JRPSトップ > アイヤ会トップ > バックナンバー > 目次

文献と翻訳のお話

匿名希望


 アッシャー・シンドロームの情報を海外に求めるには、いろんな方法があると思います。幾多の検索エンジンにダイレクトにキーワードを入力して、サーチする。これがもっとも簡単な方法です。

昨年の暮れに、米国のサーチエンジンが幾つかの大学や公立図書館の学術的文献を検索できるサービスを開始しました。もちろん、英語のみですが、すでに検索することができ、数年かけてデジタル化されるということでわたし自身は楽しみにしています。また、文献のみをサーチできるという利点もあります。

 使い方は難しくなりますが、米国の国立医学図書館(NLM)の一部門である国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のサイトにはPubMed という医学文献データベースを検索するツールがあり、それを利用する方法もあります。

NLMにはMEDLINE(メドライン)もあります。MEDLINEとは医学分野で世界最大の文献データベースのことです。1966年からNLMでデータが収集され,米国を中心に世界70か国以上の膨大な文献が収集されていると言われています。MEDLINEをベースにウェブ上に無料で公開したのが、PubMedです。商用データベースといって、有料のMEDLINEもあります。例えば、日本のある大学がMEDLINEを購入し、大学独自の情報を付加して使うことも可能です。通常の医学文献データベースを検索するにはPubMedを利用すると良いでしょう。(著作権と免責事項、および、使用条件についてはサイトをご参照ください。)

 アッシャー・シンドロームの情報を海外に求める方法は上記のいずれかの方法で十分だと思います。問題は翻訳です。文献はすべて英語で書かれていますから訳す必要があります。わたしが、最初に使っていた翻訳ソフトは値段が安いのと訳文に滑らかさがあり、大変気に入っていました。しかし、専門用語が翻訳されません。医学的文献は専門用語が多いので、正確に情報を入手するにはどうしても専門辞書が必要でした。

そんな思いから、新たに翻訳ソフトを購入したことがあります。そのソフトを購入したのは多機能だったことと、別途で購入する専門辞書がお手ごろのプライスだったからです。しかし、いざ使ってみると訳文に滑らかさがありませんでした。この滑らかさは翻訳ソフトにとって、永遠のテーマです。市場には実に多くの翻訳ソフト(英日・日英翻訳)がありますが、どれも一長一短であり、口悪く言えば似たり寄ったりなのです。翻訳ソフトには共通点があります。文法上の滑らかさを別にして、英単語には幾つかの意味があり、状況に応じてもっとも適切な訳語にならないこと、使う人が望む訳語が優先的に反映されないという点です。考慮した翻訳ソフトもありますが、学習させるには骨が折れると思います。

 さて、購入した翻訳ソフトに専門辞書を追加するかしないか迷いました。滑らかさがない以上、専門辞書を付けても実用的ではないと考え、削除し、以前の翻訳ソフトに戻しました。その代わり、医学英和辞典と英和の眼科辞典を書店から購入し、こまめに辞書登録して使うことにしました。この辞書登録も容易ではなく、また、登録には限界もあります。ともあれ、数十語を登録し、しばらくそれで使っていましたが、そこそこ翻訳してくれました。

人によっては、文献を調べてなんの意義があるのか?の是非はあるかと思います。もちろん、専門的なことはわたしにもわかりません。文献ですから分子レベル、遺伝子レベルの内容もあります。実際、皆さんが興味を示すような内容の文献はほとんどありません。海外の情報を検索して翻訳すると、はっきり言って疲れます。でもどんなささいな情報でも欲しいというのがわたしのスタンスです。患者ならば自身の病気について少しでも知りたいという願いはあると思います。

最近、全分野の専門用語辞書が収録された翻訳ソフトを入手しました。正確に訳されない眼科用語もありますが、使うごとになじんでくれることを期待しています。また、環境が完全に整ったのでアッシャー症候群の世界を探索するのが楽しみとなりました。


[前ページ]-[目次]-[次ページ]