あぁるぴぃ千葉県支部だより48号


■特集■

★講演T「開業医に必要なロービジョンケア」

真清クリニック院長 日比野 久美子 先生
 千葉先生、ご紹介いただきましてありがとうございます。講演に先立ちまして、このよ うな機会を与えてくださいました高相先生を始めとしまして、当研究会及びJRPSの諸 先生方そして関係者の方々に心より御礼申し上げます。
 私が与えられました演題といいますのは「開業医に必要なロービジョンケア」というこ とでございます。ご紹介にありましたように、私はいま、千葉市花見川区の方で眼科を開 業して、ロービジョンをやっております。ロービジョンをやっていく上で、開業医である がゆえに、いい点・悪い点、たくさんあると思いますので、その辺をお話し出来たらと思 っております。
 最初にお断りしますが、PCのプレゼンテーションとなりましたので、視覚障害者の方 には、色々図表など見えない点があるかと思いますけれども、ご了承ください。それでは、 始めさせていただきます。まず、私が、どうしてロービジョンという道に入ったかという ことを、簡単にお話をさせていただきます。
 先程のご紹介の方にもございましたけれども、慶応大学の眼科の方に入局しまして4・ 5年くらい経った時に、丁度ニューヨークのコロンビア大学の方に留学の話が持ち上がり ました。コロンビアはご存知のように、歌手の宇多田ヒカルさんが入ったところでもあり ますし、野村沙知代さんの留学疑惑でも有名になったところです。そこでの仕事というの は、実はロービジョンではなくて、水晶体の生化学の研究をしておりました。
 アルファークリスタリンという水晶体の蛋白質があるのですが、どうして人間の眼は白 内障になるのか、何かいい薬を作ることは出来ないかということで、毎日ものすごく大き な牛の眼球を取り出しては、そこから蛋白質を抽出し、日夜研究をしていたわけです。非 常に疲れますし、ちょっとおもしろくないなと思っていた矢先に、臨床の方もやってみま せんかというお話がございました。
 さて、ここにライトハウスのスライドを出しました。これは当時コロンビア大学と関係 がございましたリハビリテーション施設で、ニューヨークライトハウスというところです。 そこで勉強をする機会を得たのです。このライトハウスは、2005年で丁度100周年 を迎えるという歴史のあるところです。そこに参りまして、私は今迄にない驚きというか、 感動を受けました。
 二つほど大きな感動を受けたのですが、一つは何かというと、当時自分ではちゃんとし た眼科の医者だと思ってはいましたが、「ロービジョン」という言葉を全く知りませんで した。誰も教えてもくれませんでしたし、私自身勉強もしていませんでした。おぼろげな がら、視覚障害になってしまったら、鍼・灸・マッサージ、いわゆる三療の世界にいくの かなというようなことを考えているくらいの、非常に不届き者であったと思います。ライ トハウスに行くようになり、ロービジョンというのは、ブラインドとは違うんだというこ とをはじめて痛感しました。
 ここにジュースの入ったコップが二つあります。こちらはコップが満たされているジュ ース、こちらは少ししか入っていないジュースです。前者が正常な方の視力の容量だとし たら、ロービジョンの方というのは、後者の状態なのかもしれません。けれども、私には もう残された視力がこれしかないんだ、飲めるジュースがこれしかないんだと考えるのか、 それともまだまだ使える視力がこんなにあるじゃないか、飲めるジュースがこんなに残っ ているというふうに考えるのか、考え方の違いですね。ライトハウスで勉強し、その考え 方の違いを実感し、愕然としました。
 もう一つ、感動したことは何かというと、一人の視覚障害者を囲むネットワークの素晴 らしさです。このスライドは現在のライトハウスのホームページから引いたものですけど、 建物1階の写真です。当時、私が行きました時も、やはり1階はショップというか、視覚 障害者の方々が手作りで作られた工芸品とか、手芸の品を売っている所でした。いくつか ぬいぐるみを買ってきましたが、視覚障害をもちながら、リハビリをすることによって、 こんな素晴らしい作品も作れるようになるんだということで、大変びっくりしました。
 2階はカフェテリアになっています。カフェテリアの中はもちろんいいにおいがして、 美味しい食事がたくさんあるんですけれども、盲導犬が全く食事に見向きもせずに、視覚 障害者の方にぴたっと寄り添っているんですね。そんな風景の中、その方達と一緒に食事 もしました。
 3階・4階は診察室になっているんですが、診察室といっても医師と患者さん(視覚障 害者)が、1対1である診察場面というものではなくて、看護師さんもいらっしゃる、ソ ーシャルワーカーもいらっしゃる、歩行訓練士の方もいらっしゃるということで、一人の 視覚障害者というものを囲む輪というのでしょうか、ネットワーク作りがすごく行き届い ており、日本の大学病院では見られない風景でした。そのような体制にも非常に感激しま して、ぜひこういう学問を勉強していかなければいけないなと誓ったわけです。
 さて、このスライドは、当時お世話になった先生方です。これはFaye先生で『クリニ カルロービジョン』という本の著者です。今も私のバイブルというか、参考書というか、 いつも使わせていただいております。当時はもう少しお若い先生でしたが・・・。この表 紙の裏表紙に、実際お世話になりましたMichael Fischer先生のサインをいただいてき ました。この先生も、当時はもっと髪の毛がたくさんあって・・・。年月が流れるのは早 いなと実感しています。
 これは本当の話ですが、9月11日にニューヨークでテロがございました。実は9月1 1日の1週間後にニューヨークに行きまして、先生方とお会いしようという計画を立てて いたんです。実際に、ワールドトレードセンターの中にあるレストランも予約してあった ので、テロリストが1週間予定を遅らせていたら、自分も犠牲者になっていたのかなと思 いまして、とても運がいいような気もしています。しかし、その後なかなか時間がなく、 ニューヨークを訪れる機会を得られていないというのが実態です。
 以上、私がロービジョンというものに触れたきっかけを、お話しいたしました。これか ら開業医にとって必要なロービジョンケアを話す前に、私にとってロービジョンとはどう いう定義か、ロービジョンに対する考え方、姿勢をお話しておこうかと思います。
 ロービジョンの定義で一番簡潔明瞭なのは、医師法という法律でございます。医師法の 第3条で、「医師は目が見えない者はなってはならない」という項目があるのです。そこ で、目が見えない者というのは、両眼の矯正視力が0.02未満であると定めております。 そこから考えますと、ロービジョンというのは両眼の矯正視力0.02以上であれば、ロ ービジョンと言えるのかなと考えられます。
 もう一つ、WHOの視力障害分類というものがございます。それではブラインド(盲) は両眼の矯正視力が0.05未満、低視力(ロービジョン)は0.05以上0.3未満と 規定をしておりますが、これはあくまでもWHOの定義と私の中では考えています。この ように、それぞれの先生方が定義をするのは全然かまわないのですが、私自身は定義にと らわれるべきではないと思っています。
 光覚のプラス以上あれば、ロービジョンケアの適応かもしれません。あるいは光覚がな い患者さんであっても、私達の眼科の医療関係者が何か出来ることがあるのではないか、 一つでもあればそれは、ロービジョンケアになるのではないかというのが、私の考え方の 基本です。
