日本網膜色素変性症協会 設立総会盛況裡に開催

日本網膜色素変性症協会は、去る(※1993年)5月14日(土)東京都千代田区永田町の星陵会館で、設立総会を開催しました。患者・研究者・支援者が一体となって、網膜色素変性症(以下「色変」という)を克服しようという、新たな団体の誕生です。

昨年10月5日に、千葉市幕張のホテルで医師・支援者・患者の代表が顔を合わせてから7ヶ月余り。この間、初顔合わせの記事が全国紙に載った事もあって、入会希望者が続出、設立総会当日現在の会員数は573名に達しました。

当日は、午後1時受付開始。出席会員は287名でしたが、付き添いや見学者も多く、400人収容の1階だけでは入り切れず、急遽2階席を解放する程の盛況でした。
設立総会は、午後1時半開会。最初に椎名発起人(支援者)が、挨拶しました。経過報告も兼ねるという事で、1986年のE・バーソン教授(米・ハーバード大)の来日と安達教授(千葉大)との出会い、千葉ライオンズクラブが支援するに至ったいきさつ等、今日に至る迄の経緯が語られました。
次いで、議長に岡野 正義(支援者)と矢沢 正子(患者)両発起人を選出、議事録署名人に安達 恵美子(医療従事者)・荒木 英之(患者)・塩沢 健治(支援者)の各氏を選出、定足数の確認の後、議案の審議に移りました。

ちなみに総会当日現在の会員数は573名、うち総会出席者は287名、委任状提出者は194名でした。

第1号議案は、協会の定款の承認。まず徳江発起人から定款案の特徴の説明があり、次いで千葉ライオンズクラブの支援者が主な条文を朗読しました。
定款案の主な特徴は、次の通りです。
1 本協会が法人格(社団法人)を取得する事を前提に作られている。その為  に法人取得までの間は、1部の条文の読み換えが必要である事。
2 会員が患者だけでなく、医療従事者・支援者も含まれる事。
3 治療法の研究と患者の自立促進を目的としている事。
4 本協会が国際網膜色素変性症協会の支部である事から、国際協力を事業の  一つとして掲げている事。
質疑では誤植の指摘があっただけで、異議なく承認されました。

第2号議案は、事業計画の承認。下堂園発起人による要旨の説明の後、ボランティアによって全文が朗読されました。
初年度の主な事業は、次の通りです。
1 法人格の取得の準備。
2 国際色変協会との連絡。
3 学術研究会の発足促進。
4 学術研究基金の設置。
5 支部の結成。
6 医療相談会の開催。
7 会報・ニュースレターの発行。
8 色変関係パンフレットの発行。
9 総会の開催
10 専門部会(患者部会・学術部会・支援部会)の設置。

第3号議案は、設立準備事業の会計報告と設立初年度の収支予算案。古矢発 起人による主旨説明の後、ボランティアが全文を朗読しました。
初年度の予算案は、次の通りです。
(収入の部)
◇会費収入      1,074,000円
◇賛助会費収入     100,000円
◇寄付金収入     1,000,000円
◇資産運用収入      50,000円
◇業務運営収入      200,000円
◇設立準備繰越金    2,093,869円
◇収入合計       4,517,869円
(支出の部)
◇総会運営費       480,000円
◇理事会関連費      240,000円
◇会費等発行費      720,000円
◇医療相談会費      320,000円
◇医療研究費      2,000,000円
◇本部事務局運営費    757,869円
◇支出合計       4,517,869円
(次年度繰越金)         0円

第2号議案と第3号議案は一括審議され、異議なく承認されました。
第4号議案は役員選任。議長から役員候補者が紹介され、異議なく承認されました。

設立当初の役員は、次の通りです。
(患者理事)
◇荒木 英之 (島根県)
◇小野塚 有可(東京都)
◇小泉 貴  (東京都)
◇下堂園 保 (埼玉県)
◇寺地 定行 (埼玉県)
◇徳江 潔  (群馬県)
◇古矢 利夫 (東京都)
◇矢沢 正子 (千葉県)
(学術理事)
◇安達 恵美子(千葉大)
◇大庭 紀雄 (鹿児島大)
◇小口 芳久 (慶応大)
◇金井 淳  (順天堂大)
◇玉井 信  (東北大)
◇中島 章  (順天堂大名誉教授)
◇本田 孔士 (京都大)
◇松井 瑞夫 (日本大)
◇三宅 養三 (名古屋大)
◇梁島 謙次 (国リハ)
(支援理事)
◇井上 雄治 (東京都)
◇梅村 魁  (東京都)
◇岡田 恒夫 (千葉県)
◇岡野 正義 (千葉県)
◇椎名 益雄 (千葉県)
◇塩沢 健治 (千葉県)
◇中村 勝和 (千葉県)
◇鳩谷 敏明 (千葉県)
◇松丸 善次郎(千葉県)
(監事)
◇榎 智光
◇村山 耕一郎
◇山口 幸子

