2018年度RI世界大会報告第1弾
RIWC 2018 in Aucklandの総会は、2月8日(木)、午前9時から午後5時まで、オークランド大学ビジネス・スクールのオーウェン・G/グレン・ビルディング(OGGB)3階 Decima Glenn Room にて開催された。
ファッサーRI会長の挨拶のあと、点呼の確認をするメンバーの選出と承認が行われ、出席者の点呼が行われた。正会員のパキスタン代表が欠席するも、前回と同様、スカイプによる参加が承認された。
引き続き、議長、司会者の選出と承認が行われた後、事務局メンバーのやボランティアメンバーの紹介などの報告事項等があった。
日本からは、金井JRPS理事長および森田国際担当理事が出席した。
本報告では、議題案に沿って、結論だけを簡潔に紹介したい。
(1)歓迎の辞および議題案項目の承認
ファッサーRI会長、ニュージーランド網膜色素変性協会フレイザー・アレキサンダー会長の挨拶に引き続き、事前に各加盟国に送付されていた議案書の目次を、(2)~(10)の項目に整理したことの適否に関して議論検討が行われ、原案が可決された。
(2)2016年台北世界大会議事録の承認(付属文書02-1参照)
議事録は、全会一致で可決、承認された。
(3)活動報告と会計報告(2016年7月~2018年1月)
会長による活動報告(付属文書03-01参照)
常任理事会、経営最高責任者による会計報告(付属文書03-02参照)
会費減免処置による損益処理について(付属文書03-03参照)
2017年度、香港(Retina Hong Kong)より年会費の支払いが困難になったため、割引申請が出された。それとともに、2018年度以降は団体正会員の年会費全額支払えるようにする予算計画も提出されたので、今回は割引申請を承認することとなった。ギリシャ(Hellenic Retina Society Greece)に関しては、前回総会において、すでに割引を承認していたが、その後も、年会費全額の支払いができないため、正会員から連携団体会員に移管となった。また、モロッコは、前回大会で年会費も支払って、候補団体会員に応募すると約束していたが、その後、RIから連絡を取っても無しの礫であるので、運営常任理事会では、モロッコ側が候補団体会員への応募をやめたか、支払いができなくなったためであろうと判断し、連携団体会員への移管とした。
最後に、災害のために大きな被害を受けたプエルトリコへの支援をしたいという会長談話もあった。
会計年度が12月末なので、申し出は12月20日までにすることになった。
活動報告については、ファッサー会長から、会計報告に関しては、担当理事とCEOから説明がなされ、質疑応答の後、全会一致で可決承認された。
(4)管理運営統治組織(付属文書04-1参照)
新たな管理運営統治組織の提案
ファッサー会長は、財政的困難および網膜疾患研究の大きな進展という現実をふまえ、さらに治療法の確立というRIの存在理由である大目的の実現のために、現在のRI規約の全面的な見直しの必要性を訴えられた。見直しの担当を委託された南アフリカのクローデット・メデフィント氏は、とりわけ会費収入の側面から会員資格の見直しに着目した。現状では、高額の年会費を支払っている正会員の権利も十分には守られていないし、RI組織外からの新たなニーズにも対応できていないとして、以下の見直し案が提案された。
従来の会員資格は、
- 団体正会員(Full Membership)
- 候補団体会員(Candidate Membership)
(支払い義務を含め正会員の条件をすべて満たした上、申請から2年で正会員になれる) - 連携団体会員(Associate Membership)
- 友好団体会員(Interest group Membership)
の4種類の類型であったが、これらに加えて
- Bカテゴリーとして凖団体会員資格(Affiliate Membership)
(RI会員としてのすべての基本条件は満たしていないが、RIの活動に賛同し、資金を出しても参加を求めている団体)
を加え、新年度より5つの会員資格を創設するという規約改正案である。
さまざまな質問やわかりにくいなどの疑問が噴出し、議論がなされた。RI規約の改正には、投票総数の3分の2以上の賛成が必要ということを確認し、最終的には満場一致で可決された。
4.2. 規約の中で新しくなった部分
会員資格が5つの種類となったこと。
4.6. 新規約に関する質疑応答(質問部分は省略)
上記で提案された新規約での準会員資格の権利と義務に関する規定は、正会員以外の会員資格についても適用される。このうち、候補会員と連携会員は、RI総会にオブザーバーとしての出席ができるが、投票権はない。この2つの類型の会員は、運営常任委員会の財政担当委員による検討の結果、支払額が決定されるが、割引額は最大50%で、財政状況にふさわしい金額とされる。権利は、支払金額に厳密に応じて配分される。友好団体は、RIの総会に出席できない。また準会員は、Retina Internationalの科学・医療諮問委員会(Scientific and Medical Advisory Board)の主催する大会に参加できない。
さらに、本規約においては、一国から複数の正会員が承認されることはあり得る(質問に対するRI本部による公式回答)。