 高相先生から、今回の講演のお話をいただいた丁度その日、視覚障害者協会の御依頼で 講演会でお話をさせていただきました。協会の方から、何か視覚障害者に希望を与えるよ うな話をしてもらえないだろうかという、講演の依頼でございました。その視覚障害者協 会の方々というのは、網膜色素変性症の方が多いのですが、中には光覚のない方もたくさ んいらっしゃるとのこと。そこで何か希望の芽生えるようなお話を、私に出来るだろうか ということを考えました。
 そこで、「夢は実現する」という演題で、「網膜変性症の最近の治療法」についてお話を いたしました。これは、私がやっている研究ではもちろんありませんけど、人工視覚つま り、人工網膜の研究をされているところは、かなりのいいデータをあげてきているわけで すから、その点について講演をいたしました。
 “一寸先は闇”ということわざがありますけれども、逆に一寸先は光輝いているかもし れないのです。明日は何が起こるか分からないことを考えれば、一度失われた光も、この 人工視覚が実用化された折には、取り戻すことが出来るかもしれないと、そのようなお話 をさせていただきました。
 私の話が、どれだけ光覚マイナスの患者さんに、ためになったかどうかは分かりません が、希望というのでしょうか、医学的な根拠に基づいて、このようなお話をさせていただ くことでも、ロービジョンケアになるのではないかというのが、私の考え方です。
 一方、視覚障害者手帳というものがございます。視力がいくつ以上であれば何級とか決 まっているわけですけれども、そのような法律にもとらわれるべきではないと思います。
 例えば、視力や視野に大きな障害がなく、6級よりもかなり視力がいい患者さん、即ち、 視覚障害者手帳はいただけないが、視覚的に困っているという方もたくさんいらっしゃい ます。もし日常生活で視覚的に困難を感じているのであれば、ロービジョンでなくても、 やはり私達としては、ロービジョンケアと同様なケアをしてあげるべきであろうというの が、私の考え方です。
 これは遮光眼鏡をかけた絵です。視覚のいい方でもこちらが遮光眼鏡をかけたゴルフ場 の芝生、こちらはかけなかった時です。健常者がゴルフをされる時に、やはり遮光眼鏡を かけた方がやりやすいかもしれません。そういうことをちょっとアドバイスするだけでも、 視力がいい悪いに関係なく、一つのケアをしたことと考えられます。
 様々な定義や、視覚障害者手帳を持っているか否かというものに、とらわれる必要がな い分野であるというのが、まずロービジョンに対する大前提の私の考え方です。イントロ ダクションが長くなりましたが、以上をまとめれば「ロービジョンとは、もちろんブライ ンドではない」というところから始まり、ロービジョンケアが視覚補助具や色々な光学的 レンズの有効なる活用によりまして、残存視力や視野を最大限に引き出すことと定義は出 来ますが、視覚補助具の使用にかかわらず、視覚的に困難を感じている方々に、開業医と しての自分に出来うることはなんでも行うというのが、開業医としてのロービジョンケア の関わり方の大前提だと思います。
 次に実際に、ロービジョンケアをこれから始める方やいま行っている先生方が知ってお かなければいけないことがいくつかあると思いますので、それをお話させていただきます。 スライドにそれらの項目を掲げました。最初に、視覚障害者というものの実態を知ってお くべきだと思います。それから、この頃高齢の視覚障害者の数というのが、非常に増えて まいりましたので、高齢視覚障害者の特徴について学ぶ事も重要です。
 3番目は「視覚障害者のこころ」についてです。第2回のロービジョンケア講演会の時 に、簗嶋先生の方からお話があったのかもしれませんが、ロービジョンケアをしていく上 で、視覚障害の方々がどのようなことを思っているのかという、心の背景ですね。それも 勉強しておく必要があると思います。4番目はロービジョンケアの実際です。どのように ロービジョンケアを行い、視覚補助具を処方していくのか、5番目は視覚補助具の解説、 そして最後は実際の症例を揚げて、以上6項目に分けてこれからお話をさせていただきま す。
 最初に、視覚障害者の実態についてですが、1989年(平成元年)に、全国の大規模 な視覚障害者の調査というものが行われております。ご存知のように、当時の視覚障害の 原因ナンバーワンは糖尿病網膜症でございました。視覚障害者の色々な統計というのは、 非常にプライバシーに関わることなので、毎年いいデータを出していくのが難しいそうで す。地域ごとの色々な疫学調査はあっても、全国規模で調べるというのがなかなか難しく、 15年間そのままにされていましたが、今度2001年から2004年の新しいデータが 出ましたので、1989年当時とどう違うのかをお話いたします。
 1989年は糖尿病網膜症が1位だったんですが、今回は緑内障が視覚障害の第1位と なりました。そして前のデータでは、白内障は2位だったんですが、もちろんご存知のよ うに、手術の技術の進歩に伴いまして、白内障は5位よりも下に脱落しております。糖尿 病網膜症は、1位から2位になりました。第3位は網膜色素変性症、第4位は黄斑変性症、 第5位が高度近視、このような順番に最近のデータが入れ替わっております。
 次に性別ですが、ロービジョンケアをやっていく上で、男の人なのか女の人なのかとい うのは、そんなに関係があることではないですが、例えば女性の方でしたら、日常生活用 具などを処方するときに、台所用品、まな板はどうするかという問題も生じます。疾患毎 の男女差を整理してみますと、圧倒的に女性に多いのは高度近視、それと関係しますが網 膜脈絡膜萎縮の方も女性7割ということで、圧倒的に女性が多い疾患になります。女性が 50%ちょっと超えるという疾患では、白内障、網膜剥離などがございます。
 逆に男性に多い病気というのは、どういうものがあるかというと、緑内障は男性の方が 多く、糖尿病網膜症も6割方を占めてきます。そして黄斑変性症は、圧倒的に男性の患者 さんに多いというデータが出ております。
 千葉市におきまして、視覚障害者の現状がどうなっているかといいますと、身体障害者 手帳を交付された患者さんは、平成14年から16年まで、大体2万人ちょっとです。そ のうちの視覚障害者ということになりますと、大体7〜8%で、このデータはあまり最近 は変わっておりません。即ち1割弱の患者さんが、視覚障害を持っていらっしゃるという ことになります。
 次に、高齢視覚障害者というものに対して、私達は学んでおかなければなりません。な ぜこのようなお話をしなければいけないかといいますと、先程の新しい視覚障害者のデー タを年齢別に取ってみますと、18歳から59歳、比較的若いグループには、網膜色素変 性症や糖尿病網膜症の方が多いということになります。また、60歳から74歳くらいま での方には、どういう疾患が多いかというと、糖尿病網膜症と緑内障です。そして75歳 以上、かなり高齢の視覚障害者の方は、1位が緑内障、2位が黄斑変性症、3位が糖尿病 網膜症と、このような図式になってまいります。
 前回のデータでは、70歳以上の高齢視覚障害者は、全体の38%だったんですね。全 体の視覚障害者の中で、70歳以上の方は、大体4割でした。けれども、新しいデータに よりますと、なんと1.4倍に跳ね上がりまして、半数以上の方が70歳以上であるとい う事実、ここが問題のところです。どういう疾患の平均年齢が高いかといいますと、1位 は黄斑変性症の76.8歳でございます。2位は緑内障、75.6歳です。
 つまり、視覚障害者の半数以上がお年寄りだということを認識し、その方がお年をとっ ているということで、どういう共通の問題が生じてくるのか、その点を勉強しておかなけ ればロービジョンケアはスムーズにいきません。高齢化に伴う生理的な変化、病的な変化 も含め理解しておく必要がございます。
