受賞テーマ:「EYS遺伝子変異が引き起こす網膜色素変性症のメカニズムの解明と創薬戦略の構築」
今回、「EYS遺伝子変異が引き起こす網膜色素変性症のメカニズムの解明と創薬戦略の構築」というテーマで研究助成をいただくことになり誠にありがとうございました。たいへん光栄に思っております。
私は網膜の形作りについて、どのような遺伝子やタンパク質が関わって進むのか基礎研究を進めてきました。基礎というのは、医学部の研究において臨床研究に対して呼ばれることが多いのですが、病気がどうして起こるのか? それを理解するには、まず正常の状態をきちんと理解することが大切だ、という考えのもとに行なわれている研究と言えるかと思います。
私たちは、網膜や眼がどのようにしてできてくるのか、ということを、iPSを含む細胞や、マウス、時にはサルを用いて研究を進めてきました。そしてこの数年間は、網膜がいったん作り上げられたのち、それを維持する機構について遺伝子の働きから理解しようという研究を中心にしています。
維持の機構がうまく働かなくなった状態が網膜変性であり、その変性に特定の遺伝子の変異が原因になっているのが網膜色素変性症であると思います。私たちは、最も頻度が高く変異を起こしているEYS遺伝子に注目し研究を進めようと計画していますが、EYS遺伝子に変異が起こると一度できた網膜がどうして維持されないのか、他の遺伝子やタンパク質への影響、あるいは微細な構造の変化をiPS、動物モデルを駆使して検討し、明らかにすることが目標です。
疾患研究は基礎研究者だけでは進みません。臨床の先生方のご協力はもちろん、皆さまのご協力もとても重要です。例えばiPS細胞を作るために血液をご提供いただき研究を進めていますが、こうした直接的な例のみならず、研究が進むことを期待してくださる方々の熱意は私たちに大きな力を与えてくれます。この3者が力を出してこそ、迅速に、そして着実に研究が進み、創薬につなげることができると信じています。
精一杯頑張って研究を進めていきます。どうぞよろしくお願いいたします。