ボクらのNEWS




新聞記事などのごく簡単な要約を掲載します。
(「再生医療」「遺伝子治療」「人工視覚」「その他」)

[更新日 : 2024年9月22日]





■大阪大学蛋白質研究所の古川貴久教授らの研究グループは、網膜色素変性症を含む
繊毛病の治療薬候補として、既存薬である線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体阻害剤
を同定するとともに、治療標的候補タンパク質も発見(2024年9月18日付Life Scienc
e Alliance誌に掲載)。
 研究グループは、FGF受容体阻害剤を用いて繊毛局在型タンパク質リン酸化酵素のI
CKを活性化することにより、網膜色素変性症のモデルマウスで網膜変性の症状が改善
されることを見出した。根本的な治療法のない繊毛病に対する治療薬開発への道が開
かれた。
 ヒトにおいて、繊毛の機能異常は、網膜色素変性症をはじめとした多彩な症状が見
られる繊毛病と呼ばれる疾患を引き起こすことが知られている。
[2024/9/19 大阪大学プレスリリース  9/19 日経 9/21 朝日]




■高橋政代氏が代表を務めるビジョンケアなどは30日、iPS細胞関連の特許を有
する理研やバイオベンチャー「ヘリオス」などと、一定の条件下で使用が認められる
ことで和解したと発表した。
 対象となった特許はiPS細胞から網膜細胞を作成する技術に関わるもので、網膜
色素上皮不全症の患者30例の自由診療に限って特許の利用が認められた。
 高橋氏は発明者の一人だが、職務発明として理研に特許を受ける権利を譲渡。特許
自体はヘリオスや理研などが出願して19年に登録。高橋氏側は、実用化に向けた治
験を独自に行うため、21年7月、特許が使用できるよう特許法に基づく裁定を請求
し、専門家による審議が続いていた。
[2024/5/30 朝日 毎日 読売 産経 日経 共同 NHK]




■厚生労働省は26日、遺伝性網膜ジストロフィーの遺伝子治療薬の製造販売を承認
した。目の病気の遺伝子治療薬が承認されたのは初めて。
 承認されたのは製薬大手ノバルティスファーマが開発した「ルクスターナ」(遺伝
子治療用ベクター)で、RPE65という遺伝子の変異が原因で、暗いところで物が
見えにくくなったり、視野が狭くなったりする遺伝性網膜ジストロフィーが対象。
 ルクスターナを両目の網膜下に注射し、アデノ随伴ウイルスベクターにより正常な
RPE65遺伝子が網膜色素上皮に導入されることによって、光を感じる視機能の回
復を目指す。
 アメリカでは両目で85万ドル(約1億2千万円)かかり、日本でも高額になる可
能性がある。
[2023/6/26 共同通信 ノバルティスファーマ・プレスリリース]




■血液検査機器大手のシスメックスは5日、遺伝性網膜ジストロフィーの原因遺伝子
を特定する試薬や解析プログラムの製造販売承認を取得したと発表した。遺伝性網膜
ジストロフィーを対象とする遺伝子パネル検査として国内初となる。神戸アイセンタ
ー病院との共同開発。
 同システムでは、1回の血液検査で82種類の遺伝子変異を調べ、原因遺伝子を特
定できる。
 2021年に、同システムを用いた網膜ジストロフィーの遺伝子診断が先進医療と
して承認され、神戸アイセンター病院および国立病院機構 東京医療センターにおい
て臨床性能や遺伝カウンセリングへの有用性について評価が行われてきた。
 2023年度中の保険適用を目指す。
※遺伝性網膜ジストロフィーとは、遺伝子変異が原因で網膜の機能に進行性の障害を
きたす疾患の総称で、網膜色素変性症、アッシャー症候群、黄斑ジストロフィが含ま
れる。
[2023/6/5 プレスリリース 6/6 神戸 日経]




■九州大学大学院医学研究院眼科学分野の園田康平教授と村上祐介講師らの研究グル
ープは27日、網膜変性疾患の視機能を回復させる低分子化合物群を同定したと発表
した。研究成果は、「PLOS ONE」オンライン版に掲載された。
 同グループは、4種類の低分子化合物群を同時に培養液に加えるだけで、網膜グリ
ア細胞の一種のミュラー細胞が網膜視細胞へ効率的に分化することを見出した。
 モデル動物を用いた実験で、これら4種類の低分子化合物群を同時に眼内に注射す
るだけで、視細胞に特徴的なロドプシンを産生する細胞が増加することを突き止め、
変性で失われた視機能を回復させることに成功した。
 細胞移植治療や遺伝子治療の前段階で行うことのできる、安価で簡便な新規治療法
の開発が期待される。
[2023/2/27 九州大プレスリリース 2/28 QLife Pro 3/2 日刊工業]




■神戸アイセンター病院は9日、iPS細胞から作った網膜細胞をひも状に加工し、
「網膜色素上皮不全症」の患者に世界で初めての移植手術を実施したと発表した。
 iPS細胞から作った網膜色素上皮細胞を、長さ約2センチの髪の毛くらいの太さ
のひも状に加工した。細胞の培養には人型ロボットを活用した。
 シート状の細胞は定着しやすいが、作製に手間がかかり手術が難しく、液状は定着
しにくかった。
 そこで、手術がより安全・簡単で、かつ細胞の定着率の向上が期待できる「細胞
凝集紐」と呼ばれるひも状細胞を考案した。
 今後約1年経過を観察し、効果や安全性を確認する。
[2022/12/9] 神戸 毎日 日経 共同 ABC




■神戸アイセンター病院などの研究チームは15日、iPS細胞由来の視細胞を網膜
色素変性症の患者に移植する世界初の臨床研究について、移植後1年間経過観察した
結果安全性が確認できたと、東京都内で開かれた日本臨床眼科学会で発表した。
 同チームによると、移植を受けた40代の男性と60代の女性について手術から1
年後の時点までの経過を調べたところ、移植した視細胞は網膜に正常に定着していて
、拒絶反応やがん化といった合併症は起きておらず安全性が確認できたという。また
、60代の女性は視力や視野などの検査の結果、機能の改善がある程度認められたと
いう。
 同チームは、今後より多くの患者に移植を行って効果を詳しく調べることにしてい
る。
[2022/10/15] NHK [10/16] 読売




■神戸アイセンター病院の、iPS細胞由来網膜細胞をひも状に加工し、患者に移植
する臨床研究計画を、厚生労働省の専門部会が了承したことが17日分かった。
 これまでシート状に加工したものや、液体に浮遊させた懸濁液を移植する臨床研究
を実施しているが、ひも状に加工することで定着率の向上と迅速な作製が期待できる
という。
 臨床研究の対象は、視力の低下や視野の欠陥があり、「網膜変性疾患」と診断された
20歳以上の男女50人。4年間にわたり経過観察し、安全性と有効性を確認する。
[2022/2/17 毎日 産経 日経 共同]




■神戸市立神戸アイセンター病院は11日、網膜色素変性症の患者にiPS細胞由来
の網膜色素上皮細胞を移植する手術に成功したと発表した。
 50人を対象にした移植の効果と安全性を確かめる臨床研究の1例目で、経過は
順調という。
 同研究は、厚労省の専門部会が1月20日に承認したもので、視細胞を保護する
網膜色素上皮細胞が機能不全になり、目が見えにくくなる病気全般を対象とする。
 1年かけて、細胞が目の中に定着してきちんと働くかや、視力の変化などを調べる
。その後も3年間追跡する。
[2021/3/11 朝日 産経 神戸 NHK]




■ 厚生労働省の再生医療等評価部会は20日、神戸市立神戸アイセンター病院の
iPS細胞由来の細胞を「網膜色素上皮不全症」の患者に移植する臨床研究計画を
了承した。
 同計画では、第三者のiPS細胞から網膜色素上皮(RPE)細胞を作製。20歳
以上の患者50人にRPE細胞を含んだ液体を移植する。安全性や視野回復の程度な
どを4年かけて調べる。今春にも1例目の移植手術を実施する予定。
 RPE不全症は、加齢黄斑変性の萎縮型や網膜色素変性の一部を含むRPE細胞の
異常が原因となる疾患の総称。RPEは光を感じる視細胞に栄養を送ったり、老廃物
を排除したりする役割を担っており、この機能が低下すると栄養補給が途絶えて視力
の低下や、視野狭さくが起こる。
[2021/1/20 毎日 共同]




■神戸市立神戸アイセンター病院は16日、iPS細胞由来の視細胞を網膜色素変性
の患者に移植する世界初の手術を行った、と発表した。
 京大iPS細胞研究所備蓄のiPS細胞から、視細胞のもとになる網膜前駆細胞を
作製。シート状(直径約1ミリ、厚さ約0・2ミリ)に加工して、患者の右目の網膜下に
3枚移植した。今後約1年かけて安全性や有効性を検証する。
 手術を受けたのは関西地方在住で、明暗が辛うじて分かる程度の視力しかない60代
女性。手術は10月上旬に実施し、約2時間で終了した。同病院は2020年度中にさらに
、もう1人の患者に手術を予定している。
 iPS細胞を使った目の病気の患者への移植は、理化学研究所の「滲出型加齢黄斑
変性」(2014年9月)、大阪大の「角膜上皮幹細胞疲弊症」(2019年7月)に続いて
3種類目。
[2020/10/15 読売 10/16 朝日 毎日 産経 日経 共同 NHK]




■神戸市立神戸アイセンター病院は、iPS細胞由来の神経網膜シートの移植手術(
臨床研究)を今秋に実施する方針を固めた。世界初。
 今回の臨床研究は、厚労省の専門部会で既に了承されたもので、移植した視細胞が
拒絶されずに定着し、がん化しないことなどを確認するのが主目的。約1年かけて
安全性を確認し、機能面はさらに数年観察を続ける。
 手術では、iPS細胞由来の視細胞の前駆細胞を使ったシート(直径約1ミリ、
厚さ約0・2ミリ)を1〜3枚、網膜下に挿入する。
[2020/9/16 神戸]




