[2月の課題]
〜愛ちゃんはお嫁に〜
長女の‘愛ちゃん’が2月に満50歳になった。21年前の『点字毎日』にこんな
随筆を書いたことを思い出した……。
♪さようならさようなら 今日限り 愛ちゃんは太郎の 嫁になる
おいらの心を 知りながら 出しゃばりおヨネに 手を引かれ
愛ちゃんは太郎の 嫁になる♪
これは、私の幼いころに流行っていた歌謡曲の「愛ちゃんはお嫁に」(歌:鈴木三
重子、作詞:原俊雄、作曲:村沢良介)の一節で、歌詞の意味も理解せずによく口ず
さんでいたメロディーである。
わが家に「愛ちゃん」が誕生したのは私が25歳、職場恋愛で結婚した妻が23歳
の冬のことだった。熱愛の証として、生まれた長女には「愛」と名付けた。愛ちゃん
は、「愛」という名とともに、わが家のカスガイの役割を果たし、成長していった。
そして、幾山河越えて30年の真珠婚を迎えた今年(2003年)、愛ちゃんは大学時代
の先輩と、仲人も立てずに挙式した。
ところで、最近のある調査によると、式を挙げるのに仲人を立てるカップルは12
%にすぎず、中には「仲人」を知らない花嫁もいたという。「月下美人」なら知って
いても、「月下氷人」や「月下老人」を知っている若者は少ない。彼らはもはや辞書
の中で眠る存在だ。仲人も消えてしまう運命にあるのか。「出しゃばりオヨネ」の出
番はもうない。
閑話休題。わが愛娘の愛ちゃんは本当に「太郎」ならぬ「浩之」の嫁になり、香川
県へ行ってしまった。おいらの心を知りながら……。思えば、目な裏に二十九年間の
あのシーン、このシーンが走馬灯のように駆けめぐる。彼女は、この世に生を受ける
時は難産で、臍の緒が首に二重に巻き付き生まれ出る苦しみを味わった。小学5年の
時には父親が難病と診断された。いずれ失明するかもしれない父親や家族の将来を思
い、幼心を痛めたこともあったろう。そんな生活の中で、彼女は小学生時代はソフト
ボールに、中学・高校では卓球に、大学では軟式テニスにと情熱を打ち込み、スポー
ツを通じて多くの友人にも恵まれ、明るく快活な娘に成長した。そして今、幸せな人
生航路へ舵を取った。
私はもう「愛ちゃんはお嫁に」は歌わない。成人式のまぶしい晴着姿が目に焼き付
いている。「網膜を現像すれば愛がいる」。
それでは、例によって上記の中から出題します。
■2024年2月(No.151)
題:「ボール」 (進 選)
題:「嫁」 (由希子 選)
題:「辞書」 (テツオ 選)
題:「首」 (航太郎 選)
(各題2句出し)
◎今月の締切:2月24日(土) 正午必着
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