 スライドに若年者の方を左側、高齢者の方を右側に表示し、眼の構造モデルを示しまし た。加齢と共に前房は少し浅くなりますし、もちろん水晶体はこのように混濁して、白内 障になってまいります。そして硝子体には液化の現象が起こり、後部硝子体剥離などの 色々な生理的な現象が起こってきます。
 もうちょっと詳しくいえば、角膜におきましては、内皮細胞が脱落して、房水の角膜へ の流入が始まり、角膜の厚みが厚くなっていきます。水晶体におきましては、白内障とい うことで混濁が起きますし、調節力も低下します。瞳孔は少し縮瞳ぎみになるといった、 一連の反応が起こってくるわけです。このような生理的な現象は、その患者さんがロービ ジョンであるかないかに関わらず、共通の変化をもたらせてまいります。
 その一つに光の散乱という現象が起こりやすくなってまいります。また、角膜の厚みが 厚くなったり、水晶体が白内障で濁ってくれば、グレアが増加してまいります。また、コ ントラスト感度も低下します。羞明感も増加します。羞明感というのは眩しさのことです。 眩しくなるし、コントラストは落ちるし、グレアは増加するしということで、非常にお年 と共に皆さん見にくくなってくるわけです。
 そして当然の如く、調節力も低下しますので、単純に近づければ見えますよといっても、 なかなかそうはいかなくなってきます。また、お年の変化で他の身体機能も落ちてまいり ますので、動体視力も低下します。また照度の問題も出現し、照明がきちんとしていない と、見えにくくなってしまうという一連の、共通の変化が起こってくるわけです。
 羞明について説明をさせていただきますと、光の散乱というのは、光の波長の4乗に反 比例するという原則がございます。この原則から考えますと、短波長、光の波長が短けれ ば短いほど粒子の散乱度が大きくなりますし、屈折力が増しますので、網膜に結像する際 に、非常にじゃまをするという現象が起こってきます。これがいわゆる紫あるいは青領域 の短波長光の現象で、これをオプティカルノイズとか、オプティカルハザードと呼んでい ます。
 このような短波長光がグレアを増加させたり、コントラストを低下させたりということ になるわけです。後でお話するようにこのオプティカルハザード、あるいはオプティカル ノイズを、削除する視覚補助具というものが遮光レンズになるわけです。
 グレアについてですが、グレアにはディスコンフォートグレア(不快グレア)と、ディ スアビリティーグレアとかベーリンググレア(不能または減能グレア)というふうに呼ば れますが、この2種類があると言われております。不能または減能グレアは、視力やコン トラスト感度というのを落とすわけですけれども、逆にこちらの方は遮光眼鏡によって改 善すると言われております。
 不快グレアの方ですが、この不快グレアというのは視力やコントラスト感度は落としま せんが、患者さんに対して眼精疲労を出したり、頭痛の原因になると言われています。こ の二つは、明確に分離することは難しいと言われていますが、ロービジョンになればなる ほど、この二つの共通集合、不快グレアであり不能グレアであるという部分が増えてくる と言われております。この不快グレアについては、遮光眼鏡で解除することは出来ません が、適度な照明に気を付けてあげることによって、改善してくると言われています。
 そこで、照明のことも一応勉強しておかなければいけないと思います。作業環境の最低 基準を定めております労働安全規則というのがございます。それによりますと、普通の粗 い作業をする時には、70ルクスくらいあればいいでしょうと言われております。通常の 作業は150ルクス以上、精密な作業が300ルクス必要と言われています。白内障や緑 内障の方は、もちろん健常の方よりも更に高い照度が必要でありまして、500〜100 0ルクスくらいの照度が必要と言われております。
 また、一般的な新聞の活字を読む場合の読書は、いくらロービジョンでなくて正常な方 であっても、60歳代に入ると、20歳代の時の32倍の照度が必要ということが言われ ております。ですから、患者さんの視力がいい悪いに関わらず、高齢の患者さんというの は、照明のことも少し話してあげなければ、眼科医としては不十分ではないかと思います。
 特にロービジョンの方には、照明というのは非常に大事です。視覚補助具を処方する時 に、結構私もその辺を見落としてしまうこともあるのです。患者さんにその重要性を教え てあげなければいけないんだなと再認識しています。
 まず照らす方向は、グレアを生じさせないように正面からの逆光ではなくて、後方から の順光、あるいは側方からの側光という形で照らしてあげるとよく、また照明の位置は、 手暗がりにならないように、作業している手の反対側に置きまして、片眼が良くて片眼が 悪い場合は、もちろん視力のいい方の同側に置いてください。
 ロービジョンの方というのは、どうしても近くの物を見る時に、見ようとするものとの 距離を非常に短くしてしまう方が多いので、発熱作用のあるようなものを使ってしまうと、 火傷の原因になってしまいます。ですから、なるべく発熱作用の少ないものを使ってあげ るというのがいいと推奨されております。
 次に視覚障害者の心について述べてみようと思います。視覚障害の方の精神的な心理的 な背景について以前お話したことがありますので、その時のスライドを引用させていただ きます。
 以前に、神戸で国際糖尿病会議が開かれました。当時私は東京都済生会中央病院に勤め ておりまして、そこはかなり糖尿病の患者さんが多く、糖尿病の失明者教育をどうするか ということで、こちらの演題を出させていただきました。日本語の題名は「糖尿病の失明 者教育における精神心理学的アプローチと低視力者ケアの重要性」というものです。
 この時に話した事は、視覚障害に陥った患者さんは色々な時期(ステージ)によって、 精神状態が少しずつ違うので、それらを考えないでケアすると、思わぬトラブルになるこ とがありますということです。患者さんの心理状態を全部で四つのステージに分けました。 糖尿病の患者さんが網膜症などでロービジョンになられまして、失明宣告を受け、社会復 帰するまでを4期に分けたわけです。他の眼疾患とちょっと経過が違うかもしれませんが、 それを糖尿病に限ってということではなくて、他疾患も共通として考えることが出来ると 思います。
 まず糖尿病という診断が下されました。そして眼合併症が発生します。この期間を第 1期(ファーストステージ)といいますが、この間患者さんはどんなことを考えている かというと、不安感であったり抑鬱であったり、人に対して自分だけがなぜ糖尿病になっ たんだという恨みとか、色々な糖尿病のコントロール、食事や運動などの制限、その制限 に対する怒り、そして家族に対する依存性、そういうものが存在すると言われております。
 第2期のセカンドステージですが、眼合併症が起きてからロービジョンに至るまでです。 つまり眼科的な治療がうまくいかなくて、だんだん視力が落ちてくる時期なんですが、そ の時期にもやはり不安感があったり、パニックになったり、失明に対する恐怖感があった り、更に家族に対する依存性が増してまいります。
 さて、この失明に対する恐怖感についてですが、私もあるいは内科の先生も、とにかく コントロールをちゃんとしないと失明してしまいますよ、という言い方をすることもある と思います。しかし、患者さんによっては、自分なりに失明に対する恐怖感をかなり強く 感じている人もいるんです。だから、失明という言葉をむやみに使わない方がいいとおっ しゃる先生もいらっしゃいます。