(5)選挙 (今回は、2017年度までの規約に基づく)
5.1 RIの団体会員の承認について( 付属文書05-1参照)
5.1.1 連携団体会員(Associate members)
5.1.2 友好団体会員(Interested groups)
5.1.3(正会員)候補団体会員(Candidate members)
5.1.4 団体正会員(Full members)
いったん脱退していたカナダ(The Foundation Fighting Blindness, Canada)が、団体正会員に復帰申請を出し、新年度より正会員としての復帰が承認された。また、イラン(Retina Center Iran)からも申請があったが、RIの会員資格に関する規約の条件を満たしていないため、連携団体会員としての参加を認めることになった。アルゼンチン(Retinitis Pigmentosa Foundation Argentina)は、候補団体会員としての申請をしているが、現時点では申請書類が提出されているだけで、支払いがされていないので、7月の支払い期限までに正会員の年会費が振り込まれることを条件として承認された。
したがって、現在の団体正会員は、オーストラリア、ブラジル、フィンランド、フランス、ドイツ、香港、アイスランド、アイルランド、 イタリア、日本、ニュージーランド、ノルウェイ、パキスタン、南アフリカ、スウェーデン、スイス、台湾、英国、米国の19カ国である。
以上、論議を尽くした後、最終案が全会一致で可決承認された。
5.2 RI本部事務局メンバーに関して(付属文書05-2参照)
5.2.1 RI本部運営委員会常任理事について(Management Committee)
前回の5名からドイツとアイスランド代表者が新たに立候補し、以下の7名が立候補しており、満場一致で承認された。
Fraser Alexander (ニュージーランド)、Kristin Halldor Einarsson (アイスランド)
Michael Laengsfeld (ドイツ)、Claudette Medefindt (南アフリカ:副会長)
Caisa Ramshage (スウェーデン)、K. P. Tsang (香港)
Abdullah Yusuf (パキスタン:監事)
5.2.2 RI会長について
常任運営委員会により唯一の立候補者であるクリスチナ・ファッサー氏が指名を受け、続投の意思と方針が述べられた。それを受けて、全会一致で、ファッサー氏を、会長として選出した。
5.3 特別表彰(RIWC2018)
ジーン・ベネット医学博士(米国ペンシルベニア大学)
(網膜の遺伝子治療に関する多大な貢献を評価して:講演はリンクページに)
(6)RI書記局及び本部事務局
(Retina International Secretariat and president’s Office)
6.1 RI経営最高運営責任者による事業報告および事業計画案 (付属文書06-1参照)
6.2 RI書記局及び本部事務局:2018~2020年度事業計画
目的・中期達成目標・最終的成果について (付属文書06-2参照)
運営常任理事会は、経営最高責任者(CEO)と会長により作成された事業報告と2018年から2020年に至る事業計画を全面的に検討した結果、妥当なものとして承認するという報告があった。それを受けて、総会では以下の常任委員会委員を含むWEB担当者たちによる質疑の後、満場一致で承認された。
南アフリカ代表の常任理事、Claudette Medefindtさんから出された質問は、なぜRIの仲間の中で、social media が広がっていかないのか?というものであった。オーストラリアのLeighton Boyd氏は、現在、オーストラリア網膜協会のWEBサイトとソーシャルメディアの見直し中で、両者を連動させることで国際的なサイトにしたい。スイスのStephan Hüsle氏は、RIのWEBサイトは、そもそも使いにくい、アイスランドの常任理事Kristin Halldor Einarsson さんは、使ってみて、さらに会員たちの交流やアクセスが増えるように、改善を進める必要性を主張した。ニュージーランド網膜協会のSue Emiraliさんは、この問題を認識していて、WEBサイトの中でフェイスブックとツイッターをリンクさせ、さらにユースのフェイスブックのページともリンクさせるという工夫をしているという話をされた。
これらの議論を受けて、RIのWEBサイト担当者であり、かつ経営最高責任者(CEO)でもあるAvril Dalyさんは、現在、どうすれば、アクセスしやすく、会員たちにとって有益なWEBサイトに改善できるかの調査に着手したいと答えた。
6.3 RI本部書記局:2019~2020年度予算案 (付属文書06-3参照)
運営常任理事会では、提出された事業計画案および予算案を吟味した上で、滞りなく実行されることを条件として承認するという報告がされた。それを受けて若干の質疑応答があったのち、参加各国の満場一致で、承認された。なお、予算案は付属文書の通りであるが、単位はスイスフランである。米国ドルではないので、注意されたい。
(7) RI世界大会について(Retina International conferences)
