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●世界会議・情報保障報告 

興津久美子


 2年に1回。アジアでは初めての国際網膜世界会議。多くの患者家族にとっても、滅多に参加することができないであろう世界会議に、私たち聴覚に不安のある会員の「共に同じ情報を共有したい。情報保障を取り入れて欲しい。」という願いは当初から予算も組み込まれていました。まずは世界会議実行委員の皆様に感謝の意を表したいと思います。

 今回はPC要約筆記と手話通訳、アシストホーンの三本立てでの情報保障となりました。そのほかにも、視覚を補うものとして、点字資料や、FD、点図なども用意されましたが、ここでは私が担当した「聴覚障害者への情報保障」について報告します。

 まず「講師陣が世界各国からくる研究者がほとんど」「英語がメインであり、日本語の逐次通訳がつく」等の情報から「専門用語が多くなる」「日本語を聞き逃したら、何もわからない人が多い」ことは容易に想像できたので「迅速で的確な入力ができる」を前提に入力者の募集を依頼しました。

 また、字幕だけでなく、個別表示機を出きる限り用意し、字幕スクリーンが見えない人にも配慮できるようにしました。個別表示機を利用者の状態にあわせてその場で設定するスタッフも必要でした。

 PC入力者采配の責任者は、国内一のネットワークを持つ人です。彼の呼びかけのもと、国内最強のメンバーによる入力グループが集まりました。世界会議に参加し字幕をごらんになった方が皆「すばらしい」と絶賛した字幕の裏舞台には彼ら入力グループの大きな協力がありました。

 誤変換のない迅速で正確な専門用語の入力はもちろん、彼らの徹底的な事前学習と辞書登録の成果です。今回は特に事前の資料が思うように集まらない中、独自に文献などを探し出し、徹底的に関連する専門用語を拾い出しPCに登録しておく作業だけでもかなりの日数を要したはずです。

 入力もさることながら、今回は「会場の移動」と、「移動時間が短い」「混雑が予想される」という心配もありました。そのために、入力スタッフ以外にも、この移動設置のスタッフが必要でした。視覚障害の参加者が多い会場で、PC関連の機材一式の大移動は容易ではありません。綿密な計画が必要でした。現地での打ち合わせ、連日メール等での打ち合わせ。毎日十何通ものやりとりが続きました。

 特にPCスタッフ責任者は直前数日は不眠で取り組んでくれました。心から感謝と敬意を表します。

 PC要約筆記は「国内最強のメンバーによる最高の字幕」であったことは会場の誰もが感じられたと思います。世界会議と言う場にふさわしい、すばらしい字幕でした。

 今回はとにかく「視覚以外の障害が参加のバリアになることのないようにしたい」という思いから、全盲ろう者や手話をコミュニケーション手段とする参加者のために、手話通訳者も募集しました。

 そのほか、お馴染みのアシストホーン。アシストホーンにはPCと同じ2会場を移動しながらの協力をお願いしましたが、端末が足りなくなるほどの利用者があり、嬉しい悲鳴でした。

 今回の私たちアイヤ会の「聴覚重複障害者もJRPSの会員として参加したい」というアピールは廊下にまで人があふれた分科会や、この情報保障で世界各国の人達に届いたものと思います。「視覚」という情報障害を持つ患者だからこそ、そのほかの障害に対する配慮ができる。障害によるバリアはわたしたちが自ら排除していく。そんなアピールを込めて、情報保障は大成功をおさめました。

 そして、今回の情報保障がここまでできたのは、支援者の皆様のおかげです。岩崎聡先生が在籍する浜松医科大学耳鼻咽喉科医局・アシストホーン・宮嶋特子様はじめ数人の個人の支援者の皆様の善意の寄付が情報保障を成功させました。(金額の公表は控えさせていただきます)

 情報保障のために多くの予算を組んでくれた本部・寄付者の皆様・時間を忘れ、取り組み、最高の入力を見せてくれたPC入力者とスタッフ・アシストホーン・手話通訳者の皆様。

 そのほか、支えてくださった本部担当理事の森口・中村両理事にも心より、感謝を申し上げます。ありがとうございました。


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