第28回ロービジョン研修会

「ロービジョンケア 最初の一歩 ~まずは声かけから始めてみよう~」の報告

主催:島根ビジョンネットワーク

報告者 山陰網膜色素変性症協会 事務局長 矢野美和子

令和7年7月13日(日)10時から12時30分まで、出雲市の島根大学医学部附属病院ゼブラ棟2階の大会議室において、第28回ロービジョン研修会が開催されました。参加者数は32人で、内訳は医療関係者15人(うち視能訓練士13人)、当事者家族8人、福関係者3人、教育関係者4人、その他2人でした。

第一部は、福知山市民病院の視能訓練士の野口英樹さんに、「福知山市民病院におけるロービジョンケアの取り組みと成果」というテーマでご講演いただきました。内容を要約します。

福知山市の現状としてあげられるのは2点、専門的な視覚障害者支援施設(京都ライトハウス)まで片道約2時間と遠く、患者のアクセスが困難であること。地域内に専門の歩行訓練士や視覚障害に特化した相談員、経験豊富な心理士がいないこと。そこで、平成23年より、医療と福祉の連携強化を目的として、京都ライトハウス等の協力を得て「視覚相談会」を企画・開催するようになり、病院内で企画書を策定し、年間の予算も確保しました。相談会は多職種連携:ということで、医師、MSW(医療ソーシャルワーカー)、ボランティアで看護師にも参加してもらいました。特に看護師の配置は、会場で発生した低血糖発作への迅速な対応を可能にし、患者の安全確保に極めて重要でした。参加状況は、1回あたり平均42名で、個別相談には平均3名の利用がありました。患者からの評価としては、当事者の体験談をプログラムに組み込んだところ、「自分だけではないと分かり元気が出た」といった肯定的な感想が多く、心理的サポートとして非常に有効でした。このアプローチは、参加した患者だけでなく、支援する医療者側にもモチベーション向上をもたらしました。また、福知山市と協力し、視覚障害者手帳を新規取得した市民(取得後5年以内)へ案内を直接郵送する体制を構築しました。今後は、現在のケア体制と業務プロセスの最適化を図り、臨床介入事例から見える成果をまとめ、リスク管理をしていきたい。

私が印象に残ったのは、患者が抱えておられる課題に向き合い信頼関係を構築し、心理的サポートに繋げる姿勢です。ロービジョンケアは、私たち患者を取り巻く関係者のみなさんで連携してもらえることが大事だと思いました。

第二部では「我々の行なっているロービジョンケアの現状と課題」というテーマで、島根大学医学部附属病院・島根県立中央病院・市岡眼科クリニックの視能訓練士さんがパネラーとなり、それぞれの病院の現状と課題をお話されました。会場のフロアーからも質問や意見などがあり、参加者も一緒に考える有意義な時間を過ごしました。

今後、島根県でも病院の眼科外来や個人の眼科医院などで、ロービジョンケアの体制が整っていくことを願っています。

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