7.1 2020年度RI世界大会について
アイスランド網膜色素変性症協会よりの報告(付属文書7-1参照)
詳細は、Retina Iceland作成のプログラムを参照。アイスランド代表がRIWC2020の準備を順調に進めているということを動画とともに説明した。開催時期の秋の季節のことを問われ、一般的にはマイルドであるが、最終的には予測不能であると答えて、会場の笑いを誘った。アイスランド網膜協会会長の挨拶は、コチラです。また、RIWC2020の動画は、こちらです。
なお、アイスランドそのものの情報も含めたRIWC2020の日程等の情報に関しては、本HP上にすでに上げておりますので、「RIWC2020 in Reykjavik (Iceland) 日程に関する1回目のご案内」も参考にしてください。
7.2 2022年度RI世界大会(付属文書7-2参照)
2022年度のRI世界大会には、パキスタンとアイルランドの2カ国から立候補表明があり、パキスタンが、今回敗れた方が次回は自動的に開催国にしてはどうかという提案をした。それには、ほとんどの国が反対をし、毎回立候補が複数あった場合には投票をするということになった。パキスタンは、それらの議論を受けて、2024年に立候補する条件で、今回の立候補を取り下げると表明し、アイルランドのダブリン開催が、満場一致で決定された。
(8). RI本部による広報活動および情報提供活動
8.1 世界網膜の日の世界同時開催
Avril Daly 氏は、WHOを通してグローバルな日にする申請を考予定している。また英国協会のTina Houlihanさんが企画している世界網膜の日関連の地域イベントに、多くの資料類を提供することは、日程的に可能かという質問に対し、承諾された。
8.2 公式WEBサイトによる情報提供(付属文書08-2参照)
Avril DalyさんとFraser Alexander氏がメディア戦略を示し、グローバルな相互コミュニケーションに関する一般的なコメントをされた。
8.3 広報戦略(付属文書08-3参照)
広報閃絡とコミュニケーション戦略に関しては、運営常任理事会で検討した結果、これを承認したという報告があった。それを受けて、総会会員の満場一致で承認された。
(9)RI直轄地域単位活動(Retina International regional sections)
9.1 欧州網膜協会(Retina Europe)の活動
欧州網膜協会の会合をさらに広範囲に展開するという合意がされた。
9.2 Retina Ibelo (ラテンアメリカ協会)
正会員を目指していたチリの協会(FUNDALURP)が中心となって、中南米の網膜疾患患者のための地域国際会議を企画している。ファッサー会長は、スペイン語で、彼らの企画に対する何が重要かというアドバイスをされた。
南アフリカが、地域協会(アフリカ地域協会)を一緒にやる組織への呼びかけを行った。
なお、日本代表として、アジア地域国際協会の創設を課題としていたが、総会では発言を控えた。ただ、同じアジアから来ている香港と台湾代表からは、ぜひ日本が中心となってやって欲しい。その場合、協力は惜しまない、という熱心な誘いを受けた。その手始めとして、2018年9月29日~30日に予定されている「世界網膜の日 in 愛媛」に代表団を送り込みたいという申し出を受けた。
(10) その他(Miscellaneous)
フィンランド網膜協会(Retina Finland)が、網膜疾患患者の病態履歴から調査する研究を、希少性難病研究所(IRDiRC)の協力の元で行っているという報告があった。
ファッサー会長は、関連して欧州希少性視力疾患ネットワーク(ERN)について、言及された。
経営最高責任者でスイス網膜協会(Retina Suisse)のステファン・ハスラー氏は、スイス視覚障碍者中央組合(Swiss central Union of and for the Blind)が、70歳以上の一般人1300人に対して、1人当たり5分から10分の各人の視覚、聴覚等の問題が歩かないかについての聞き取り調査を実施し、その結果を公表していると述べた。その調査によると、10人に1人が視覚に問題を自覚しており、そのうち33人は聴覚にも異常があると自覚している。しかし、視覚障碍者へのサービスがあるということを知っていたのは1300人中たった2名であった。
ニュージーランド網膜協会(Retina New Zealand)のSue Emiraliさんは、若き障害者(視覚障害に限らず、すべてのタイプの障害に対応)たちの交流のための会合を企画している。若者たちに何ができるかは大人は判断できないので、若者たち自身に、健康問題や福祉問題にすいてのグループができるように手助けしたいと述べた。
チリのGustavo氏は、盲導犬が少なく、盲導犬訓練所もない為、同訓練所を立ち上げる新規プロジェクトをを考えていると表明した。これは、最近、盲導犬訓練施設の創設に貢献したという香港のKP Tsang氏の体験談をファッサー会長から聞かされたことが直接的な動機であった。Tsang氏は、協力を約束した。
ファッサー会長は各国代表団に、の協力を感謝するとともに、閉会を宣言して総会を終了した。
以上 (文責:森田三郎)