 第3期というのは、ロービジョンの状態になってから、失明宣告を下され、宣告を受け 入れるまでの状況です。この時には、もちろん患者さんはショックを受け、嘆きでいっぱ いです。トーマスキャロルという人は、人格の損失など20の損失が起こると言っていま すが、そのような非常に過酷な時期です。こういう時に、色々とロービジョンケアをやろ うと思っても、なかなか受け入れるというのは難しいかもしれません。ロービジョンの開 始の時期もよく考えてあげないといけないと思います。
 第4期は、失明宣告を受け入れてから、社会復帰をするまでの間です。ここも決して平 坦ではなく、社会的に自分だけが挫折を味わったり、コンプレックスを感じたり、経済的 な問題が生じたり、疎外感を痛感します。糖尿病網膜症一つ取っても、患者さんが直面す る色々な精神的な背景があるのです。眼科だけではなくて、他科の先生方も糖尿病の患者 さんに接すると思うんですが、心の背景というのは、非常に奥深いものがあるということ を、知っておく必要がございます。
 失明宣告ですが、開業しておりますと、ここであなたの視力はこれまでですよという場 面は、そんなにないかと存じます。大学病院の先生に手術などをお願いして、その後自分 のところに戻ってきてから、視力はどのくらいになるんでしょうか、私はもうちょっと見 えるようになるんでしょうかというような、お話はあるかもしれません。これも言い方一 つで、患者さんを魔の谷に突き落とすこともあるし、明るい希望に導いてあげることもあ ると思います。
 この失明宣告のタイミングや言い方は、患者さんの性格、職業、経済的背景、家族の環 境などを考慮して、行わなければいけないと思います。決して一律に、視力が悪くなった ら行うべきものではないと思います。
 誰に対して言うか? もちろん本人に言わなければいけませんけど、本人だけではなく て、ご家族の方や患者さんを支えてきた周りの方々ですね。隣のおじさんでもおばさんで もいいと思います。患者さんが心から信頼を寄せている人にも、一緒に言っておくべきだ と思います。
 いつ言うか? これも職業や生活環境によって、決めるべきだと思います。何回かに分 けて行うべきであると考えていますが、これはショックを少しでも和らげるという意味で す。患者さんは、最初にワーッとお話しても、頭が真っ白になってしまうこともあります し、理解出来ない場合もあります。何回か来ていただいて、少しずつ説明してあげること が大事でしょう。
 何をお話したらいいかですが、ここが眼科医としての腕の見せ所だと思います。いかに 現在の病状をやさしくお話をしてあげるかです。分からない方には何回も説明するしかな いし、病状の説明はその方のインテリジェンスに合わせる事が大切でしょう。そして、た だ現状を説明しただけでは、患者さんはどうしたらいいのかが分からなくなってしまいま す。ですから例えば視力が0.01だとしても、それはしかるべきロービジョンケアを受 けることによって、なんらかの方法があるのかどうか、視覚リハビリの限界、ここも失明 宣告と同時にしてあげるべきであると思います。事実はこうです、だけどこういうことが、 今後出来るかもしれませんというところまで、つまり将来の方向性や現在の職業が続けて いけるのかどうか、そこもすべて含めてお話をすべきであると思います。どうしても視覚 リハビリの限界がここまでで、どうしようもないということであれば、更生施設や福祉施 設の紹介もしてあげる、先々のこともすべて含めて現状を言ってあげませんと、患者さん は事実だけ言われたのでは、これから先どうしていいか分からないという現状になってし まいます。このような失明宣言などの患者さんとのコミュニケーションにおきまして、開 業医の先生というのは、後でお話をしますけれども、比較的患者さんとのお付き合いが長 いわけですし、その方のバックグラウンドがよく分かるので、非常に有利なのではないか と思っています。
 さて、次に実際にロービジョンケアを、開業医としてどのように行っていくべきか、視 覚補助具、光学的なもの、あるいは非光学的なものがございますが、その処方も含めてロ ービジョンの流れをご紹介したいと思います。
 まず、ロービジョンケアを実際にしていく上で、一番大切であって、一番しなければい けないことは何でしょうか。患者さんが今何に困っているのか、何をしたいのかという ニーズを聞き出すことが、一番大事なことだと思っています。このニーズを聞き出せば、 ほとんどロービジョンケアは成功しても、同じなのではないでしょうか。患者さんが何も 必要がないのに、メガネを処方することもないですし、書きたいといっても何が書きたい のか、どこに書きたいのか、その辺のところをしっかりと聞き出してあげること、実はこ のニーズの聞きだしが開業医にとって、有利な場面だと思っています。
 さて、ロービジョンケアが実際どういうふうに流れていくかといいますと、最初に視機 能の評価をいたします。これは普通の眼科の先生が行っていることでございます。少数視 力表、対数があればもっとよろしいと思いますけど、視力表を使って視力を測ります。近 見は近見視力表で測りましょう。眼科の医者に初めてなった時に、先輩から「眼科は視力 に始まり、視力に終わるんだよ」と一言言われたことを、いまさらながらその重要性を感 じております。
 視力がどれだけきちっと測れるのかということが、一番の基本中の基本になります。白 内障の手術をする時でもいつでもそうでしょうけど、0.1誌か出ないのか、がんばって 色々やっていて、0.5くらい出てしまうのかどうか、その辺が最も大切です。
 私は千葉市障害者福祉センターと千葉市障害者相談センターで月に一度お仕事をしてい ますが、視覚障害者手帳を持ってくる患者さん、1級とか2級とか書いてあります。けれ ど、一生懸命時間をかけて測ってあげると、もっともっと視力が出る人がたくさんいるん ですね。どれだけ普段の忙しい外来で、もっと視力が出るかもしれない患者さんを見逃し ていたのかなというのを自戒したりもしますが、いつでもどんな時でも肝に銘じて、視力 だけはしっかり測らなきゃいけないなと思っています。
 また、視野を測る時には、もちろんハンフリーやゴールドマンもありますけど、ロービ ジョンになってきますと、ハンフリーで測るのはなかなか大変になってきますから、大体 どんな感じの視野なのかという大まかなものを掴むには、ゴールドマンの方が優れている 点があると思います。
 さていよいよロービジョンケアを行っていく訳ですが、その前に眼科医として何かやっ ておかなければいけないことはないか、ここで一つポイントを入れる事が重要です。例え ば、白内障が非常にひどい患者さんが来たとしますね。後でお話しますけど、その時に白 内障の手術をやってあげるだけで、視力は上がってくる可能性もあるかもしれません。そ うであれば、ロービジョンケアを行う前に、自分が出来る限り、何か出来ることはないだ ろうかということをまずここで考えて、治療が必要であれば行うべきです。(当然のこと ですが・・・)
 二番目にメガネです。どんなにロービジョンになった患者さんでも、最初に思うことは、 自分は眼が見えなくなってしまった、いろんな先生もそう言っていた、けれどももしかし たらメガネをかければ見えるんじゃないのかなと、皆さんそうおっしゃいます。どんな重 篤なムンテラをされていても、メガネをかければ少しはよくなるんじゃないかと、患者さ んは期待を持っているんです。