■厚生労働省の再生医療等評価部会は11日、iPS細胞由来のシート状の網膜神経
細胞を、網膜色素変性症の患者に移植する神戸市立神戸アイセンター病院の臨床研究
計画を了承した。年内にも最初の移植手術が行われる見通し。iPS細胞由来の目の
神経細胞を移植するのは世界初。
 計画では、京都大iPS細胞研究所に備蓄されている第三者のiPS細胞から、
視細胞の元になる網膜神経細胞を含んだシート(直径約1ミリ)を作製。失明に近い
重篤な症状の患者2人の片目にそれぞれ1〜3枚を移植して1年かけて安全性や有効
性を評価する。
 iPS細胞を使った再生医療の臨床応用が認められたのは国内8例目。目の病気の
臨床研究では、滲出型加齢黄斑変性や角膜上皮幹細胞疲弊症で実施されている。
[2020/6/11 朝日 毎日 産経 日経 共同 NHK]




■東北大学大学院医学系研究科の西口康二准教授と中澤徹教授らのグループは、
遺伝子変異の「正常化」を可能にするゲノム編集を用いた新しい遺伝子治療の方法を
開発し、全盲の網膜変性マウスの正常の6割程度の視力を回復することに成功した
(1月24日、「ネイチャーコミュニケーションズ」電子版に掲載)。
 ゲノム編集を用いた遺伝子治療では、病気の原因となる変異部分だけを「正常化」
することができる。しかし、従来の方法では、複数のアデノ随伴ウイルス(AAV)を
用いて異なる遺伝子を同時に導入する必要があるため、遺伝子改変の効率が悪く、
実用化の目途はたっていなかった。
 本研究では、一つのAAVで行うことができる遺伝子治療技術を確立した。このAAVを
成体の全盲網膜変性のマウスに投与したところ、病因変異の約10%が正常化され、
光感度が10,000倍改善し、視力が正常の約6割にまで回復した。
 この成果は、多くの遺伝病性疾患に対する遺伝子治療の開発への道を開くものである。
[2020/1/27 東北大学プレスリリース]




■大阪大の特定認定再生医療等委員会が、神戸市立神戸アイセンター病院の
iPS細胞による網膜色素変性症の臨床研究計画を大筋で承認したことが、
30日分かった。
 今後、厚生労働省の専門部会の審査で認められれば、今年夏にも臨床研究が始まる。
[2020/1/30 共同]




■神戸市立神戸アイセンター病院と理化学研究所などのチームは9日、iPS細胞由来
の視細胞を網膜色素変性症の患者に移植する世界初の臨床研究を、大阪大の委員会に
申請したと発表した。厚生労働省の専門家会議の審査を経て、2020年夏にも1例目の
移植を目指す。
 同研究では、京都大iPS細胞研究所が備蓄しているiPS細胞から作った直径
1ミリのシート状の視細胞を患者の目に移植。1年間安全性や有効性を調べ、順調に
いけば大日本住友製薬が実用化する。
 万代道子・理研副プロジェクトリーダーらは、失明したマウスやラットが、iPS
細胞由来の視細胞を移植すると、光に反応することを確認している。また、サルでは
目の中に移植した細胞が2年以上定着していることも確認している。
[2019/12/9 朝日 毎日 産経 日経 NHK 神戸市]




■大阪大学の古川貴久教授らの研究チームは7日、「明暗順応」の分子レベルの
仕組みをマウスで解明し、欧州の科学誌電子版に発表した。
 視細胞の桿体細胞で酵素「klhl18」が働き、光情報を伝えるたんぱく質「トランス
デューシンα(Tα)」の移動を助けていた。暗い場所ではTαが桿体細胞の外側に
集まり、光の感度を上げる。一方、明るい場所では内側に移動して感度を下げ、適切
にものが見えるようにするとともに視細胞を保護することが知られている。
 同チームは、Tαの移動に関わる分子「klhl18」を突き止めた。klhl18は、Tαを
捉えているたんぱく質を壊し、移動を促す働きがあった。klhl18を失ったマウスでは
Tαの移動が生じず、明暗順応が起きなかった。また、光による視細胞の変化を免疫
抑制剤が抑えることも解明。治療薬開発に役立つとみている。
 古川教授は「klhl18の働きを阻害する薬ができれば、暗所での視力は多少落ちるも
のの、網膜を保護できる可能性がある。網膜変性や老化の進行を遅らせる効果が期待
できる」と話している。
[2019/11/7 毎日 日経 共同]




■大阪大の西田幸二教授らの研究チームは29日、iPS細胞から作った角膜細胞を
、「角膜上皮幹細胞疲弊症」の患者に世界で初めて移植したと発表した。
 iPS細胞による再生医療の臨床研究は、2014年の加齢黄斑変性症(理研など
)、18年のパーキンソン病(京大)に続き3例目。
 角膜上皮幹細胞疲弊症は、角膜を作る幹細胞がけがやウイルス感染、遺伝的な原因
などで失われて発症する。今後1年かけて、移植した細胞の安全性と治療の有効性を
確かめる。年内に2人目の手術を予定。22年度までに4人の移植と経過観察を終え
、25年ごろの保険適用を目指す。
[2019/8/29] 朝日 毎日 読売 産経 日経]




■九州大学病院(治験責任:池田康博医師)は6月4日、網膜色素変性に対する
遺伝子治療の医師主導治験における被験者への治験製品(遺伝子導入ベクター)の
投与を、国内で初めて福岡県外在住の女性に実施した。
 神経栄養因子のヒト色素上皮由来因子(hPEDF)の遺伝子を搭載したサル由来レン
チウイルス(SIV)ベクター(SIV-hPEDF)を患者の目に注射した。hPEDFは神経細胞
を保護する作用があるので、目の中で産生されることによって、視細胞の喪失を防ぎ
、視力の悪化を防ぐことを期待している。
 第1ステージでは4名において治験製品に関連した重篤な副作用の有無などの安全
性を検証し、第2ステージでは4名に中用量の、第3ステージで4名に高用量の治験
製品を投与する。
[2019/6/20 九州大学・日本医療研究機構プレスリリース]




■理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらのチームは日本眼科学会で18日、
他人のiPS細胞から作った網膜の細胞を、滲出型加齢黄斑変性の患者5人に移植した
世界初の臨床研究について、網膜細胞が定着するなど術後1年の経過は良好と発表した
。軽い拒絶反応が1人に起きたが薬剤のステロイド投与で改善した。また、4人
の視力はほぼ維持され1人は向上した。
 高橋さんは「移植した細胞はがん化せず、強い拒絶反応もなかったことから、安全
性が確認できた」と話す。
 今回の臨床研究は、理研と神戸市立医療センター中央市民病院、神戸市立神戸アイ
センター病院、大阪大学、京都大学が協力し実施。
 研究チームと連携する大日本住友製薬などは国の承認を目指した臨床試験(治験)
を準備中で、2022年度の実用化を目指している。
 iPS細胞の移植治療は、パーキンソン病(京大)や心臓病(大阪大)、脊髄損傷
(慶応大)などの研究も進んでいる。
[2019/4/18 朝日 毎日 読売 産経 日経 NHK]




■京都大医学部付属病院の池田華子准教授らの研究グループは21日、網膜色素変性
の進行を抑える治療法の医師主導による臨床試験(治験)を3月1日に始めると発表
した。
 治験は、肝臓病治療に使われる分岐鎖アミノ酸を投与し、視力や視野を検査、経過
を観察する。
 計画は医薬品医療機器総合機構(PMDA)から4日に承認を得て、70人の患者
を対象に、21年3月まで実施する。
[2019/2/21 日経 共同 時事 京都]




■京都大は22日、再生医療に使うヒトES細胞を国内で初めて作製したと発表した
。7月から国内の医療機関などに提供を始める。価格は、研究目的の場合は1容器(
細胞数は約200万個)当たり3万円、商業利用では同6万円程度。
 国は2014年に、人を対象とした臨床研究のための指針を改め、安全性を向上さ
せた医療用ES細胞の作製を認めていた。京大以外にも国立成育医療研究センターが
作製の承認を取得。同センターでは4月から、重い肝臓病の赤ちゃんへの臨床試験(
治験)の計画を進めている。
 米国や韓国などでは、加齢黄斑変性や糖尿病、脊髄損傷などの患者に、ES細胞を
使った治験が先行している。
[2018/5/22 朝日 毎日 読売 産経 日経]




■理化学研究所網膜再生医療開発プロジェクトの万代道子副プロジェクトリーダーら
の研究グループは、ヒトES細胞由来の網膜組織を重度免疫不全マウスの末期網膜
変性モデルに移植して、形だけでなく機能的にも成熟することを確認した(1日、
米科学誌「ステム・セル・リポーツ」電子版に掲載)。
 同グループはこれまでに、@マウスのES細胞/iPS細胞由来の網膜組織を末期
のマウス網膜変性モデルに移植し光が分かるまで改善させる、AヒトES細胞由来の
網膜組織をラットやサルの視細胞変性モデルに移植し形態的に成熟させる、ことに
成功していた。
 今回は、ヒトES細胞由来の網膜組織が光に反応するかを検証。網膜色素変性の
マウスにヒトES細胞由来の視細胞シートを移植したところ約半年後に、視細胞を
含む網膜の構造は正常になり、マウスの神経細胞と結合した。移植した細胞を含む
組織を取り出し光を当てたところ、8匹のうち3匹で脳に光の信号を送る機能の再生を
確認できた。
 今後、臨床用iPS細胞を使ってがん化のリスクなどを確認し、18年度中に臨床
研究を申請する予定。
[2018/3/2 理研プレスリリース 日経 共同 神戸 NHK]




