ビッグスワン第56号より <巻頭言> 「功徳」とは
山陰網膜色素変性症協会(JRPS山陰)会長 矢野健
初夏を思わせる強い日差しの下、若葉の色が一層濃くなる時季となりました。4月22日に鳥取市でバードリスニングを体験し、散歩の時など小鳥の囀りが気になる方も多いのではないでしょうか。
さて、みなさん一度は「功徳(くどく)」という言葉を聞いたことがあると思います。「功徳を積む」「功徳を施す」などといいますが、この「功徳」も、みなさんもご存じのように仏教から来た言葉です。それでは、どうしたら「功徳」を獲得出来るのでしょうか?
良い行いの結果、そこに積まれるものが「功徳」です。「良い行い」とは、一見簡単なようですが、実はなかなか出来ないことで、「七仏通戒偈」というように様々な仏さまが言い続けています。だからこそ、 それを実践しようと努力することが功徳を積むことにつながるのです。「良い行い」にはさまざまなことがありますが、おすすめしたいのは「無財(むざい)の七施(しちせ)」と呼ばれるものです。
◎1つ目は「眼施(げんせ)」で、やさしい眼差しで相手を見つめること。
◎2つ目は「和顔施(わがんせ)」、穏やかな笑顔で接すること。
◎3つ目は「愛語施(あいごせ)」、愛情のある言葉で接すること。
◎4つ目は「身施(しんせ)」、自分の身体を使って奉仕すること。
◎5つ目は「心施(しんせ)」、人のために心を配ること。
◎6つ目は「床座施(しょうざせ)」、席や場所を譲ること。
◎7つ目は「房舎施(ぼうじゃせ)」、雨風をしのぐ場所を提供すること
この7つを心がけて生活していけば良い行いとなり、功徳を積むことにつながります。「床座施(しょうざせ)」は、電車で席を譲る、といったことが想像されるでしょう。ときには「譲ったのに断られた」ということもあるかもしれません。親切心で行ったことが報われず、逆に不快な顔をされてしまったりすると、複雑な気持ちになりますよね。でも、相手には思いが届かなかったとしても、自分自身は良いことをしたわけですから、功徳は積まれます。だから相手に対して怒ったりせず、「自分のために良い行いをしたのだ」と気持ちを切り替えればよいのです。
私たち難病患者や障がい者は、特に健常者の方にサポートを受ける立場にありますが、この場合は、健常者の方に功徳が1ポイント、また、サポートを受けて「ありがとうございます。」と感謝の言葉で、私たちも1ポイント獲得出来るということです。逆に、怒ったら、1ポイントが減らされます。日常生活では、様々なことが起きますが、一日トータルしてマイナスにならないよう過ごしていけば、功徳ポイントは増えていくはずです。また、自分で積んだ功徳は人のために使えると言われています。自分のためにも人のためにも良い行いをして、功徳というポイントを貯めていきましょう。