうかはまだ分かりませんが。ひとり、もの凄く視力が良くなった患者さんがいましたので聞いてみましたら、白内障の手術をして急によく見えるようにな
    ったので、気分が良くなったと。で、気分がよくなったら、進行しないような気がするということをおっしゃっておられました。僕らからすると、気分が良くなるというのは、やっぱり進行に関係するんだろうと思うんです。結局、体というのは、基本的には、病気を治しにかかるんです。治しにかかるから、健康で長生きできるんです。治す機能というのは持っているんです。36度5分の人が37度5分になって、体温が一度上がってしんどいなと感じるように、常に体をモニターしている奴らがいるんです。そういう奴らの機能を活性化させようというのが、僕ら
    の研究なんです。気分が良くなるとそいつらは元気になるということは、別の研究からわかってきています。
    もうひとつ大事な検査に、蛍光眼底造影検査、先程、血管が大事だといいましたが、色素変性症の方の血管がおかしくなっているので、造影検査をされるのはいいことだと思います。これも色素変性症かどうかがある程度わかるものです。特定疾患の診断にも使われます。
    まとめますと、網膜色素変性症の発生の頻度は、3000人から8000人に一人と言われており、結構多いです。皆さんを調べたわけではないのでわかりませんが、地域差があるように聞いています。で、なんで病気になるのかというと、視細胞の遺伝子の異常で、細胞がなくなってしまいます。症状は、夜盲、夜見えにくいこと、結構若いときから感じているようです。大事な症状ですね。視野狭窄、視力低下がその次に起こってきます。問題はですね、原因遺伝子が特定され、遺伝子治療がもの凄い勢いで研究されて、原因遺伝子がもの凄くたくさんあることがわ
    かってきました。現在わかっているだけで、30くらいありますし、35くらい調べても、多くの人がそれに当てはまらないですので、もっとたくさんあるのがわかってきました。これがどんな問題かというと、頭痛のメカニズムがわかるとその場所をブロックするような薬を出すと治るんですが、病気のメカニズムがわかるとそれに向かって治療ができるんですが、原因がたくさんあるので、一部の人にしか適応できない。遺伝子の異常をひとつひとつ解決していかないといけないということです。診断と症状。さっき言ったような検査をしていただくことです。特定
    疾患の判定に必要です。

    [遺伝子治療]
     今日タイトルがですね、網膜色素変性症の進行は防げるかというものですが、僕らが目指しているのは、進行を遅くする、もしくは止めてしまおうということなんです。色素変性症というのは、なくならいものなんです。色素変性症は遺伝子異常があって、神経細胞が死んでいきますので、いろいろな症状が出てきます。遺伝子異常から始まって最終段階までいく病気の治療を考える時、ひとつは発症しないようにする、どんな病気でもそうですが、発症しないようにするというのがあります。例えば、糖尿病だったら、あまり食べ過ぎないようにするとか、運動する
     とか、血圧を気をつけるとか、発症しないようにすることができます。が、これは遺伝子の異常ですので、すべての細胞の遺伝子の異常を治す治療は今のところ存在しないですし、どうしたらいいかさえ分からないです。もしかしたら、こういうのをやっている人がいるかもしれませんが、今、分かっている中では難しいと思います。遺伝子を変えてしまうことですから。遺伝子治療とはまた、別です。
    遺伝子治療は遺伝子を利用して治療しようというものです。で、自覚症状が出た時に、進行を予知する、進行を止めようとする、進行抑制です。代表例は神経保護因子ですね、抗酸化剤とかいろんな薬があります。最後、機能が失われてしまって、神経細胞が死んでしまって、視野がなくなってしまった、ほとんど見えなくなってしまったという時に何をしないといけないかというと、人工網膜、網膜再生です。大まかに言って、患者さんの状態によって、行なえることは限られます。すべての人が人工網膜、網膜再生の恩恵に預かれるかというとそうではありませんし、
