会報誌ビッグスワン第53号より

2022年 JRPS山陰第27回定期総会及びロービジョン研修会の報告

矢野美和子

4月23日(土)に、大田市のスカイホテル大田の8階の大ホールで、ロービジョン研修会と定期総会を開催しました。コロナ禍の中での開催となり、患者・家族が10名、関係者8名で合計18名の参加でした。県央保健所から参加の保健師さん2名には、検温や聞き取り調査、受付を行なっていただきました。また、しまね難病相談支援センターの今若センター長さんには、会の進行等の全体のお手伝いをしていただきました。

講演1は「障害年金改定の要点とRP治療の進捗状況について」というテーマで、島根大学医学部附属病院眼科のロービジョン外来担当の原克典先生にお話しいただきました。障害年金の改定について、ポイントごとの分かりやすい説明でした。また、今回大田市の制度や福祉サービスも調べていただき、大田市の会員さんにとってはもちろん、別の市町村の方にも興味・関心を持つことができるお話でした。大田市立病院では、この4月から木曜日の午前は、原先生が眼科外来を担当されることもグッドタイミングの情報でした。私たちは障害年金を受給することで、より豊かで充実した生活につながります。それには、患者自身が自分のこととして、知識を深め制度やサービスを理解して、日常生活にどんどん利用していきたいと思いました。

講演2は「眼疾患と視能訓練士の関わり」というテーマで、島根大学眼科の視能訓練士の小村哲郎様にお話いただきました。今回参加者の中には、視能訓練士のことを知らない方もおられました。視能訓練士の歴史や専門学校のこと、検査内容等々について分かりやすくお話いただき、眼科医院で検査をしていただく視能訓練士さんの重要な役割を知る機会になりました。また、質問にも丁寧にお答えいただき、見えにくい私たちの立場に寄り添って考えていただいていることをうれしく思いました。眼科の先生には遠慮して言えないことも、視能訓練士さんにはお話できる身近な存在であると確信できました。

後半の質疑応答と意見交換では、日常生活の中での困りごとや、一般に便利で使用できるものが見えにくい者にとっては使いにくいものであるなどのご意見がありました。生活や家庭環境の違いがあり、同行援護やヘルパーさんの利用など、課題はたくさんありますが、よりよい生活が送れるよう、知恵や工夫の情報交換が大事だと強く思いました。

会場のスカイホテル大田には、9年前にも大変お世話になりましたが、今回も見えにくい私たちに対していろいろな工夫や細かい配慮、あたたかい気配りをいただき安全に安心して過ごすことができました。中でも宿泊のお部屋では、突起シールや点字を貼っていただきとても分かりやすかったです。

翌日は、大田市の会員の影さんと奥様のサポートで石見銀山をミニ観光しました。影さんのお知り合いのガイドさんも加わって案内してくださり、新たな発見がありました。街並みの中に図書館(ライブラリー)があり、鳥の点字の絵本を触ったのです。鳥の形が線で描いてあり、形が想像できました。最後に割子そばを食べて石見銀山を満喫できました。影さんと奥様、私たちと一緒に歩いてくださりありがとうございました。

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ここから写真が7枚あります。


  • 開会あいさつをしている矢野会長

  • ロービジョン外来担当の原先生の講演の様子

  • 視能訓練士の小村さんが参加者の質問に答えている様子

  • 展示コーナーで用具や機器の説明を聞いている参加者

  • 石見銀山ガイドさんと参加者が自己紹介をしている様子

  • 石見銀山の街並みでガイドさんの説明を聞きながら歩いている参加者

  • 街並みのライブラリー(図書館)の前で点字の鳥の絵本を指で触っている山根さん

(写真説明はここまで)

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『大田市でのロービジョン研修会・宿泊交流会を終えて』

山根勝宏

皆さんこんにちは!出雲市斐川町の山根勝宏・美香です。 今日は4/23(土)、 4/24(日)に大田市で行われたJRPS山陰のロービジョン研修会・宿泊交流会についてお話をさせていただきます。

ここ数年のコロナ禍の影響で、3年ぶりに行われた宿泊を伴う研修会・交流会となりました。やはりと言うか参加された方々も少なく少々寂しい開会となりましたが、少ない参加人数にも関わらず大変中身の濃い研修会・交流会だったと思います。

まず初日に行われたロービジョン研修会では、島根医大の眼科の原先生が障害年金認定基準の改定について話され、続いて視能訓練士の小村さんが視野検査などについて話されました。会場となったスカイホテル大田さんは2013年に続いて2回目となります。コロナ禍などで受け入れの難しいところを大変親切に対応いただきました。夕食はホテルから送迎いただいて訪れた飲食店の「はたの」で、びっくりするようなごちそうでした。最近あまり外食することも少なかった私たち夫婦にとって至福のひとときでした。

続いて二日目の石見銀山での観光ですが、こちらでは地元大田市の参加者である影さんご夫婦、そして観光ボランティアの方の大変にわかりやすい案内でした。久々の長距離ウォーク?となりましたが、私たち夫婦の足の疲れも忘れてしまうくらいに満喫しました。