■岡山大学は26日、岡山大学方式人工網膜(OURePTM)が、黄斑変性を有するサル
の視覚誘発電位を回復することを証明したと発表した。この研究は、同大大学院医歯
薬学総合研究科(医)眼科学分野の松尾俊彦准教授と同大学院自然科学研究科(工)
高分子材料学分野の内田哲也准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、近日
中に米人工臓器学会の機関誌「Artificial Organs」に掲載される。
 「OURePTM」は色素結合薄膜型の人工網膜で、カメラ撮像・電極アレイ方式とは
全く異なる新技術。医薬品医療機器法に基づく医師主導治験を同大学病院で実施する
準備を進めている。黄斑変性サルに硝子体手術で安全に植込むことが可能で、術後
6か月の間、合併症もなく安定していることも示した。
 同研究グループは「人工網膜の有効性をさらに補強し、網膜色素変性の患者が参加
する医師主導治験に向けた根拠になる」と述べている。
[2018/1/26 岡山大学プレスリリース 1/30 QLife Proニュース]




■理化学研究所や神戸市立医療センター中央市民病院などの研究チームは16日、
iPS細胞の他家移植の臨床研究で、加齢黄斑変性の男性患者の一人に網膜の上に膜が
できる合併症が起こり、膜を除去する再手術をしたと発表した。
 膜ができた原因について、注射で移植した細胞が漏れ出たり逆流して膜ができた
可能性があり、iPS細胞から作った細胞による拒絶反応の可能性は低いと言う。
 理研の高橋政代プロジェクトリーダーは「iPS細胞を使わない手術でも同様の
症状が報告されている。臨床研究に影響はないが、移植手術の方法に改良の余地がある
」と話し、今後も臨床研究を継続させるとした。
 同チームは、網膜の腫れがiPS細胞から作った細胞と関係している可能性を否定
できないため、再生医療安全性確保法に基づき今月11日に「重篤な事象」として
厚生労働相に報告した。
[2018/1/16 朝日 毎日 日経 NHK]




■先端医療振興財団・細胞療法研究開発センターの川真田伸センター長らのチームは
11日、iPS細胞やES細胞のガン化原因を初めて特定したと発表した(10日付
の英国科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に掲載)。
 同チームは、iPS細胞やES細胞に存在する「CHD7」という分子について、
細胞ごとに含有量を測定した結果、おおむね2000ナノグラム以上であれば分化
するが、おおむね800ナノグラム以下であればがん化することを突き止めた。
CHD7が分化を始めるスイッチの役割を果たしていた。
 川真田センター長は「安全なiPS細胞を短時間で簡単に選別することができる。
再生医療の一般化に貢献できる発見だ」としている。
[2018/1/11 神戸 時事]




■神戸アイセンターは1日、患者診療を担う病院部分と、視覚障害者の日常生活を
支援するロービジョンケアスペースが開業した。iPS細胞の研究室や細胞培養施設は
順次開設する(開設記念式典は11月26日)。
 同センターは、基礎研究から治療・リハビリまでの総合的な対応に取り組む国内初
の眼科施設。鉄骨7階建て(延べ約8600u)。中心施設は眼科病院で、神戸市立
医療センター中央市民病院眼科と先端医療センター病院眼科を統合(入院ベッド30床
)。運営は高橋政代氏が理事の「NEXT VISION」などが担当する。
 1〜6階……市立神戸アイセンター病院
 2階……視覚障害者のリハビリ支援機器や社会復帰をサポートするビジョンパーク
  リーディング(セミナー、読書) リラクゼーション(音楽鑑賞、カフェ)
  キッチン(料理、工作) アクティブ(クライミング、ヨガなど)
  シミュレーション(疑似、見え方体験)〜の五つのエリア
 5階……理化学研究所のiPS細胞を使った目の再生医療研究施設
 6階……先端医療振興財団のiPS細胞などの再生医療用の細胞培養施設
[2017/12/01 NHK 11/27 神戸 朝日 毎日 読売 産経 日経]




■理化学研究所などの研究チームは1日、滲出型加齢黄斑変性に対するiPS細胞の
「他家移植」による世界初の臨床研究について、予定していた5例の手術を終えたと
発表した。
 1人目は3月に実施していたが、今後1年間かけて経過や安全性などを調べる予定。
 臨床研究を行っているのは、理化学研究所(高橋政代プロジェクトリーダー)と、
神戸 市立医療センター中央市民病院、大阪大学、京都大学の研究チーム。
 患者本人のiPS細胞を使う「自家移植」よりも、他人由来ののiPSを移植する
「他家移植」の方が、コストや時間などを大幅に縮減でき、iPS細胞による再生医
療の普及につながると期待される。
[2017/11/1 毎日 読売 産経 日経 共同 時事 NHK]




■神戸市立医療センター中央市民病院は28日、他人のiPS細胞由来の網膜細胞を
滲出型加齢黄斑変性の患者に移植する臨床研究を実施したと発表した。
 iPS細胞の他家移植は世界初で、実施したのは理化学研究所と神戸市立医療セン
ター中央市民病院、大阪大学と京都大学のチーム。移植手術では、網膜細胞を溶液に
浮遊させて患部に注射する方法を採用。網膜の一部を切除し、細胞をシート状に加工
して埋め込んだ前回と比べ、患者の負担や感染症の恐れが少ないという。
 研究チームは、今回の男性を含めて5人程度に移植手術を施し、術後1年間は細胞
のがん化や拒絶反応の有無等について経過を観察し、その後も3年間の追跡調査を
実施する。
 3年前の自家移植では11カ月かかり、費用も1億円と高額なことが課題だったが
、他家移植では期間は約10分の1、費用も10分の1程度に抑えられると期待される。
[2017/3/28 朝日 毎日 読売 産経 日経 共同 NHK]




■理化学研究所の万代道子副プロジェクトリーダーらは、マウスiPS細胞由来の
視細胞を網膜変性末期マウスに移植し、光に対する反応が回復することを確認した
(11日付の米科学誌「ステム・セル・リポーツ」電子版に掲載)。
 視細胞をほぼ消失した末期の変性網膜において、移植された網膜組織が成熟して
光に応答し、さらにシナプスが形成されたことをはっきりと確認したのは世界で
初めて。2年以内に臨床研究の申請をする予定。
 研究チームは、移植したマウスに光を当てた5秒後に電気ショックを与える行動
実験を実施。移植に成功したマウスの約4割が健康なマウスと同じように、光を感知
して電気ショックを避けるようになったことを確認した。また、移植先の双極細胞と
移植片視細胞との間でシナプス形成されたこと、及び、脳につながる神経節細胞から
光応答がシナプスを介して得られることも確認した。
 網膜色素変性患者に対するiPS細胞由来の網膜組織の移植治療における“裏付け
実験”として大きな意義がある。
[2017/1/11 理研プレスリリース 朝日 毎日 読売 産経 日経 共同 時事
 NHK]




■東北大学の阿部俊明教授らの研究グループは13日、網膜色素変性症の患部に薬剤
(ウノプロストン)を届ける薬剤送達システム(DDS)を開発し、ウサギの実験で
網膜保護効果を報告したと発表した(12月1日、Investigative Ophthalmology & Visual Science誌・電子版に掲載)。
 治療薬を詰めた長さ1cm、幅3.6mm、厚さ0.7mmのシート状のカプセルを眼球の奥に
埋め込むと、しみ出た薬が病気の進行を抑える。治療効果は32週間続いた。手術は
10分ほどで済み、患者の負担は小さいという。17年度に予定している治験では、
薬を1年間しみ出し続けるカプセルを患者に埋め込み、安全性などを調べる。
[2016/12/18 日経 12/13 東北大学プレスリリース]




[補足情報]

■東北大学大学院医学系研究科の阿部俊明教授(細胞治療分野)らのグループは、
網膜色素変性動物モデルに対する埋込み型薬剤(ウノプロストン)徐放デバイスで
網膜保護効果を報告した(2016/12/1 Investigative Ophthalmology & Visual
Science誌・電子版に掲載)。
 ウノプロストン点眼のみでは有効な濃度の薬剤が網膜へ到達しにくいという課題が
あった。研究グループは、網膜色素変性モデル(トランスジェニックウサギ)の強膜
上にウノプロストンを徐々に放出するデバイスを埋め込み、錐体細胞が集まっている
網膜の中心部(黄斑部)に薬物を送る方法を検討した。
 その結果、埋植後32週間まで視細胞の変性が有意に抑制されていた。また、眼内
にウノプロストンが持続的に検出された。来年度から治験が始まる予定。
[2016/12/13 東北大プレスリリース 12/15 LifePro医療ニュース]




■理化学研究所の恒川雄二研究員と米国ソーク生物学研究所らの国際共同研究グループ
は、ネズミを使った実験で、「ゲノム編集」と呼ばれる技術を使って網膜の遺伝子を
操作し、網膜色素変性症の症状を改善させることに成功した(17日、英科学誌
ネイチャーに発表)。
ゲノム配列をデザイン・改変する操作をゲノム編集と呼ぶが、従来は、細胞分裂が
起きるタイミングを狙って行っていたので、マウス・ラット生体内の神経細胞など
非分裂細胞ではゲノム編集はできなかった。
 同研究グループは、非分裂細胞内でも活性を持つ別のDNA修復機構を利用したゲノム
改変技術を開発し、「HITI(ヒティ)」と名付けた。生後3齢の網膜色素変性症ラット
の網膜下に、HITI-AAVを局所注射にり直接投与したところ、約1か月後に、視細胞の
遺伝子の約4%が修復され、光を感じて反応できるようになった。
[2016/11/17 理研プレスリリース NHKニュース 11/18 読売]




■理化学研究所と先端医療振興財団、参天製薬は6日、iPS細胞を使って、網膜の
難病の治療薬となる候補物質を探す共同研究を始めたと発表した。
 神戸市に共同研究室を設置。理研の高橋政代プロジェクトリーダーが責任者を務め
、ほか7人の研究者や医師らが参加する。研究期間は3年間。
 理研が持つiPS細胞から立体網膜を作る技術を活用して、網膜色素変性症や加齢
黄斑変性と同様の状態の組織を開発。その組織に参天製薬が持つ薬の候補物質などを
試し、創薬につながる物質の発見を目指す。
 iPS細胞を使った創薬は企業や研究機関が試みているが、今回は立体的な網膜組織
を使うことが特徴で、新薬開発のスピードや可能性が高まるメリットがあるという。
[2016/10/7 朝日 読売 日経 神戸]




