倉田 健太郎先生(浜松医科大学眼科学講座)[ライオンズ賞]
受賞テーマ
「わが国のX連鎖性網膜色素変性患者に対する遺伝子治療を目指した原因遺伝子特定と長期自然経過観察研究」
このたび、JRPSライオンズ賞に選出いただきました浜松医科大学の倉田健太郎と申します。研究助成をいただけることを大変光栄に思っております。会員の皆さまには心より感謝申し上げます。
網膜色素変性症は、遺伝子の異常によって発症することが知られています。原因となる遺伝子は80種類以上が知られており、遺伝の仕方もさまざまです。そのなかでもX連鎖性と呼ばれる遺伝形式の網膜色素変性症(X連鎖性網膜色素変性症)は発症年齢が早く、また病状がより重篤とされています。X連鎖性網膜色素変性症は、主に男性に発症しますが、女性においても視覚障害がみられることがあり、無症状なものから重篤なものまでさまざまです。
現在、網膜色素変性症を対象とした遺伝子治療や創薬の治験が進んでいます。X連鎖性網膜色素変性症においても例外ではありません。遺伝子治療は、病状が進んでいない早期の段階で行うことでより良い効果が得られることが知られているため、早期に診断がなされることがとても大切です。さらに遺伝子治療の効果を判定するには、比較対象として病気の自然経過をよく理解していなければなりません。私どもの教室では、網膜色素変性症に対して、これまでに正確な遺伝子検査を行い、自然経過に関する報告を行ってきました。そして近年、12家系からX連鎖性網膜色素変性症の原因遺伝子を同定して、臨床像(発症年齢や視機能など)に関する報告を行いました。しかし、より詳細に検討するためにはさらに症例を積み重ねて調査が必要です。そこで私の研究は、さらに対象を蓄積することでX連鎖性網膜色素変性症の臨床像を明らかにし、長期にわたる病気の自然経過を調査することを目的とします。
本研究により自然経過に伴う視機能変化を予測できるようになります。それをもとに、患者さまにはより正確なカウンセリングを行うことができます。また、将来遺伝子治療が可能になった際には、その効果判定を正確に行うことが可能となります。
本研究によって皆さまのお役に立てるように、最大限の努力をしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。