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浜松医科大学 眼科 堀田喜裕
第12回国際網膜世界会議は、千葉県の幕張市で平成14年8月2日の第50回日本臨床視覚電気生理学会に引き続いて8月3日と4日の両日開催された。筆者は開会式から参加したが、1200人程度と想像される会場は超満員であった。その熱気と、患者さんたちの気迫に圧倒されるような気がして緊張した。総会長の千葉大学眼科教授の安達恵美子先生の挨拶、JRPS会長の釜本美佐子氏の挨拶、レチナ・インターナショナルのクリスチナ・ファサーさんの挨拶、堂本暁子千葉県知事の挨拶と冒頭からりっぱな女性4人のご挨拶が続いた。皆とてもすばらしいスピーチで、感銘を受けると同時に新しい時代の到来を実感した。
ファサー氏とは1996年に仙台でお会いしたとき以来であった。ファサー氏はスイスの人で、前回お会いしたときからすでに白杖を使っておられた。しかし、白丈を片手に全世界を駆け回って全世界の研究者に叱咤激励し回っておられ、そのバイタリティには敬服した。会議前日のレセプションでいろいろとお話をしたが、小生のことを覚えておられたのにはたいへん驚いた。
初日(8月3日)の14時からアイヤ会のシンポジウムが第6会場で行われた。正直いってどれだけの方が来てくれるのか心配であった。JRPS,アイヤ会の皆様方のご努力のおかげで、会場は満員であった。途中からは、部屋の外まであふれそうな状況で大成功であった。網膜色素変性に難聴を伴うものをアッシャー症候群という。小生のいままでの印象ではアッシャー症候群というのは小児期から聴覚障害のある人というイメージが強かったが、会場で網膜色素変性といわれてきたが、最近難聴が気になるという方が予想以上に多かったのには驚いた。網膜色素変性に難聴が伴うのは説により10%〜20%とかなり幅広いことが気になってはいたが、患者さん本人がアッシャー症候群と自覚していない場合もきっと多いのだろうと考えた。
二日目(8月4日)に、一般の方々向けに遺伝子診断と遺伝子治療の話をさせていただいた。1200人近くはいる会場はほぼいっぱいで自然に気合がはいった。なるべくゆっくり、わかりやすい言葉でお話しすることをこころがけた。1990年の網膜色素変性におけるロドプシン遺伝子異常の発見以来、遺伝子診断は眼科領域でも急速に進歩した。それに対して、1990年初頭から試みられてきた遺伝子治療については、研究者も患者もその困難さを実感しているのが現状であろう。今回の講演では、ラットや犬の網膜変性を使った実験では遺伝子治療の成功例が出てきているが、実際に人を対象としたとき、医原病と隣り合わせという大きな問題点についてもしっかりと述べたつもりである。ベクターという遺伝子の運び屋として用いているのはアデノウイルスなどのウイルスで、安全とされているものを使っているが、絶対に安全かどうかは現時点では不明である。しかし、こうした研究の積み重ねが治療につながるブレイクスルー(突破口)につながり、近い将来に網膜色素変性の治療法が確立することを祈りつつ稿を終える。