研究推進委員会(Wings)通信(第12回)
■Wings研究者インタビュー 第9回
千葉大学山本修一先生に聞く
~経皮膚電気刺激治療の臨床試験計画と患者レジストリー構築の可能性について~
医学部附属病院の病院長として多忙を極める山本先生を訪ね、会議の合間に、先生が計画されている経皮膚電気刺激の医師主導臨床試験等について伺いました。
問:経角膜電気刺激はすでにドイツでは商品化されていると聞きましたが、いったいどのようなものなのでしょうか。
答:日本では以前から大阪大・森本先生がコンタクトレンズ型電極を用いる経角膜電気刺激治療の研究をされています。動物実験では、電気刺激により網膜細胞からインスリン様成長因子という神経栄養因子の一種が分泌されることが示されました。これが網膜神経節細胞に作用して視機能を改善すると考えられています。ドイツ方式では電極を結膜に接触させますが、千葉大方式では目の周りの皮膚に電極を張り付けます。効果が確認されれば、自宅でも簡単にできるというメリットがあります。
問:臨床試験の概要を教えていただけませんか。
答:すでにPMDAとの調整も済んで、この7月から医師主導臨床試験をスタートします。まず、10名の被験者で安全性の確認を行ないます。その結果を見て最適と思われる有効性判定基準を作り、多施設で有効性を調べるための試験を行ないます。これに2~3年を要すると思います。現在はすべて病院のお金で賄っていますが、将来的には日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受けたいと思っています。
問:最後に、以前、先生が夢とされていたRPの患者レジストリー(臨床所見や遺伝情報を含む患者の登録システム)の構築について伺います。
答:レジストリーを作り、長期間RP患者の自然経過を観察する必要性があることは全国の眼科の先生方の共通の思いです。ただ、問題は、RP患者の病態は多種多様なので数百人程度のレジストリーでは意味をなさない。数千人規模のレジストリーを構築する必要がありますが、その場合、構築に億単位のお金がかかる、また、レジストリーの質を担保するために年間の維持費に2千万円はかかる。どうにか作っても2、3年で途絶えてしまうのでは意味がなく、長期的に運営する必要がありますので莫大な費用がかかります。ただ、AMEDが難病患者のレジストリー作成を支援すると言ってくれています。AMEDが考えているレジストリーは数百人程度の規模だと思いますので、何千人規模のRP患者のレジストリー作成のためには、AMEDを説得できるだけのプランが必要です。まずはレジストリーを厚労省研究班の事業として始める準備を研究班の先生方と進めています。
問:JRPSとしてお手伝いできることはありませんか。
答:物心両面でのご支援をよろしくお願いします。