あっという間の二日間でしたが、矢野会長ご夫婦をはじめ、改めて今回お世話いただいた全ての方とのつながりに感謝したいと思います。そして、今回は残念ながら参加いただけなかった皆さんとの再会を祈念しまして、今回の研修会・交流会についてのご報告を終わります。

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<巻頭言>「不安」と「孤独」は実はプラス要因なのです

会長  矢野 健

初夏の日ざしが若葉に降りそそぐ頃となりました。コロナウイルス感染も徐々にではありますが、全国的には減少傾向になりつつあります。私たちも2年間の経験で、脱マスクのあり方について、「ここでは必ず」とか「ここでははずす」などの臨機応変な防止策を講じながらこの夏を乗り切りたいと思います。

私たちは、日常生活を送る上でさまざまな不安をかかえながら生きています。時は一瞬も止まる事なく流れていきますから、その時々で心配や不安は変化していきます。例えば、子どもや孫の入学試験や就職はうまくいくか。地震、台風などの災害は来ないか、自分自身や家族が病気にならないか。今時であればコロナウイルスに感染しないか等々、大なり小なりあるものです。

これらのさまざまな不安から解放されたいと思いがちですが、不安を持つことはマイナスな面だけではありません。プラスの面もあります。さまざまなリスクから自分を守るには、それを敏感に察知する感覚がアンテナとして必要だからです。もし、不安というものを一切持たない人がいれば、さまざまな危険やトラブルを予測できず大変なことになってしまうでしょう。

問題は、どうでもいいようなことに不安を覚えたり、考えても仕方ないことに不安を感じたりすることです。不安に思っていることの9割は現実化しないものです。つまり、多くは杞憂に終わり、「不安になる時間」の大部分は結果的には無駄な時間ということになります。あれこれ考えを巡らせても何ら解決への道筋をつけることにならないものは、考えても仕方がないのです。このような類の不安には囚われないようにするべきです。

それでも不安に囚われてどうしようもないときもあります。そんなときは、「大丈夫!」と自分にいい聞かせましょう。自分を鼓舞する言葉を呪文のように唱えると、気持ちが落ち着いてきて不安も和らいできたりするものです。どんなときも希望を失わず、明るく物事を見る。常にそういう姿勢を心がけていれば、不安に不必要に囚われることはなくなっていくはずです。

また、一人暮らしの人が増えていることもあって、孤独をどう生きるかということがいろいろ論じられています。孤独というと不安で寂しいものというマイナスのイメージがつきまといますが、果たしてそうなのでしょうか。

孤独と一口でいってもいろいろな面があります。人と交わりたいのに誰も相手にしてくれないという孤立した状態は確かに寂しいものです。しかし、孤独には積極的な意味もあります。自分の心と静かに向き合い、そこに流れるゆったりとした時間を楽しむ。人と一緒にいては持ちえない滋味豊かな時間です。孤独を掘り下げることで、誰にも邪魔されずに心がわくわくするような新しい発見をすることもあるのではないでしょうか。これなど、孤独が与えてくれる大きなプラス要素ではないかと思います。

今号では、「不安」と「孤独」を考えてみましたが、みなさんはどのようにお考えでしょうか。

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同行援護従業者確保推進の取組みについて

鳥取県ライトハウス点字図書館 酒井詩織

当館では令和4年度において鳥取県より「同行援護従業者確保推進事業」を受託しました。この事業の目的は、視覚障がい者の日常生活を支援する同行援護従業者を増やし視覚障がい者の福祉の増進を図ることです。

具体的な事業内容としては、同行援護従業者を増加させる必要性から、同行援護従業者の資格を取得するための研修費用を奨励金として鳥取県が助成することを予定しています。

また、視覚障がい者に特有な困難さを県民の方に理解して頂けるよう、同行援護、代読・代筆、視覚障がい者の支援に関する情報発信、PR活動を鳥取県内で実施する予定にしています。

業務受託後、先ず当館で取り組んでいるのは、同行援護の利用者及び同行援護事業者の双方の話をお聞きし、現状の把握をすることです。話をお聞きする中で、県内でも東部、中部、西部、さらに、利用者のお住まいの場所(市街地、郊外)によっても状況・事情が異なることが分かりました。また、コロナ禍の影響も大きく受けている状況です。

私が話をお聞きした利用者の方々からは、同行援護で非常に助かっているという感謝の気持ちを持たれている上で、やはり従業者の人手不足により希望の日程での外出が叶わない実情、体調不良等の緊急時の病院への外出もままならない切実な状況を知り改善の必要性を感じています。

実は私自身、本事業受託に先立ち昨年度3月に鳥取県が行った同行援護従業者研修に参加し資格を取得しました。必要な知識を基礎から学びましたが、同行援護は非常に緊張感があり責任の重いものであることを改めて痛感しました。それと同時に一緒に研修に参加された方々の志の高さ、熱心な姿勢に非常に刺激を受けました。県内にはそのような方々がまだまだ多くいらっしゃると信じています。

本事業を通して少しでも多くの県民の方に同行援護について知っていただくとともに同行援護に限らない他の場面でも、代読・代筆が必要であると知っていただくことにより、視覚障がい者の日常生活の支援に対しより理解が深まるよう取組んで参ります。

