中国四国ブロック研修会報告
2023年 『中国四国ブロック研修会In広島』 報告
2014年以来の広島県開催となった「中国四国地区リーダー研修会」を、新型コロナにより3年間の中止を経て、今年度、多くの方々のご協力のもと『中国四国ブロック研修会』と名称を変えて次のとおり開催しました。
期日 10月14日(土曜)、15日(日曜)
会場 ホテル広島サンプラザ
《開催趣旨》
3年ぶりに中国・四国地区の網膜色素変性症協会の会員が一同に会し、網膜色素変性及びその類縁疾患等の社会への啓発活動の必要性を確認し合うとともに、グループ別体験・交流会やロービジョンケア等を学び、情報交換を行うことで、生活の質の向上と治療法の確立を目指して本研修会を開催する。
合わせて、会員のみならず多くの患者や家族等にもお知らせし、さらなる患者の自立を促すとともに組織の拡大に取り組む。
《主な内容》
1日目
●講演 「視覚障害者のICT活用」
講師 氏間和仁さん 広島大学大学院人間社会科学研究科 准教授
●グループ別体験・交流会
テーマ別に10のグループに分かれ、前後半それぞれ2回ずつ実施
●懇親会
2日目
●各協会「組織運営の取り組み」、本部の取り組み
●講演 「生活を豊かにするヒント ロービジョンケア」
講師 辻 拓也さん つじ眼科 院長 (久留米市)
久留米大学医学部眼科学講座 非常勤講師
日本パラスポーツ協会 パラスポーツ医
《参加者数》
●広島県内の参加者(同行者を含む) 39人
●県外からの参加者(同行者を含む) 42人
※2日目講演会の一般受講者 4人
●講師・助言者 11人
●ボランティア 24人
(合計 120人)
■「グループ別体験・交流会」の報告と講師・助言者のコメント
(参加人数には講師・助言者を含みます)
1 文字認識読み上げアプリ体験
参加人数 前半6名、後半6名
和気藹々と体験交流ができました。
アプリとしては『Seeing A I』『Sullivan+』を体験していただきました。体験者の状況としては、iPhoneをまだ手にしていない人、持っているけどアプリを入れていない人、入れているけど使っていない人、使っている人と様々でした。
まず実際に読み上げのデモンストレーションを行ない、次いで体験者にアプリを使い文字を読ませる操作をしてもらいました。時間内では十分なサポートとはいきませんでしたが、アプリがいかに役立つかは納得してもらえたようです。
また、インターネットに接続して使う使わないにも関心があったようです。
講師のコメント
今回は、貴重な体験をさせて頂いてありがとうございました。進行役のフォローもあり、無事に終わらせて頂きました。
今回の研修とても良かったです。今後ともよろしくお願い致します。
2 読み上げ読書器体験
参加人数 前半9名、後半10名
今回、株式会社システムギアビジョンから、オーカムマイリーダー2、天使眼エンジェルアイスマートリーダー、エンジェルビジョンデスクトップリーダーをそれぞれ2台ずつ持参していただき、説明を聞きながら、触って体験していただきました。
特に、エンジェルビジョンデスクトップリーダーは、直前の氏間先生の講演でお話が出たのもあり、参加者の皆さん興味深く体験されていました。
少人数でじっくり体験できて良かったと感想をいただきました。
講師のコメント
皆様に実際の機器に触れて頂くことができ、とてもうれしく思います。読み上げ読書器の存在はご存じだったが、実際に触れてみて初めてその利便性に気づいた方もおられ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
また、氏間先生に講演の際に機器について触れて頂いたことも、その後の体験会でお話がしやすくなったのでとてもありがたかったです。
3 白杖体験
参加人数 前半12名(後半なし)
自己紹介の後、助言者2名により白杖の大切さ、種類、長さ、石突などの説明をうけました。
歩行の際の白杖の持ち方、振り方、ガイドさんとの歩行の方法、注意点など助言がありました。
