JRPS岡山 設立20周年記念行事 医療講演会での質疑応答です。
Q 無菌室で製造したフィルムの大きさはどのくらいで、どうやって使うのか?
A 精製したものを真空状態でプレスして、10cmくらいの丸いシートになる。それを2x4cmの短冊に切って、実際の丸い大きさに加工する。
Q 高橋先生のiPS細胞は高額と聞くが、人工網膜の料金はどのくらいになるのか?
A 原材料はフィルムに色素が少量ついているだけなので、高くない。
アメリカで使用されている人工網膜、アーガス2は何千万だが、この岡山大学方式人工網膜は、せめて心臓のペースメーカー程度の金額を想定している。100万円程度。
人工網膜と注入器込みで50万円程度で実現できるのではと考えている。
Q マラソン後に、しんどいほどよく目が見えたり、白内障ではないが白く見えたりという体験をする。網膜色素変性症の患者は、いらない情報をカットする機能が弱いのか、または電気信号のON OFF電位差が弱いのかなと思うが、どうか?
A 基本的にはよくわかっていない。動物種によっても違いがある。
錐体(すいたい)細胞は色とかコントラスト、桿体(かんたい)細胞は明暗に関連している。
桿体(かんたい)細胞が先で、錐体(すいたい)細胞が後に障害が現れてくるが、どの程度障害されるかは個人によって違う。
見るというのは、脳で見ていて、この脳は補完処理をする。かしこい、すごい。
白っぽく見えるのは、視細胞の感度が落ちているからだろう。
元気がなくなるとか、ご飯食べるときは、内臓に血流が取られるので、網膜の血流が低下して見えにくくなると考えられる。格子状に見えるのは、いわゆる画素が少なくなるような感じではないか。
目の生理的な働きはわかっていない。
基礎研究している先生とも共同研究をしている。人工網膜の有効性を明らかにしていければと思う。
Q サンプルを触ったら、片面がペタペタして片面はツルツルしている。表裏があるのか?
A 表裏はない。働くのは片面だけ。カールするなどを防ぐため、両面に加工処理している。
Q ありがとうございました。治療法的にも治療費的にも明るいニュースだなと思った。
猿で安全性と有効性は確かめた。人に対して治験が始まるのは、いつごろになるかわかれば教えて欲しい。
A 早いかもしれないし、遅いかもしれない。
品質と安全性のデータはある。有効性を出せるように準備している。
治療法がない疾患に対して、早めに申請できる、さきがけ審査制度がある。
治験を始めて、効果があって見えるようになれば、早く進む。
監督官庁との交渉や、費用設定の交渉などもある。
治験を始めて2年くらいで、保険診療としてできるといいなと思う。希望的観測か。
Q 有効性が足りないことやシートの有効期間が6ヶ月とか、何がネックになっているのか?
A 動物や試験管内での網膜細胞などで、有効性は確認したが、これで十分ではない。
人に対して有効性を調べるのだが、時代は進歩して、基準は変わる可能性がある。
多くの人に認めてもらえるようにしたい。
6ヶ月というのは、長期間使えるという目安。長期の動物実験を行なったが、それ以後の有効性はわからない。それ以降でも機能しているようなので、確認する必要がある。
次の製品は、実験室の段階でも有効期限が長くなるものを製造する予定。
Q 動物試験でうまくいっているのに、簡単に人には使用できないのか?
A 多くの方に、納得して理解してもらって、これならという製品にしたい。
時間はかかるが、これが成功させる道だと思って、とっても苦しいが頑張っている。
Q 詳しい資料はあるか?
A 内田先生の研究室のHPには掲載している。治験が始まれば、岡大病院のHP にも掲載する。また、総説があるので、興味があれば、読んでいただければ。
Q iPS細胞では拒絶反応が大きな問題であったと思いますが、人工網膜ではそのような心配は無いのか?
A ない。
会場からの意見 熱心な研究で感謝している。子孫の時代には治療法が確立できると期待している。光を失うのは悲しいこと。よろしくお願いします。