 だから、これからお話しするように、拡大鏡だとか弱視鏡がありますが、まずメガネで の屈折矯正はどのくらい出来るか。これは視力検査と同時に、非常に重要なことだと思い ます。この屈折矯正がきちっと出来ていませんと、これを骨格にして、これからの倍率の 設定などが始まりますから、ここの点が崩れてしまいますと、すべてがだめになると思う んですね。
 ですから、ロービジョンだからといって、メガネを作っても仕方がないと言われたと、 患者さんおっしゃっても、まずやってみましょう。通常のメガネでどのくらい出るのか な、それでだめだったら、次のステップにいきましょうよということで・・・。
 この時も大事なことは、どういう目的でメガネを作って欲しいのか、使用目的を聞き出 すことです。遠用メガネが欲しいんですか、それとも近用メガネが欲しいんですか、ある いはもう作業距離がなくてもいいから、1cmでも2cmでも近づけることによって、近 くの文字が見たいんだ、つまり至近距離眼鏡ですね。そういうものが欲しいのかというこ とで、目的をよく聞き出すことによって、この中のどれか一つ位は処方出来るかもしれま せんので、ぜひ聞き出してみてください。
 次のステップとしては、拡大鏡というものが出てくるわけですが、この拡大鏡も使用目 的をきちっと聞き出すことが重要になります。例えば、患者さんの手の動きや姿勢を見ま して、どんなタイプがいいのか、メガネ形式がいいか、手持ち眼鏡にするか、それとも卓 上式にするのか。また、倍率の問題、これは後で山中さんがお話しますが、メーカーさん によって拡大鏡の倍率の計算方法というのが、ちょっと違う時があるんですね。そういう 知識も持っていなければいけません。
 そして大事なことは、拡大鏡の使い方をきちっと患者さんに理解をしていただくという ことになります。これは据え置き型、こちらの方が手持ち型、これはライトのつくタイプ ですね。いろんな種類がありますが、その患者さんの用途、あるいは手の動きに応じて、 選定する必要があります。そしてどうしても、両方の手を開放にしたいという時には、こ のようなワークルーペとか、メガネのような形をしたものでも拡大鏡というものを作るこ とは出来ます。しかし、倍率が決まってしまうということが、難点になります。
 次に弱視眼鏡ですが、この弱視眼鏡もあくまでもメガネというタイプにこだわってしま う場合、けれども普通のメガネでは見ることが不可能で、拡大率が不足してしまう場合に、 このような弱視眼鏡を処方することになります。
 それから単眼鏡ですけれども、単眼鏡もやはり使用目的というものを聞き出すことが、 非常に重要になります。例えば、学校の生徒さんが黒板を見たいのか、一般の方々が駅の 時刻表や移動のために使いたいのか、そのような使用目的を必ず聞き出してください。こ の単眼鏡のおもしろいところは、変身していくんですね。
 例えば、このようなアタッチメントをつけることで、拡大鏡としても使えますし、逆向 きに見ることによってリバースドテレスコープ、逆単眼鏡といいますけど、視野を広くし て、倍率は小さくはなりますけど、視野を拡大するというような目的で使うことも出来ま すので、変身してどうなるかという使い方も、教えてあげるとよろしいと思います。
 次に拡大読書器です。拡大読書器は、非常に世間の認知度も増してきたと思います。こ のポイントは、すぐに拡大読書器をご紹介しない方がいいということです。当たり前のこ とですが、倍率が高くて50倍までいきますから、視覚障害が重い方には便利は便利です けど、まず先ほどお話しました拡大鏡とか弱視鏡とか色々やってみて、最後の手段として こんなのもありますよというふうにご紹介された方がいいでしょう。他の視覚補助具が本 当は出来るのに使用せずに、ここに一気に飛び越していってしまう可能性もありますので、 一応最後の方に試したらいかがでしょうか。
 そして白黒反転あるいはカラーなどの機能も、きちんと説明して利用していただきまし ょう。患者さんの中には置き場所がないですとおっしゃる方もいるし、使用目的も持ち運 びたいという方もたくさんいらっしゃいます。据え置き型にするのか、スキャナー型にあ るいは液晶モニター一体型にするのか、この辺もよくお話をさせていただきます。
 去年のロービジョン学会で、思い出に残ることがありました。拡大読書器は、普通読み 書きだけに使うというように、皆さんご理解されていると思いますが、色々な用途に使え ます。そのロービジョン学会で、あるORTの方が、拡大読書器を処方した患者さんの追 跡調査を行って、実際に患者さんが使われている場面を動画に撮影して上映されたんです。
 その中で感動的だったのは、ロービジョンになったまだ若いお母さんが、子供さんのた めに何か自分の手作りのものを、作ってあげたいという一心で、拡大読書器を使って編み 物をしていました。小さい子供にマフラーを編んであげて、子供が「お母さんありがと う」と言っているのが映ったんです。こういう使い方もあるんだなと思いました。
 また、染色を職業とされている染色師の方が、ロービジョンで一旦お仕事を中断したけ れども、拡大読書器を活用することで、染色の仕事をもう一度出来るようになりましたと いうお話も紹介されました。
 ロービジョンとは関係ないですが、この間すごくおもしろいと思ったのは、実はこの拡 大読書器を偽ドル紙幣の鑑別に使っていました。北朝鮮では、偽ドル紙幣を国家の政策で、 どこかの秘密の工場で作っているそうです。それが非常に精巧に出来ていまして、なかな か鑑別することが難しいんだそうです。ですが、専門家が拡大して見ると、どこか本物と は違うところがあるらしくて、偽ドル紙幣の鑑別にも使っていました。色々と使い方があ るんだなと、変な感心をしてしまったわけです。
 この拡大読書器で大事なのは、色々な会社から様々なタイプが出ていますから、実際に 患者さんに使用していただいて、それから機種を決定するという方法をとられた方がよろ しいと思います。例えば、携帯型の拡大読書器ですけれども、部品を着脱することによっ て、缶にあてると筒型の缶の文字まで読めますなんていう携帯型、手のひらサイズのもの、 上着のポケットに入るものと色々あるそうです。
 患者さんからよくお話を聞いて、どういうものが欲しいのかということで、実際に使っ ていただいて、満足いくものを決めてあげると喜ばれると思います。その他、ロービジョ ンケアをする際に重要なのが、遮光眼鏡や色々な便利グッズの紹介、あとは情報提供にな ります。
 遮光眼鏡に関してですが、遮光眼鏡というのは、見た目がただのサングラスですね。1 00円ショップに行ったってサングラスを売っているのに、なぜ遮光眼鏡でなければなら ないのか。なぜ医療用のサングラスと言うんですかということを、患者さんによく理解し ていただくことに努めなければいけません。通常のサングラスと何が違うのか、何故効果 があるのかということを、眼科医として説明するべきだと思います。
 このスライドのように遮光眼鏡というのは、たくさんの色の種類があります。色鉛筆の 中から、何色で塗ろうかなと思うくらい迷ってしまうわけですが、私のところでは、患者 さんに実際にかけていただいて、自覚的にこれがよかったというようなことで決めていま す。
 これが東海光学から出ているCCP、こちらがHOYAのレチネックスの製品です。こ れが東海光学のCCP400、かなりたくさんの種類が出ています。
 先程、羞明の話をしましたけれども、一般のサングラスの透過率というのが、こういう 曲線になります。そしてCCPですと、この短波長領域を完全にシャットアウトしている という、きちっとしたシャープの立ち上がりがここからあるわけです。これによって眼の 中に、短波長領域の光が全く入らないという工夫をすることで、グレアが減るわけですし、 コントラストが上がります。その辺を患者さんにしっかり理解していただいた上で処方し ませんと、やはりお値段がある程度しますので、なんだこれ、普通のサングラスじゃない かとなって、なかなか使っていただけないこともあるわけです。
