■Wings研究者インタビュー 第12回
ビジョン・ケア 高橋政代先生に聞く ~網膜再生治療確立に向けての決意
突然、理研退職のニュースが流れて皆さんを驚かせてしまったこと、申し訳なく思っています。皆さんにきちんと説明したいと思っていました。
今、色素変性を対象とする視細胞移植臨床研究の申請の準備を進めているところです。(註記:2019年11月15日のインタビュー後、12月9日に第一特定認定再生医療等委員会宛に申請書が提出されました)
臨床研究なので、ほんの数名にするだけで、その後は大日本住友製薬が治験をしてくれることになっています。
ただ、治験が終了するまでにはとても長い時間がかかります。そこを短縮できないかと考えて作ったのが株式会社ビジョン・ケアという会社です。少しでも早く、安く、安全にたくさんの方に網膜の治療を届けたいと思っています。大企業に任せていると時間もかかるし、コストもどんどん高くなっていく、それなら自分たちで作ろう、と思い、私が会社の代表取締役となりました。大きな会社も協力してくれる所があるので、今、たくさんの企業と私たちの会社が提携を進め、その体制作りをしているところです。
視細胞移植は、最初から視力が出る、というのではなく、どんどん改良し続けなくてはいけません。たぶん、20年くらいは改良し続けないといけないと思います。薬だと1回できてしまえばその効果は同じなのですが、再生医療は細胞だし、手術だし、それはどんどん改良を重ねて、20年くらいたってようやくこれでいいね、と言われるような治療となります。現在も、うちのラボではこの臨床研究の次の研究が始まっています。現在アイセンターの中にあるのは今は理研のラボですが、そこをアイセンターが借りることになります。アイセンターとビジョン・ケアはずっと組んでいくので、共通のラボを作っていくという感じです。でもここでは狭いので、1、2年くらいにもっと広い所も用意する予定です。
会社に移った理由はたくさんあるのですが、中でも理研のラボは私が引退したら閉じてしまうし、理研と契約が切れたスタッフはラボを辞めなくてはならないので、研究を一緒に続けていくためにその受け皿を作るという目的もありました。アイセンターを作る前からそれは分かっていたことで、アイセンターは4つの部門からなっていて、研究と眼の病院とNextvisionと会社を最初から作っていて、私はその4つの全部にポジションを持っていて、それは今も変わりません。生活は何も変わらず、軸足が変わっただけです。
今はアカデミアの仕事を減らして、治療を早く安くみんなに届けるための仕事に集中しているところです。今後そちらに集中するために患者会の講演なども減らしていかなければならない現状をご理解ください。ビジョン・ケアの利益はアイセンターや公益的なことがきちんとできるようにするためにも使われます。治療開発に専念するためにこれからもがんばっていきますので、皆さまのご理解とご協力をお願いします。