岩田 岳 先生(独立行政法人国立病院機構東京医療センター)

(感覚器センター)
受賞テーマ:
網膜色素変性の網羅的遺伝子解析と病因・病態機序の解明

網膜色素変性(RP)の多くは遺伝子の変異によって発症することが知られています。今までの解析方法を用いた場合、すでに知られている73種類の原因遺伝子を調べるには時間がかかり、結論が出ない場合さえあります。しかし、この数年間で遺伝子解析の技術革新が起こり、全ての遺伝子配列を調べて病気の原因を数ヶ月で調べられるようになりました。さらに、これまで研究用に利用されてきたこの技術が診断用として利用されるようになり、価格はこの3年間で1/5にまで下がり、今後さらに下がる見込みです。
私たちはこの新しい遺伝子解析の技術を使い、厚生労働省の支援のもと、多くの患者さんとご家族の皆さまのご協力を得て、多数のRPの原因となる遺伝子変異(変化)を解明してきました。この中には日本で初めて発見された遺伝子変異が多数含まれています。これらの新しい変異についてはそれぞれの担当医から論文として発表あるいは投稿されています。
また、これまでに知られていなかった原因遺伝子も発見され、発症のしくみを動物モデルやiPS細胞を使って研究しています。一つの遺伝子でも病気のしくみを解明するためには複数の研究員がさらに数年間かけて研究する必要がありますが、これらの基礎的な研究データは将来の治療に役立つと考えて日々研究を行なっています。
これまでの研究成果が厚生労働省に認められ、さらに今後3年間の研究継続が承認されました。今後は日本臨床視覚電気生理学会や全国の研究拠点と連携させていただきながら、RPを含む遺伝性網膜疾患について、より高い精度とスピードで解析し、日本人のRPの原因遺伝子をさらに明らかにしてゆきたいと考えています。
この遺伝子解析を進めてゆくためには、RPの方々だけではなく、ご両親やご兄弟などのご家族の方々の遺伝子検査のご協力がますます必要です。今までの皆さまのご理解とご協力に感謝するとともに今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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