 簗嶋先生によりますと、いい遮光レンズの条件というのは、このように言われておりま す。まず最大限にバイオレット・ブルー・グリーン領域を吸収すること、とくに400n m以下を完全にカットすることが望ましい。そしてフィルター特性がシャープなカットオ フ値を有すること、全体的に一様に通して、特別な波長だけを通すということがないこと、 視感透過率が小さくて暗くなり過ぎないこと、というような条件をあげておられます。
 それでは次に実際の症例を交えながら、お話をさせていただきます。まず症例1は57 歳の糖尿病網膜症の患者さんです。この方は、10年前に糖尿病と診断されまして、5・ 6年前に網膜症で両眼のレーザーを施行したのですが、視力の低下が進行しまして、一昨 年の11月に右眼、昨年の4月に左眼の硝子体手術を某大学病院で行われた患者さんです。
 手術をされた大学の方では、メガネの処方はもうちょっと様子を見てからにしましょう ということで、患者さんは再三再四お願いしているそうですが、特に術後の眼鏡について は処方されていないんですね。手術は成功しましたよと言われているけど、本人としては 新聞が読めないし、このまま会社にも行けないでいると辞めさせられてしまうので、なん とかしてくれないかということで、昨年の8月に当院にいらっしゃいました。
 つまり、最後の手術をされてから4ヶ月後に受診をされているんですが、4ヶ月間患者 さんは待てなかったということです。この方の眼底は非常にマクロパチー(黄斑症)が強 くて、右は0.02、左は矯正しても0.2ということで、視力不良の症例です。ここで の問題点は二つあると思います。一つはメガネの処方はもう少し様子を見てからの方が本 当にいいのかどうか、患者さん自身は待てなかった訳です。
 もう一つは、新聞が読めないと言っていることですが、新聞が読めないということを、 よくよく聞き出してみると、新聞の活字が読めないのではなくて、実はこの人の仕事から 株式欄を見ないといけないんだそうですね。株式欄を読めないのが困っていたということ が分かりましたので、これはエッセンバッハのライトですが、4倍のルーペを処方したと ころ、ちゃんと株式欄が読めるようになりましたということで喜ばれました。
 一概に新聞といっても、色々とその人のバックグラウンドがありますので、何をしたい のかということを明確に聞き出すことが重要です。そして、先程の遮光眼鏡もそうでした が、ルーペもただの虫眼鏡じゃないかと言われてしまいます。100円ショップだって売 っていますと言われますので、医療用のルーペと何が違うのか、視覚補助具の意味合いを よく患者さんに説明して、医学的に説明することによって使っていただくことも大切です。
 もう一つ、4ヶ月経っている例に、まだまだ様子を見ていてもいいのかということです。 これに関してはいろんな考え方があると思います。例えば黄斑変性症で、硝子体手術を受 けた患者さんに、いつロービジョンケアを開始するかという問題があるんですが、実際問 題、この患者さんはこれを待てなかったということですけど、やはり糖尿病の人はこうい った特徴というのがあると思うのです。
 慢性疾患で今までずっと糖尿病でしたから、常に不安とか抑うつ感がありますし、自分 自身で色々とコントロールをしないといけないということで、常にうつや制限を感じてい らっしゃいます。こういう一連のことがある上に、彼の場合は、とにかくこのままだと会 社を辞めさせられてしまうということで、あせっていらっしゃったわけです。
 糖尿病は他の視神経疾患、例えば、交通事故などによって急に見えなくなるのとは違い まして、ロービジョンの期間が比較的長いと思います。ですから、瞬時に完全失明にいた ることはございません。私は、ロービジョンのトレーニングは、患者さんが困ったら、術 直後というのはちょっと大げさかもしれませんけど、ある程度屈折が定まったら、早めに 始めてあげた方がいいのではないかと思います。
 ただし、非常に重症になってきますと、白内障・緑内障・眼筋麻痺も含めまして、様々 な眼合併症を多彩に持っている場合や透析の問題も出てきますので、ロービジョンのトレ ーニングとしては、他疾患よりも難しいという点はあります。しかし、なるべく早期に始 めてあげて、患者さんに満足を与えてあげた方がいいのではないか、もし処方が変わって きたら、もう一度処方しなおすということで、あまり待たせない方がいいというのが私の 持論です。
 次の症例2は、網膜色素変性症の患者さんです。この方は、とても長く当院の方にかか られていましたが、だんだん視力が進行してしまったんですね。現在は右が0.07、左 は0.4弱くらいです。このように5度を切っている中心性の視野狭窄がひどいのですが、 毎回診ている患者さんでだんだん視力が低下してきますと困ってしまいます。この方の場 合はすでに白内障の手術もされていますし、プリズムによる視野拡大もやってみましたが、 プリズムはうまく使えませんでした。
 では私に、何が出来るだろうかということで、もう一度お話を聞きましたところ、一つ は拡大読書器の使い方があまりうまく出来ていない事に気づきました。拡大読書器で白黒 反転も含めてお話しをしました。それから、今日のこの講演会にも出席されていますが、 愛光さんの方にお願いしまして、視覚補助具ではなくて、白杖の使い方を、もう一度訓練 をしていただきました。
 市の方から白杖はちゃんと授与されているそうですけど、握り方さえも訓練は受けてい なかったそうなので、いま一生懸命訓練をしていただいているところです。そのように、 昔からの患者さんでももう一度症例を見直し、何かしていなかったことがなかったか確認 をするというのも、反省も含めてですけど、大事なことだと思います。
 次に症例3ですけども、これは同名半盲を持つ視野障害の患者さんで、74歳の方です。 この方は10年前に、右の皮質下出血ということで、視野障害を発生しておりました。 色々な医療機関を行かれたのですが、これは治りませんよということで、患者さんも諦め て完璧に放置をされていました。しかし、最近以前よりも視力障害が進行したために、歩 けなくなってきました。治らないなら仕方ないので、身体障害者手帳でももらいましょう かということで、手帳交付目的で当院にいらっしゃった方です。
 この方の初診時の視力は、右が0.5、左は0.15pということで、左視力は悪く、 左の同名半盲もございましたけど、ここでまずロービジョンケアをする前に、何か自分が 出来ることはないだろうかと考えました。この左の0.15なんですが、これは結構白内 障も強いなと思いましたので、よく患者さんにお話して、もしかしたら視力が上がるかも しれないのでということで、白内障の手術をさせていただきました。
 その結果、左眼は1.0に上がりました。しかし、やはり同名半盲は残ってしまいます。 そこでどうしたかというと、ここに膜プリズムをつけさせていただきまして、視野も拡大 するという方法を用いました。この方の場合は、非常に喜んでいただきまして、涙が出る ほどうれしいと言ってくれました。
 ただここで一つ問題は、ロービジョンの患者さんに対して、白内障の手術はどういうふ うにしたらいいかと、いつも悩んでしまうところです。これは先生方が、特に開業をして いて手術をするということになると、必ず視力が上がっていただける方じゃない場合、非 常にいつも迷うところですよね。網膜色素変性症の患者さんがいるけど、手術した方がい いのかどうか、患者さんからもよく、主治医の意見がばらばらだけど、どうしたらいいと 思うかご意見を伺いたいという手紙をいただくことがあります。患者さんも迷うし、私達 も迷います。