■理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらのグループは、 サルiPS細胞
から作った網膜組織を別のサルに移植し、免疫抑制剤を使わずに拒絶反応を防ぐこと
に成功した(9月15日付の米国科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に発表)
。免疫の型の合った2頭では半年後も拒絶反応は起きなかったが、型の合わない5頭
では数カ月内に拒絶反応が起き網膜剥離などの症状が出た。試験管内でヒトiPS
細胞を使った実験でも同様の結果を得たという。
 免疫の型の合った細胞を利用すると、原理的には術後の拒絶反応が抑えられると
考えられるが、眼科領域で実際に検証した報告はなかった。今回の成果はヒトでも
拒絶反応がなく安全に移植が行えることを裏付けるデータだとしている。
 同プロジェクトでは2014年に、ヒトiPS細胞由来rpe細胞を自家移植によって
滲出型加齢性黄斑変性患者に世界で初めて移植した。自家移植は、術後に拒絶反応が
起こる確率が極めて低いが、細胞培養に時間と費用がかかるため、経費削減と効率化
を図るため他家移植の実現を目指している。
[2016/9/16 理研プレスリリース NHK 朝日 共同 神戸 マイナミ]




■京都大学iPS細胞研究所の齊藤博英教授らの研究チームは、iPS細胞を含む
多能性幹細胞内で活性の高いマイクロRNAを感知するメッセンジャーRNAを合成
し、細胞内に導入することで、iPS細胞や部分的に分化したiPS細胞を選択的に識別・
分離・除去できる仕組みを構築することに成功した
(9日、英科学誌「サイエンティフィック リポーツ」オンラインに発表)。
 iPS細胞から分化させた細胞集団の中に、未分化のiPS細胞が残っていたり、
完全に分化しきれていない細胞が混ざってしまったりすることがあるが、これを生体内
に移植すると、癌化する可能性がある。それを防ぐため、未分化なiPS細胞を識別
して適切に除去し、完全に分化した細胞集団を作ることが重要であった。
 同チームの開発した技術により、iPS細胞から分化させた細胞集団を容易に純化
でき、再生医療や創薬への貢献が期待される。
[2016/9/9 京都大学 朝日 日経 共同 京都]




■国立成育医療研究センターと埼玉医科大の研究チームが27日、マウスのiPS細胞
とES細胞から視神経細胞を作製することに世界で初めて成功したと発表した。
 新しい治療法などの開発にはマウスなどでの動物実験が欠かせず、今回のマウス
細胞での成功により、緑内障などの視神経細胞の死滅を抑える薬の開発や、移植に
よる視覚回復に近付くと期待される。
 同研究チームは昨年、同じ技術を使い、ヒトの皮膚から作ったiPS細胞を視神経
細胞に変化させることに成功している。
[2016/6/27 国立成育医療研究センタープレスリリース 6/28 毎日]




■理化学研究所などは6日、他人由来のiPS細胞を利用して「滲出型加齢黄斑変性
」の患者約10人を治療する臨床研究を、来年前半にも再開すると発表した。
 京都大が作製したiPS細胞を、理研が移植用の網膜色素上皮細胞に分化させ、
大阪大と神戸市立医療センター中央市民病院が患者に移植する。
 新たな臨床研究では、移植時に拒絶反応が少ないとされる特殊な型の他人の細胞
から作製したiPS細胞を備蓄する「iPS細胞ストック」を利用。患者本人のiPS細胞
を使う場合より、時間やコストが大幅に削減できると期待される。
 2014年9月の世界初の臨床試験の経過は順調だが、2例目の別の患者由来の
iPS細胞に複数の遺伝子変異が見つかり、移植を見送っていた。
[2016/6/6 朝日 毎日 読売 産経 日経 共同]




■アステラス製薬(株)は2月1日、東北大学発のベンチャー企業・クリノ(株)と
遺伝子治療薬「AAV-mVChR1」(アデノ随伴ウイルス-改変型ボルボックスチャネルロ
ドプシン1)について、網膜色素変性症を適応疾患とした全世界における開発・商業
化のライセンス契約を締結したと発表した。眼科領域と遺伝子治療を強化する狙い。
現在は前臨床の段階で、今後はアステラス単独で開発する。
 改変型VChR1は、元東北大学で現在岩手大学工学部に在籍する冨田浩史教授らが創
製した新規タンパク質。緑藻類が持つチャネルロドプシンを改変した光受容イオンチ
ャネルで、幅広い波長の光に反応するのが特徴。
 網膜色素変性症モデルラットに、非病原性ウイルスであるAAVをベクターとしたAAV
-mVChR1を硝子体注射で投与すると、mVChR1が網膜神経節細胞に発現し光感知能が回
復する結果が得られており、網膜色素変性症患者の視覚回復が期待されている。
[2016/2/1 アステラス製薬プレスリリース 2/4 薬事日報




■公益社団法人「NEXT VISION」(代表理事・三宅養三名古屋大名誉教授
、設立発起人・理事・高橋政代理研プロジェクトリーダー)は31日、視覚障害者の
社会参加を支援する「isee!(アイシー)運動」を2月1日から始めると発表した。
運動の名称は英語で「驚き」を指すことなどから決めた。
 同法人は、視覚障害者の現状を広く情報発信し、雇用拡大などを目指す。具体的には、
視覚障害者と医療関係者が話し合う「患者サロン」、就労支援の研究、障害に関する
企業との共同研究、啓発アニメの作製、障害者の就労事例を集めたコンテストなどを
予定。2017年秋にポートアイランドに設立される「神戸アイセンター(仮称)」
に拠点を置いて運動を展開する。
[2016/1/31 毎日 日経 神戸]




■理化学研究所多細胞システム形成研究センターなどの研究チームは、ヒトES細胞
から視細胞のシートを作ってサルの目に移植することに、世界で初めて成功した。
近く米科学アカデミー紀要電子版に掲載される。
 ヒトのES細胞を胎児期の網膜組織になるまで約2カ月培養。レーザーや薬品で
視細胞を取り除いたカニクイザルなどの目に移植した。網膜組織が視細胞になり、
一部はサルの元の細胞とつながったことを確認した。今後実際に機能しているか調べる。
 同チームは、iPS細胞を使い2018年度をめどに、網膜色素変性の患者に対する
臨床試験(治験)を目指している。
[2015/12/22 朝日 神戸]




■大日本住友製薬は理化学研究所と連携し、iPS細胞から作った細胞を液体の注射薬
として開発、2017年に治験を始め、20年の製品化を目指す。
 対象疾患は加齢黄斑変性で、他人のiPS細胞から作った網膜細胞をそのまま入れた
注射剤の開発に取り組む。移植準備から施術までの期間を大幅に短縮でき、施術が
容易でコストを抑えられる。網膜色素変性やパーキンソン病、脊髄損傷など、他の
疾患向けの注射剤の製品化も目指す。
 同社が50%出資のベンチャー企業・サイレジェン(神戸市)が、15年度中に神戸
市内にiPS細胞の培養施設の建設に着手する計画。
[2015/6/13 日経]




■岡山大学大学院眼科学分野の松尾俊彦准教授、高分子材料学分野の内田哲也准教授
らの医工連携研究グループは、岡山大学方式の人工網膜「OUReP」が、ラットの視覚
を回復することとラットの網膜電図を誘発することを世界で初めて証明した(2015年
3月3日に日本人工臓器学会の英文雑誌『Journal of Artificial Organs』に掲載)。
 人工網膜「OUReP」は、光を電位差として出力する色素結合薄膜型のポリエチレン
フィルムで、薄くて柔らかな素材のため網膜の代わりに埋め込めば、受光した光で背
面の残存視神経を刺激する。理論的には本来の目と同等の解像度が実現できる。
 同研究グループは、網膜色素変性ラットにOURePに埋め込んで網膜電図を記録した
ところ、埋め込んでいないラットに比べて網膜電図が誘発されており、有効性を確認
できたとしている。OURePには毒性がなく、また埋め込み手術は既存の手術と変わり
ない手法で可能であり、岡山大学病院で医師主導の治験を実施する準備を進めている。
[2015/5/7 岡山大学プレスリリース]




■理化学研究所多細胞システム形成研究センターの桑原篤客員研究員らと住友化学
生物環境科学研究所の共同研究グループは、ヒトES細胞から毛様体縁を含む複合網膜
組織を作製することに成功した(19日付の英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ
」オンライン版に掲載)。
 同グループは、神経の形成に関わるBMPというたんぱく質を加える培養法(BMP法
)を確立し、ES細胞を約8割の高効率で網膜細胞に変化させた。また、網膜組織を
培養して網膜色素上皮(RPE)に分化させ、再び神経網膜へ戻す「揺り戻し法
」という手法も確立し、複合網膜組織を作製した。
 神経網膜とRPEの境界に自己組織化により毛様体縁が形成され、そこに存在する
幹細胞が視細胞や神経節細胞に分化することも確認できた。
 理研の高橋政代プロジェクトリーダーらは大日本住友製薬と共同で、今回確立された
技術をヒトiPS細胞に適用し、再生医療の実現に向け研究を進めている。
[2015/2/19 毎日 日経 日刊工業 共同 理化研プレスリリース]




