会報誌ビッグスワン第60号 巻頭言
「一病息災」で年齢を重ねて行きましょう!
山陰網膜色素変性症協会 会長 矢野健
今夏も酷暑で何日も雨が降らないと思ったら、台風と共に大雨に。また、米不足で価格が上昇し、米食文化の私たち日本人にとっては、重大な問題となりました。
私は、花壇に四季折々に香る花を咲かせる植物を植えています。農耕民族のDNAがあるのか、土を触っているとなぜか落ち着きます。皆様は、いかがでしょうか?
「老い」には、嘘も偽りもありません。気力、体力、記憶力が衰えるのが老いの1つの側面です。それだけを考えればクヨクヨしたくなります。しかし、物事は異なった3つくらいの見方をしないと真実のあり方は見えません。これが「3人寄れば文殊の知恵」と言われる理由です。
「一病息災」という言葉があります。これは、持病の1つくらいある人の方が健康に気を配るので、健康に自信のある人よりもかえって長生きをするものだという意味です。人生の折り返しを過ぎたと思う頃、体のあちらこちらに不調をきたします。「疲れやすくなった」、「傷がなかなか治らない」と思うのは、体が自分に相談をしているのではないでしょうか。体と相談したあとは周囲の人に相談し、次に医者に相談し、最終的な決断は自分がするしかありません。定期的な投薬や治療が必要になり、そのための時間のやりくりや精神的なストレスに苛まれることになるかもしれません。そのときに健康な人から慰めの言葉として「一病息災」を聞く前に、健康でいる間に自分に言い聞かせておくといいのではないでしょうか。
年齢に関係なく、生き方上手のコツは「"初めて"という心の張りを持つ」ことでしょう。今年、あなたは生まれて初めての年齢を生きています。今までやったことがあっても、幾度も行った場所でも、今の年齢でやったり、行ったりするのは初めてです。以前に比べると多くのことを経験しているので、対処の仕方や感じ方もレベルアップしているはずです。以前と全く同じということはありえません。
"初めて"の新鮮さを楽しみにする心の張りがないと、「どうせ」や「つまらない」が口癖になります。そうなれば、泥水をたっぷり吸ったスポンジのようなもので、どんなきれいな水に浸しても、きれいな水は吸い込めません。老いると気力、体力、記憶力が劣化しますが、劣化を凌いで余りある知恵を蓄えているのも老いの側面です。何より老いは、成長の1過程であり、そこにはうそや偽りはありません。安心して、堂々と年を取りましょう!