合理的配慮の義務化について
山陰網膜色素変性症協会(JRPS山陰) 会長 矢野健(やのけん)
障害者の可能性を広げる手法としての「合理的配慮」は、障害のある人々が社会の中で遭遇する障壁を取り除くための重要なアプローチです。障害者差別解消法(2016年施行)に基づき、これまで行政機関に合理的配慮が義務付けられていましたが、2024年4月からは民間事業者にも適用されることになります。つまり、社会全体で取り組まなければならないという事になった訳です。これは顧客だけでなく、障害のある人々が働く職場においても求められます
それでは、社会的障壁とはどんな事でしょうか?社会的障壁とは、障害のある人々が日常生活や職場で遭遇する不利益や制約を生み出す主な原因です。これらの障壁には、物理的な障壁(例:建物へのアクセス不可)、情報アクセスの障壁(例:視覚障害者に対する視覚情報の代替手段の不足)、コミュニケーションの障壁(例:聴覚障害者に対する手話通訳や文字通訳の提供がない場合)、社会的・文化的な障壁(例:障害に関する誤解や偏見)など、さまざまな形があります。
社会的障壁に注目することは、障害のある人々が直面する問題を、「個人の障害」の問題ではなく、「社会の構造やシステム」の問題として捉えることを意味します。これにより、障害のある人々が社会の一員として同等に参加し、自分の潜在能力を最大限に発揮できるように、社会全体が変化する必要があることを認識します。例えば、車椅子ユーザーが公共の建物に入れない場合、問題はその人の車椅子使用にあるのではなく、建物がアクセシブルでないことにあります。このように、社会的障壁に注目することで、障害のある人々が直面する問題をより根本的に解決することができます。
合理的配慮は「甘え」や「特別扱い」ではありません。それは、障害のある者が障害のない者と同等な機会を提供されるために必要な変更や調整です。このような変更や調整を実施することは、社会をよりインクルーシブで働きやすい環境に変えることにつながります。
職場における合理的配慮の実践は、障害の種類に応じて異なります。例えば、視覚障害者です。
1.スクリーンリーダーソフトウェア: コンピューターにスクリーンリーダーや拡大ソフトウェアを導入する。
2.点字や音声出力の資料: 書類や報告書を点字や音声出力可能な形式で提供する。
3.職場の物理的なアレンジ:障害物を排除し、歩行を容易にするための案内を設置する。
4.代読・代筆、その他、個々の障害に応じた配慮をする。
これらの合理的配慮は、障害のある従業員が職場で快適に働き、能力を最大限に発揮できるようにするためのものです。重要なのは、個々のニーズに合わせた対応を行うことです。合理的配慮は、障害のある人々が社会の中で平等に参加するための重要な手段です。これは、障害者差別解消法に基づくものであり、社会全体が理解し、実践することが求められています。合理的配慮を通じて、より多様性を受け入れ、支え合う社会を目指すことが重要です。