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気圧と自律神経活動  その1

谷口慎二

今の季節は体調を崩しやすくなります。この原因の一つは、気圧の変化に自律神経活動が対応しきれなくなるからなのです。

気圧に対して、皆さんの認識は、夏は天候が良く高気圧であり、冬は寒く天候が悪い日が多いため低気圧だと誤認していたり、何人かに一人は必ずある誤認に、1,013Hpa以上が高気圧で、未満が低気圧だと思っている人がおられます。これは間違いです。実際はその逆で夏は気圧が低く、冬は高いのです。1,013hPaは1気圧の基準値であり、タイヤへ空気を入れる量を表す時などに用います。従って、気象の高気圧と低気圧の境になる訳ではないのです。

気圧と自律神経活動には相関があります。自律神経とは外部や体内の状態に合わせて、呼吸循環や消化吸収などの機能を調節してくれている神経です。これには交感神経と副交感神経の二つがあります。前者はスポーツを行う時のような興奮モードをつくり、後者は食後や安定した睡眠を得ることが出来るようにリラックスモードをつくります。

気圧が上がると交感神経活動が優位になり、下がるとその活動が低下して行きます。結果として、副交感神経活動が優位になる時もあります。

1年を通じて考えると、春分の日あたりが気圧の冬型から夏型へと入れ替わる頃であり、秋分の日あたりは、この逆です。しかし、また、温度の日内変動なども要因の一つですが、その人の思考形態や生活習慣なども関係して体の調節が出来にくくなるのです。

ここで具体的に考えてみましょうか。冬は交感神経活動が高いと書いています。すると、血管は収縮し体から熱が逃げにくくなります。また、骨格筋にも無意識に力が入ります。肩をすくめていたり、時々震えが起こることも体温を一定に保とうとするためです。もし、この現象が夏に起これば、体はオーバーヒートしてしまい、最悪の場合は死に至るでしょう。

この例も皆さんに経験があると思います。顔を温かいお湯で洗った時と、冷たい水で洗った時とではその後の気持ちが違うのではないでしょうか。お湯では、気持ちが良くなりリラックスするでしょうし、水では、シャキッとして物事に対するモティベイションもあがる様になると思います。前者は夏の状態で、後者は冬の状態です。以下は次号に続きます。

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鳥取県眼科医会のロービジョンケアへの取り組み

鳥取県眼科医会会長 武信順子

日増しに初夏の陽気を感じるこの頃です。JRPS山陰の皆様もお元気でお過ごしのこととお慶び申し上げます。お届けいただく会報誌を拝読する中、毎号皆さまから教えられることが多くあり、深く感銘を受けています。ありがとうございます。

鳥取県は令和元年度にスマートサイトを制作されるとともに、平成31年4月には鳥取大学医学部附属病院眼科で、令和2年4月には山陰労災病院でロービジョン外来が開設され、また、県においてもロービジョン相談窓口を令和2年2月17日に設置し、ロービジョン者の支援体制が進んできています。

またロービジョンへの支援には、眼科医や視能訓練士、看護師等の理解と協力が不可欠であるため、医療関係者のロービジョンケアに対する理解を更に深める目的で、鳥取県眼科医会は令和元年度から県からの委託事業として眼科医等向けロービジョン講習会を開催してきました。

令和元年度のロービジョン講習会の第1回は米子会場で、高木茂先生、大松寛先生の県内講師の講演と、特別講演として岡山大学病院眼科視覚リハ・ロービジョン外来の守本典子先生にご講演をいただきました。第2回は鳥取会場で、県内講師以外の特別講演としては山縣眼科医院院長の山縣祥隆先生に基礎から詳しくご講演をいただきました。両日とも眼科医・看護師・ORT(視能訓練士)などの医療スタッフが大勢参加され、盛会で有意義に終えることができました。

令和2年度と3年度はコロナ禍のため、残念ながらリアルに講習会をすることができず、講師に講演内容をDVDに入れてもらい、鳥取県眼科医会会員と県内の眼科のある病院へ送付しました。令和2年度は「ロービジョン者の自動車運転」、「最新の視覚補助機器開発」、「ロービジョン者に有効な視覚補助機器、遮光眼鏡」、「ロービジョン者から寄せられる相談」についての内容でDVDが作成されました。令和3年度は「クイックロービジョンケアー」がテーマで、「ロービジョンケアーへのアクセスを改善する」、「高価な機器を購入する前に」という内容の講演をDVDに収め配布しました。ロービジョン機器は高価なものが多いですが、100円ショップに行けば役に立つものが沢山売られているというお話は大変興味深いものでした。

先日ある患者さんがロービジョン外来を受診し、「同じ病気の方々の集いに参加して勇気づけられた」と、いつもより少し明るい顔で話してくれました。医師として無力を感じることもありますが、少しでも患者さんの力になる事があればと思います。

今年の9月23・24日に主催される「世界網膜の日IN山陰」のご成功と皆様のご健康と多幸を心よりお祈り申し上げます。

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