■国立成育医療研究センターと埼玉医大の研究チームは、ヒトiPS細胞から「軸索」
と呼ばれる神経線維を持つ視神経細胞を作製することに世界で初めて成功した
(10日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表)。
 同研究チームはiPS細胞のかたまりを立体で培養、蛋白質を加えながら途中から平面
培養に切り替え、約1カ月で1センチから2センチほどの「軸索」と呼ばれる構造を
持つ神経細胞「網膜神経節細胞」に分化させる方法を確立した。作製された視神経細胞
は電気反応などが確認された。
 視覚情報は電気信号として、網膜から長さ3〜5センチの神経線維(軸索)を伝って
脳に到達する。
 緑内障など視神経の病気のメカニズムの解明や、新薬開発、再生医療に役立つ
可能性があるという。
[2015/2/11 朝日 毎日 産経 共同 NHK]




■ 理化学研究所は19日、STAP問題について、小保方晴子研究員と理研チーム
の検証実験でSTAP細胞は作製できず、いずれの実験も打ち切る、と発表した。
論文は7月に撤回されていたが、STAP細胞の存在が改めて否定されたことになる。
 小保方氏は、生後5〜10日のマウスの血液細胞を酸性溶液に漬けて刺激し、細胞
の発光現象を調べた。ごく少数の細胞で発光現象が観察されたが、万能細胞が出来た
と判断できる兆候は見られなかったという。発光現象が見られた約1600個の細胞
の塊を、受精卵に入れたが、万能性を確認できる特殊なマウス(キメラマウス)は
生まれなかった。
 一方、理研チームの実験では、論文と異なる刺激を与えると、一部の細胞にSTAP
細胞とよく似た現象が確認されたが、約240個を受精卵に入れても、特殊なマウス
は生まれなかった。
[2014/12/19 朝日 毎日 読売 産経 日経 共同 NHK]




■米バイオ企業アドバンスト・セル・テクノロジー(ACT)社は14日、ES細胞を
使って目の網膜の病気を治療する臨床試験で、3年間に及ぶ安全性と効果が示された
と英医学誌ランセットに発表した。
 同社は、加齢黄斑変性などの患者18人に、ES細胞由来の網膜色素上皮細胞を移植
。3年にわたって患者を追跡したが、腫瘍化などの大きな副作用はなく、10人の
視力が一部改善するなどの効果がみられた。
 理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらが9月12日に、iPS細胞を使った
世界初の臨床研究を実施したが、同じような性質を持つES細胞で安全性が示された
ことで、iPS細胞を使った治療の展望がさらに開けそうだ。
[2014/10/15 共同通信 47ニュース]




■神戸市は、iPS細胞を用いた網膜の再生医療の拠点として、研究・細胞培養・
病院機能を持つ総合施設「神戸アイセンター」(仮称)の新設を計画している。
先端医療振興財団と理研、ヘリオス、大日本住友製薬が参加する予定。
 センター内には、遺伝子診断やリハビリ、生活訓練施設も計画。
 敷地は先端医療振興財団の北側で、同市立医療センター中央市民病院の駐車場の
一部2000平方メートル。市の外郭団体が7階建てのビルを新設する。来年度の
着工、2016年度の完成を目指す。
[2014/9/13 読売 8/9 神戸 2/18 共同 神戸]




■理化学研究所発生・再生科学総合研究センターと先端医療センター病院は12日、
iPS細胞から作った網膜色素上皮細胞のシートを、「滲出型加齢黄斑変性」の70代
の女性患者に移植する臨床研究の手術を行ったと発表した。iPS細胞を用いた治療は
世界で初めて。安全性の確認が主な目的だが、視力の改善など有効性も調べる。
 理研の高橋政代・プロジェクトリーダーらが移植用細胞の作製を、同病院の栗本康夫
・眼科統括部長らが移植手術を担当した。
 高橋氏らは、女性から採取した皮膚細胞に6種類の遺伝子を入れてiPS細胞を作製。
さらに特殊なたんぱく質を加えて約10か月かけて培養し、長さ3ミリ、幅1・3ミリ
の細胞シートに加工した。
 手術は、異常な血管ができて傷ついた色素上皮を専用の器具で取り除き、色素上皮
細胞のシートで置き換えた。患者は3〜7日後に退院し、定期的に検査を受ける。
計6人の手術を計画しているが、2人目以降の時期は未定。
[2014/9/12 朝日 毎日 読売 産経 日経 NHK]




■理化学研究所の丹羽プロジェクトリーダーらは27日、STAP細胞の存在を
確かめる検証実験の中間報告を発表した。
 研究論文に示された手法で、マウスの脾臓(ひぞう)から取り出した白血球の一種
のリンパ球を薄めた塩酸に浸した後に培養する実験を22回繰り返したが、万能細胞
に特有の遺伝子の働きは確認できず、現時点ではSTAP細胞が作製できていない
ことを明らかにした。
 今後、マウスの種類や実験に使う臓器、細胞を刺激する方法などの条件を変えて、
3月まで検証実験を続ける予定。
 一方、小保方晴子氏は、丹羽氏らのチームとは別に、7月から11月末までの期限
で独自の検証実験を進めている。
[2014/8/27 朝日 毎日 読売 産経 日経 NHK]




■厚生労働省の検討委員会は27日、難病医療法に基づいて医療費が助成される
「指定難病」として、110の難病を決定した。今回は来年1月から助成を始める
第1次実施分で、46の病気が新しく指定された。
 対象者は現行の約78万人から約120万人に拡大する。一方、自己負担がゼロだった
重症患者も所得に応じて月額1000円〜3万円の負担が生じるほか、軽症者が
助成対象から外れる場合もある。
 同省は5月に成立した難病医療法に基づき、助成の対象を現行の56疾患から
約300疾患(約150万人)に拡大させる方針。残りの約190疾患については
秋ごろに選定し、来夏以降の助成開始を目指す。
[2014/8/27 朝日 産経 読売]




■京都大の垣塚彰教授と池田華子准教授らの研究グループは、マウスを使った実験で
、網膜色素変性症の進行を遅らせる化合物を開発することに成功した(6日付の
英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に発表)。
 同グループは、網膜色素変性症は細胞のエネルギー源が分解されすぎることが原因
ではないかと考え、網膜に多くあり、細胞のエネルギー源となる物質を大量消費する
VCP と呼ばれるタンパク質に注目。VCPがエネルギーを消費するのを抑える
物質があれば、視細胞にエネルギーや栄養が行き渡りやすくなり、視細胞が早期に
死滅するのを防げると考えた。
 この物質を網膜色素変性症のマウスに投与したところ、およそ25日で失明する
ところが30%程度進行を遅らせることができた。
 垣塚教授は、「医薬品としての開発を目指して数年以内に臨床研究に入りたい」と
話している。
[2014/8/6 共同 8/7 京都 NHK]




■英科学誌ネイチャーは2日、理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダーらが
執筆した論文2本を取り下げたと発表した。14人の全著者からの撤回申請を認めた。
 撤回したのは、マウスの体の細胞を弱酸性の液体で刺激するだけでどんな細胞にも
なれる万能細胞に変化するというSTAP細胞の作製方法などを記した主論文
「アーティクル」と、STAP細胞からつくったとされる幹細胞の特徴などを示した
追加論文「レター」の2本。STAP細胞論文は2014年1月30日付で掲載されて
いたが、撤回によって、「生物学の常識を覆す」として世界的に注目された研究成果は、
発表から約5カ月で白紙に戻った。
 同誌は撤回の理由について理化学研究所の調査委員会による報告書で、画像の
取り違えなどが「不正」と認定された上、調査委が調べた以外の誤りも、共著者により
指摘されていることを挙げ、「いくつかの誤りが重なり、STAP現象が存在すると
確信を持って言えなくなったと考える」と説明し、謝罪した。撤回した後も論文を
ホームページに残し、今後の教訓にするという。
[2014/7/2 朝日 毎日 読売 産経 日経 共同]




■慶應大学の小沢洋子講師と吉田哲訪問助教らの研究グループは、網膜色素変性症の
患者の皮膚からiPS細胞を作成し、網膜の細胞に変化させて、試験管の中で病態
メカニズムを再現することに成功した。6月13日に英医学雑誌Molecular Brainの
オンライン版で公開される。今後の病態解明と新規治療薬の開発につながる成果と
期待される。
 iPS細胞を使うことで遺伝子の変異と症状の因果関係が証明され、ロドプシン遺伝子
に変異を持つ患者の疾患の原因がロドプシン変異であることが特定された。また
、抗がん剤の一種が、ロドプシンの働きを抑え症状の悪化を食い止めることも分かった。
[2014/6/14 慶應大プレスリリース NHK]




■理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の研究グループは4日、
iPS細胞から視細胞のシートを作ってマウスに移植することに、世界で初めて成功した
、と発表した。2018年度を目標に、「網膜色素変性」に対する臨床応用を目指す。
 同グループは、成熟する途中の視細胞で作ったシートを網膜色素変性のマウスに移植
した結果、体内で正常な構造に成熟し、他の細胞とつながっていることを確認した
。今後は視細胞が光を感じているかどうかなどの研究を進める。
[2014/6/5 神戸]




■岩手大学工学部の冨田浩史教授らの研究グループは13日までに、改変した緑藻の
一種「ボルボックス」の遺伝子を、「アデノ随伴ウイルスベクター」に組み込んで、
ラットの網膜細胞に注入。緑、黄、赤を感知できる視覚の回復に成功したと発表した
。これまでの研究では青色しか感知できなかった。12日付の海外学術誌(「Molecular
Therapy」)にオンライン掲載された。
 同グループは平成21年、緑藻の一種「クラミドモナス」に光を感じる遺伝子が
あることに着目し、失明したラットの視覚を回復させることに成功していた。
[2014/5/13 産経 日経 共同]