    すべての人が神経保護因子と呼ばれるものの恩恵に預かれるわけではありません。それはしっかりと認識しないといけません。
    何度も言いますが、視細胞が死んでしまうことが網膜色素変性症の病理、病気の原因なのです。この神経が死んでしまうのを何とかしようとする薬剤はたくさんあります。いわゆる抗酸化剤、ビタミンCとか、九州大学で行なわれている、PDEF、薬の名前なんですけれども、その他にも神経保護因子と呼ばれているものは、いっぱいあります。あと、体の免疫をつける薬もあります。その薬をどうやって目に入れるかということなんですが、目に直接注射するとか、遺伝子治療は、ある薬の遺伝子を体に入れると、常に薬が出続けるという仕組みです。ドラッグデリ
    バリー、薬をうまく運んでいくシステムも使われています。そうやって薬の効果を持続させようとしています。で、最近の話は、レスキュラですね。レスキュラの点眼が千葉大学を中心にしてやられています。臨床試験を行なおうとしています。また、アメリカの会社では、遺伝子治療なんですけれども、普通は人間の体の中に遺伝子を入れ込むのですが、特殊なカプセルの中に、細胞と遺伝子を入れて、カプセルの中から薬を出させるシステムを作り出しているのがあります。薬の製造工場のようなものですね。これを目の中に入れることも考案させているようです。
    体に傷をつけずに治療を目指す、いいとこどりのものです。アメリカのFDA(食品医薬品局)でも、承認されたようです。現在これは、CFTFという増殖因子を使って行なわれています。治療のやり方を開発することによって、さらに、治療の可能性を広げています。遺伝子治療の復習になりますが、原因遺伝子の導入というやり方もあるんですが、遺伝子異常でおかしくなった蛋白質でなく、ちゃんとした蛋白質を出してやるようにする治療もあります。

    [人工網膜]
     今日のタイトルとはあまり関係ありませんが、最終的に神経細胞が死んでしまった後、どうするかというと、個人的には人工網膜が何とかならんかなぁと思っているんです。目というのは、光を電気にかえるものです。目のかわりに、なんか頭に伝えてくれるものがあれば、目はいらないかもしれない。メガネのような器械で光情報を電気に変えます。デジカメの様なものですね。どんどん技術があがって画素数も増えています。ある程度細かい情報をしっかりと頭に電気信号として伝えてやればいいわけです。実用化されているものでは、横断歩道の看板が白黒の画
     像でわかるようになっています。
    留学当時、2000年くらいには、アメリカで、患者さんに埋め込みをやっていました。まったく見えない人が迷路を歩くことができるようになっていました。すでに、人には使われていて、日本でも理科学研究所とか東工大など、いろんなところでやっています。技術は進歩は速いですから、やり方さえちゃんとできれば、可能な技術ではないかと思います。真っ暗な世界からは解放されるのではないか、あとは実用化の問題で、後押しが必要となってきます。

    [再生医療]
     日本が後押しするのは、今は再生医療です。再生医療は、ものによってはうまくいくと思っています。例えば、皮膚、角膜などは、そんなに難しくなくて、うまくいくと思います。骨とか場合によっては筋肉とか、できるかなと思いますね。ですが、目を含めた中枢神経系となると、つくることはまず不可能です。全体をつくるんではなくて、何をつくろうとしているかと言うと、部分部分、もしくは細胞レベルで、10個あって1個損傷しているものを戻すというようなイメージなのかもしれません。
    僕はあんまり目の再生医療に期待をしていないので、ネガティブなことを言うかもしれませんが、反対にポジティブな講演をされる方もあると思いますので、足して2で割ったくらいでいいかもしれませんね。再生医療、こういう細工を使って何かできるとしたら、個人的には内在性の再生医療、なにかというと、もともと自分の体というものは、再生する能力を持っています。皆さん、けがをしても治るでしょう?目にも多少ですが、そういう可能性があるんですね。今まで、中枢神経系は再生しないと言われ続けていたんですが、そうではないということがわかって
