長谷川 智子先生(京都大学眼科)
受賞テーマ:「網膜色素変性症の新規進行抑制治療薬としての分岐鎖アミノ酸の細胞保護メカニズムの解明」[ライオンズ賞](動画は、会員ページにあります)
この度は、「網膜色素変性症の新規進行抑制治療薬としての分岐鎖アミノ酸の細胞保護メカニズムの解明」というテーマで研究助成をいただき、誠にありがとうございます。大変光栄に思っております。
網膜色素変性症は、網膜の神経細胞である視細胞が変性して、視野狭窄などの症状が進行する疾患です。私たちは、現在までに、細胞内のエネルギーの不足が神経細胞の細胞死を引き起こすとの仮説に着目して、細胞内のエネルギー不足を防ぐことで細胞死を抑制できる可能性があるのではないかと考えて、研究を行ってきました。
分岐鎖アミノ酸は、食べ物から摂取することが必要な必須アミノ酸ですが、私たちは、細胞内のエネルギー源としての分岐鎖アミノ酸に着目して研究を行っています。分岐鎖アミノ酸は、ストレスを加えた培養細胞では、細胞内のエネルギー減少を抑制し、細胞死を抑制しました。また、網膜色素変性症のモデルマウスに対して、分岐鎖アミノ酸を投与したところ、分岐鎖アミノ酸は網膜の視細胞の変性を抑制し、網膜の機能の低下を抑制することが明らかになりました。私たちは現在、分岐鎖アミノ酸の網膜色素変性症患者さんでの効果と安全性を検討するため、70名の患者さんにご協力をいただき、医師主導治験を行っております。
医師主導治験により、網膜色素変性症患者さんでの分岐鎖アミノ酸の効果を検討し、また、並行して分岐鎖アミノ酸による細胞死抑制メカニズムの解明を進めていくことで、分岐鎖アミノ酸を用いた網膜色素変性症の疾患進行抑制薬の開発を進めていきます。現在行っております治験にも、多くの患者さんにご協力いただいており、患者さん方のご協力に感謝しております。一日も早く、多くの患者さんが使用することのできる、有効な疾患進行抑制薬の開発につなげられるように、頑張って研究を進めていきたいと思います。