■理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの小保方(おぼかた)晴子ユニット
リーダーらの研究チームは、マウスの細胞に弱酸性の刺激を与えるだけの簡単な方法で、
万能細胞を作製することに成功した
(30日付の英科学誌ネイチャーの巻頭論文として掲載された)。
 この細胞は、「刺激惹起性多能性獲得」(stimulus triggered
 acquisition of pluripotency)の頭文字を取って「
STAP(スタップ)細胞」と名付けられた。
 同チームは、生後1週間以内のマウスの脾臓からリンパ球を採取し、希塩酸溶液に
約30分浸して刺激して培養。数日で初期化が始まりSTAP細胞に変わった。
作成した細胞は、神経や筋肉などの細胞に分化する能力があることを確認した。
 STAP細胞は、外的な刺激を与えるだけなのでがん化のリスクが低く、初期化の
成功率も7〜9%と高い(iPS細胞では0・2%未満)。
[2014/1/30 朝日 毎日 読売 産経 日経 NHKニュース 共同通信]




■京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長と高橋和利講師、神戸大学大学院医学研究科の
青井三千代助教らの研究グループは、iPS細胞のうち、腫瘍になりやすいものを見分ける
目印となる3つの遺伝子(HHLA1、ABHD12B、C4orf51)を発見した
と発表した(19日付の米国科学アカデミー紀要オンライン版に掲載)。
 同研究グループは、iPS細胞を分化させる前に、比較的簡単な方法で品質を見分け
られるため、再生医療の時間やコストを削減できる可能性がある、と言う。
[2013/11/19 毎日 読売 日経 共同 NHK 朝日]




■理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹グループディレクターは
26日、iPS細胞を使った網膜色素変性症の臨床研究を、高橋政代プロジェクト
リーダーらと共同で5年後に始める方針を明らかにした。
 まず、iPS細胞などから作った視細胞を移植する臨床研究を5年後に、次に、
より立体的な網膜を作る技術を確立した上で、患者に移植し視力を回復させる研究を
10年以内に開始する。
[2013/8/26 時事通信]




■厚生労働相は19日、iPS細胞を用いた加齢黄斑変性症の治療を目指す
理化学研究所等の臨床研究を正式に承認した。iPS細胞による臨床応用は世界初。
来年夏にも患者への移植手術が行われる見通し。
 臨床研究は、理研発生・再生科学総合研究センターの高橋政代プロジェクトリーダーらが
計画し、2月に厚労省に申請し、6月下旬に厚生科学審議会科学技術部会の「ヒト幹細胞
臨床研究に関する審査委員会」が承認し、7月12日に同部会も了承していた。
 iPS細胞は、京都大の山中伸弥教授が平成18年にマウスで作製。19年にヒト
で成功してから6年で臨床応用への道が開かれたことになる。
[2013/7/19 朝日 毎日 読売 産経 日経]




■厚生労働省のヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会は26日、去る2月に
理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの高橋政代プロジェクトリーダーらのチームが
申請していたiPS細胞を使った「加齢黄斑変性」の臨床研究について、計画を
妥当と認め、移植する細胞の染色体が大きく傷ついていないことなどを確認し、がん化
のリスクを可能な限り減らすことを条件に了承した。
 7月に予定される厚生科学審議会科学技術部会と厚労相の了承を経て、正式に実施が
認められる見込み。これにより、iPS細胞を使った再生医療の実現に向けて、
世界初の臨床応用が来年夏にも始まる見通しとなった。
[2013/6/26 朝日 毎日 読売 産経 日経 共同 NHK]




■厚生労働省の専門委員会は29日、ES細胞(胚性幹細胞)を用いた臨床研究を
認める方針を決定した。新規に作製するES細胞や、海外製のES細胞が対象。
 臨床に使われない前提で作られた細胞の使用は容認できないとの理由で、京都大学と
国立成育医療研究センターが作製した既存の12のES細胞については対象外となった。
[2013/5/30 朝日 読売]




■理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは15日、iPS細胞から作った視細胞を
移植する網膜色素変性症の臨床研究の準備に着手したことを、再生医療を推進する
議員の会で明らかにした。5年後の治療開始を目指す。理研の別のグループは既に
ES細胞から立体的な網膜組織を作ることに成功している。
 高橋リーダーらは、iPS細胞を加齢黄斑変性の治療に使う世界初の臨床研究を
早ければ今秋にも始める。網膜色素変性症はこれに続く2つ目の計画。
[2013/5/16 日経]




■米オレゴン健康科学大の立花真仁研究員とシュフラート・ミタリポフ博士らのチームは、
卵子に別の人の皮膚細胞の核を入れる「体細胞クローン技術」を使い、ES細胞を
作製することに世界で初めて成功した(15日付米科学誌セル(電子版)に発表)。
 ヒトクローンES細胞をめぐっては、2004年の韓国ソウル大の黄禹錫元教授の
捏造事件がある。
 クローン胚は、子宮に戻すとクローン人間に育つ可能性があり、国内では2000年に
クローン技術規制法が制定され、子宮へ戻すことが禁止された。現状では作製は
、文部科学省指針で難病治療などの再生医療研究目的に限定して認められている。
[2013/5/16 朝日 毎日 読売 日経 共同]




■iPS細胞などを用いた再生医療に関する国の責務を定めた超党派の議員立法
「再生医療推進法」が26日、参院本会議で可決、成立した。
 同法は国に対して、「再生医療の迅速かつ安全な研究開発と普及のための施策を
策定し、実施する責務を有する」と明記した。
 具体的には、@大学などの先進的な研究開発への助成 A高度な技術を有する
事業者の参入促進 B再生医療製品などの早期承認・審査体制整備 C専門知識を持つ
人材の育成 などを挙げた。
[2013/4/26 毎日 読売 日経 時事]




■九州大病院(福岡市)は10日、網膜色素変性症の日本初となる遺伝子治療の
臨床研究を、3月26日に始めたと発表した。
 研究薬の安全性を確かめるために投与を受けた最初の患者は4月10日に退院し、
経過は順調という。
 臨床研究は、同病院の石橋達朗教授らが計画。視細胞を保護するタンパク質の
遺伝子を組み込んだウイルスベクター(遺伝子の運び役)を網膜に注射し、視細胞が
失われるのを防ぐ。
[2013/4/10 共同通信 47news]




■ 理化学研究所と先端医療振興財団(神戸市)は28日、iPS細胞
(人工多能性幹細胞)を使った加齢黄斑変性(滲出型)の臨床研究について、
厚生労働省に実施計画を申請した。理研発生・再生科学総合研究センターの
高橋政代プロジェクトリーダーのチームが計画。移植した細胞が腫瘍化しないかなど、
安全性の確認を主な目的としている。
 厚生労働省は早ければ3月下旬から、厚生科学審議会の「ヒト幹細胞臨床研究に
関する審査委員会」で審査を始める。承認されれば、2014年中にも、iPS細胞を
人に用いる世界初の臨床試験が行われる見通し。
[2013/2/26 NHK 日経 共同 時事 2/28 朝日 毎日 読売 産経]




■大阪大学蛋白質研究所の古川貴久教授らの研究グループは、マウスを使った
遺伝子治療で、網膜色素変性症の症状を改善することに成功した。
 研究グループは、遺伝子の欠損が原因で網膜色素変性症になったマウスに、
アデノウイルス随伴ベクター(AAV)を用いて、欠損した遺伝子を入れると高い確率で
遺伝子が組み込まれることを突き止めた。この治療を行ったマウスの目に光をあてると、
網膜が光を受けた際に出す電気信号が微弱ながら確認されるなど網膜の機能の回復が
見られた。
[2013/1/16 NHK大阪放送局 時事通信]




■理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの高橋政代・プロジェクトリーダーらは、
iPS細胞を使った実験で、網膜色素変性症の患者に投与されているビタミン剤には、
同じ病気でも逆効果になる場合があることを突き止めた。iPS細胞で具体的な
〈薬効の個人差〉を確認できたのは初めて。
 研究グループは、患者5人の皮膚の細胞から作ったiPS細胞を視細胞に変化させ
、ビタミンEを投与した結果、2人は視細胞の減少を抑えられたが、3人は逆に細胞
の減少が速まり、症状を悪化させることが分かった。薬効のあった2人はいずれも「
RP9」という遺伝子が欠損。害があった3人は、別の遺伝子に異常があった。
 同チームでは、患者のiPS細胞で薬効に関するデータを蓄積し、遺伝子診断と組み合せれば、
患者ごとの『テーラーメード医療』が実現できる可能性がある、としている。
[2013/1/7 読売 NHK大阪]




■理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の高橋政代プロジェクトリーダーは
26日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った目の病気治療の臨床研究の
実施申請を、理研の倫理委員会に提出したことを明かにした。
 「加齢黄斑変性」(滲出型)の患者6人が対象で、患者の細胞から作ったiPS細胞から
網膜色素上皮細胞シートを作り、移植する。移植手術を行う先端医療センター病院と
、移植後の患者の経過観察などを担う神戸市立医療センター中央市民病院にも
申請する予定。倫理委での承認を経た後、厚労省にも計画を申請する必要がある。
 13年度に臨床研究を計画しており、実現すれば、世界初のiPS細胞を使った
臨床研究となる。
[2012/10/26 朝日 毎日 読売 産経 日経 共同 時事 NHK]




■九州大学病院は29日、網膜色素変性症の患者に、日本初となる遺伝子治療の
臨床研究を来春にも開始すると発表した。
 石橋達朗教授らは、視細胞を保護する神経栄養因子(HPEDF ヒト色素上皮由来因子)
を組み込んだウイルスベクター(遺伝子の運び屋)を患者の硝子体に注射することで、
視細胞の喪失を防ぎ、視力の低下を遅らせる考え。
 動物実験では5年以上効果が続くことが確認されており、来春から段階的に約20人に
臨床研究を行って安全性や効果を確かめる。
[2012/8/29 共同通信 8/31 朝日]




■大阪大学の瓶井資弘・病院教授らは、網膜色素変性症の患者3人を対象に、
2014年度にも人工網膜を埋め込み視力を一部回復させる臨床試験(治験)を始める。
患者は1年以上埋め込んだまま生活し、安全性や光を感じ取る機能などを確かめる。
 人工網膜は49個の電極を付けた約5ミリ角、厚さ約1ミリの装置で、失明患者の
目の裏側に電極を付け、電気で網膜などを刺激する。眼鏡に付けたカメラで撮影した
画像の特徴を携帯型コンピューターで電気信号に変換。埋め込んだ電極に磁力を利用し
無線で伝えると複数の点が光るのを感じられる。
[2012/8/27 日経]




