ねこぽんの徒然日記

巻の七

 ねこぽん 無謀な沖縄の旅 その3

 カヌチャベイ(ホテル)を後にした私達は、お土産売り場でパイナップルを買ってみたり、試食させてもらったり・・・。

 皮膚炎になっているミニゴジラ(2才)を病院につれて行こうと、道に迷いながらも何とか到着。が、すでに日は暮れていて、診療時間に間に合わなかった。あきらめて、私達は、『ザ・ブセナテラス』(ホテル)に向かった。
ホテルでチェックインを済ませた後、レストランで、豪華な和食料理を頂いている時だった。何かがおかしい。何か静かすぎる。ミニゴラの兄が、ボーっとしている事に、やっと私達は気がついた。「もう、あんた、すごい熱があるじゃない〜!」と、おでこを触って、驚くマシュマロマン。

 次に出されるはずだったデザートは断り、すぐにレストランを後にした。タマリン坊がミニゴジラの兄を背負い、私は彼女にコバンザメのようはりついて移動、マシュマロマンはミニゴジラを抱き、ウエイターさんも部屋まで付き添ってくださった。

 部屋に入ると、マシュマロマンの所に、5分も経たない内に、氷嚢と体温計がやってきた。更に、私達が食べられなかったデザートまで、ルームサービスして頂けた。テレビドラマで観るような、こんな素晴らしいサービスができるホテルって、本当にあるんだと、田舎者の私は感心してしまった。

 その夜、マシュマロマンは、子供達の看病で、気の毒な事に、ほとんど眠る事は出来なかったようだ。
さわやかな翌朝、悪夢のような事が起きた。私が部屋のトイレを使った後、トイレに入ったタマリン坊が騒いでいる。
「トイレがつまってる〜!」
「ええ?私、つまるような物、流していないよ!」
と焦る私。

 トイレを覗き込んだが、よく見えない。あっ、そういえば私、次の人が気持ちよく使えるようにと、トイレットペーパーで色んなところを拭きまくって、トイレに流したよなぁ。それが原因か!よし、それじゃもう一回流せば、きっと流れるさ。

 私が祈るような気持ちでトイレのレバーを引いたら、ゴボゴボという音と共に、何かがあふれてきた。
「キャー、水があふれてる〜!!!」
タマリン坊の悲鳴が響いた。みるみるうちに、トイレの水はきれいな床に流れてゆき、大きな水溜りができてきた。
フロントに連絡すると、すぐに客室係りの女性がやってきて、手馴れた手つきで掃除を始めた。
「お手数をおかけしてすみません。でも、こういうことって、きっとよくあるんですよね。」
と、私は苦笑いをしながら聞いてみた。「そうなんですよ。」という返事を、私は待っていた。ところが、
「いえ・・・。めったにないんですけどねぇ。」
と、笑顔で言う彼女。私は、穴があったら入りたい気分だった。

 ホテルを出発する時に、従業員に病院までの地図もコピーしてもらった。このホテルを出るときに思った。小さな子供を2人も連れて、白杖持った私もいて、子供は熱は出すし、デザートは運んできてもらうし、おまけにトイレまで詰まらせて・・・。最後には、病院の場所まで調べてもらった。こんなお騒がせなお客さんは、なかなかいないだろう。

 チェックアウトの後、病院に直行し、子供2人の診察が終わった。沖縄まで来て、病院まで行くとは思わなかったが、子供達のお陰で(病気になった本人達には悪いけど。)めったに出来ない貴重な経験をさせてもらえたと思う。
最後の宿泊先のホテルでは、タマリン坊がドアを開けた途端、ドアノブがとれてしまったが、それ以外は、奇跡的にハプニングは何も起こらなかった。

 沖縄旅行の最終日、航空会社の取計いで、私達は他の乗客よりも先に搭乗する事が出来た。飛行機の中では、今でも忘れられないハプニングがあった。

 私が通路側の座席に座っていたら、乗客のリュックが、私の肩に当たった。次の瞬間、私の肩を撫でる、優しい女性の手にドキッとした。
「大丈夫ですか?(あのお客様)急いでいらっしゃるのね。」
客室乗務員の女性の手だった。どうやら彼女は、ずっと私の座席の後ろで、私の様子を気にしながらも、他の乗客に座席案内をテキパキと行っていたようだ。彼女の優しい手と、美しい声と、輝いている瞳は、今でも忘れる事が出来ない。

 私達はJALグループが作成したハガキまで頂いた。ハガキの中の沖縄の美しい景色を眺めていたら、感無量になり、涙が溢れてきた。

 考えてみれば、私は視力が落ちてきてから、昔の友達(健常者)と一緒に、こんなに遠い沖縄まで来れるなんて、夢にも思っていなかった。タマリン坊は、旅行に行くのを躊躇している私に、「昔からの付き合いじゃない。大丈夫よ。」と言ってくれたし、マシュマロマンはマシュマロマンで、私の事なんて、単に眼が悪いだけって感じで思っているようで・・・。それよりも、彼女の子供達の方が、迷惑をかけないかと心配だったようだ。

 見えにくい私の手をとって、シャンプー、リンスを触らせて、どこにあるのか教えてくれたタマリン坊、ありがとう。美しい海を目の前にしても、見えにくい私に、
「白内障の手術が成功して、見えるようになったらいいね。」
と、笑顔で励ましてくれたマシュマロマン、ありがとう。

 沖縄旅行は、色んな人たちの優しさに包まれた、夢のような旅でした。(涙、涙)

 あっ、感動の最後に、ミニゴジラの兄の感想を一言。
「ホテルのお風呂より、温泉の方がいい。もう二度と行きたくない。」
幼稚園児のはずなのに、何で、どこかのおじいさんのような事を言っているんだろう?(苦笑)

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