あぁるぴい医療情報                        

あぁるぴい編集長 小林正志

 世界会議のために久しぶりの医療情報となりました。まず、4月に再生医療学会が初めて開催されたことが注目されます。京都の会場は熱気に包まれていたとの報道もありました。再生医療に対する期待は余りに大きく、その一つである脊髄損傷の患者に神経再生を実現させようと「日本せきずい基金」が運動をはじめたことも心強く思います。さらに7月には色変に関する興味ある報道がありました。骨髄幹細胞には「運び役・ベクター」としての機能もあるようですので、「安全なベクター」となりうるのならば、神経保護(病気の進行を遅らせる)の点でも、今後期待が持てそうです。

 

骨髄幹細胞で網膜治療に道 −米グループ−

 さまざまな臓器や組織に育つ能力を持つ骨髄中の幹細胞を、マウスの目に注射して血管の増殖を抑えたり、逆に血管を新生させることに米スクリプス研究所の大谷篤史研究員(京都大眼科助手)らのグループが成功。29日付けの米医学誌ネイチャー・メディシンに発表した。

 安全性などが確かめられれば、糖尿病性網膜症や加齢黄斑変性症など網膜の血管の増殖や障害で起き視力低下や失明を伴う疾患の治療への応用が期待されそうだ。

 成体マウスの骨髄に含まれる幹細胞の一種、血管内皮前駆細胞に血管が新たにできるのを抑制するたんぱく質の遺伝子を組み込み、生後間もないマウスの目に注射した。幹細胞は血管の土台になると考えられる網膜のグリア細胞に付着。たんぱく質が出来て血管の新生や発達が抑えられ、10日後にはまったく血管新生が起こらなかった。

 一方、手を加えない通常の幹細胞を、血管が細くなるなどの異常をきたす網膜色素変性症の新生児マウスの目に打ち、新しい血管を作らせ、病状の進行を遅らせることにも成功した。血管は網膜の本来の層に正常量できていたという。

 通常の幹細胞をレーザーで傷つけた成体マウスの網膜に入れると、幹細胞は損傷した部分だけで働くことも確認.。幹細胞を局所的な治療に使う他、必要な部分に必要な遺伝子を送り込む「運び役」として使える可能性が出てきた。(7月29日、日経朝刊)

 

ナノテク使い人工臓器開発 ◆文科省が来年度着手 

国会図書館の蔵書を角砂糖サイズに詰め込んでしまうような超微細技術のナノテクノロジーを活用、臓器など人間の体の一部を人工的に作り出そうというプロジェクトに、来年度から文部科学省が乗り出す。

 大阪大学産業科学研究所の川合知二教授らが中心となって進める「ヒューマン・ボディー・ビルディング」計画で、産業界とも連携し、5−10年で実用化を目指す。国の科学技術政策の中核事業に位置づけ、来年度概算要求に盛り込む方針だ。

 超微細構造でありながら人間の五感に匹敵するセンサーを作ったり、分子レベルで組織を組み立てたりするなど、高感度で高精度の体のパーツを作り出す計画で、米国でも今年7月に全米科学財団(NSF)が同様の計画を発表している。文科省では産業界からの資金提供も含め、5年間で総額295億円の予算規模を想定している。

 まず、〈1〉特定味覚にだけに反応するセンサー〈2〉ガス検出機能を持つ半導体〈3〉映像を記憶するセンサー――などを開発し、薄い膜や繊維状にして、体内に埋め込めるようにする。これらを神経を通じて脳とつなげれば、大量の情報を処理でき、感度も現在のセンサーの1000〜1万倍に高めることができるという。

 この高感度センサーを人工臓器に活用。糖尿病治療のため、インシュリンの分泌を適量に調整する装置や、血流を調節できる装置を開発、人工すい臓や人工心臓に組み込む計画。小型の肝臓組織や、体により近い精密な構造の骨、軟骨を分子レベルから組み立てる技術も開発する。プロジェクトには医療機器メーカーなど10社以上が参加する予定でいる。(2002年8月14日 東京読売朝刊)

 

医療関連トピックス

 

●02・4・12 読売 「心筋梗塞、薬で治る」

白血病の治療などに使われる薬を注射して、患者の体内で骨髄幹細胞を増やし、心筋梗塞で壊れた心筋を再生させることに、岐阜大病院第二内科が世界で初めて成功した。

02・4・16 読売 「胎盤から骨・神経細胞」

東大医科学研究所の高橋恒夫教授は、胎盤の特殊な細胞(間葉系幹細胞)を骨や神経細胞に成長させることに世界ではじめて成功した。

02・4・19 日経 「日本再生医療学会、初の総会開幕」

再生医療の研究者が18日、京都市に会し、従来困難とされていた臓器の再生に向けた新しい研究成果が続々と発表され、企業関係者も交え、会場は熱気に包まれた。

02・4・22 日経 「胚から作成した眼球の移植をカエルで成功」

東京大学の浅島誠教授らのグループはカエルの胚(はい)から眼球を作りオタマジャクシに移植、カエルに成長してからも眼球が機能することを世界で初めて確認した。眼は再生医療分野の中でも早期の臨床応用が期待されていて、すでに患者の角膜を再生させる治療などが一部で始まっている。

02・4・26 日経 「ヒト胚性幹細胞、研究へ一歩」

ヒト胚性幹細胞の研究を田辺製薬が京都大学と共同で近く始める.製薬会社では初めて研究計画を文部科学省に提出した.同社は3年前から京大と合同でサルのES細胞作りを始め、2年程で完成をさせ、これを国内の研究機関に提供し、細胞育成のノウハウを蓄積している。

02・5・1 日経 「医療技術に特許権」

特許庁は治療方法などの医療技術に特許権を認める方針を固めた。やけどの治療などに使う皮膚の培養方法など、急成長が見込まれる再生医療の技術を対象に認める.医療の新技術を保護して、研究開発や医療ベンチャー企業を支援する。来年の通常国会で特許法改正案を提出する方向。

●02・5・23 日経 「障害者補助犬法が成立」

介助犬や聴導犬の地位を法的に確立し、盲導犬と同じように、公共施設や電車などの公共交通機関では原則として「補助犬を同伴することを拒んではいけない」とさだめた。本年10月1日に施行される。

●02・5・23  日経 「糖尿病性網膜症、酵素使い手術」

山形大学の一瀬教授と順天堂大学の田中教授のグループは、人間の血液から造られる「プラスミン」という酵素を使った手術に成功し、これを25日の日本眼科医学会で発表する。

網膜と硝子体が癒着する糖尿病性網膜症は、年に数万人が発症し悪化すると失明する。機械で硝子体を吸引していた従来の手術法に比べ、新しい手術法は、採取した血液を精製し、プラスミンを抽出。約0.1CCを注射器で注入すると、癒着していた網膜と硝子体が10分以内に離れ、患者の負担は大きく軽減されるという。

02・5・27 読売 「脊髄再生医療のセミナー開かれる」

脊髄損傷患者の支援団体「日本せきずい基金」が主催し、慶応大学の岡野栄夫教授など第一線の研究者の報告と、「国際脊髄基金」を創設したオーストラリアのイエスナー弁護士が、再生医療研究を資金面で応援する重要性を訴えた。日本せきずい基金では「再生医療が実用化されれば、10万人ともいわれる患者が自分の足で歩くのも夢ではないことを訴えていきたい」としている。