ねこぽんの徒然日記

巻の三

ねこぽん無謀な沖縄の旅 その1

 「ねえ、もう私、我慢ができないわ!ねこぽんちゃん、沖縄に行かない?」
 子育て、お姑さん孝行で疲労困憊していた友人、マシュマロマンから、突然、電話がかかってきた。私は、ぎょっとした。だって、私、視覚障害者。何かと周りの手助けが必用だし、彼女には、二歳と、六才の子供がいて、一緒に連れて行くというのだ。
 「たまりん坊も(友人)、もちろん誘うんだけどね。」
とマシュマロマン。こうして、私達三人、それから、子分二人を連れた、無謀な旅の幕開けとなった。

 まず、岡山の空港で、搭乗手続きのカウンターの女性が、私の白杖を見て、とんでもない事をたずねてきた。
「あのー、足、お悪いんですか?」
たまに同じ質問はされるけれど、まさか、こんな大きな航空会社で聞かれるとは思っていなかった。どうやら、機内の人達にも、障害の程度など報告する必要があるらしい。視野が欠けていること、暗いところは見え辛いことなど、一応、説明した。

 ロビーを少し歩いた。先頭は、ミニゴジラを載せたベビーカーを押すマシュマロマン。隣に六才の幼稚園児。その後に、たまりん坊。更に、その後ろに私。私は、たまりん坊の荷物に白杖を沿わせて、歩いた。一列にならんで、大荷物を持って、ガタガタ歩く様子は、まるで、カルガモ親子の行進のようだ。

 飛行機に搭乗。座席に座ったら、
「すみません」
と声がかった。どうやら、私が通路側の席に座っていたので、窓際の席に行きにくかったようだ。でも、私には、自分に話しかけられていること分らなかった。そんな様子を見て、通路の向こうに座っていたたまりん坊が、
「ねこぽんちゃん、私、席かわろうか?」
と言ってくれた。でも、私は断った。隣に腰掛けた乗客に、
「私は暗いところ見えにくいんです。もし席を移動される時には、声かけしてやってくださいね。」
と、笑顔でお願いしておいた。

 機内サービスが終わって、トイレに入ろうとした。スチュワーデスさんが、トイレットペーパーなど、私の手に触らせて、位置を教えてくれた。便座シートまで、敷いてくださった。さすが、JALグループ。いやみのない自然な心遣いが、嬉しかった。

 沖縄に無事到着。レンタカーを受け取りに、バスで移動。大きなレンタカーのバンに皆乗り込んだ。
「ごめんね。子供がちょっと落ち着かなくて。とにかく、スーパーに行って、食事してもいい?」
と、マシュマロマン。という訳で、なぜだか、沖縄まで行き、どこでもあるスーパーで、沖縄に全く関係ないパスタを頼んだ。

 テーブルにつくと、私の眼の前にいる、マシュマロマンの子供がやけにおとなしい。『まっ、いいかぁ。』と思っていたら、急に、何か音がした。
「ああ〜!」
という友人二人の悲鳴。それに引き続いて、グラスを移動させる音、椅子を引っ張る音、
バサバサ、ガタガタあわただしい。
「もう!ちょっとどけなさい!」
「あっ、すみません。雑巾ください!」
という声が飛び交う。私の予感は的中!子供がテーブルの上に嘔吐したらしい。(車酔い)
とりあえず、気分を切り替えて、食事をすませ、店を出た。スーパーの子供服売場で、服を買い、売場の人目が付かないところを見つけて、移動。マシュマロマンの子供は、
「こんなところで、服を着替えるのはいやだぁ」
と、騒ぎながらも、汚れた服を着替えていた。

 マシュマロマンは、ひきつった顔が、やっともとの冷静な顔に戻っていた。
「なんか、子供、皮膚がおかしいわぁ。」
今度は、2 歳のミニゴジラの様子がおかしいらしい。という訳で、観光などせず、ホテルに直行する事になった。
つづく

ねこぽん。

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