~「我が家の財産管理はこれで解決!?」家族信託の基礎、成年後見との違い 後編~

会報誌ビッグスワン第60号より

社会保険労務士 松原智治

こんにちは、松原智治(まつばらともはる)です。生活にまつわる制度や、直結したお金の仕組みについてご紹介しています。この度取り上げるのは、個人の財産管理をサポートする仕組み「家族信託」としました。前編では、どんなケースで活用できる制度なのかについて、生活の場面にあてはめてご紹介しました。後編は、家族信託に似た別の仕組みについてお伝えします。ではどうぞ。

「家族信託」によく似た仕組みに「成年後見」制度があります。「成年後見」とは、判断能力が不十分な成人を保護するための法的な仕組みで、個人の財産管理をサポートするという意味では「家族信託」と共通します。ただし、機能が異なります。「家族信託」は、任意の契約です。言い換えると、自由意志による大人同士の約束ごと。したがって、目的として指定すれば、資産を増やすための積極運用もできます。しかし、身上監護権はありません。身上看護権がないということは、委託者の介護施設入居や入院手続などができないということです。「成年後見」では、資産を増やすための積極運用はできませんが、介護施設入居や入院手続などはできます。

そして「成年後見」にはさらに、「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。「法定後見」は、家庭裁判所が後見人を指定するもので、親族が後見人にならない場合が少なくありません。一方の「任意後見」は、あらかじめ本人が後見人を選んでおき、判断能力が衰えたあとに代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく制度です。したがって、後見人として親族を選んでおくことができます。ただしその契約は公正証書で整えておく必要があり、後見人を監督する人物も必要。なお、「法定後見」も「任意後見」も定期的に家庭裁判所への報告が必要という点は同じですが、誰がいつ報告するかは異なります。「成年後見」に家庭裁判所が介入するのは、本人の権利保護と業務監督による不正防止のため。

このように、制度別に長所と短所があります。そしてどれが最適な方法なのかは、人それぞれ・ご家庭ごとに異なります。また、制度利用を検討し始めた時から身の上事情が変わることもないとは言い切れません。したがって、財産管理のために法的な仕組みを利用するにあたっては、ご自身のお考えを固めることが重要ではないでしょうか。「何が何でもこうしたい(こうしてほしい)」という何かがあるかないか、あるならそれは何なのか。まずは、築かれた財産をご家族とどう活用したいか? 検討されてみてください。そしてお身内事情も踏まえて何らかの制度を利用するかしないか、するならどの仕組みが最適なのかを吟味する。このような流れが適切ではないでしょうか。…とは言いますけども。何はともあれ、【円満が最善!】とご提案して締めくくります。記事はここまでです。

それではまた次回。どうぞ素敵な毎日を!

*「家族信託」の制度正式名称は、「民事信託」です。しかし「家族信託」という表現が定着していることから、本稿も前編後編を通じて「家族信託」と称しました。

*弊所(へいしょ)行政書士部門は、令和6年5月1日に広島市へ移転しました。今後は2拠点でお客様サービス向上に務めてまいります。社会保険に関するご相談は、引き続き松江市千鳥町(ちどりちょう)の社会保険労務士部門にて承ります。

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