    きました。内在性に元気にさせる細胞があれば、こういう細胞でできるかもしれません。こういう細胞を入れてやって、勝手に再生するようなことができるかもしれません。

    [現在の研究]
     今現在、僕らが何をしているかと言うと、ひとつは骨髄細胞を使う、決して特殊なことをしているのではありません。もうひとつは低線量率放射線を使う、つまり放射線を当てようということです。これも偶然見つけたもので、これもお話しします。
     もともと、なんで骨髄細胞を使ってやることになったかというと、加齢性黄斑、糖尿病網膜症の専門で、目の血管病の研究をしていたんです。目の血管というのは血流に関係がありますので、流れている血液の細胞に注目する訳です。白血球、赤血球、血小板のように皆さんご存知のもの以外に、骨髄細胞由来の幹細胞が流れています。それを集めることができます。そいつらが何をしているかということがだんだんわかってきて、当初は血管の修復再生をしている、たとえば、心筋梗塞の時に、血管が詰まってくるんですが、骨髄系の幹細胞が組織を再生する力があ
     ることがわかってきました。僕は血管の研究をしていたので、血管のダメージの時に、そういう細胞を入れて再生させて治そうということしていた訳です。先程、色素変性症では、血管がなくなるという話をしましたが、色素変性症のマウス、これも血管がなくなっているんですが、まず、これの血管を治してしまえと思って、骨髄細胞を目に注射していたんです。そうすると、もちろん血管は治ったんですけど、神経も治った、治ったという言い方はおかしいですが、変性する速度が落ちたんです。骨髄細胞を目に入れることによって、変性する速度が落ちた。これ
     は予想外の結果でした。で、これは、骨髄細胞には、神経を元気にする力があるんかなということで、骨髄細胞と神経細胞、網膜の研究が始まったんです。その当時の結果なんですが、一回の注射で半年間何もしないのに、網膜、神経細胞が生きていたんです。一回の注射で半年、これはかなり効くなと思いました。先ほどのドラッグデリバリーでは薬を入れてもすぐ出て行くのですが、細胞が目の中に居着くので、効果が続くんだろうなと想像できます。ですから、どうやって薬を投与するかという話になってきます。細胞がそこに居着いてくれれば、そこに住んで
     くれれば、勝手に治してくれる訳です。当時は、アメリカで骨髄から細胞をとってきて目に注射していたんですが、日本に帰ってから何をしようかと考えたのが、京都大学の分子細胞治療センターの名前の部署がありまして、つまり、細胞で治療しようという新しい医療を何とかしようというセクションがありまして、そこと協力して、患者さんから血をとってきて、そこから幹細胞をとってきて患者さんに打つことを始めました。
    それと平行して、なんで骨髄細胞が効くんだろうということを研究したんです。骨髄細胞というのは、末梢血が流れてるのですが、普段から目に流れているのかと考えました。マウスの骨髄に強い放射線を当てると、放射線というのは分裂していく細胞にすごくよく効き、骨髄は死んでしまいます。マウスも死んでしまいます。そこで、ほかのマウスの骨髄を移植してやると、その骨髄は生きて、マウスは生き残ります。骨髄だけを入れ替えることができるんです。その時に使ったのが、GFP、前年度のノーベル賞をとられた南部先生が発見された、オワンクラゲの色
    素ですね、そのGFPを骨髄の細胞に入れると、特定の波長の光で光るんで、骨髄からきた細胞かそうでないかを見分けることができるんです。色素変性症は進行するに従って、目から細胞が死滅していくんですが、骨髄から細胞が、もの凄い数の細胞が、目に上がっていくことがわかりました。ほとんどゼロに近かったのが、600くらい、もの凄い数になっています。で、いろんな形の細胞が見えたのですけれども、基本的にはマイクログリア、マクロファージの細胞の仲間だったんです。で、骨髄からいっぱい目にやってくる、細胞をSGFという薬で阻害、ブロ
