厚生労働省のパブリック・コメントに意見を提出しました。

「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」
 改正案のパブリック・コメントにJRPSが意見提出(2013年5月)

厚生労働省の専門委員会で「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の見直
し作業が進められ、改正案に対するパブリック・コメント(意見募集手続)が2013
年4月18日から5月17日まで実施されました。JRPSは会長名で意見を提出しました。
意見全文は以下のとおりです。
※なお提出意見に対する厚生労働省の回答案が7月12日開催の厚生科学審議会
第78回科学技術部会に提出され審議されました。指針改正の要点と回答案を記
載した文書は「資料5-1「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の全部
改正について」として下記URLで閲覧できます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000036w7i.html

厚生労働省
医政局 研究開発振興課 御中

「「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の全部改正について」
に関する意見
                       
網膜色素変性症は網膜の視細胞が少しずつ失われていき、その結果、視力低下、
視野狭窄がもたらされる病気です。日本国内に3~5万人、世界には約300万
人の患者がいると推定されています。日本網膜色素変性症協会(JRPS)は
1994年に設立されて以来、患者、眼科医をはじめとする医療従事者、支援者
が一体となって、治療法の確立とQOL向上のため、各種の活動を行っています。
 網膜色素変性症は、現在有効な治療法がありません。そうした背景から、ES
細胞やiPS細胞など、ヒト幹細胞を用いる再生医療の研究が大きく進展し、ひ
いては網膜色素変性症の治療法開発が加速されることを願っています。
 今回のヒト幹指針改正案に対し、総体として歓迎しつつ、以下のような意見、
要望を提出いたします。よろしくご検討のほどお願い申し上げます。

【1】平成22年の改正において、指針に新たな1項が加えられ、「研究者等は、
新規ヒト幹細胞臨床研究を実施する場合には、多領域の研究者等と十分な
検証を行い、患者団体等
の意見にも配慮しなければならない。」とされました(第2章、第1、1 (5))。
この規定は「基礎研究段階から、被験者や患者団体との意見交換に努める」
ことを関係者に求めています(第11回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関す
る指針の見直しに関する専門委員会、資料3)。
研究の一方の当事者である患者の意見を取り入れていくことは国際的な潮流
でもあり、さらに実効性ある指針となるよう要望します。

【2】倫理審査委員会の満たすべき要件として、ヒト幹細胞臨床研究を適正に実
施するために、適切な教育及び研修を受けた委員を構成委員とすることが
追加されました(第2章、第1、8(1)⑤)。適正な実施をいっそう進
めるため、(努力義務として)患者、患者団体代表を構成員として加える
こと、また参考人として意見聴取することを指針に盛り込んでいただく
よう要望します。現行指針においても個別審査委員会の判断で意見聴取可
能とされていますが、聴取が促進される方向で指針改定を要望します。

【3】貴省厚生科学審議会科学技術部会は公開で行われ、委員として患者団体代
表が参加しています。個別の研究計画に関しても患者、患者団体の意見が
くみ上げられるよう、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会においても
患者、患者団体の意見聴取の機会を作っていたたくよう要望します。
平成22年パブリック・コメントに対して「今後の検討課題」と回答され
ていますので、是非具体化をお願いいたします。
  またヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会は非公開で実施されています
が、特許取得申請に関わるなど特別の場合を除き、原則公開の方向での検
討をお願いいたします。非公開とされる場合においても、今後長期にわた
ってヒト幹細胞を用いる再生医療を推進、発展させるために、一定期間経
過後の情報開示を要望します。

【4】指針改正案ではES細胞の臨床研究が可能となりました。患者としてこの
改正を歓迎し、早期にES細胞の臨床応用が実現することを望みます。
文部科学省と連携し、臨床応用可能なES細胞を新たに樹立、分配する
ための枠組みを早急に整備することを要望します。
  既存のES細胞の臨床利用に関しても一定の原則が示されました。
しかし公表された「ヒト幹指針見直し概要」には「文部科学省の指針に
基づいて樹立された既存のヒトES細胞についても、特定の条件下での
使用を認めてはどうか、との意見もあった」と記載されています。
臨床には使わないとしたインフォームド・コンセントに基づいて作製され、
また新たに同意を得ることができない細胞について、事後に使用可能とす
るとすれば、そもそもインフォームド・コンセントとは何かとの疑念を生
みます。ひいては臨床研究に患者が参加する際のインフォームド・コンセ
ント手続きへの信頼を揺るがしかねません。このような内容を含む指針改
訂は避けるよう要望します。

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