「鳥取県視覚障がい者支援センター」について~敷居の低い地域に開かれた相談窓口を目指して~
社会福祉法人鳥取県ライトハウス点字図書館
情報支援員(相談支援担当) 赤星 亨
先日6月23日に米子コンベンションセンターで開催された「防災研修会」では、島根県から参加された方も含め多くの方に「鳥取県視覚障がい者支援センター」の紹介をさせていただきありがとうございます。このたび、奥事務局長より原稿の依頼があり、誌面をお借りして改めて視覚障がい者支援センターの紹介をさせていただくことになりました。
さて、視覚障がい者支援センターは鳥取県から委託を受け、私が所属する社会福祉法人鳥取県ライトハウス点字図書館が運営を担っています。今年の3月26日、社会福祉法人鳥取県ライトハウスの所在地である米子市皆生市民プール管理棟内に開設しました。また、4月には、サテライト機能を持つ施設として、県東部(鳥取市)に視覚障がい者東部支援センター、県中部(倉吉市)に視覚障がい者中部支援センターを開設し、鳥取県全域をカバーできる支援体制が整備されました。
みなさん御存知のように従来から点字図書館(視覚障害者情報提供施設)は相談支援を含めた視覚障がい者への生活支援業務を行ってきました。それでは、なぜ、鳥取県では改めて視覚障がい者支援センターという新しい機関を開設することになったのでしょう?
視覚障がい者支援センター開設の直接的なきっかけとなったのは、平成29年9月に施行された「鳥取県民みんなで進める障がい者が暮らしやすい社会づくり条例」(愛称:あいサポート条例)の制定といえます。この「あいサポート条例」はもともと鳥取県で開始された「あいサポート運動」が発端となっており、全ての県民が、これまでの取組を更に発展させ、障がい者が地域社会の中で自分らしく安心して生活できる暮らしやすい社会の実現を目指したものです。この「あいサポート条例」の特徴として、① 障がいへの理解とあいサポート運動の推進 ②障がい者差別の解消 ③障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の充実と情報アクセシビリティの保障 ④災害時における障がい者支援 ⑤ 障がい者の自立と社会参加の推進という5つの基本的な考え方があります。条例の趣旨を具体化するための施策として、県内に障がい者の支援拠点が設置されてきたという流れです。このような施策の推進は貴重なことですが、実際のところ理念が先行して、現実が追い付いていない側面もあります。
次に視覚障がい者支援センターの業務内容について説明します。相談支援業務については、身体障害者手帳の有無、障がいの原因や程度を問わず、見えない・見えづらい方を対象としています。また、御家族や支援者の方だけでなく、行政や医療機関など幅広く相談支援に応じます。窓口、電話、メールでの相談はもちろんのこと、御自宅、施設や病院へ出掛けて対応することも可能です。その他にも視覚障がい者支援センターでは、①相談ニーズの掘り起こし ②交流機会の提供 ③ボランティアの養成 ④出前講座の実施 ⑤関係機関とのワーキング会議の開催といった様々な事業を行う予定にしています。
さて、視覚障がい者支援センターが開設されて約4か月が経ちますが、見えてきた課題があります。一つは、相談ニーズのある方となかなかつながることができないということです。まだまだ広報が足りず周知がされていないということでしょうし、敷居が高いと思われているのかもしれません。二つ目は、関係機関とりわけ行政や眼科医会との連携です。島根県では「島根ビジョンネットワーク」という医療・教育・福祉・当事者団体による優れた取り組みが行われており、鳥取県でも同様な取り組みを始めることができないかといろいろと勉強させていただいているところです。また、地域との連携も今後取り組まなければならない大きな課題です。「あいサポート条例」にも掲げられている「災害時における障がい者支援」は地域住民の理解と協力が欠かせません。「地域に開かれた施設」、「地域社会への貢献」といった社会福祉法人に期待されているあり方・役割を果たしていくためにも今後、視覚障がい者支援センターの役割は大きいと思っています。
私事で恐縮ですが、私は今年2月に視覚障がい者支援センター担当職員として採用された新人で、今まで視覚障がいの方と接した機会がほとんどない人間です。これまでも県外の専門機関での研修や専門書などを通して、少しでも専門性を身に付けようと学んできました。しかしながら、現在のところ、当事者の方が相談に来館される、あるいは出張で御自宅まで訪問するような機会が少なく、実際にお会いして詳しく日頃の生活状況や困りごとを伺う機会が少ない状況です。この度、7月29日に「米子ああるぴぃカフェ」が開催されるということで、私も参加させていただくことになりました。お一人お一人に寄り添いながら、日頃抱かれている思いや不安、今後やってみたいことなどお聴きできれば幸いです。まだまだ至らないところばかりですが、敷居の低い地域に開かれた相談窓口を目指してこれから活動していこうと思っています。どうぞみなさんの声をお聞かせください。よろしくお願いいたします。