これで設立総会の議事は終了、暫時休憩となりました。休憩時間を利用して、会場では中国人留学生による、ヤンチン(中国の多元琴)の演奏が行われました。又ロビーでは、視覚障害者用品の展示もありました。
この間に、理事は別室で理事会を開催、常任役員を互選しました。結果は次の通りです。
◇会長・・・・・・・・小野塚 有可
 副会長・・・・・・安達 恵美子・徳江 潔・松丸 善治郎

休憩に引き続いて、設立総会は第2部に入りました。
冒頭は会長挨拶。先程の理事会で選ばれたばかりの小野塚会長から、挨拶と副会長の紹介が行われました。
次いで、以下の方々から祝辞が述べられました。
◇松井 瑞夫(日大教授)
◇佐藤 敏信(厚生省疾病対策課長補佐)
◇鳩谷 敏明(ライオンズクラブ国際協会地区視聴力保護言語障害盲人福祉委員長)

最後に、千葉大の安達教授と鹿児島大の大庭教授の、記念講演が行われました。

安達教授からは、主に近年行われた治療法について、説明がありました。
主な項目は、次の通りです。
◇アダプチノール・・・ドイツで開発された植物のエキス剤。効果ははっき りしないが、副作用はないであろう。
◇切瞼術・・・40年前にフィリッピンで開発。眼球を支えている筋肉を切 って、網膜への血流量を増やそうという手術。無効。現在は行われていない。
◇胎盤エキスの皮下注射・・・10年前にモスクワで開発。一時は大流行し たが、無効と判定される。
◇ダイヤモックス(アセタゾルアマイド)・・・1988年に研究発表。色変 に併発する黄斑浮腫の1部に、効果が認められる。
◇ビタミンAの大量投与・・・1988年にハーバード大のバーソン教授が提 唱。1日15,000単位(成人男子の必要量の3倍)を6年間投与すると、進 行を遅らせると言う。反対意見も多く、効果は疑問。
◇メタゾルアマイド・・・1994年、フィッシュマン教授の提唱。慢性の 黄斑浮腫の効果は、アセタゾルアマイドに劣る。
◇網膜移植・・・1992年にアメリカで発表。堕胎した胎児の網膜を移植 するもの。現在動物実験の段階であるが、アメリカでは営利事業として実 施している例もある。
◇キューバントリートメント・・・1994年11月にハバナのペレス教授 がキューバの国際会議で、その効果について発表予定。内容は不明である が、アメリカでは「ハバナ詣で」が起きていると言う。
◇高圧酸素療法・・・効果の判定は未だなされていない。
◇鍼灸・漢方治療・・・国際的には全く知られていない。

大庭教授は、「色変の色々」と題して、講演しました。概要は次の通りです。
◇色変の症状については、ほぼ完全に解明されている。
◇必ずしも全員が失明する訳ではない。
◇原因は遺伝である。
遺伝の型は3つ。1番多いのが劣性遺伝(70~80%)近親結婚すると発 病頻度が高くなる。
◇科学的に証明された有効な治療法はない。
◇鹿児島大では、イデベノン(網膜・視細胞活性化剤)を投与しているが、効果は確認されていない。
◇我が国では「網脈絡膜疾患研究班」が、厚生省の支援により20年にわたって研究を続けている。
◇最近の遺伝子研究の成果として、患者の10%~20%について、原因物質が特定されている。残りの患者についても、5年以内に解明されるであろう。
◇研究の為には、患者の協力が不可欠である。
◇新しい治療法としては、
1 遺伝子の組み替え・・・動物実験の段階。他の遺伝病では成功例もある。
2 網膜移植・・・動物実験では 成功。理論的には証明されている。
等がある。

講演は淡々と進みましたが、途中で、司会者が椅子ごと演壇から転落、最前列の患者と衝突するというハプニングがありました。幸いに二人とも軽い打撲傷だけで済んだ事を、申し添えておきます。

以上で設立総会のプログラムは、総て終了。4時過ぎに散会しました。

<定款の読み換え規定>
4頁で述べた定款の読み換え規定は、次の通りです。定款の補足の末尾に、第4頁と付け加えて下さい。

4 本協会が法人格を取得するまでの間は、本定款の一部を以下の通り読み換えるものとする。
一 表題及び第一条中の「(社団法人)日本網膜色素変性症協会」を、「日本網膜色素変性症」に。
二 第四十四及び第四十五条中の、「に於いて正会員の四分の三以上の同意を得、厚生大臣の認可を受けて」を、「の議決を経て」に。
三 第四十五条第二項中の、「得、厚生大臣の認可を受けて」を、「得て」に。

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