■弘前大学大学院医学研究科眼科学講座(中澤満教授)の尾崎拓助等の研究チームは、
「網膜色素変性症」の原因となる酵素(カルパイン)の働きを抑制するアミノ酸化合物
(ペプチド1種)を発見し、疾患遺伝子の一つを持つラットの硝子体に投与した結果、
視細胞の死を抑えることに成功した
(8月2日付のオランダの科学誌「BBA−Molecular Basis of Disease」電子版に掲載)。
 同チームは、同じペプチドを1日2回点眼した場合でも効果が得られた、今後、実用化
に向けて、長期の点眼で副作用があるかどうかを調べるほか、残りの原因遺伝子に
よる網膜色素変性症や緑内障への効果を研究するという。
[2012/8/15 東奥日報]




■岡山大学大学院の松尾俊彦准教授(眼科)と内田哲也准教授(高分子材料学)らのグループは、
網膜色素変性症などの治療を目的とした人工網膜の試作品の開発に成功。
10人程度の臨床試験の準備を進めている。
 同グループは、光を電気信号に変える「光電変換色素」(岡山市・林原が開発)を
、5〜10ミリ角・厚さ30マイクロメートルのポリエチレンフィルムの表面に結合
(1ミリ角に100億個以上の色素を固定)して人工網膜を作成した。
 これを挿入した網膜色素変性のラットに、動く白黒模様を見せたところ、目で追う
しぐさを頻繁に見せた。網膜にある神経細胞が刺激され、視覚が回復していることを確認。
「1年以内に学内の倫理委員会に申請、治療を始めたい」としている。
[2012/7/21 山陽新聞 RSK山陽放送]




■東北大学大学院医学系研究科附属創生応用医学研究センターの阿部俊明教授(細胞
治療分野)らの研究チームは、(株)アールテック・ウエノと共同で、網膜色素変性症の
治療用薬剤(ウノプロストン)の持続性ドラッグデリバリーシステム(薬物送達システム
DDS)の研究を開始する。
 同教授らが開発したのは、強膜(結膜)の一部を切り開いて埋め込む経強膜DDS
。3〜4ミリメートルのカプセルに同社が開発している網膜色素変性症治療薬の候補
化合物「イソプロピル・ウノプロストン」を封入し、一定時間かけて徐々に放出させる。
この方法は強膜側移植手術で硝子体の中に挿入する従来のデバイスに比べ、患者
の負担が小さいという。
 既にマウスで効果を確かめているが、今後はサルでも安全性と効果を調べ、人間に
よる治験を経て、数年後の実用化を目指す。
[2012/7/12 東北大学プレスリリース 7/17 日経 日刊工業
 フジサンケイビジネスアイ]




■理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹グループディレクターと
住友化学(株)生物環境科学研究所等の研究チームは、世界で初めて、ヒトES細胞
(胚性幹細胞)から多層構造を持つ立体網膜組織を形成することに成功した
(14日付の米科学誌セル・ステム・セルに発表)。
 研究チームは、ヒトES細胞9000個を特殊な培養液に浸し、網膜の基になる
組織「眼杯」(直径約0.6ミリ)を作成、さらに数週間〜十数週間培養し続け、
神経網膜の主要細胞である視細胞、神経節細胞、介在神経細胞などを含む、複雑で多層化
した構造を持つ網膜組織(直径約5ミリ、厚さ約0.3ミリのおわん型)の立体形成
にも成功した。
 この自己組織化網膜は、高純度で網膜細胞以外の細胞を含まず、免疫不全マウスに
移植しても、腫瘍の形成は全く認められなかった。
 今後は光を感じ取る機能があるかどうかを調べ、5年後をめどに患者で臨床研究を
目指す。また、立体網膜組織をあまり傷つけずに液体窒素中で凍結保存する方法も確立。
高品質な神経網膜を、研究機関や医療機関に提供することが可能になったという。
 研究チームは、2011年にマウスES細胞から、眼杯と立体網膜を作ることに
成功していた。
[2012/6/14 理化研プレスリリース 朝日 毎日 読売 産経 日経
 共同 時事 NHKニュース]




■国立障害者リハビリテーションセンター(国リハ)研究所の岩波将輝研究員と
加藤誠志研究所長らの研究チームは、日本人網膜色素変性症の主要な原因遺伝子の
EYS遺伝子を解明した
(米国の眼科学雑誌(Investigative Ophthalmology and Visual Science)に発表)。
 国リハ病院眼科に来院した68名の網膜色素変性症患者についてEYS遺伝子の
変異探索を行った結果、2種類の創始者変異を見いだし、常染色体劣性遺伝の日本人
網膜色素変性症患者の約3分の1がこれら2種類の変異のどちらかを有していることを
明らかにした。
 M1とM2という二つの短縮型変異は、血縁関係のない複数の家系から見いだされたことから、
昔一人の創始者に生じ、何世代にもわたってより多くの家系に今日まで
受け継がれてきたと考えられる。
[2012/2/3 国立障害者リハビリテーションセンタープレスリリース 時事通信]




■国立成育医療研究センター(東京都)と浜松医科大の研究チームは、
網膜色素変性症の日本人の患者の7人に1人に相当する高頻度で、特定の遺伝子に
異常があることを発見した(2日付の米科学誌プロスワン電子版に発表)。
遺伝子検査による病気の早期発見や、新しい治療法の研究に役立つ成果。
 同研究チームが日本人患者100人の遺伝子を調べ分析すると、患者の14%で
「EYS」という遺伝子に変異が起きていた。欧米の患者ではEYS遺伝子の変異が
多いという報告はないという。
 原因遺伝子の候補はほかにも知られているが、実際に変異がある患者の割合は1%
に満たず決め手に欠けていた。
[2012/2/2 産経 日経 共同]




■米バイオ企業アドバンスト・セル・テクノロジー社(マサチューセッツ州)と
米カリフォルニア大ロサンゼルス校の研究チームは、胚性幹細胞(ES細胞)を
目の網膜の病気の治療に使う臨床試験で、治療を受けた2人の患者の視力を
改善させることに成功した(23日付の英医学誌ランセット・電子版に発表)。
 同チームは、加齢黄斑変性症の女性(78歳)とシュタルガルト病の女性(51歳)の
目に、ES細胞由来の網膜色素上皮細胞を移植。前者は手の動きしか識別できなかったが、
移植の1週間後には指の本数を数えられるようになった。後者も識別できる文字の数が増えたという。
移植から4カ月までに患者2人の網膜色素上皮は定着、細胞の異常増殖やがん化は確認されていないとしている。
ES細胞を使った治療で効果が論文として報告されたのは世界で初めて。
 日本では人工多能性幹細胞(iPS細胞)の利用を目指し、理化学研究所が
加齢黄斑変性症の臨床研究の計画を進めている。
[2012/1/24 産経 日経 NHK 1/25 朝日 読売]




■京都大学医学部付属病院は18日、iPS細胞を再生医療や新薬開発に役立てるため、
「iPS細胞臨床開発部」を12月1日に開設すると発表した。京大iPS細胞
研究所(CiRA)と連携し、難病患者の細胞採取やiPS細胞を使った創薬、再生
医療の研究を加速させる。
 同開発部は、患者から細胞の提供を受ける「iPS細胞外来」と、iPS細胞の品質
管理や技術向上を進める「品質管理技術開発室」で構成。医師と京大iPS細胞
研究所の研究員の77人が兼務する。
 山中伸弥所長は「患者への説明やiPS細胞の作製法を統一することで、創薬研究
の質が上がる」と話している。
[2011/11/18 朝日 毎日 読売 産経 日経 京都 時事 共同 NHK]




■京都大学は11日、米国でiPS細胞を作る遺伝子技術の基本技術に関する特許が
成立したと発表した。医薬品で最大の市場規模をもつ米国で認められたことで、
実用化に向けた研究も加速しそうだ。日本や欧州は「先願主義」だが、米国は「先発明主義」。
権利期間は27年6月までの見込み。
 京大は、これで市場の8割を占める「日米欧」のすべてを制し、世界で
iPS細胞の基本特許を事実上独占することになる。【京大のiPS細胞関連の特許が
認められている海外の地域は、欧州(NIS諸国以外)、ロシア、南アフリカ、シンガポール、
ニュージーランド、イスラエル】
 今回成立した特許は、3種類の遺伝子を皮膚などの体細胞に導入してiPS細胞を作る方法と、
2種類の遺伝子と細胞増殖を促す働きなどを持つたんぱく質を体細胞に
導入してiPS細胞を作る基本技術。
[2011/8/11 朝日 毎日 読売 産経 日経 NHK]




■ 京都大学は11日、iPS細胞をつくる技術の特許が欧州で成立したと発表した。
権利期間は国際出願した2006年12月6日から20年間。
 今回成立したのは、人を含む動物の体細胞に、2〜3種類の遺伝子を入れてiPS
細胞を作る基本技術。類似の遺伝子も対象で、それらが作り出すたんぱく質や
遺伝物質などを使う方法も権利に含まれる。欧州38か国を所管する欧州特許庁
(本部・ドイツ)が7日、特許を認めた。
 同様の特許は日本でも成立済みで、既に南アフリカ、シンガポールで成立したほか、
ロシアなど旧ソ連9カ国で効力を持つユーラシア特許も取得済み。米国でも年内にも
成立するとみられている。
[2011/7/11 朝日 毎日 読売 産経 日経 NHK]