次に、皆さんで階段歩行を1階から2階まで、上りは杖を短く下りは長めに手すりを持ちながらカチカチと体験しました。緊張している様子が伝わってきました。
最後に質問コーナーでは、杖はどこで購入したらよいか、歩行訓練はどこで受けられるのかなど多々質問がありました。
ちなみに杖をまだ持っておられない方の参加もありました。体験を機に購入するそうです。
和気あいあいと良いムードで終わる事が出来て良かったと思いました。
講師のコメント
今回、誘導歩行や階段昇降の体験を行いましたが、参加人数に対してサポート体制がギリギリでした。
たまたまご家族や、手の空いていたボランティアさんがいてくださったので、なんとか怪我なく実技を行うことができましたが、階段など危険な場所もあるので、安全確保をするための人員配置は必要と考えます。
4 アロマ体験
参加人数 前半7名、後半10名
1回目は3人男性がおられ、アロマに興味を持たれたのかなと思いました。2回目は3組のペアがおられました。皆さん仲良く作られていたように感じました。
三種類の香りの中から好みの香りを選び、ブレンドして作りました。部屋の中がいい香りがしていましたよ。
それぞれ、自宅に帰られても作られたアロマの香りがするたび、広島を思い出していただけると嬉しいです。
講師のコメント
この度は触覚、嗅覚で体験できる「灯さないアロマキャンドル」を作成しました。
みなさんに楽しんでいただけました。
障害者、健常者という枠を越えて、フラットに接することができたと思っています。
私にとって学び多く、とても貴重で前向きで素敵な機会を与えて頂きました。
言葉や想いが伝われば、それが素敵な結果になりました!最高な出会いでした。
5 ユース&ミドル世代の交流
参加人数(前半なし) 後半7名
今回は、30代 40代の当事者が参加下さいました。全員弱視で、それぞれ仕事(鍼灸師、事務職、医療福祉職など)や資格取得を目指して勉強中であることを共有し、交流に入りました。
支援アプリBe My Eyesの新機能Be My AIの話題では、相手に気を遣わなくて済む利点があると感じました。
同時に、ボランティアさん、AIそれぞれの利点を活かしながら使い分けるとより便利だと思いました。
次に職場での工夫についての話題では、自分の力と同僚の力、支援ツールの力を借りる場面があることを共有しました。
それぞれの力をうまく使うためにも、周囲とのコミュニケーションが重要ですね。助言者の西川ミドル部会長より、『同行援護のように業務中の当事者をサポートする役割を置く企業もある』と情報提供もありました。
今回、現役世代がどの様に仕事をしているのかを知り、同世代の仲間と顔を合わせられたことがとても有意義でした。
前に進む力と支えを得たように思います。全国の同世代と交流できるユース部会、ミドル部会が、さらに多くの会員さんと活発な部会になるよう願います。
(助言者のミドル部会長 西川さんのコメントは、ブロック研修会報告の最後に掲載しています。)
6 移動端末とアプリの話
参加人数 前半10名、後半12名
初心者から詳しい方までいらっしゃるようでした。アイホンはアイホンSEがオススメとのことです。
初心者はまずナビアプリに慣れること。見えるうちからやってみて、そのくせを知るのもいい。
アイナビ、Be My Eyes、あしらせ、NaviLens(ナビレンス)、Eyeco Supportとかの話題がありました。
また、スマホを胸の位置で保持するために首からぶら下げるポーチのような物があり便利だそうです。
会場にもうひとつ交流グループがあり、こちらの話し声が聞きづらかったです。
助言者のコメント
この度は,お招きをいただきありがとうございます。
分科会に参加させていただき,みなさまのスマートフォンの活用の様子などに触れることができ,とても参考になりました。
みなさん,それぞれにご自身のスマホの慣れと,目的に応じてアプリを使い分けておられることに共感を持って拝聴しておりました。
ありがとうございました。
7 パソコンとアプリの話
参加人数 前半9名(後半なし)
