「生活を支える三つの制度 ― 障害年金を中心に見通しを立てるために」
松原智治
社会保険労務士の松原智治(まつばらともはる)です。今回のビッグスワンでは、いつもの障害年金だけでなく、周辺の社会保険制度も含めた内容でお届けします。令和7年9月、ヘルスサイエンスセンター島根様にお招きを受けた勉強会でお伝えした内容を凝縮しています。
社会保障制度には、病気や障害により働きづらくなったときに生活を支える仕組みが複数あります。なかでもビッグスワンで取り上げることの多い障害年金は長期収入保障として位置付けられ、健康保険や雇用保険と組み合わせながら生活を安定させる重要な仕組みです。本稿では、最近の改正点と関連制度とのつながりを整理しつつ、どのような備えが必要かを考えていきます。
まず、障害年金に関する近年の改正です。視覚障害の認定基準は、視力も視野も、より実態を反映できる手法へと見直されました。また、同じ初診日・同じ傷病で不支給となったのち、5年以内に再請求する際は初診日証明が不要となるなど、手続負担を軽減する改正も行われました。 障害年金の位置付けを理解するためには、健康保険と雇用保険が担う役割を知っておくことも大切です。健康保険には、高額療養費制度や医療費助成に加え、働けない期間の収入を補う傷病手当金があります。雇用保険では、離職後の基本手当(いわゆる失業保険)や、病気で就労できない状態が続く場合の受給期間延長、さらには再就職支援なども利用できます。
そしてこれらの制度は「当事者を支える時期」が異なります。発症期には医療費助成が中心となり、生活に支障が出始める「療養期」には傷病手当金や就労支援が関係します。そして、症状が固定し働き続けることが難しくなった段階では、長期収入保障として障害年金が検討されます。このように、短期から長期へと、段階に応じて制度が役割を引き継ぐ仕組みです。
加えて、制度が切り替わる際には併給調整にも注意が必要です。併給調整とは、同時期に異なる制度が同種保障を行う場合、両方を満額受け取れない仕組みです。たとえば、障害年金と傷病手当金は併給できますが、時期が重なる際には一定の調整があります。しかし初診日が国民年金の場合、調整はありません(ややこしいですね)。また、障害年金と雇用保険の基本手当は制度上併給可能ですが、就労可能性の有無という前提が異なるため、傷病の性質によっては整合性が問われる場面もあります。
こうして捉え直すと、制度はどうしても複雑に感じられるかもしれません。しかし、生活やお金の不安が生じる前に、「どの時期に、どの制度が、どのように生活を支えてくれるのか」を把握しておくことは、将来の見通しを立てるうえで大きな助けになります。「知らなかった」が後から起こらないよう、基本事項だけでも押さえておきたいところです。 「知っていること」を生活の安心に繋げるためには、行動や考え方も大切です。たとえば、体調変化や生活の困りごとを日々の記録として残しておくこと。記録は、振り返る際の客観的な手がかりとなり、自分では気づきにくい変化を把握する助けにもなります。また、制度利用や手続きについても、早い段階で専門機関に相談しておくことも重要。必要な準備が明確になるだけでなく、誤った判断による遅れや重複も防げます。さらに、家族や周囲の支援者と情報を共有し、何もかも一人では抱え込まないことも大事です。
以上、参考になれば幸いです。必要な方に情報が届きますように。それではまた次回。どうぞ素敵な毎日を!
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