あぁるぴぃ広島 15号
■情報コーナー■
1 「拡大読書器をご存知ですか?」その4
「そして次にきちんと使うこと」
京都府 森田茂樹
最初にいつもお話していますがこれは私、森田の独断と偏見の考え、意見です。
今回特にそのことを強調させていただきます。
といいますのは病院でロービジョンケアを始めて一、二年たった頃、日本のロービ
ジョンケアの世界で主流をなしていると思われる補助具の選び方、使い方を説明した
本を読みました。本当に驚きました。日頃私が患者さんにご説明していたこととまっ
たく逆のことが書いてありました。でも私はその書いてあることにはまったく納得出
来ませんでした。それらは間違っている、そんな考え方で補助具を選べば、使えば眼
の疲労を避けられない。絶対私の考え方のほうが眼の疲労を随分減らせる、押さえ込
めると思いました。
ですからこれは日本のロービジョンケアの世界で公式に認知され
た考え方ではない部分が多分多くあると思います。ご了承ください。
まず、きちんと、又はうまく使えていない人の使い方、つまり失敗している人
の使い方を挙げてみます。
最も能力の高い、最も眼の可能性を広げる事の出来る可動
(X-Y)テーブルつきの機種を選んだという前提でのお話です。
(1)なにせ、すべての状況で見過ぎ、にらみ過ぎの状態に陥っている。
眼が悪くなる前はもっともっとズボラに見ていたのに、文章を読む時は大体、頭八
割、眼二割ぐらいに、結構いい加減にしか見ずに頭で判断で読んでいたのに、眼が悪
くなるとほとんどの人が頭を使わなくなり、眼 十割で読むようになる。すべての画
数(かくすう)を確かめ、最後のハネも確かめる、こんな読み方になっている。読む
というよりにらむという状態になってしまっている。
(1)今までの「景色」にこだわり、白黒反転を使おうとしない。
そのため、大変見にくい状態になってしまっている。文字を見にくい為に、しっか
り見ようとしてにらんでしまっている。
(1)今までどおり、複数又はそれ以上の数の文字が視野に入っていないと文章とし
て読めないと思い込み、決め付けて文字を限界に近く、又は限界を超えて小さくして
沢山の文字を画面に入れている。詰め込んでいる。
例えば新聞の一段を画面に収めようとして、少しでも多くの文字を画面に収めよ
うとして。その結果、大変又は極端に見にくくなった文字をしっかり見ようとしてに
らんでしまっている。
(1)可動(X-Y)テーブルをストッパーで止めてしまって使わずに本や新聞などを
手で直接持って動かしている。
結果、不規則に揺れ動いている見にくい文字をしっかり見ようとしてにらんでし
まっている。
(1)逆に可動(X-Y)テーブルは使っているがテーブルの上の本、新聞などを両手
で押さえて、両手を使ってしまい、テーブルをコントロール出来ずグラグラ 動かし
てしまっている。
そして、その見にくい文字をしっかり見ようとにらんでしまっている。
(1)設置状態が悪い。
照明、窓からの光などが画面にまともに入っていたり、機器を高過ぎたり、低過ぎ
たりする置き方をしている。又、照明が必要な機器に照明をつけていない。
結果、見にくい文字をにらんでしまっている。
(1)見るもの、書くもの、やることにあわせたその都度の調節をしていない。
営業マンが「一番いい状態にあわせておきましたから」とか、本来どんどん動かし
て使う部分であるところをあきれる程、無知な営業マンから「ここは動かすと調整が
狂ってしまうから絶対動かしてはいけない」といわれてその言葉を頭から信じて、ほ
とんど必要な調整、つまりダイヤル、スイッチを動かさずに使用し、見にくい状態で
使い見にくい文字をにらんでしまっている。
一体誰の拡大読書器なのでしょう。
などなど、本当にたくさんの人が私に言わせていただくとわけのわからない理由
で自ら見にくい、見えにくい状態にしてそれらをしっかり見ようとして見つめて
にらんでしまい、その結果「眼が疲れるから」「頭痛がするから」「ぐらぐらして眼
が回って気分が悪くなるから」と、まだ人によっては十分に読み書きその他の様々な
ことを楽しむことが出来る眼の能力を持ちながら、機器の使用を投げ出し諦めて、
せっかくある眼の能力を、ないのと同様の生活を送っておられるのです。本当にもっ
たいない悔しい話です。 そして、20万円もの税金を使って入手した機器を簡単に
投げ出すのは無責任だと思います。障害者である前に大人であり社会人であるはずで
す。
思い切って先入観を捨てる勇気を、自分の常識を疑う勇気を、今まで意識的、無意
識的に否定し退けてきた方法を試して見る勇気を持ってためしていただければ、今ま
でうまく出来なかった読み書き、そのほかが案外、またはあきれるほど簡単に出来る
かもしれません。
では一体どうすればよいのか。それは上の「失敗している人の使い方」の逆の使い
方をすればいいのです。何も大変なことではありません。あまり簡単すぎて拍子抜け
されるかも知れない程のことなのです。
以前、私の近所に「本を読みたくて」と拡大読書器」を入手された77歳のご婦人
が「1、2ページが限界だ、それ以上続けると頭痛がして眼が回り気分が悪くなって
しまい困っている」といっておられるのを知り、拙宅に来ていただき「森田流」をご
説明しました。そのご婦人は翌日から毎日1、2時間づつ読書をたのしんでおられま
す。その後婦人はこうおっしゃっています。「何もたいしたことを教わったつもりは
ない、何も大層なことを聞いた覚えは無い。でもなぜか出来るようになった。」と。
本当に嬉しい言葉です。
次回は「より楽に使うための小物の力」をお送りします。
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