新春対談 ~治療法研究推進とQOLの向上に向けた取り組み

公益社団法人日本網膜色素変性症協会
理事長  金井 國利   理事  有松 靖温    理事  佐々木 裕二

金井: 治療法の確立とQOL(生活の質)の向上。私たちJRPSの活動で、この2つは大きな柱であり根幹です。それぞれについて、この1年の取り組みと、これからの進む方向について、会員の皆さんと共有したいと思っています。

・研究推進活動の取り組みと今後

金井: まずは治療法研究の推進について、どのような活動を行なっているかを、有松理事からご説明いただけますか?

有松: 毎年、優れた研究をされた先生方へ研究助成金を差し上げています。2017年で21回目となりました。また、「JRPS網脈絡膜変性フォーラム」を開催し、最新の研究の動向を紹介する『ニュースレター』を発行しています。

金井: 研究推進委員会の活動は、『あぁるぴぃ』に毎号掲載されていますね。

有松: はい。第一線の研究者、とくに臨床研究・治験を実施・計画中の研究者と面談し、その内容を「Wings通信」というコーナーで紹介しています。

金井: 2017年は、どんな1年でしたか?

有松: 昨年に引き続き研究者の先生方に面談し、臨床試験の準備状況や患者登録の問題について伺いました。初めての取り組みとしては、研究推進委員会の活動が、地域のJRPS会員にどう受け止められているかなど、各ブロックのリーダー研修会で意見交換を行ないました。

金井: 有松理事には、先生方と患者会員の橋渡しにもなっていただき、感謝しています。この1年でとくに感じたことはありますか?

有松: 大阪で開催された「JRPS網脈絡膜変性フォーラム」の5人の先生の講演内容が、すべて臨床試験に関わる内容であったことは印象的でしたね。確実にRPの臨床応用が近づいていることを実感しています。

金井: そうですね。期待を感じるご講演でした。治療法研究全般としては、2017年の動きはどうでしょう。

有松: 国の動きとして注目したいのは、稀少疾患医薬品の条件付き早期承認制度の通達が昨年9月に発せられたことです。患者数が少ないので治験実施が困難なRP患者を対象とした医薬品の開発促進が期待されます。

金井: 先ほど、有松さんは、リーダー研修会で意見交換とおっしゃっていましたね。福島で行なわれた北海道東北ブロックの研修会は印象的でした。

有松: 福島では、これまでの活動のまとめと、研究推進委員会として何を提供していきたいかを報告し、あとはできるだけ多くの人の意見を聞こうというスタンスで臨みました。協会誌で活動の報告などを行なっていますが、実際、会員の皆さんが読んでいるのか、またどう感じているのかを把握したいという思いがありました。

金井 :一人30秒と短い時間でしたが、参加者全員から意見を聞く場を設けるというのは、とても良い試みでしたね。実際どんな感触でしたか?

有松: 正直なところ、予想していた以上に、記事を読んでくださっているんだと感じましたね。記事のことを知らないという方も少しいましたが、ほとんどの方はご存じでした。参加者の皆さんの拍手の数で把握する限りでは、あることは知っている、ちょっと読んでいる、しっかり読んでいる、の3つの選択肢で同じくらいの割合だったと思います。

金井: 私も参加していましたが、そうでしたね。会員の皆さんにも浸透してきた感じを受けました。

有松: 自分たちの活動も、一定の役割は果たしているのかなと感じましたね。内容や読みやすさなど、さまざまな工夫をしながら、今後もこのまま活動を続けていこうと思っています。

金井: 先生の講演だけでなく、それをサポートしてくださるのはとても心強いです。これからの課題や取り組みたいことはありますか?

