2017年11月19日、大阪で第12回JRPS網脈絡膜変性フォーラムが開催されました。
5人の講演者のお話がすべて臨床試験に関わる内容で、治療が私たちに届く日が近づいていることの表れと感じました。「治療法が皆無の時代から自分に合った治療法を選択するように変わってきた」との指摘が印象に残りました。たくさんの内容から一部を紹介します。
①網膜色素変性に対する視細胞保護治療(九州大学 池田 康博先生)
視細胞保護のためのPEDF遺伝子治療の臨床研究で安全性を確認した。2018年度から治験を開始する。一方、RPの進行に影響する環境因子として炎症、酸化ストレス、循環障害などが分かってきた。環境因子の計測で進行の予測ができ、またこれらを抑える医薬品で治療ができる。
②網膜細胞移植と再生医療(理化学研究所 万代 道子先生)
iPS細胞由来網膜細胞が移植後に光に応答すること、またRPモデル動物が実際に光を感じるようになることを証明した。RP患者を対象とする臨床試験を2、3年以内に開始したい。最初の試験では光が分かったり、視野が少し広がる程度かもしれないが、段階的に効率を上げていける。
③チャネルロドプシンを用いた視覚再生研究(岩手大学 冨田 浩史先生)
青色光だけに反応するチャネルロドプシン2に代わって、可視光全般に反応する改変チャネル分子の遺伝子を作製した。製薬企業に技術移転して治験を準備中である。ICT技術によってより自然に見える方法を同時に開発している。
④遺伝性網膜疾患 診断から治療へのアプローチ(東京医療センター 藤波 芳先生)
遺伝性網膜疾患に対して、複数のステップで診断から治験導入が進められている。これを推進すべく、東京医療センターに「網膜疾患新規治療導入センター」が新設された。手動弁以下の重度視覚障害患者を対象として、正確な機能評価に基づき最適な治療(臨床試験)が選択できる。
⑤人工網膜による視覚機能の再建 -開発の現状と未来(大阪大学 森本 壮先生)
大阪大学が開発中の人工網膜の臨床研究が修了し、2018年度から治験を開始する。今のところ、ものの位置や動きは分かるが、色や形、それが何であるかは認識できない。今後、音声ガイドで何であるかを教えたり、視野を広げる装置の開発を進めたい。