自己紹介のあと、「パソコンの設定や高知システムのアプリケーションの活用」などについて、情報や活用方法、疑問点など順々に意見発表してもらいました。
個々のアプリの具体的な操作方法の質問や、困った時のサポートの受け方など、お互いに交流したり助言者からの回答をいただいたりして、大変盛り上がった交流となりました。
また、一方ではまだ目で見てパソコン操作を行なっている人も複数居られ、ローピジョンならではのパソコンの活用などの話もありました。
「さらに視力が低下した時のために、とても参考になりました。」と言う感想もありました。
助言者のコメント
参加者全員が声を発することができ、困っていることなどの意見交換ができてよかったと思っています。
8 スマートスピーカーの話
参加人数(前半なし) 後半9名
スマートスピーカーを持っている人、持っていない人、4ヶ月モニターとして使ったことがある人の参加で、スピーカーを持っている人は
GoogleHomeとAlexaが半々でした。
スピーカーに聞いているのは、時間・天気予報・ラジオを聞く・ニュース・音楽。
ゲームは、しりとり・なぞなぞ・音声の迷路などもある。
自分が2階に居て1階に家族がいない時に、スピーカーからラジオを流すようにしている。在宅のアピールと防犯になる。
帰宅した時に「ただいま」と言うと「おかえりなさい」と優しくいってくれるのが癒される。
離れて住んでいる娘から、室温が高くなっているのでエアコンをつけたほうがいいと電話がかかってびっくりした。
スマートリモコンを設置してエアコンの温度設定が自分でできるようになった。
助言者のコメント
スマートスピーカーで何ができるのかを知る方法として、「何ができるの?」と聞くとか、Alexaはメールアドレスを登録していれば、スキルという使い方解説のメールが毎週届くことの紹介がありました。
9 日常生活用具の話
参加人数(前半なし) 後半11名
日常生活用具の利用状況を伺いましたところ、日頃使われているのが、プレクストーク、プレクストークリンクポケット、PCトーカー、センスプレイヤー、などを使われているとのことでした。
困っていることとして、自分たちのニーズにあった商品の給付が受けられない。暗所視支援眼鏡の給付が受けられない自治体があるとのことでした。
助言者のコメント
新しい便利な商品が次々と発売されています。しかし各自治体によって給付対象商品、給付要件が違っています。
そこで、当事者が当事者間で情報を共有し各自治体に働きかけるのが良いと思われます。
10 おしゃべりサロン
参加人数 前半13名(後半無し)
ガイドさんのことが多かった。時間が少ないとか、同行援護と移動支援の違いをもう少し分かりやすく教えてほしいとか。
アイホンを教えてほしい。点字ブロックを敷設してほしい。音の信号機もありがたいが「青になりました。赤です。」など短い言葉で教えてくれる方が良い。
道路脇の側溝に落ちそう。など、たくさんの意見が出されました。
助言者のコメント
(広島中央特別支援学校の細川義之さんに助言いただくとともに、グループ別体験・交流会全般にわたっての講評をしていただきました。
全
般にわたってお寄せいただいたコメントを紹介します。)
体験活動は、みんなが自主的に参加ができ、他人ごとではなく自分事で体験できたのではないかと思います。
講義を聞くだけでは得ることのできなかった仲間づくりもでき、多分全員が少なくとも一つ以上は知らなかったことを知ることができたのではないでしょうか。
視覚障害者にとって、移動を伴う体験会の企画は、ボランティアの皆さんのおかげでなんとか成り立ったと思います。その点今回の体験会はボランティアの皆さんにとても助けられ、有意義なものになっていました。
人とつながる、挑戦してみるということの重要性が、今回の体験会で参加者に再認識されたのではないでしょうか。
QOL向上で、幸せに暮らしていける視覚障害者が増えることを願っています。
今回の研修会、準備から運営までたいへんお疲れさまでした。一部の参加ですが、とてもよい会になっていました。お招きいただきありがとうございました。