受賞テーマ:「硝子体投与アプローチからの網膜色素変性の遺伝子治療」
今回、第19回JRPSの研究助成を受賞することができ、誠に光栄に存じます。私の研究テーマは、硝子体投与アプローチからの網膜色素変性の遺伝子治療という内容です。遺伝子治療が開始され25年経ちました。眼科分野でもレーバー先天性黒内障(LCA)に対するAdeno Associated Virus(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療が開始され治療効果を 示しております。本邦では九州大学においてサルのレンチウイルスベクターに神経保護因子の一つであるPigment epithelium-derived factor(PEDF)を組み込み、網膜色素変性に対して 臨床研究がスタートしています。
これまでの網膜色素変性に対する遺伝子治療は網膜下投与で行なわれてきました。理由として、網膜色素変性の疾患部位である視細胞、色素上皮細胞に直接コンタクトでき遺伝子導入しやすいことや、硝子体投与よりも遺伝子導入効率が高いことが挙げられます。しかしながら、網膜下投与では医原性の網膜剥離を作製するため、視機能の低下をもたらし、特に黄斑部の場合視力低下をもたらすことや、網膜剥離が起きた場所にしか遺伝子導入が生じないことなどのデメリットがあります。網膜色素変性の場合、網膜全体に障害が起こるため、硝子体側より網膜全体に遺伝子導入されることが望まれます。
我々は、安全性の高い、硝子体投与による遺伝子治療の構築を目指します。方法としては、硝子体投与にて遺伝子導入可能な新しいタイプのAAVベクターを用いて神経保護因子を発現させて網膜色素変性マウスに対して治療効果を検討します。また、現在サルに対して手術方法を組み合わせた治療法の開発を行なっています。