    ックすると視細胞がもの凄く早く死んでしまいました。骨髄から来る細胞をブロックすると神経変性が進んでしまった。これは、よくよく考えると、骨髄細胞は目を守っていたんではないかということがわかってきたんです。ブロックして特に何が死んだかというと、錐体細胞が、周りは見えなくなっても真ん中が見えることが多いですが、明るいところで見える、その錐体細胞ががたんと死んでしまうんです。どういうことかというと、視細胞の遺伝子異常でおこる色変は、夜盲をで知られるように、暗いところで見る、桿体細胞が死んでしまう病気なんですが、そこ
    から、明るいところを見る細胞まで死んでいたのを防ぐことができる。つまり、遺伝子異常がない視細胞を保護することができる、都合がいいことに視力をつかさどる細胞である、ということなんです。明るいところで見る錐体、暗いところで見る桿体と二つの視細胞からできていて、明るいところで見る錐体は目の中心部に集まっています。色素変性症の典型例というのは、錐体細胞は残るとされています。だけど、視力が悪くなる人はそれまで死んでしまう。だから、骨髄細胞で残すことができると考えられます。
    骨髄移植も錐体を守ろうとすることですが、自分の体なわけですから、うまくコントロールする方法がないかということで、薬剤、そういうマイクログリア細胞を活性化する、これは、G−CSF、EPOという薬を使います。G?CSFは骨髄を活性化する薬、EPOエリスロポエチンは貧血の薬でもあります。この二つを混ぜることで、骨髄の機能をぐっとあげることができる。血液の中の元気な細胞の数を調べることでわかります。実際、色素変性症のマウスに薬を入れると、錐体細胞が守られて、信号もしっかりでます。注射するのは、ちょっと無理があるよう
    で、中から活性化する方が良いようです。
    骨髄系の幹細胞は、年とともに落ちてきます。自己修復能が落ちてきます。さらに落とすのが、タバコ、ストレス、いろいろとわかってきました。タバコはかなり悪いです。肺がんとか胃がんとか直接効くものばかりでなく、そうではなく、骨髄に影響がでるという研究もあります。加齢黄斑変性でも疫学的研究で原因として出てくるのが、タバコです。
     色素変性症の患者さんの血液を調べて、マクロファージ系の幹細胞の機能をみると、同じ年齢の人と較べると低いことがわかりました。色素変性症というだけで、骨髄の機能が落ちています。機能をあげる価値がありそうだということですね。何十年もかかって進行していくので、生活習慣、薬剤の見直しというのも大事だと思います。他にも、普段使うような薬でRPの進行を早めるようなものがあるかもしれません。お使いの薬の情報をぜひ聞かせて欲しいです。
     もうひとつ、低線量放射線、これは偶然見つけたものなんですが、先程の放射線を当てる実験で、マウスの頭に放射線を当てる訳にいかなくて、鉛の帽子をつくってはめ込んでやったのですが、放射線をゼロにすることができず、もの凄く弱い放射線が頭、目に当たってしまった、そのマウスの目を調べると、良かった。神経変性せずに残った。よくよく調べるとその鉛を透過して出てくる弱い放射線が神経を保護するのではないかということがわかった。ある強さの、ある長さの放射線にピークがある。放射線に反応して、神経が生きるのは、特定の特殊な条件の放
     射線だというのがわかった。繰り返し実験の結果、錐体細胞は60日くらい持たせることができました。色変マウスの錐体は30日くらいでダメになりますので、2倍、神経変性を防ぐことができるということがわかります。2倍になることは、かなり価値のあることで、50、60で変性してしまうところが、80、90までもつということですね。寿命までものを見ることができるようになるかもしれません。放射線をあてる大きな利点は、簡単なんです。左右独立して当てられます。薬だと両方ですが。ただ、効果のある期間がわからない、何ヶ月おきにあてな
     いといけないとか、何年おきにとかがわからない。講演会で患者さんがラジウム温泉に行くようになって調子がいいという話を聞いたが、ラジウム温泉にもこういう効果があるのかもしれません。