■米ミネソタ大の桔梗伸明准教授と平井博之助教らは、ヒトやマウスのiPS細胞の
作成効率を50倍高めることに成功した(6日、米科学誌ステムセルズ電子版に発表)。
 同研究チームは、iPS細胞を作成するときに導入する「Oct3/4」の遺伝子に
、細胞が筋肉に成長するのを促す働きがある「MyoD」という別の遺伝子の一部を
結合させた。作製効率が約50倍に向上し、ヒトは約0.3%、マウスは約5%になった
。作製日数も約2週間から、ヒトで8日、マウスで5日に短縮できた。
[2011/7/7 朝日 日経]




■慶應大学の岡野栄之教授と赤松和土専任講師らの研究チームは、
マウスやヒトの皮膚細胞から直接神経細胞を作成することに成功した。
ヒトの皮膚細胞からiPS細胞経由でニューロンやグリア細胞を作る場合、4〜6カ月かかるが、
今回の方法では18日から30日でできた。
事故による脊髄損傷など緊急時の治療などへの応用が期待される。
15日からカナダで開かれる国際幹細胞学会で発表する。
[2011/6/15 朝日 日経]




■京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授と前川桃子助教らの研究グループは、
がん遺伝子の「c―Myc」の代りに「Glis1(グリスワン)」という遺伝子を用い、
高い効率でiPS細胞を作り出すと同時に細胞ががんに変化するのを抑えることに成功した
(9日付の英科学誌ネイチャーに発表)。
 実験結果によると作成効率は、マウスでは20%から90〜100%に、ヒトでも
約10%から約40%に高まった。
 理化学研究所のチームは、2013年をメドに、iPS細胞から作った網膜細胞を
「加齢黄斑変性症」の治療に使う臨床試験を始める計画で、新製法で作ったiPS細胞の
利用も検討するという。
[2011/06/09 朝日 毎日 読売 産経 日経 京都 共同 時事 NHK]




■京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授は6日の記者会見で、米カリフォルニア大
の研究チームの「iPS細胞でも拒絶反応が起きた」とする論文に対して
「実験データの解釈に誤りがある」と反論した。
 また、東北大などの研究チームの「iPS細胞はMuse細胞からしか作製できない」
とする研究論文について、体細胞から10%を超える割合でiPS細胞ができたり、
完全に分化した免疫細胞などからもiPS細胞ができることから、「特殊な細胞
だけがiPS細胞になることはあり得ない」と述べた。
[2011/6/6 朝日 日経 京都 共同]




■東北大の出沢真理教授(幹細胞生物学)と京都大の藤吉好則教授らの研究チームは、
iPS細胞をヒトの皮膚から作る際、ごくわずかに含まれる「Muse(ミューズ)
細胞」だけがiPS細胞になることを突き止めた
(31日、米科学アカデミー紀要電子版に発表)。
ミューズ細胞は東北大のチームが昨年、ES細胞、iPS細胞に続く多能性幹細胞として発見。
 iPS細胞の多能性は、遺伝子導入によって細胞が初期化されて付与されるものではなく、
ミューズ細胞が元々持っている多能性を遺伝子が強めているのだと結論付けた。
「遺伝子導入によって、体細胞を分化前の状態に初期化する」という定説に疑問
を提示するもので、今後議論を呼びそうだ。
[2011/5/31 毎日 読売 NHK[




■米スタンフォード大学の研究チームは、ヒトの皮膚細胞に4種類の遺伝子を導入し
、iPS細胞を経ずに直接神経細胞に変えることに成功した
(27日、英科学誌ネイチャー電子版に発表)。
 皮膚などの体細胞から直接目的の細胞を作る「ダイレクト・リプログラミング」と
呼ばれる技術で、人間の神経細胞ができたのは初めて。この研究はマウスでは心筋細胞など、
ヒトでは血液細胞の前段階の細胞が作られた例がある。
[2011/5/27 朝日 時事 5/28 読売]




■大阪大学大学院医学系研究科の森正樹教授(消化器外科)らの研究チームは、
皮膚などの細胞に「マイクロRNA」という遺伝物質の断片を3種類ふりかけるだけで、
iPS細胞を作ることに成功。マウスに移植してさまざまな細胞に変化することも確認した
(26日付の米科学誌「セル・ステムセル」電子版で発表)。
従来のウイルスを使う方法より簡便で、がん化などの危険性も小さく、再生医療への応用が
期待される。
 マイクロRNAは、細胞内で遺伝子情報の仲介などをする通常のRNA(リボ核酸)
より小さく、細胞内で作られるたんぱく質の種類や量を調整する働きがあるとされ、
これまで約1,000種類の存在が知られている。
 研究チームは、作製した細胞を「mi−iPS(ミップス)細胞」と名付けた。
作製効率は約1%。今後、加える薬剤などを工夫し効率を高めるとともに、1種類の
マイクロRNAでiPS細胞作製を目指す。
[2011/5/27 朝日 毎日 読売 産経 日経 共同 時事]




■米ハーバード大学スケペンス眼研究所のチームは、マウスにiPS細胞を移植し、
目の網膜を修復する実験に成功した。移植した細胞がまわりの神経とつながり、
視力が回復したのを確認した。
[2011/5/23 日経産業新聞]
※Tucker博士らは、マウスの皮膚細胞から樹立したiPS 細胞由来の網膜神経細胞を
移植することにより、網膜変性疾患モデルマウスの網膜の再生および視機能の改善を行うことに
成功した。この研究は4月29日、PLoS ONEに発表された。
[2011/5/17 文部科学省iPS細胞等研究ネットワーク iPSTrend(StemCellResearchNews)]




■米カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームはマウスの実験で、iPS細胞
(人工多能性幹細胞)が拒絶反応を起こす可能性があることを明らかにした
(14日付の英科学誌ネイチャー電子版で発表)。
 同チームは、マウスの体細胞に2種類の方法で遺伝子を導入してiPS細胞を作成し、
遺伝情報が同一の別のマウスにそれを移植。数週間後、マウスの体内でiPS細胞
からできた組織で細胞が壊死するなど、免疫細胞による拒絶反応が起きていた。
免疫反応に関係する遺伝子が作製の過程で活性化された可能性があるという。
一方、このマウスの受精卵から作ったES細胞(胚性幹細胞)を移植した場合は拒絶反応は
起きなかった。
 「iPS細胞から分化してできる細胞のうち、どの細胞が拒絶反応を引き起こすの
かを調べることが重要だ」としている。
[2011/5/14 朝日 毎日 読売 産経 日経 NHK 時事 共同]




■産業技術総合研究所は27日、ヒトiPS細胞を従来の約100倍の効率で作製する
技術を開発したと発表した。
 「センダイウイルス」を使い、4種類の遺伝子を皮膚細胞などに組み込むと、
1〜2%(従来の約100倍)の高い効率でiPS細胞になった。細胞内に残る組み込んだ
遺伝子をなくす技術も開発。 組み込んだ遺伝子によってがん化する恐れがあったが
、新技術により安全性を高められるとしている。
[2011/4/27 日経]
※関連記事 [2011/4/4 朝日 読売 産経 日経 京都 共同]
 京都大は、大腸菌などが持つ「プラスミド」をベクターに使用。




■米グラッドストーン研究所のシェン・ディン主任研究員らは、マウスの皮膚から
iPS細胞(人工多能性幹細胞)を介さずに、神経細胞のもとになる神経幹細胞を作る
ことに成功した(26日付の米科学アカデミー紀要に発表)。
 同研究チームは、マウスの皮膚細胞に四つの遺伝子を導入した後、薬剤を使って
遺伝子が働く時間が短くなるよう工夫。神経幹細胞ができる際に必要な蛋白質を加えて
培養すると、iPS細胞にはならず、直接神経幹細胞になった。
 iPS細胞を介さずに、必要な細胞を直接作る技術は「ダイレクト・リプログラミング」
と呼ばれ、世界中で開発競争が行われている。
[2011/4/26 朝日
※関連記事 [2010/1/28 毎日 読売 日経 時事 共同]
 米スタンフォード大、慶応大も同様の研究に成功している。




■理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹ディレクターや永楽元次
・副ユニットリーダーらと、京都大学、大阪大学の研究チームは、マウスのES細胞
(胚性幹細胞)を使い、立体的な層構造を持つ目の「神経網膜」を作ることに世界で
初めて成功した。
網膜色素変性症の再生医療に道を開く成果。(7日付の英科学誌ネイチャーに発表)
 同研究チームは、マウスのES細胞を特殊な培養液で増やす際、約3000個の
細胞を直径約1センチのくぼみの中で凝集する方法を開発。網膜の元になるおわん形の
「眼杯(がんぱい)」に似た組織(直径0・2ミリ)を作ることに成功した。
これを切り取って培養を続けると、光を電気信号に変える視細胞や、信号を脳に伝える
神経節細胞など、網膜を構成する神経細胞が規則正しく並び、生後間もないマウスの網膜
と同様に6層の構造を形成。神経細胞同士が信号をやりとりしていることも確認した。
 理化学研究所網膜再生医療研究チームの高橋政代チームリーダーは「網膜の組織が
できたことで、移植への難関が取り払われた。臨床研究まで6〜7年に近づいたのでは」
と話している。
[2011/4/7 朝日 毎日 読売 産経 日経 共同 時事]




■京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授と沖田圭介講師らは、iPS細胞
(人工多能性幹細胞)を従来の30倍の効率で作成し、がん化の危険性も軽減することに
成功した(4日付の米科学誌「ネイチャー・メソッズ(電子版)」に掲載)。
 同研究チームは、大腸菌などが持つ、染色体を傷つけず細胞内で短期間に分解されるという
リング状のDNA「プラスミド」を改良し、これに作製効率を高める遺伝子L−Mycなど
六つの遺伝子を組み込んでヒトの皮膚細胞に導入する方法でiPS細胞を作った。
従来は細胞10万個からiPS細胞を含む細胞の塊を1つ作れるかどうかだったが、
この方法では約30個でき、がん化の恐れも少ないという。
 できたiPS細胞を神経細胞や網膜の細胞に変化させることにも成功した。
[2011/4/4 朝日 読売 産経 日経  京都 共同]




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