 結局、どの程度視力回復が出来るのかということですね。本当に視力を回復する見込み があるのかどうか、そして手術をさせていただく私達の立場からいうと、ただの白内障だ けで型がつかないような、瞳孔が癒着しているとか、視神経萎縮も合併しているとか、難 症例も多いわけです。こういう症例に手をつけてしまっていいかどうかです。
 また患者さんは手術をするということになると、どんなに術前にお話していても、なん とかなるんじゃないかと、過度な期待を抱いてしまいます。とにかく大事なことというの は、患者さんと綿密に、手術の前にお話をさせていただくことに尽きると思うんですね。
 もう一つ大事なことは、術後の屈折度数をどのように設定するかという問題が出てまい ります。アメリカの白内障屈折矯正学会の『アイワード』という雑誌がありますけど、そ こでこういう例が出ています。右眼が指数弁、左眼が−11Dで0.1の両眼の黄斑変性 症の患者さんの左眼の白内障手術に対して、どういう術後の屈折度数を設定するかという ことです。
 正視合わせをするか、中庸をとって−4から6Dにするか、あるいは10D以上にする か、いろんな考え方があると思います。私は−4から6D位にするのかなと思っていたら、 実は違いまして、回答は−10D以上にしたらいいんじゃないかというんですね。例えば −11Dの人ですと、顔を近づけて見ることに非常に慣れているから、その方を正視にし てしまったりすると、近くを見る時にかなりのプラスレンズが必要になります。そうなっ てくると、両眼の黄斑変性ですから、周辺部の残存視野で見ているので、それだけ拡大す ると術後残存視野を使えなくなるんじゃないかというのが、この回答の理由になります。
 この答は、本当は何がいいのか断言できませんが、ロービジョンの患者さんを手術する 場合には、術後の生活をどうしたらいいのか、全くメガネをかけない状態にして、遠くを 見てみたいのか、その時には、必ず近くを見る時には、プラスレンズがいりますよという こともお話しないといけない訳です。スタンド型の拡大鏡や拡大読書器を裸眼で見たいの であれば、−4Dくらいに合わせればいいですし、裸眼で新聞を見たいなら、−5Dくら いにしてあげるというようなことですね。いずれにしても、かなりきちっとした綿密な話 し合いをせずにやると、非常にお互いに困った状況になると思います。
 次の症例4ですが、この患者さんは強度近視で、両眼とも他の先生のところで白内障の 手術が終わっている方です。どうしても字が右上がりになってしまうという訴えです。こ の患者さんには、罫プレートを使ってみたらどうかというお話をしたんです。この方も昔 の強度近視の時の慣れというんでしょうか、とにかく顔を近づけて見てしまいまして、本 当はプラス3くらいのレンズが近見で必要なんですが、昔のくせで、それがお分かりにな っていないんですね。
 ですから、これからお話しますが、便利グッズはたくさんあるんですが、これがあるん だよとただ紹介し与えるだけではなくて、本当にこの人は使えるのかどうかまで、見てあ げる必要があります。この方の場合は、近づけたのではうまくいきませんよということで、 プラスレンズを処方してあげました。そうしますときちんとした作業距離が得られて、こ ういうふうにして罫プレートを使って書いてくださいということをお話いたしました。つ まり、作業距離を保てる近見レンズの処方まで、日常生活グッズの紹介と一緒に行うとい うことが必要になります。
 さて、日常生活グッズについてちょっとお話させていただきます。これは音声時計で、 音声で時間を教えてくれます。こちらは小銭入れで、50円玉・100円玉とかそれぞれ の硬貨がきちっと、揃えられるようになっています。こちらが紙幣用で、千円札・5千円 札・1万円札、すべてお札の長さが違うことで、患者さんが分別できるように工夫されて います。
 これは調理器具です。1回だけパタンと倒せば、1回量のお醤油が出る器械、これは私 も欲しいなと思うんですけど、そういうアイディア商品です。これは黒いまな板ですが、 例えば、大根を切る時には、黒いまな板の上で切りましょう。緑のピーマンを切る時には、 この裏の白い方の面を使って、ピーマンを切りましょう。そういうちょっとした工夫によ って、患者さんは手を切ることも少なくなると思います。
 これは音声で教えてくれる電磁調理器です。こちらの方は裁縫用具です。眼の不自由な 方は糸通しというものが大変ですから、色々な簡単に糸を通す器械が売られています。こ れはメジャーで、最初の10cmは1cmごとのメモリ、ここから後は10cmごとのメ モリというふうに工夫されたロータリーメジャーもあります。これらはヘルスケア用品で すけど、音声で体重を教えてくれるものです。こんなものがあると私自身は困るんです が・・・。
 これは物知りトークといいまして、ここの缶のところに名札がついています。ここをピ ッと当てることによって、この缶の情報、お値段とかそういうものをこの器械が読み取っ て、音で教えてくれるというものです。
 ところで、今まで色々お話をしてきました。以上の事より開業医としてロービジョンケ アを行う時に、どんなことがメリットで、どんなことがディメリットになるのかというこ とをお話します。メリットで一番何が有利かといいますと、先程も少し触れましたが、と にかく開業の眼科の先生というのは、その患者さんのかかりつけ医であることです。
 ですから、患者さんの性格、どのくらいの理解度があるか、患者さんが何を欲したいの か、どういう方達が周りにいるのか、例えばいくら患者さんがロービジョンケアを求めて いても、周りの家族が否定的である場合もあります。また、介護は誰がしてくれるか、そ ういうことはすべて、かかりつけ医であれば認知していることです。この辺は開業医とし て、ロービジョンケアを行っていく上で、患者さんのニーズを聞き出す上でも非常に有利 な面だと思います。
 また、視覚補助具を処方する際にも日常生活、この人が何をいつもしているのかという ことです。仕事をしているのか、どんな日常生活をしていて、何が欲しいんですかという ことです。開業医であれば、日常生活に即した処方が出来、いつでも貸し出しや状況によ る変更は可能です。
 私のところでは、例えば膜プリズムなどを貸し出しをする際「ちょっと先生、これ貸して。 いま家に帰って車をバックしてくるから。これでバックが出来るかどうか試して、また持 ってくるよ」と言って、午前中の患者さんが試した後、午後また来たりすることもありま す。お天気によって遮光眼鏡の色なども違ってきますが、その時のお天気や色々な状況に よって、今日は何色、明日は何色というふうに貸し出しをいろいろと変更しながら処方を 決めています。
 しかしながら、ディメリットですけど、これは本当にたくさんあります。私がロービジ ョンケアを始めようと思ったのは、はじめにライトハウスがきっかけと言いましたが、あ のように患者さんを取り囲む人間の輪、ネットワークが作れるかどうかということなんで す。実際ご存知のようにロービジョンケアは、保険診療の点数には入ってまいりません。 ですから、ロービジョンの患者さんを診たからといって、点数が高くなるわけではないの です。そのために専属スタッフを雇ったり、たくさんの視覚補助具を十分に取り揃えるこ とは、普通の開業の先生では、金銭的には全くプラスにならないと思うんですよね。