     まず、現状の把握をしないといけません。この病気は進行が長いので、治療の効果があるかないかがはっきりわかりません。これを調べないといけません。そこで、一生懸命やっているのが、ハンフリー10−2視野計で、視野を半年おきに計っていく、そうすると、測定した数値がしっかりと直線上にのってくるんです。ある患者さんは、ある直線に従って、進行していくのがわかります。そこで、何かの治療で進行が緩やかになれば、直線の傾きが変わってくるのではないかと思って、2年前から、患者さんに治療はできないが、計らせて下さいとお願いしてやっ
     ていたんです。今のところ、50人ちょっとの方を計っています。ほとんどの方が、直線にのります。これで、治療の効果が証明できれば、本当かもしれないということで、広められる。こういうことをしっかりしていかないとこれからでる新しい治療でさえ評価ができないことになります。定期的に通っていただいて、検査をしていただいて、ご自分の病気を把握していただくのがものすごく大事です。それも治療法をつくる上での協力のひとつとして考えていただきたいと思います。これから、治療の評価のシステムをしっかりつくっていこうかなと思っています。
     また、できたら、2年ぐらいで治験をやりたい、先程のやり方でやると、どんな治療でも、効果の白黒がわかるには、120例くらい必要です。120人にある治療を行なえば、2年くらいで効果がわかるのが、統計学的にわかっています。今までの10年よりは、今後の10年では大きく変わりますので、それを期待して、という訳ではないですが、病院に通うことをしていただきたい、とうのが今回のテーマかなぁと思います。



※8月2日 講習会「視覚障害者の安全な移動について」
 報告:I.K
     先日2日に岡山県支部の行事として歩行訓練および、手引きのしかたの講習会を行いました。
    参加者は総員30余名。白杖の使い方は、一人20分程度の実地訓練でした。参加者の大部分が、過去に何度か訓練を受けている人たちなので、比較的スムーズにいったようです。
     話は昨年の岡山でのリーダー研修会に戻ります。この時、数名の方を岡山駅までご案内させていただいたのですが、デタラメナ白杖の使い方をされている方が多かったのには、ビックリしました。このうち2名の方が、もう少しで、転倒されるところでした。
    一人の方は、白杖をしっかりと握っていなかったために、杖が滑ってしまいバランスを崩しかけた。もう一人の方は杖が短すぎて目標物を探れず、バランスを崩しかけた。2例とも私が手引きをしていたので、がっちりと支えました。もし単独行動をされていたときだったら転倒は免れなかったでしょう。
    白杖は無言で、持っている人の身を守り、一般の人に注意を呼びかける道具です。今回は訓練経験者が多かったようですが、次回は訓練を受けていない方が、一人でも多く参加していただきますようお願いいたします。


※『ガイドテクニックを学んで感じたこと』
 報告:O.K
     私はしばしば、岡山駅のホームや周辺のバス停で目の不自由な方を見かけます。彼らにとって電車やバスの乗り降りがとても難しいことを私は知っていましたが、どのように手助けをすればよいか分からず、いつもただ見ているだけでした。そんな折、ガイドテクニック講習の機会があることを知り、ガイドの自信をつけるため参加することにしました。
     講習会では、ガイドする側とガイドされる側の両方を実際に体験しました。ガイドされる側を体験して痛感したことは、目が見えないとちょっとした段差や隙間でさえとても危険だ、ということです。つまり、近くに段差や隙間があることを伝えるだけでも、目の不自由な方に安心感を与えることができるわけです。
    私はこのガイドテクニック講習を通して、ガイドテクニックも確かに重要だが、一番大切なことは「まず声をかけて近くに危険があるかどうかを伝えること」だと感じました。
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