有松: 協会誌での連載やリーダー研修会での資料もそうですが、一度説明しただけでは、なかなか理解できないというのが正直なところだと思います。ですので、繰り返し説明する機会や、いざ自分自身に必要になったときに情報を会員で共有できる仕組みをつくることも課題だと感じています。また、各地の施設で臨床試験が具体的日程に上がってくるなか、私たちが被験者として参加する機会が増えてきます。そこで患者ができること、備えるべきことを一人ひとりが事前に考えておく必要があります。JRPSとしてもこれを支援、促進するワークショップ(研修会)を計画しています。主会場に加えて、遠隔地の会場を結んでの同時開催もできないかと検討しているところです。

金井: 研究活動の進歩とともに、JRPSとしての役割も問われますね。今後もよろしくお願いします。

・QOL向上への取り組みと今後

金井: QOL向上に関する今年1年の活動について、佐々木理事からご説明いただけますか?

佐々木: QOL活動としては、例年どおり、協会誌『あぁるぴぃ』を通じて情報提供を継続的に行なっています。「QOL委員会から」というコーナーの連載は27回になりました。また、杉谷 邦子先生による相談業務も継続し、そのほか、一時休止していた「RP児を持つ親の会」の活動をメーリングリスト形式で再開しています。

金井: 新しい試みも始めていますね。

佐々木: はい。「駅ホームでの誘導と声かけについてのアンケート調査」を、メール会員を中心として行ないました。結果は『あぁるぴぃ』130号で報告しています。また、神戸のビジョンパーク内にピア相談窓口を開設しました。それに伴いピアサポート研修を行ないました。今後はJRPSピア相談員の育成を行なっていきたいと考えています。

金井: アンケートや実証実験への参加、意見交換会のお誘いなど、いろいろ増えていますね。

佐々木: 駅ホームからの転落事故が頻発したことを受けて、JRPSにも国土交通省や関連団体が実施する意見交換会や実証実験への協力依頼が増えてきています。具体的には、駅ホーム端の視認性向上に関する委員会への参加、新型ホームドアに関する実証実験への参加です。これは事故が続いたということもありますが、公益法人化に伴いJRPSへの認識が向上しているのではないかと感じています。そのほか、難病患者の就労に対する合理的配慮に関するアンケートや視覚障害者を訓練につなぐための相談支援に関するアンケートなどに協力しています。

金井: 中途視覚障害者が多くを占める団体としては、JRPSは大きな組織ですので、公益化で、その期待や役割が大きくなっていることを私も感じます。今後の活動について、どんなことを考えていますか?

佐々木: QOL活動については2つの方向性があると感じています。1つは行政や関連団体に対して働きかける方向です。もう1つは、会員さんに直接役立つ情報発信や各都道府県協会を支援する方向。どちらも重要ですが、各都道府県協会ではできない、あるいは公益法人としての位置を活用できる上を向いての活動について、もっと影響力を持つにはどうしていくべきかを考えていきたいと思っています。

金井: 行政や関連団体への働きかけとして、具体的には?

佐々木: 厚生労働省や国土交通省などが行なう各種の調査に対してロービジョン者の意見発信の代表的団体になれるよう模索したいと考えています。そのためにも、まずは関連団体の中で意見の発信と影響力を持つ必要があると思っています。

金井: もう1つの情報発信については、やることが多岐にわたっていますね。

佐々木: 世の中の趨勢としては、講演会をインターネットでライブ配信するというのが当たり前になっています。そうした時代にあわせた情報発信、会員への情報提供をできるようにしていきたいですね。積極的に頑張っている都道府県協会もありますので、そうした取り組みを参考にしたり、みんなで共有できればと思います。またQOLに関しては、制度や年金に関することなど、全国一律ではない情報も、1つのひな形をもとに各地域の事情に応じたかたちに整えて会員に提供していきたいです。ただ、やるべきことはいっぱいありますが、なんでも一度にできるわけではないので、整理し、一つひとつ課題をクリアしながら進めたいですね。

金井: 治療法研究推進、QOL向上、いずれも時代とともに常に変化しています。お二人の理事をはじめ、本部理事、各都道府県協会、そして会員一人ひとりが自分のこととして取り組んでいく必要があります。今後も頑張っていきましょう。有松理事、佐々木理事、今日はありがとうございました。

(2017年12月2日 本部事務所にて)

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