 一番の問題は、普通の患者さんを診る忙しい外来の中で、どうやってそれだけの時間を かけて、ロービジョンの方と接していくかという時間配分の問題です。即ち、看護師、O RT、ソーシャルワーカー、歩行訓練士といった他の職業の方とうまくネットワークづく りというのが出来ますかというと非常に難しい訳です。
 では、このメリットとディメリットを組み合わせると、どういう結論になるかです。開 業医がロービジョンにどうやって関わっていくかということですが、まず原因疾患の治療 は継続しつつ、患者さんの訴えをよく聞いて、その人が何を困っているのか、ニーズを見 極めていただきたいと思います。あなたは私の範囲じゃないんだからと言って突き放さな いで、やはり何かお役に立てることはあるわけですから。
 そして、その方の日常生活の不自由さを、開業医の先生なりに評価していただいて、ど うすればその不自由さが少しでも解決出来るのかを提示する、つまり自分で処方しなくて も、「あなたの場合は、こういう器械がいいかもしれませんよ。こういう施設や機関に行 くと、いい先生がいてアドバイスしてくれるかもしれませんよ」という情報だけを提示す るだけでも、私は開業医として、ロービジョンに関わっていく者として、非常に大切だと 思います。
 予後や将来への展望、家族への関わり、誰があなたのめんどうをみていくのか。この方 にはめんどうをみる人がいないと思ったら、どういう方向で進めてあげればいいのか、そ の辺をよく見極めてあげるということが、開業医の非常に必要なところだと思います。場 合によっては、適切な時期に紹介をしていただくということになります。
 まとめますと、かかりつけ医としてのメリットを活用して、開業医としての自分に出来 る最大限を尽くすことが、ロービジョンへのベストな関わり方だなというのが私自身の結 論であります。何もロービジョンケアをするのが、視覚補助具を処方することだけではな いです。「ロービジョンというものがありますよ。こういうものがあって役に立つかもし れませんよ」ということを医学的な根拠に基づいて、例えば遮光レンズの重要性を教える こともそうですが、動機付けをするだけでも、立派な関わり方だと思います。
 スライドに示したのは、お風呂のマットです。このお風呂の床に緑色のマットを置くか、 赤を置くか、黄色を置くか、青を置くか、これによって視覚障害の患者さんは何色のマッ トのとき、お風呂に入りやすいかと、色によってコントラスト感度の違いがあること、こ ういった生活上のことをアドバイスをするのが大切です。本来これは眼科医の仕事ではない かもしれませんが、視覚補助に役立つものはなんでも取り入れよう、教えてあげようとい う意識、発想が大事だと思うのです。
 これはJRPSさんからいただいたカレンダーですが、これもちょっと普通のカレンダ ーと違いますよね。何故黒地に白で書いてあるんでしょうか。こうやると、カレンダーが とても見やすいでしょう、と患者さんに教えてあげることも、コントラストのことを説明 する上でも、非常に重要になると思います。こういうちょっとしたアイディアを提供して あげることが、すごく大切です。
 また、情報提供も重要です。そういう眼で見ると、お役所から出ているいろんなところ に、視覚障害の情報というのはたくさん書いてあります。こういうのもぜひ患者さんに提 供していく、この提供だけでも患者さんには喜ばれます。そして患者さんの団体の会も紹 介してあげてください。
 色素変性症ですと、ひまわりの会、これは私が顧問をさせていただいておりますけど、 今日お世話になっているJRPSの会ですね。こういう機関誌が出ておりますけど、これ を読ませていただくと、私達眼科医も知らないような非常に高度な内容が書いてあるわけ なので、自分のところの患者さんでも、こういう会に入会していただくということは、 色々な意味でメリットがあると思っています。
 さて、まとめに入ります。ロービジョンケアシステムというのは、色々あると思います。 例えば、ロービジョンを専門にやっている開業医の先生とか、あるいはちょっと中小の病 院であれば、まず基礎的なロービジョンケアというのはしなければいけません。眼科医・ 看護師さんだけではなくて、視能訓練士の方や、メディカルソーシャルワーカーの方にも 色々とご協力をいただいてやるべきです。
 それよりももうちょっと高度になってきますと、今度はその方々にプラスしまして、歩 行訓練士や日常生活指導員、そして教員の方にもお手伝いいただいて、より高いアドバン スというところを目指しましょう。そしてもっと高度になると、国立身体障害者リハビリ テーションセンターのレベルになるわけです。そうなりますと更に産業医の先生や保健師、 理学療法士の先生ですね。そういう方も加わって、先端的なロービジョンケアを行ってい くことになります。
 では開業医として眼科医は、この中のどこに入ってくるのでしょうか。これはプライマ リロービジョンケアという考え方です。これは眼科医オンリーであっても、先程お話した ようなちょっとした関わり合いを持つということで、十分ロービジョンというものに関わ っていくということが可能でありますし、開業医としてのメリットが生かせる非常にいい 領域です。眼科医一人でもロービジョンは可能であるというのが、今回の講演の私の結論 です。
 最後に今後の展望です。ロービジョンという言葉は、眼科の医療の中では非常に定着し てきまして、私が初めてライトハウスに行った時とは比べ物になりません。それは非常に うれしいことなんですが、他科の先生方や一般の方々には、まだその重要性というものが 認識出来ていないと思います。今回この講演会のことを、ある外科の先生に申し上げたら 「何それ、ロービジョンってハイビジョンの反対?」と言われてしまいました。
 即ち、ロービジョンという言葉や概念は広く浸透しているとはいえないので、そういう 方々に今後、重要性を認識していただかなければいけません。ロービジョンケアは、保険 診療として現在認められていないのも、なかなか発展をしない一つの理由だと思います。 やはり市民権を得るという意味でも、今後、保険診療として認められることを望んでいま す。
 いま私は、読売新聞の方で“ちば健康塾”というのを1月25日から木曜日ごとに連載 しています。4月26日には、ぜひこのロービジョンというものを皆さんに知っていただ こうと思いまして、ロービジョンについて書こうと思います。木曜日ごとで掲載していま すので、皆様にもぜひ読んでいただければと思います。ちなみに、今回の講演会について も読売新聞さんの方で宣伝をし、新聞に載せてくれました。
 まとめに入らせていただきます。ロービジョンの定義やロービジョンケアに対する姿勢 について、私の私見も含め、述べさせていただきました。開業医として、ロービジョンケ アを行っていく上で、必要と思われる事柄について解説いたしました。開業医が、実際に ロービジョンケアを行うに際し、問題となる点を明らかにいたしました。各開業医の先生 には、各開業医先生なりの、それぞれのロービジョンケアの取り組み方があってよろしい と思います。
 例えば、プライマリロービジョンケアということで、眼科の先生が一人であっても、関 わっていくことが十分可能であります。そしてロービジョン者に対して、かかりつけ医と してのメリットを最大限に活用することで、ロービジョンケアは「開業医の先生から始ま る」といっても過言ではございません。ロービジョンケアが、保険診療として正当なもの として評価されることが、今後望まれ、そして、他科の先生方や一般の方々への普及浸透 が今後の課題であると思います。どうも本日はご清聴ありがとうございました。


目次へ戻る次のページへ

All Rights Reserved Copyright (C) JRPS-Chiba-2003